高瀬隼子のレビュー一覧
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ネタバレ【あらすじ】
昔飼っていた犬を愛していた。
どうしたら愛を証明できるんだろう。犬を愛していると確信する、あの強さで――。
間橋薫、30歳。恋人の田中郁也と半同棲のような生活を送っていた。21歳の時に卵巣の手術をして以来、男性とは付き合ってしばらくたつと性交渉を拒むようになった。郁也と付き合い始めた時も、そのうちセックスしなくなると宣言した薫だが「好きだから大丈夫」だと彼は言った。普段と変らない日々を過ごしていたある日、郁也に呼び出されコーヒーショップに赴くと、彼の隣にはミナシロと名乗る見知らぬ女性が座っていた。大学時代の同級生で、郁也がお金を払ってセックスした相手だという。そんなミナシロが妊娠してしまい、彼女曰く、子供を堕すのは怖いけど子供は欲しくないと薫に説明した。そして「間橋さんが育ててくれませんか、田中くんと一緒に。つまり子ども、もらってくれませんか?」と唐突な提案をされる。自ら子供を産みたいと思ったこともなく、可愛いと思ったこともない薫だったが、郁也のことはたぶん愛している。セックスもしないし出来にくい身体である薫は、考えぬいたうえ、産まれてくる子供の幸せではなく、故郷の家族を喜ばせるためにもらおうかと思案するのだったが……。
快楽のためのセックス、生殖のためのセックス。子供を産むということ、子供を持つということ。
1人の女性の醸成してきた「問い」の行方を描く。
『こんな街で、こんな世界で、よく子どもなんて産もうって、思えるな、みんな。かわいそうだと、思わないのかな。傷ついたり嫌な思いをしたりするのが、目に見えているのに。子どもを産みたいとか持ちたいとかいう、自分の希望を優先するんだろうな。』
【個人的な感想】
妊婦さんのお腹を見て怖いと感じる気持ちはおかしいのかと思っていたが、主人公も同じことを言っていてびっくりした。
生まれたての赤ちゃんの写真を見て『昔、実家の納屋でひからびて死んでいたこうもりに似てる。』という表現をしていて笑ってしまった。
自分が子供を持つことに対して慎重になってしまう理由がこの小説の中には詰まっていた。
産みにくい身体、産めない身体になるとわたしも子供を産みたいと思うようになるんだろうか。
犬に対して感じる愛情に対して『愛することってこういうことだ』と文章で書き起こしてあるp38〜39も印象的だった。
色々なことを考えさせられた。 -
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大掃除・小掃除が終わったら、「美」をテーマにしたGOAT第3号(2026 Winter)を読んでみましょう。
表紙ではゴートくんが手鏡でお顔を映しています。
表紙を開くとゴートくんと羊くんが美について話していました。
「美ってなんだろう
大きな羊?
羊の角を頭に飾った人?」
「由来は所説あるけど、
ヤギじゃなくて羊なのか・・・」
ちょっと残念そうなゴートくんです。。。
最初の小説は、高瀬隼子さんの「ふたえ」でした。
67歳のお父さんが、二重まぶたに整形したのに飽き足らず、顎やら頬やらを全身麻酔の手術を受けて整形するというお話です。
思えば、美しい顔の基準は個々人によって異なりますし、また、理想とする自分の顔と実際の自分の顔とのギャップに悩む人も当然にいらっしゃるでしょう。
そのギャップを埋めるために美容整形手術の費用やリスクを受け入れるかどうかもまた、個々人の美意識というものでしょうか。みなさまは、このお父さんをどう評価なさるでしょう?
人は美の中に醜を見たり、醜の中に美を見たりします。
美が何たるかを語りながら、人類は1万年を過ごしてきたのかもしれません。。
今年、みなさまはどんな美しいものをご覧になったでしょうか?
来年、どんなものを美しいと思われるでしょうか?
そんな対話をご自分と交わしながら、美しくなった居心地の良いお部屋で、本書をちょっとずつお楽しみくださいませ♡
本号もお得な税込み510(ゴート)円です♡ -
Posted by ブクログ
突然起こった原因不明の感染症は、いつしか中高生以下を除く全ての人がはげる平等な世界に変えた。
元々薄毛を気にしていた真智加という女性が主人公で、その友人のテラとの関係性を描いた作品です。
友人でありながら、どこか真智加の薄毛をかわいそうなものとして見ているテラの描写にザワザワしたものを感じました。
真智加が全ての人がはげた世界の中で、変化が及んだときに、少しの優越感を感じながらテラに対してマウントをとることなく、周囲を気にしてしまう心境も微妙にわかる気がする。
みんな平等になったとしても、外見のコンプレックスは消えるものではない…そんなことを痛感した作品でした。 -
ネタバレ 購入済み
タイトルの「犬のかたちをしているもの」、これは主人公の愛の形なのかなぁ。話の主旨とは違うかもしれないけどミナシロさん最後ちゃんと離婚してくれたのかしら、そこだけめっちゃ気になる。
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ネタバレ女性の怖さは観察が鋭いところである。高瀬さんの書いた小説を読むと慄然とする。「たしかに男って、こういうときこうするよな」というのが、じつに見事に描写されているのだ。「こんなところまで見られているのか…」と冷や汗が出る。男性作家はなかなかこういう真似はできない。男の場合、登場人物(とくに女性)にしばしば自分の理想を投射してしまう。わかりやすく言えば、エヴァンゲリオンの綾波とアスカだ。魅力的ではあるが、嘘くさいと言えば嘘くさい。
セックスをしていると、大切にされていない気がする。この薫の気持ちはなんとなく理解できる。どうせ私のことは体目当てなんでしょ。しかしセックスがなければないで、愛されているか不安になってしまう。郁也が求めてこないのは、彼が「大丈夫」だからなのか。そんな男がいるのだろうか。薫はどうやって郁也の愛を確かめればいいかわからない。
同時に薫は、郁也に対する自分の愛にも自信が持てない。あなたの子供を産みたい。これは愛である。しかし、薫は持病のせいもあり、子供を作ることに消極的だ。郁也が子供を欲しがっているのはわかっているのに。こんな自分は、本当に郁也を愛しているのか。自分の愛が本物の愛だと、どうやったら証明できるだろう。
本作は一見すると無茶苦茶でありえない設定だが、このありえなさを成立させることで、私たちが当たり前だと思っているものを「本当に当たり前ですか?」と問いかけてくる。犬のロクジロウを愛してると確信することはとても簡単なのに、どうして人間どうしが愛し合うことはこんなにも面倒なのか。
愛や性は〝理性〟とは対極の〝本能〟であり、本能に従っていれば迷うことなどないのに、考えてしまうから答えが出ず前に進めなくなる。
「これまで考えすぎるほど考えてきたつもりなんだけど、振り返ってみると全然、目の前に置かれた課題の方がまだ全然、多い」と薫は語る。逆だ。考えてばかりだから目の前に課題が積もってしまう。それに対して、本能のままに赴くミナシロはずっと軽やかだ。あれほど子供が嫌いと言っていた癖に、いざ産まれたら自分で育てると言い出す。つまり本能が優先しているわけで、これは欲望解消のためならお金だけの肉体関係もありだと考える彼女らしい決断である。それに比べたら、薫が最後に下した決断は、じつにささやかと言うしかない。それでも、彼女はここでようやく一歩を踏み出したのである。 -
Posted by ブクログ
高瀬隼子さん、2冊目にしてやっぱり好きだと確信しました。なんか…、刺さるのです。この「刺さり」が欲しくて読む感じ、最近の作家さんだと石田夏穂さんにも通じる。(おそらく)同性で、年代が近いからかななんて勝手に思ってます。
今作ははげのお話。ギャグ漫画みたいな設定なのに読んでみると全く笑えなくてウケる、という不可解な現象が起きている。みんなで平等にハゲれば怖くない!
この「ハゲ」は他の色んな要素に置き換えられると思う。どうやっても同じにはなれない社会。人間。まず見た目が違う。たかが見た目というけれど外見の与える影響力は凄まじい。
皆違うけれど、髪が生えてきたことを隠すことも、ハゲたから大学を辞めるのも、ふさふさの髪を切ってしまったことも、片方の髪の有無で人間関係が変わることも、それぞれ少しずつ「分かる」。