光吉さくらのレビュー一覧
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『超新星紀元』(2003年)は『三体』(2008年出版/日本語訳2019年)で有名な劉慈欣(リウ・ツーシン)の長篇デビュー作。『三体』のファンといえばバラク・オバマ元大統領が有名です。3部の発売が待ちきれず、ホワイトハウスからメールを著者に送ってみたらスパムメールだと思われてゴミ箱に入れられていた、という話が大好きなのですが、他にも読書好きの池上彰が「文化大革命で何が起こったかは『三体』を読むと良い」と『三体』を著作の中で取り上げていたりなど……『三体』についてネットで検索すれば有名人、一般人が書いた感想や、エピソードを沢山拾うことができて楽しいです。長く多くの人の印象に残っている本だなぁと思います。
劉慈欣は短編も多く書いています。私が読んだことがある短編は『地火』(2000年)、『神様の介護係』(2005年)、『月の光』(2009年)、『円』(2014年)……おっと……4つだけだな……全然読んでないな……
まぁ、全然数を読んではいないんですけどぉ!!!(やけっぱち)
劉慈欣を一番最初に読む一冊としてはやっぱり『三体』を推したいです。『三体』は三部作で大長編ですが、読み終わったらこんな壮大な話を三冊でバシッとキメてしまうなんて!と手腕に驚くこと請け合いなので。『三体』の次に短編をいくつか読んで、それから『超新星紀元』を読むのが良い塩梅ではないかな、と思います。特に短編『地火』は『超新星紀元』に通ずる「継承」や「歴史」といった人生観が作品全体に滲んでいてかなりおすすめです。『三体』を読んだ後にね!(しつこい。)
『地火』を読むなら橋本輝幸・編 ハヤワカ文庫SF 『2000年代海外SF傑作選』が良いです。劉慈欣以外のSF作家の作品も全部面白くて雰囲気良くまとまっているアンソロジーで……
『超新星紀元』の感想文で『三体』と『2000年代海外SF傑作選』をおすすめして終わっていいはずない。まずは『超新星紀元』のあらすじから。
1999年末、超新星爆発によって発生した宇宙線が地球に降り注ぎ、全人類の染色体が破壊される。調査の結果、13歳以下の子どもは自己修復が可能だが、14歳以上の人間は全員死亡することが判明する。全ての大人がこの世から消えてしまうまで残された期間は1年。限られた時間で大人たちは子供に医療や発電等のインフラ、教育や軍事など国の運営に必要な技術を託そうとするが──というお話。
優秀な子供を選別するためにゲームを行うシーンは展開が軽快で面白く、大人たちが今わの際まで自分たちの知識と技術を子供たちに指導し、何とか彼らを新世界に押し出してやろうとするシーンはかなり切なかったです。読んでるときには「あぁ、これは子供たちが十五少年漂流記みたいに試行錯誤して問題を乗り越えていく話になるんだろうな」と思っていました。そしたら痛い目に合いました。これはサバイバルのみならず、「国の運営」も子供が行うお話なんですよね。私が好きな登場人物はアメリカ合衆国の子ども大統領のハーマン・デイヴィーと同国務長官のチェスター・ヴォーンなんですが、彼らを中心にして、あれよ、あれよと世界大戦が勃発する話へと転がっていきます。どうしてだ子供たち!日本国子ども首相の大西文雄も良いキャラしてましたね。(やっぱり戦争する気まんまんでしたけど。)
子どもたちの大半は自我の境界がまだまだ未熟なため、群れであることに疑問を抱きません。一丸となった中国、一丸となったアメリカ、一丸となった日本……「国」そのものみたいになった子どもの争いの凄惨なことといったら。大人に強制されているわけでもないので無邪気に戦争ゲームに興じていく様はあっけらかんとしていて、より不気味でした。劉慈欣は爆発や破壊のシーンを書くのが非常に巧みですので戦争なんて書いたら臨場感たっぷりです。
戦争のシーンは中盤の山場です。戦争が終結してからもう一つ、意外な山場が設けられています。その先で子どもたちは自分たちがいかに無自覚に「国民」であったかに気がつきます。そうして物語は終焉を迎えます。新たな「始まり」も感じさせるエンディングでした。
「子どもだけの世界」は古典作品でも書かれてきたけれど、こんな話になるとは思わなかったです。ぶっ飛んだ設定から、読者をぐいぐい引っ張っていく劉慈欣ならではの外連味。二転三転しているように思わせて最初から最後までテーマがブレない構成の強さもすごい。
こんなところに運ばれてしまう予定は無かったけれどレールからは一切外れなかった、みたいな読後感があるのが劉慈欣の作品の特徴だと思います。『三体』も今まで読んできた短編もそうでした。特にこの『超新星紀元』は突飛な発想の数々が強烈です。私は好きでしたがぶっとんだ奇想具合は人を選びそう。 -
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ネタバレ本作を読み終えて感じたのは、圧倒的なスケールの中で、どれだけ合理的に行動しても最終的に待っているのは終わりである、という事実だった。文明は生き延びるために合理的に振る舞い続けるが、それはあくまで延命に過ぎず、結末そのものを変えることはできない。どれだけ強く残酷に生き延びようと最終的には宇宙の終焉が待ち受けている。その点にどこか虚しさを感じた。
それでもなお、物語の中では合理性だけでは割り切れない選択が存在していた。程心は小宇宙に留まるという選択が合理的であると理解しつつも、大宇宙に回帰する選択をえらんだ。もはやそこには人類としての生存責任とは別の価値が確かに存在していることが示されていたように思う。
宇宙は極めて冷徹であり、上位の文明はもはや善悪や優しさといった基準では測れない存在として描かれていたが、その中で人間(程心)は合理に従うのではなく、関係や責任といった非合理なものを手放さない余地を持っていた。
最終的に感じたのは、全てが終わりに向かう中で、それをどう受け入れるかという態度こそが問われているのではないかということである。合理的に生き延びることと、納得できる形で終わりに向き合うことは必ずしも一致せず、その間で揺れること自体に人間らしさがあるのだと感じた。
個人的に一番刺さったのは、小宇宙内で超膜メッセージを眺めるなかで智子が三体と地球を叫び、三人で涙するシーン。ちゃんと人類も三体も生き残る事ができたのだと分かり、以前は敵対していた2つの文明はここでようやく真の共通の喜びを得たと思った。傑作であることに間違いはない作品。 -
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この話に出てくるサンダーボール(雷球)は、滅多に見ることができない自然現象みたいだが、驚いたことに、昔、叔父が四国の山奥で出会ったらしい。
四国の山では、もののけや動物に憑かれた人たちを含めて、いろんな超常現象が起きるんだなとつくづく感心。
叔父の話では、真っ赤な球が空中に浮かんでいて、それがどんどん膨らんで突然大きな破裂音とともに爆発!そのあたり周辺の電子機器が故障したとのこと。
SFのお話が、身近に起こったことを聞いて興奮した。
小説のラストでは、物理的視点で人生のロマンを表現していて、素敵だった。
難しい理論をロマンに昇華させる筆力が素晴らしくて、もういなくなった人や物がまだ別次元で存在しているように思えて、心があたたかくなるお話だった。 -
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三体シリーズの集大成。三体I, IIではSFに馴染みのない人でも楽しめるようなエンターテイメント性が高い作品である一方で、本作三体IIIはまさにSF好きに捧げる1冊といった仕上がり。正直後半は何言ってるか全然分からなかったが、雰囲気は抜群。(好みが分かれそうな部分でもある。)
これまで以上に壮大なスケールで、「人間とは」 「文明とは」 「宇宙における存在の意味」が描かれる作品でした。
累計で3,000ページを超える壮大な1つの物語が完結してしまい、三体ロスを感じる...。(前日譚となる三体0、有志が本編で語られなかった細部を補完した三体Xもあるが、悩み中...。三体ロスは三体ロスで良いような気もする。)
ナウシカの「庭」のような場面もあり、自分はこういう世界観が好きなんだなと改めて確認したりなどした。 -
Posted by ブクログ
劉慈欣のファンとして、読まない手は無く
楽しみに取っておいたが、ついに積読消化
本作ももちろん、私を圧倒的な世界に没入させてくれました
期待値が高いにも関わらず面白いのは、何故だろう?
それは
「球状閃電」の謎を徐々に解き明かしていく、ミステリーの部分があるからだと気づきました
三体シリーズ然り、現実でも起こり得そうな不可解な現象のベールが徐々に明かされる構成により、最後のページまでノンストップで読んでしまうのだと思います
こんな、量子の解釈の仕方もあるのか、、、読み終えるまでに何度圧巻したか数えきれません
堂々の星5
スピンオフなので、どのタイミングで読んでも構いません
また、あとがきを読むと「三体シリーズ」の解釈が深まります
おすすめします! -
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信一の話、ということで読み始めた本書。
信一を主軸に置きながらも、龍捲風やTiger兄貴などなどたくさんの人との関わり合いで、多種多様な関係性や心の動きを感じられるようになっています。
1作目、2作目、そして外伝、作者の癖がどんどんと抜けて読みやすく、感情の置き所が分かりやすくなっていたかなぁ、、と思いました。
私は十二少が好きなので、早く出てこないかな〜とワクワクしながら読み進めました。
もちろん出てきましたよ!!
350回くらいページを捲ったら!
なげーーーーーー!十二少までがなげーーーー!
でも、楽しみな人物が登場するまでも中弛み無く読めました。黒社会!戦い!友情!義理!人情!ココナッツ!最高!!
信一伝を読み終える頃には、
大好きな人たちに囲まれて、
愛情の込められた料理を食べ、
何気ない会話に笑ったり怒ったり拗ねたりした思い出を、ココナッツジュースで心の奥まで流し込みたい、そんな気持ちになります。
でもさぁ!!!
いくら愛情を注がれた思い出があったって、やっぱりそばに居て同じ布団を膝にかけて過ごす、そんな日々が続いていく方が嬉しいよ、、
思い出だけじゃ涙を拭う手にはならないよ、、、兄貴ィィィィィ!!! -
Posted by ブクログ
哎呀!!好好玩!!
こちらの本、今年の2月に映画館で見て面白くってぇ。原作の日本語訳に大喜びで手を出した次第。映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦」の原作本です。
あとがきで作者の余兒(ユー・イー)さんが書いていたのですが、映画を見た熱心な日本人ファンの方は日本語訳の本が出る前から原書を翻訳機を使って熱心に読んでらした方が多くいたとか。すごい熱量のファンの方たちだぁ。
この映画、登場人物が多く、揃いも揃ってキャラが濃く、映画を見た人によってハマるキャラが違うんですよね。私はルイス・クーの演じた龍捲風(ロンギュンフォン)にずっと痺れていました!九龍城砦を統括する人徳溢れた龍兄貴!
ただ、本を読みだすと、初っ端から映画と全く違うので困惑。
手に取る前から、原作は映画と全然違うという噂は聞いてたんだけれど、設定のみならず、キャラも映画と原作じゃ全然違ってて本当にびっくりしました。映画の信一(ソンヤッ)も器用なタイプではあったけどそんな喋るタイプじゃなかったよね?とか、四仔(セイジャイ)の医者設定が原作には無いんだー……とか、飯屋の店主の阿七(アチャッ)がさー……とか。多分、この調子でやってると百物語どころか千夜一夜物語になりそうなので、この辺でやめます。原作から映画にするにあたり、ありとあらゆることが組み替えられていました。
主人公の陳洛軍(チャン・ロッグワン)も映画にあった「陰」が原作には無い!
映画に出てこない原作キャラが何人かいて、そうしたキャラと主人公のロマンス要素がガッツリあるから「誰よ。その女。」状態でした。
読んだ人の中にはあまりにも映画と違っていることがかなりショックだった方もいたみたいですね。私が映画で好きだった龍兄貴は一番映画と原作でキャラの差が無かったように思います。映画の王九(ウォンガウ)ファンの方は大丈夫だったのかなぁ……(別人みたいでしたね?)
私の一番思い入れのあった龍兄貴のキャラ造形が原作と映画で一番差が無かった、というのもデカかったのかもしれないのですが、私は原作をすごく面白く読みました。映画は惜しみないアクションが連続する派手な映画だと思っていたけれど、原作は人間が演じないので、限界が無く、もっと飛び抜けるようなアクションが連続していました。作者の余兒さんは日本の少年漫画が好きだそうです。スラムダンク、ドラゴンボール、ワンピース、明日のジョー、ジョジョといった要素が中国任侠スタイルにいっぱい詰め込んでありました。「読んでいる間ずっとハイテンションで味の濃いものを食わせてもらえる。わんこそばスタイルで。」という感じです。これ、全然個人的な感覚で書いているんですけど、原書は中国語だから紙面は全部漢字なんですよね?わぁ。目に迫る。きっとすごい強い漢字が列挙してあるに違いないなぁ……。
初っ端からずっと「ケレン味しかないのか」という書き方をしていて恐縮です。でも、「そうはならんやろ」な展開が満載でありながら、登場人物たちの会話は軽快で活き活きしてて、九龍城砦の賑やかな感じはちゃんと伝わってくるんですよね。
私、歴史は全然ダメな人間だけど、この本も、その映画も、ストーリーを楽しんでいたら自然と「時代感」を感じることができて、言うほど軽くない読後感がありました。
これも作者のあとがきに書いてあったのですが、この本を映画化するとしたら、九龍城砦のリアルな再現ができないなら実写化しないつもりだったらしくて。
人が拳で数メートル飛ぶようなストーリーだけれど、背景と時代感のリアリティに対してちゃんと力を注いでいるから、ぶっ飛んだ拳法の使い手でもちゃんと「生活感」をまとっている。
本から実写に移行するに至って、本の登場人物たちをもう少し規格内の「人間」に収めないと、この「実在感」を消しちゃうから……ということであれば、この大改造も納得できるような気がします。
こんな人間離れした黒社会があってたまるか!というストーリーですが、1980年代、香港に確かに「九龍城砦」というものがあって、そこで沢山の人々が生活していた、という今は無い時代を感じることができる作品でした。
九龍城砦Ⅰは九龍城砦が撤去される目前の話になっていますがⅡは過去編になり、より九龍城砦の歴史を書き込んだ作品になっているそうです。次の巻も読まなくちゃ。
手触りのある文化を作品に落とし込めるのはそれぞれの文化圏に属した人が書くからこそですね。
これからもお互いの文化に敬意を払い、尊重し合い、交流し続けられる社会であることを心から望みます。原作を読んで、これは日本に暮らしている人間には書くことは難しい物語だと改めて感じました。
ああ!!おもしろかった!! -
Posted by ブクログ
中華SFの傑作である三体の前日章のSF小説。
三体と同一世界線の話であり、三体に登場した人物も1人登場するが、基本的には三体の話とは関係がない、雷の球のような現象についての小説。
(あとがきに記載されていたことだが、中国版の三体ではこの雷球のことが元々書かれていたそうで、翻訳の際に書き換えられたそう。なので、前日章というのは間違いではないらしい)
現実には存在しない科学技術も登場するが、科学的な理由付けも素人にはかなりそれっぽく思えるほど話が練られているので、非現実感はそれほど無く没入感を得られる。
もちろん、そんなもんあるかいというような物も出てくるのてSF感は感じられる。
科学や技術を突き詰めていくと突き当たる、兵器への転用ということについて、科学者から見た景色がリアルに書かれており、その知への欲求と殺人への加担の葛藤が興味深い。
三体が好きな人はもれなく好きな小説だと思うので、是非とも読んで見てほしい