中国SFベストセラー"三体"シリーズの前日譚という位置づけの本作。
完全に三体とリンクしておらず、本作の登場人物が三体にも登場する。
もともと2000年に本作が長編として執筆されたあとに三体が書かれたという。
世界各地で目撃される球電現象。
陳は幼い頃、この球電現象によって両親を亡くして
...続きを読むいる。
同じく球電で妻を亡くした張教授は、陳の球電の研究に反対しつつも支援していた。
球電の研究に目をつけた新兵器開発に携わる女性将官、林は陳と共に球電について解き明かしていく。
多くの犠牲を払いながらも、実験により球電の生成、さらにはマクロ電子の捕獲に成功。
さらには球電の兵器化にこぎつけた林だったが、初の実戦での敵の思わぬ防御装置と、敵の新兵器により球電兵器構想は崩れ去る。
目に見えない世界を量子世界と位置づける本作、絶対にありえない現象は量子世界の干渉とする。
それは死生観にもつながっている。
本作では、すべての物質は空間のひずみにより生じているとしている。
量子雲の観測者としての人間は、老いるにつれてその観測力が弱まり、死んで無くなるという。
つまりは、人が死んで量子的観測で死んだ状態が確定されるが、観測されなければ死んでいる状態と生きている状態が量子雲の中に存在している。
それは、目には見えないものだが量子世界では存在している、としている。
球電現象という未解明の現象から、量子世界へと広がるストーリー展開の妙がある。
この前日譚から、どうやって三体艦隊へのテクノロジーの飛躍があったかを埋める物語を読みたい。