【感想・ネタバレ】うるさいこの音の全部のレビュー

あらすじ

小説と現実の境目が溶けはじめる、サスペンスフルな傑作
嘘だけど嘘じゃない、作家デビューの舞台裏!

「おいしいごはんが食べられますように」で芥川賞を受賞した高瀬隼子さんが挑む新たなテーマはなんと「作家デビュー」。

ゲームセンターで働く長井朝陽の日常は、「早見有日」のペンネームで書いた小説が文学賞を受賞し出版されてから軋みはじめる。兼業作家であることが職場にバレて周囲の朝陽への接し方が微妙に変化し、それとともに執筆中の小説と現実の境界があいまいになっていき……職場や友人関係における繊細な心の動きを描く筆致がさえわたるサスペンスフルな表題作に、早見有日が芥川賞を受賞してからの顛末を描く「明日、ここは静か」を併録。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

芥川賞を受賞して華やかに作家デビューするはずが、自分以外の人があれよあれよと変化していき巻き込まれていく。変化があったのは自分のはずなのに、周囲が変わってしまったように感じられる。手の平を返したかのように態度を変える人もいれば勝手に期待して勝手に失望して勝手に離れていく人もいて、その渦の中で苦しい表情を見せないようにして何とか息継ぎしている感じ。頭の中の自分と作家の自分とが同時に存在して本当の自分が分からなくなる感覚の描写がリアルで、劇中劇みたいに「これも高瀬さんの体験談かも…」というメタ視点になってみたりした。
高瀬隼子さんの作品の中でも特に好きかもしれない。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

読んでいるうちにこちらもどんどんその思考に飲み込まれていくような、独特の心理描写が心地よかった。やっぱり高瀬隼子の書く人間が好きだと思う。
この小説は高瀬隼子の自伝なのか、という疑問が自ずと湧いてくるが、だとしたらこの小説の内容は全部それらしく書いた嘘なのだろうし、読者にそう勘ぐらせることを目的に書いた小説であるような気もする。いずれにしろ、高瀬隼子の手のひらの上で転がされてしまったと思った。それが心地よかった。

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2025年10月04日

Posted by ブクログ

本名「長井朝陽」としてゲームセンターで働きながら、ペンネーム「早見夕日」として小説を書く主人公。文学賞を獲り、職場や地元に兼業作家であることが知れ渡ってしまい、朝陽として勤めていれば職場の人から小説家の顔ばかり注目され、夕日としては取材陣やネットから作家の素顔つまり朝陽のことばかりに注目され、相手の求める解答ばかり話しているうちに段々、現実と小説の境界が曖昧になっていく。

強烈なタイトルに惹かれて手に取った作品。息苦しくてめんどくさくて、共感のしようがないのになんか共感してしまうような自分の傲慢さに笑ってしまいました。

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

評価低くて驚き、めちゃくちゃ面白いやろ…
でも、主人公の属する社会の嫌な感じとか、理解できない登場人物とか、の要素が少なめで高瀬さんらしくない作品かもしれない

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2025年05月03日

Posted by ブクログ

面白かった。小説のなかのことが嘘か真実かあり得ないのか有りうるのか考えるときりがない。そのキリのなさにどんどん吸い込まれる感覚

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2025年01月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私小説のように思えてくるけど、だとしたら高瀬さんもそうやって詮索されることにうんざりしているから私小説だと思ってはいけないような気がしてきて、絶妙。
高瀬さんの実際のサインが楷書ということがアツい。

"言いかけて止めるためだけに、言いかけたのだと思った"というところ、どうやったらこんな文が思いつくのか、、

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2024年07月10日

Posted by ブクログ

主人公の感情の動きが繊細で鮮明で、ぐんぐん読み進められた。繊細すぎるし、全てを考えすぎな主人公で、捻くれてて何か常に上から目線な感じ悪さがあるんだけど、相手の期待に応えたくなるところは少し共感できる。やりすぎだけど。
タイトルが秀逸。面白かった。

いい子のあくびとおなじDNA

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2025年11月10日

Posted by ブクログ

宇垣さんオススメのエッセイ。エッセイなのか小説なのか。その狭間や境界は誰にも分からないのだけれども、確かなのは純粋にこの作品は面白いし、惹き込まれるということ。

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2025年10月22日

Posted by ブクログ

最初読み始めた時、主人公が書いている小説の話なのか現実なのかわからなくて戸惑ったけど、この小説自体が、高瀬さんの芥川賞をとった時の実体験を元に書かれたのではと思って読み進めてしまいました
小説家が顔を出してしまうことが、こんなにも怖いことになるのかと 
これから賞をとった作家さんたちの裏側を考えてしまいそうです
担当編集者の瓜原さんがとてもいいひとで、だからこそ最後のシーンはあっと思いました
あ、他の高瀬さんのエッセイは、この本とは違う、違うと言い聞かせて読めました

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

作家になることはなくても、他人の中にある自分像の期待に応えようとして自分に嘘をつくことは誰にでもあるのではないかな。虚像の自分を手放しても味方でいる人はいるはずなのに。

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2025年08月11日

Posted by ブクログ

高瀬隼子さんの小説家になるまでとなってからの周囲の反応に日々頭を悩ませる様子や小説家として生きていくと決意するまでが描かれている。その逡巡があって読んでいて共感できる部分があった。

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2025年08月05日

Posted by ブクログ

【読まれたいのに「わたし」を知られたくないなどというのはずるいのだろうか】
小説家デビューし、テレビに出演したことで、周りの世界が一変する。自分の知らないところで、不特定多数の人間が自分の事を話題にする気味悪さは計り知れない。たとえポジティブな内容だとしてもどこか気持ち悪く鬱陶しい。それは鳴り響いて止まることのない騒音、まるでゲームセンターに閉じ込められているみたいに。読後、以前とある芸名を使用する女優さんが「本当の自分と芸名の自分と演じている役の境目がわからなくなる」と言っていたのを、ふと思い出した。

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2025年07月28日

Posted by ブクログ

自分の心がわからず、他人の目ばかり気になって、ウケようとして嘘に嘘を塗り重ねたり近所の外国人店員にちょっかいかけたりする主人公のこと、読んでて呆れつつもなんかちょっと分かるなとも思う。普通に会話をしていたのに主人公の中学校時代からの友人(名前を忘れた)の機嫌を急に損ねてしまうところがめちゃくちゃ怖かった。

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2025年06月23日

Posted by ブクログ

どっちの世界の話か分かんなくなってしまった場面がありました、、、読解力鍛えます。
作家さんのお話興味深かったです。作家の自分と本当の自分と区別がつかなくなってしまうなんて一般人の私は共感はできるはずがないのですが、うんうんとなっていました。ゲームセンターに死人が集まってるところとかサービスエリアで連絡取れなくなってしまうところとか自分で想像しながら解像度高く読めてすごく楽しかったです。

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2025年06月14日

Posted by ブクログ

 高瀬隼子さんといえば、現代社会に於けるリアルすぎる程にネチネチとした人間模様や、特殊な設定にしてまでも訴えたい多様性のあり方と、主にこの二つが主要なのではないかと私が思う中、本書はどちらも満遍なく取り入れた意欲作で、これは内容とは裏腹にとても気合いの入った作品なのではないかと感じたのも、私にはまるで高瀬さんが何かと闘っているような印象を受けたからなのだが、その物語は、お世辞にも人間の可能性や素晴らしさを謳ったものではない、寧ろ、その真逆に近いものである点に、また彼女の反抗心を見たような思いがしたのである。

 ゲームセンターで働く小説家「朝陽」の物語は、この設定を見るだけでも特殊性が高いように感じられるが、彼女の心の叫びとも思われる人間の嫌らしさの中にも漂う切実なものには、人間ならではの繊細な普遍性を秘めているようで、それは自分自身の存在価値を認めてほしいことから端を発したものであることを実感することによって、より痛々しいものへと変わる。

 どんなに自分らしさを存分に発揮して自由に生きていきたいと思っても、他人との関わりを避けることは非常に難しい上に、全ての人と友達感覚で価値観を共有することができる訳ではないことの煩わしさは、特に少数で働く職場に於いて、どのような苦痛を伴うのか想像に難くないと感じたことが、作品への共感をより高めてくれると共に、朝陽に対するイライラ度も高まっていくことを痛感することには、まるで鏡に映った自分の嫌らしさを、朝陽に見ているような感覚を抱かせることによる苛つきなのだということに気付く。

 例えば、嘘をついたことの無い人って、この世にいるのだろうかと思う反面、嘘を平気で吐く人なんて絶対に信用できないという思いも抱いてしまうような、そんな二律背反の葛藤を繰り返す存在こそ人間の真理なのではないかとも思ってしまう、本書に於ける朝陽の終わりの無い葛藤は、そのまま私自身のそれとも感じられそうな、希望的観測と絶望的観測とが永遠に同居する空虚さがありながらも、それに果敢として挑む高瀬さんの物語には、それでも人間は愛おしいはずだと信じてやまない熱量があり、物語に於いて何度もうんざりさせる程に訪れる朝陽の心の葛藤を粘り強く考察し、それを言葉に変えて書き続けていく行為には、まるで小説家としての使命を全うするかのように、言葉にできない答えを何とか言葉にできないものかといった気持ちで漲っている。

 物語は決して明るく楽しいものではないけれども、その分、そこに書かれているのは、誰も書いてくれないような非常に細かすぎるシチュエーションに於いて、衝撃性こそ低いものの、後からじわりと来る遅延性の毒のように少しずつ積み重なっていくことによって、いずれは致命傷に陥ってしまうような、そんな見えない傷の積み重なった心を抱きながらも、何でもない振りをして周りと接する朝陽を見ていると、何だか泣けてきそうで、どうしようもできないようなやるせなさで切なくなる。

 本書の中にある、『音を捉える器官は傷ついたら傷ついたままらしい』という描写は、そのまま人間の心にも擬えることができそうで、それは決して実感することは無くても、生きれば生きるほど確実に積み重なり続ける見えない傷を抱えて、誰もが今という時代を生きているのだろうと思わせてくれるような、高瀬さんの目の付け所の素晴らしさは、人間の心の中で精神的な強さと弱さが葛藤する中でも、最終的には自分よりも他人のことを優先してしまう、そんな繊細さがあることを決して忘れてはならず、それは時に不穏な怖さを絡ませる展開で惑わされることもあるものの、朝陽がそうなった元の始まりを辿れば、不器用な程の善意で彼女の心が満たされていたことに、きっと気付くのだろうと思う、その苛つきの陰には彼女自身を表に出せない故の苦しみが常に宿っていたのだということ、それが私の人生に於いても決して終わること無く、永遠に私を苦しませ続けるであろうことを思い知らせてくれて、苛つかせながらも、こうした内容はこの人だけが書いてくれるのだろうと励まされる、そんな高瀬さんの現実の見えざる闇を淡々と切り取った作品性を貫き通す姿は、どこまでも凛々しい。

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2025年05月23日

Posted by ブクログ

主人公の思考や性格がリアルでちょっとしんどくなる部分もあった。最初の方が面白くて一気に読み進めれた。

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2025年05月11日

Posted by ブクログ

高瀬隼子さんの作品は三冊目。
この方の本は、何かを学ぶというより人間や世間のあるあるという感じかも。
職場の人の無駄に盛り上がってる感じとか、田舎の母親の近所付き合いとか世間が狭い感じ、勝手に作り上げたインタビューに対して勝手に自分のことだと思い込んでる人とか、読書好きだけど作家背景には興味なかったはずの友人の結婚式でスピーチさせられる感じも。
作家さんもだけど表舞台に立つ人って自分が何を求められているか考えすぎてそのための軽い嘘が重なることってあるあるそう。
表舞台に立ってなくても日常で周りに求められているものとか周りからの評価を気にしすぎると自分の足が浮いてる感じもするし。
学生時代の4人組でいるときの主人公、あっよかった。反応あってた。みたいなのは今でもある。

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2025年05月06日

Posted by ブクログ

変な前評判なくこのお話を読めたのはかなり幸運だったかも。

世の中にあることに対して、そのまま受け止められる人と、何も意図を持ってない誰かの行動をずーっとぐずぐず考えてぐるぐる人がいるとして、私は後者なんだけど、朝陽と高瀬さんはそういうタイプなんだろなと。

人から見たらなんとも思わない当たり前のことを一生1人で考える。なんでなんだろ、って思うし、自分がどう見られてるのかと気になってしょうがない自意識の塊。誰にも見られてないのに。

嫌な意味で共感できて結構心地よかった。

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2025年04月22日

Posted by ブクログ

芥川賞受賞作家らしく、理想像を演じて、求められるエピソードを想像して嘘で塗り固めて、嘘に呼応する人まで現れて地元がざわついて…主人公がすり減って疲弊していく様子が痛々しく心苦しい。言霊というか、嘘が本当になってしまったような展開はホラーにも感じてぞっとしました。瓜原さんの言葉通り、もう少し肩の力を抜いてありのまま話せば良いのにとも…作家の心の葛藤がとてもリアル。職場の人や友達も中々にノンデリカシーだけど、流されやすくおどおどした主人公なので、前作の直子くらい悪態吐きながら生きてくれと思いました。

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

好きな俳優さんで今度実写化されるという、それだけの理由で読みました。普段なら読まないジャンル。でもどことなく村上春樹を思い浮かべるような、はたまた小説家の私生活とその作品がメタな構造をとっているような雰囲気があり、それなりに面白かったです。来年の映画が楽しみ。今度は芥川賞作品も読んでみようかな。

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2025年11月06日

Posted by ブクログ

作家は作家で「作家として消費される自分」と共存せざるを得ないということはわかった。

私も作品の作者の詳細は知りたくないと思うタイプ。
すごく綺麗な物語を描く人が、不潔な感じだったらゲンナリする。

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2025年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

要約
主人公・長井朝陽は、ゲームセンターで働きながら執筆活動をしている若い女性。ペンネーム「早見有日」として応募した小説が文学賞を受賞し、出版されることとなる。これにより、彼女の兼業作家としての生活が職場や周囲に知られることとなり、日常が少しずつ変化していく。

職場での人間関係や友人との関わりが微妙に変わり、朝陽自身も自分のアイデンティティや創作活動に対する葛藤を抱えるようになる。さらに、執筆中の小説と現実の境界が曖昧になり、彼女の心の中でさまざまな感情が交錯する。

感想:
フィクションの小説を書いた時、そこに出てくる意見が著者の意見であるとは言えない。ただその考えが浮かばなければ書くことができない、それなら書かれた意見は本当に自分の意見ではないと言えるのか??
もし知っている人に自分が書いた作品を読んでもらって、自分の体験をもとに書いていると思われてしまったらどうしよう。と考える登場人物の心情が面白い。
確かに、今まで小説を読む時に作家さんの作風から
こういう家庭環境の人だったのかな、とか考えてしまうことはあるな〜と思いながら読んでいた
あと主人公が雑誌の取材を受ける時、ただ普通に話をしても面白くなく、雑誌にしてもらうには申し訳ないからと言って初めは話を盛るつもりで大袈裟に言ったことを、徐々に嘘も交えて話してしまう場面も人としてよくわかるかも。嘘とまでいうとそこまで罪悪感があってやっているわけではないけど、友達と話している時にちょっと話を盛りすぎたかなと後から思うことってある。自分自身のことをつまらない人間だなって思ってるから、自分に自信がないからこそ、自分のことを聞かれた時にちょっとオーバーに話してしまうのってよくわかる。でも主人公の場合はその場限りではなく、ちゃんと文章にして雑誌として残ってしまう。だからどんどん辻褄が合わなくなって嘘がバレてしまうのではないかと冷や冷やする。それなのにその嘘を見た周りの人も、勝手に勘違いしてその嘘を間に受けて反省したりしている。笑

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2025年09月22日

Posted by ブクログ

期待されるっこわいな。
みんなに好かれるように対応しないと、面白い話をしないと。
みんな離れていきそうで・・・
みたいな感じ。凄く自分の事を客観視する人だな。私もしてしまう。
ただ周りが予想以上に興奮してて、嫌だな。有名人ってみんなそうなんだろうな。
生きにくいな。

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

作者の方の他の本が好きだったのでトライしてみたけど面白く感じなくて途中で断念した。好きな人は好きそう。

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2025年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ゲームセンターで働きながら小説を書き続けて、新人賞をとった朝陽。

あっという間に職場に新人賞をとったことが広まり、今までと少しずつ違っていく日常。

仕事をしながら、朝陽である自分と小説家である有日と
次第にどちらが本当の自分なのか、わからなくなってくるまで。

雑誌のインタビューに答える、有日だったらこう答えるだろうと考えて話す朝陽。
現実と虚構の区別がつかなくなってくるまで。

どういうわけかあまりよくない未来が待っているのが見えるため読むのがつらくて、時間をかけてしまった。。。

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2025年08月04日

Posted by ブクログ

マトリョーシカ的小説。無粋だけど高瀬さんもそういう経験があったのかな?とか思ったり。
登場人物の描写があまりにリアルで上手いな~~と思う。主人公の周り伺っちゃって空回りしちゃってるのもイライラするけど自分にもそういう所あるからこそだな~と、余りにリアルだから感じちゃった。
小説家のコラムとかそんなに見てこなかったけど逆にこれ読んで小説家の人間性とか気になってきちゃったね。

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2025年05月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

難しいね
自意識過剰でサービス精神旺盛
相手を楽しませようとしてるけど、何のため?自分を切り売りするの?私は何?だれ?
でもやりたいことは書きたいことっていうラストが良かった
途中、何が本当なのか分からなくなる感覚が面白い

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2025年03月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小説家デビューしたばかりの主人公を描いた「うるさいこの音の全部」と、その主人公が芥川賞を受賞したその後を描いた「明日、ここは静か」の2作が入っている本。

高瀬さんの本大好き。
好きなポイントは、登場人物の心の機微が、本当に細かいところまで描かれているところ。
特に、ネガティブな感情とか、嫌なやつに対してそれが発揮されている気がする。
たとえば主人公がうじうじ余計なことまで考えすぎてしまうところとか、友達が約束に絶対遅刻してくるところとか、主人公がインタビューで嘘つきまくってもう戻れないところまできちゃってるところとか。
ひとつひとつのシーンはそこまでダメージ大きくないけど、小さな小さなトゲの積み重ねで気づいたら血だらけでした、みたいな感覚。読み終わったころにはグサグサですわ。

あとは、この小説では主人公が小説家としての自分と、本当の自分の境目が次第にぼやけてくるのだが、そのグチャグチャ感と、本人の混乱が垣間見えるけど誰も待ってくれなくて突き進むしかない感がとてもよかった。
というかそもそも、この主人公けっこう自分と他人の境界が曖昧になってしまうタイプなのではと思った。超生きづらそう。

そして個人的には小説家やアーティストなど有名人のプライベートにあまり興味を持てず、アウトプットだけあれば十分というタイプなので、インタビューを面白くしなければ…とか、不毛な悩みだなぁと思ってしまった。
(全然関係ないけど、アーティストがライブで語り出すのとかよくあるけど、あれみんなどのくらい真面目に聞いてるんだろうか?その自分語りの時間であと1曲歌えたよね?とか思ってしまう。)

とにかく物語後半にかけてのいたたまれなさがすごかったので、人がいたたまれなくなってるところを読みたいという性格にやや難ありの人には特にオススメ。

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2025年03月08日

Posted by ブクログ

心が踊るような読書ではなかったけど、作家と作品の関係性について考えさせられて面白かった!!やっぱ読者はどうしても作品自体が作者の思考だって思いがちだけど、勿論そういう部分はあると思うけど全部が全部そうだって決めつけて考えるのは辞めた方がいいな。海外で太宰治とか村上春樹が女性軽視した思考を持ってるって非難されてるのも、作品の中の思考や言動が実際に作者が思っていることややりたいことだって信じちゃってるからだろうな。この本が高瀬さんの実体験かどうかは分からないけど、作家ならではの苦悩をよく表していて、同じ人間なんだなって親近感が湧いた。もっと好きになった。

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2025年02月28日

Posted by ブクログ

嫌さ、意地悪さの表現が見事。
不快な人間の言動を描くのがうますぎる。
「明日、ここは静か」のラストは、意地悪というよりは批判的、風刺的で、高瀬作品の意地悪さが好きな自分としては若干アテが外れたかな?という印象も。

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2024年12月21日

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