シリーズ三作目。
地元密着型の葬祭場・坂東会館で二年目の繁忙期を迎える清水美空。
今回は社長の甥だという小暮千波が新たな社員として加わる。彼は元々大手葬儀会社に勤めていたらしく、何かと坂東会館の改革や増益について口にする。
遺族に寄り添い、余計な費用など加えたくない美空たちと、オプションを何かしら付けるように求める小暮との間で溝が生まれていく。
今回も高齢者の孤独死や、旅先での事故による死、火事による祖母と幼い孫の死、シングルマザーの死など、様々な死とその葬儀の模様が描かれる。
こういうお仕事をされていると、様々な人たちの人生に触れることになり、気遣いは大変なものだろうなと改めて思う。
結婚式とはまた違い、葬儀だからこそ見える人間関係や家族関係もあるだろうし、当然お金の問題もある。
特に最後の、残された若い兄妹が喪主として行う葬儀は痛々しく、漆原と美空と里見が担当で良かったと思った。
小暮は大手葬儀会社で勤めていたそうだが、彼の理想は亡くなられた方を本当に悼む人のみで行う家族葬や少人数の葬儀のようだ。
だが一方で葬儀には何かしらのオプションを付けたりして単価を上げて欲しいようだし、坂東会館の葬儀場を新たに新設しようと考えているようでもあり、社員ではなく経営者視点で坂東会館を変えようとしているのが見えてきて、美空たち社員をざわつかせている。
一番神経質になっているのは若い椎名で、何かと坂東会館御用達の居酒屋『都鳥』でクダを巻いているらしい。
最近は葬儀をするのも一苦労で、私が住んでいる地方でもなかなか火葬場の順番が取れないとか、葬儀場が開いてなくて何日か待たされるとかいう話も聞く。
だがこの物語では、坂東会館の経営という点ではまだまだ厳しく大手と闘うには強みや個性が無ければという小暮の想いも見えてくる。
一方で、漆原の葬儀は『きれいすぎる』らしく、そこを美空は理想として目指そうとしているようだが、完璧すぎて画一的になっているという小暮の評価は当たっているのかどうか。
最終的には小暮がどう坂東会館の面々と折り合いをつけるのか、逆に考えづらいが坂東会館の方が変わってしまうのかと考えながら読み進めたが、意外とアッサリ決着が付いた印象だった。
だが小暮の時に見せる別の顔らしきものの正体が最後に分かって納得も出来た。彼にも彼なりの葛藤があり、今日があるのだなと思えた。
美空と漆原の関係性については、個人的にはあまり色恋沙汰を持ち込んで欲しくないなと思ってしまうのだが、シリーズの盛り上がりとしては仕方ないことだろうか。
椎名の結婚話は清々しくお祝い出来たのだが、美空と漆原は何故かそういう気になれない。
これも『きれいすぎる』からだろうか。
それよりも僧侶の里見と漆原の友情関係の方が楽しく見守れる。