あらすじ
ある日、夫が風呂に入らなくなったことに気づいた衣津実(いつみ)。夫は水が臭くて体につくと痒くなると言い、入浴を拒み続ける。彼女はペットボトルの水で体をすすぐように命じるが、そのうち夫は雨が降ると外に出て濡れて帰ってくるように。そんなとき、夫の体臭が職場で話題になっていると義母から聞かされ、「夫婦の問題」だと責められる。夫は退職し、これを機に二人は、夫がこのところ川を求めて足繁く通っていた彼女の郷里に移住する。そして川で水浴びをするのが夫の日課となった。豪雨の日、河川増水の警報を聞いた衣津実は、夫の姿を探すが……。女性が主体として生きていくことの難しさを描いた物語。
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フィクションだけどこれが今を生きる私たちの現実だなと思った。
賃貸マンションに住んでいるとご近所さんを気にしないし、街中を歩いていて変わった人がいてもその場では気になるものの翌日には記憶から消える。
旅行などで田舎に行く時、空気が美味しいとか、深く呼吸ができてそれだけで充実感を味わうのは、きっと都会に住むことに疲れているのだなとしみじみ思った。最後の解説まで読んで完成する一冊。
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夫がある日からお風呂に入らなくなる話
読み終わったあと、こわって呟いてしまった
高瀬先生の本はどれも救いがあるようでなくてすき
”それがまるで愛の証明であるような気がして安心する。
安心していると気づき、また頭の中で自分を責める。p153”
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いつになったらお風呂に入らなくなった理由が明かされるのか気になり読み進めたけど結局分からず。
でもそれでいい。引き金になるものは色々あったんだろうな。
自分は妻という立場上、夫のことを心配した方がいいんだろうけど本当のところはどちらでも良い(パートナーとして大切に思っているけど本人がお風呂入りたくないのなら仕方ないよねみたいな)
実家の金魚のストーリーを持ってくるあたりめっちゃ良かった。結局同じよねー。
後味悪いタイプの内容としては本当にベストだった。
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高瀬隼子さんを知ったのは、「おいしいごはんが食べられますように」。今回で2作目。
以前にも思ったが、こちらの作家さんは読者との距離感が絶妙だ。読み進めていくうちに物語と現実との境目がぼやけていくが、決して足を踏み入れさせない。少し離れたところから、"あなたもこういう人間でしょ?"と静かに突きつけてくる。
目を逸らすことが許されない居心地の悪さは、自分はハズレものではないと信じたいからなのかもしれない。
世界を窮屈にしているのは、一体誰なんだろう。
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望んでいた、そうなってくれたら…と祈った結末ではないことに、逆に安心した話であり、解説を読むと胸の奥がぎゅっと潰された。
みんな必死に生きている。それでも耐えられなくて、逆に耐えてしまう人がいて。それは個人が個人であるからこそ起こることなんだけれど、それがツラい。
誰かが何かしてくれたら、夫は風呂に入らないという選択をとらず、最後まで頑張れたのか。頑張らせて良かったのか。
『気の持ちよう』『まだ大丈夫』『できるよ』という言葉の残酷さを感じた話だった。
その言葉でなんとかなる内は、『まだ大丈夫』なんだろう。
『普通』を頑張れる人が取り残される話しであったかもしれないし、選択の残酷さもあったかもしれないけど、やっぱりそこに『それでも一緒にいたい』がないとできない選択肢なのではないかと思って、なんとも言えない気持ちになった。
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序盤と終盤で不可解さや違和感の対象が移ろっていく、心に残る作品だった。
序盤は、突如お風呂に入れなくなった夫の言動が分かりかねず、かつ最後までその背景や心理的描写がないまま、読者は疑問を抱きながら読み進める事になる。
しかし中盤から終盤にかけて、次第に主人公である妻へと疑問の対象が移ろっていく。義母に嫌悪感を示し、夫を頑なに病院に連れて行こうとしない。というより、病院に連れていくという発想が浮かんでいない。
妻が最後まで拘り続けているのは、「普通」の生活を送るということ。程々で普通からの逸脱を逃れるためなら、何だってやってしまいそうな危うさを所々から感じ取ることになる。
私は個人的に、軽度の愛着障害やアダルトチルドレンの特徴を抱えながら、さほど問題なくこれまで人生をサバイブしてしまったパートナー達の物語と読み取った。
明らかに過干渉な夫の母親(義母)や、家事や介護の苦労を涙ながらに訴える妻に「そんなの何でもない」と平然と切り捨てる立派な社会的地位を持った夫、彼らを両親として見続けた主人公。
自身の感情や価値基準を持つことを許されない子ども時代を過ごした夫婦らが、これまで特に問題なく「生き延びてしまった残酷さ」(巻末の解説から)が描かれているのだと思った。
おもしろい
話題になっていたから気になって手に取ってみた。始まり方といい、途中の描写もすごく引き込まれたけどラストはちょっとよくわからなかった。急に風呂に入らなくなった夫を目の前にして、入ってほしい気持ちと、もうそれでもいいじゃない、と奥さんもどうしたらいいか途方に暮れたに違いない。心の葛藤がよく分かる内容だった。
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”普通”に生きる事の圧力に耐えながら生きる事の難しさ、現代社会では誰しもがその圧力の中に生きていて、何かをきっかけに人は簡単に狂ってしまう、そういった怖さを感じる小説だった。
東京に住むどこにでもいそうな中年の夫婦の夫がある日職場での些細な出来事をきっかけに風呂へ入らなくなる。
次第に体臭も尋常ではないほどのものとなり、仕事を辞めざるを得なくなり、地方へ移住することとなるが・・・という話。
社会では"普通"に生きる事を求められる。
例えば、ある程度の年齢になったら結婚をして、結婚をしたら子供を持つもの、それが当然だと言うように。
そこからずれてしまうと異端扱いで生き辛くなってしまう。そんな生々しさが感じられます。
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高瀬さんの文章は本当に人間を捉える力がすさまじいなと思う。
世の中のいろいろな小説を読んでいると、登場人物は大抵、悪人以外はまともな人間に描かれることが多く、私はたまにうっすら白けてしまうことがあるのだが、高瀬さんの作品の登場人物は誰もがみんなまともではなく、でも人間ってみんなそれぞれどっか変なんだよなと思わされる。
高瀬さんの紡ぐ文章がどこまでも冷静でシビアなところが好きだ。
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文章を読んでいて何か掴めそうって思えたりもしたけど、結局何も分からないまま終わってしまった。いつかこの感情の答えが見つかるようになるのだろうか。不思議な読後感を味わえた。白黒をつけすぎないことも、きっと人間には必要なことだ。
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一年以上積読にしてた本。最近父にお風呂に3日以上入らないのはちょっと…って話をしたばかりだった。この本を読んだあと父はもしかしたら…と思ってちょっと怖くなった。読むタイミングがバッチリすぎてちょっとから更に怖くなった〜
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『おいしいごはんが食べられますように』がとても良かったので読んだ。
神の視点から描いた『おいしいごはん〜』に対して、衣津実の主観のみで描いた本作は思考の転換についていくのがしんどくて、テイストがちょっと違った。
読後感は良い。愛だけで片付けられない社会の欠陥を描き出すのがうめえ。
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そこが物語のメインじゃないとわかっているのに、もうお風呂のことしか考えられん。お風呂に入っていない夫の描写が生々しくて強烈で、お風呂嫌いのワイもさすがにお風呂の大切さを痛感。途中までは他の高瀬作品に比べていまいちかなァと思って読んでいたのが正直なところなんだけど、物語の終わり方が個人的にすきだったのと、あとは解説を読んで納得した部分もあった。やっぱり刺さるところが必ずあって、相手を心配して必死になることを「愛の証明のような気がして安心する」って表現できるところとか、ほんとこの作家は…(褒め)ってなった。けど、やっぱりお風呂だ。お風呂嫌いなのに、こんなにお風呂のこと考えたことないよ。うあああ。
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『夫が風呂に入っていない』そんな一文から始まる物語は、鬱病を描いた作品かと思いきや、もっと繊細で、簡単には言葉にできないものだった。
地方出身の妻と、生まれも育ちも東京の夫。20代半ばで結婚し、子どもには恵まれなかったものの、穏やかに暮らしていた二人。ところがある日、夫は飲み会で後輩に水をかけられたことをきっかけに、水道水を受けつけなくなってしまう。
風呂には入れない。でも、ご飯は食べられるし、テレビも観る。会社にも行ける。だから単純に病気と片づけられるものでもない。その絶妙な違和感が、物語に静かな不穏さを漂わせていた。
変わっていく夫を前に、原因を追及せず、無理に変えようともしない妻。その姿勢は、優しさなのか、戸惑いなのか。それとも恐れなのか。読む人によって受け取り方が変わるだろう。
ハッピーエンドを期待していたぶん、ラストには見事に裏切られた。最後の妻の行動には、どこかホラーのような怖さもあり、読後もしばらく余韻が残る一冊だった。
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夫婦仲も良く話し合いもできるのに、「その方が良いから」だけで選択していく2人の成れの果て。
弱い夫にイラつき共感は出来なかった。が、想像できる上で一番残酷なラストシーンは好き。高瀬隼子さんの筆力はやっぱり素敵。
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夫婦関係における妻から夫への距離の取り方とか、妻と義母との関係とか、壊れていく人に対する向き合い方とか、逸脱に対する社会の不寛容性とか、様々なテーマが内包された作品だと思うけど、自分はそのあたりの難しいところからはいったん離れて、「夫が風呂に入っていない。」というパワーワードで始まる、「臭い」という多くの人が生理的に嫌悪感を抱く要素に対して、周囲の人々が苦悩する様子がシンプルに面白かった。
全体的に何ともいえない息苦しさを感じるのだけど、それがあのラストシーンで一気に解放されるのだとしたら、実はこれ結構怖い小説だったんじゃないかという気がしている。
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高瀬さんは兼業作家だからか、会社の暗部を書くのが上手い。会社で病んでいく夫の様子が生々しい。
不思議な作品ですが、文章が上手いからかスラスラと読める。
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高瀬隼子さんの作品は初めて読んだ。
話は衣津美目線で書かれているにもかかわらずずっと彼女と表記され夫である研志の事は夫と表記されていることに違和感があった。これは衣津美が自分のことを客観的に見ていることを表しているのか、よく分からない。
お風呂に入れなくなった夫の弱さ、大して世話をしていないのに生き長らえる魚の強さ、どんな環境でも結局堪えられてしまう衣津美の強さ、夫の弱さを最後まで寄り添いきれない弱さ、様々な強さと弱さ、普通を巡る苦悩が書かれていると思う。
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大切な人がいても、突き詰めるとやはり自分の方が大事で、それが他人というものなのだと思った。
初めての高瀬作品だった。他のものも読みたくなった。
1日で読めた。
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『おいしいごはん〜』『いい子のあくび』とは異なるテイストの作品。
自分が衣津実と同じ状況になったら一体どうするのだろうか。
徐々に狂っていく夫に「大丈夫だよ」と言いながら絶えず周囲の目を気にし、寄り添う態度をとりながら心配よりも微かな苛立ちに変わっていってしまうのかもしれないと思って怖かった。
夫の変化を尊重し、耐えがたい異臭を纏っても隣で日常生活を送り続け、終いには仕事を辞めて故郷に帰る。これだけ聞くと、とてつもない愛がそこにあるように感じるが、そんな単純な感情ではないのが嫌にリアルである。
愛した方がいいから愛しただけだと、ほんとうに思うの。(p.131)
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お風呂に入らなくなった夫と、どこまでも見守る妻との物語。
夫を見守る妻の心の揺れ動くさまが緻密に書かれており、読者に息苦しさを感じさせる。
大切にされても死んでしまうし、大切にされなくても生きてしまう。
普通の定義とは何なのか、生きることの難しさを感じさせる一冊だった。
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いつ自分にもそうなるきっかけに出会うかわからない。
人ごとじゃないなと感じた。
いじめ問題など、した側は悪いことをしたとも思わず、何も考えずに今まで通りの生活がてきる。
された側は辛い感情を忘れることができず、生きていかないければならないのが不公平だ。
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何も明かされないまま終わってしまい、
でも、それでいいんだろう。というのが読み終わり直後の今の気持ち。
なるようになるしかないだろうという諦めなのか、なるようになってしまえという期待なのか。
どちらとも取れる話だったなあと思う。
一見思い入れはないように見えるけど実は心のどこかにきちんと大切に想っている部分が人間にはきっとあるんだろう。そうであって欲しい。
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主人公の旦那が風呂に入らなくなってから物語が少しずつ変化する話。
読み進めていくと風呂に入らない旦那の生活が書かれている大部分であるが何故か読むと止まらなかった。
表現のしかたが良く、飽きずに読破できました。
随所に主人公の回想もあり、読み終えた後の余韻に浸れます。
改めて小説家の凄みを体感した一冊です。
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頭の中を意識した時点で自分にすら嘘をついて少しマシなことを考えていたことに自動的にしているそれが普通なんだと思う。この作品はそういう嘘が限りなく少ない…誤魔化さないからこそ怖い。最後の展開は恐怖体験。風呂の文字がゲシュタルト崩壊しそう笑
Posted by ブクログ
人はモノじゃないから、どういうことを「壊れた」と定義するのかというのを考えさせられた。
なんだか当事者達が全部他人事で、みんながみんなどうする?の答えもなく、流されていったんだなと思った。
ただ、2人にとってそれがいい事なのか悪い事だったのかはもう誰も分からないけれど。
こういう本は、自分だったらをすぐに考えてしまいがちだが、「お風呂入らなくてもいいかな?」だったら自分の意見が言えるが「お風呂入らないことにした」だったらどうするかなと思った。
その決定に至るまでの気持ちを教えてほしかったと思うかもしれない。
最後も、結局はっきりとは誰も教えてくれなかったけど、そうしたかったんじゃないかなとぼんやり思った。
それはそれで、幸せだったのかもしれない。
Posted by ブクログ
最初は風呂に入らない夫に戸惑っていた妻が、それでも2人の暮らしを守ろうと行動する。
ずっと理解し得ない対象の話を読みながら、それでもそこに寄り添おうとする人の心理に引き込まれていく。でも自分は理解できない。
Posted by ブクログ
解説を読んで、人はどんな状態であっても生き延びてしまうことの残酷さ、結局は持ち堪えてしまうことを痛感してしまう
高瀬隼子さんの作品は後味悪いって分かっててもどうしても手に取って読んでしまうのくやしい〜
Posted by ブクログ
読後感がかなり重く、引きずるタイプの作品。いわゆるイヤミスとは違うけれど、静かな不穏さと居心地の悪さがずっと残る。
湊かなえさんが「イヤミスの女王」と言われているけれど、個人的にはそれ以上に精神的にくるものがあった。人間関係の距離感や感情のずれがとても生々しく、読みながら少し怖くなる場面も多い。
物語の結末もはっきりした説明があるわけではなく、夫は本当に亡くなったのか、なぜ主人公が必死で探そうとしないのかなど、答えの出ない問いが残る。その曖昧さも含めて、主人公の内面の怖さが印象に残った。
面白かったというより、「心に残ってしまう」一冊。