あらすじ
喪失の苦しみを優しくほどく、お葬式小説。
人よりも“気”に敏感な体質を持つ清水美空が、スカイツリー近くの葬儀場・坂東会館で働き始めて一年が経とうとしていた。若者や不慮の死を遂げた方など、誰もが避けたがる「訳あり」葬儀を好んで引き受ける葬祭ディレクター・漆原のもと、厳しい指導を受けながら、故人と遺族が最良の形でお別れできるよう、奮闘する日々を過ごしている。
葬儀場が繁忙期を迎える真冬のある日、美空は、高校の友人・夏海と偶然再会する。はしゃぎながら近況報告をし合う二人だったが、美空が葬儀場で働いていることを聞いた夏海は一転、強張った表情で美空に問う……「遺体がなくても、お葬式ってできるの?」。夏海の兄は、海に出たまま五年以上も行方不明だった。家族の時間も止まってしまっているという。
交通事故に遭った高校生、自殺した高齢女性、妻と幼い息子二人を遺し病死した男性、電車に飛び込んだ社会人一年目の女性……それぞれの「お別れ」に涙が止まらない、あたたかなお葬式小説。
※この作品は単行本版『ほどなく、お別れです それぞれの灯火』として配信されていた作品の文庫本版です。
感情タグBEST3
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霊感体質である美空の、葬祭ディレクターへの成長も見られる作品だった。
今回も亡くなった理由が特殊である葬儀を、担当する漆原さんと美空の気持ちに感動した。
「葬儀とは区切りの儀式」と言う漆原さん。
亡くなった人と残された人の心に寄り添う二人の優しさが印象的だった。
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ほどなく、お別れですの続編
前巻も素敵な話だったんだけど、こちらも同様、よい…
それぞれの灯火ってサブタイトルの通り、
故人、遺族がこれから前向きに生活が送れるように
美空が奮闘するストーリーが盛りだくさんだった
読んでいるこっちも前向きになるなあ
事故や自殺、病死…いろんな亡くなり方があるけど、
故人それぞれの思いがあって、
亡くなってからでは思いは聞けないけど、
その気持ちを汲み取る美空が本当に素敵
それを言葉にするのは本当に難しいから、
私も死を間近にする人と関わる時には
たくさん会話して気持ちを理解して、
それを家族に伝えられるように努力したいなあ
Posted by ブクログ
職場の人に貸していただいた本です。
ただただ感動でした。
3冊に分かれていますがすぐ読めます!
死を選ぶ人また取り残された人(家族や友人)、老衰死や自殺など死にも様々な死がありますがそれについても考えさせられる本でした。
一度きりの人生悔いのないように家族や友人と関わりたいなと感じました。
死だけについて考えさせられるのではなく、葬儀屋という仕事の偉大さを感じた本でした。
Posted by ブクログ
葬儀屋には、さまざまなご遺体となった人・遺族に出会う。その中で家族と亡くなった人との間で何が起こっていたのかは知らない。今回各4話では、そういった『家族のかたち』が垣間見れた気がした。
その『家族のかたち』。
特に印象に残ったのは第2話の義理の息子・孫と妻の母・大垣さん。
妻を亡くし妻の母と過ごすことになってしまい、それを避けるように過ごしていた義理の息子・孫たち。
大垣さんは最期まで孤独で苦しかったんだろうな…『家族』って同じ血が流れていなくても、『家族』として見れない、『赤の他人』なんだなと苦い気持ちになってしまった。
この話以外の他3話でも、『家族のかたち』『家族の在り方』が描かれてて、どれも現代社会における一つの課題感をテーマに沿っていたのかなと思えた。
人は一人では生きていけない。誰かが一人でもその人に寄り添うことで保たれる心。人は脆いですから…。
まるで自分ごとのように物語に浸ってしまい、電車の中では必死になって涙をこらえていました(笑)
次回作も楽しみに拝読します。
Posted by ブクログ
どんな人でも一人ずつ違った人生があるように、亡くなった人の生きていた時の思いが伝わってくる。本当は家に帰って家族と過ごすはずだったけど叶わなかった無念な気持ちも、残された妻や幼い子供たちの気持ちも切なくて、気丈に振る舞うけど本当は今にも崩れてしまいそうな心にそっと寄り添うような、美空、漆原さん、里見さん達にこっちも救われた気持ちにさせられた。
頑張り屋がゆえに焦って疲れ切ってしまったけど、誇りを持って仕事をしていたというエピソードだったり、6年間帰ってこない人を待ち続けるけどやっと区切りをつけられたというエピソードだったり、読んでて泣いてしまいそうになるけど暗いばかりではないと感じた。
美空と漆原さんの関係性も気になる。
Posted by ブクログ
持ってきた本2冊が読めなくて急遽購入したでもまあ読みたかったので。ほどなくの単語が日本語が素敵すぎる、いろんな想いを言葉にする感覚、1話完結でも夏美の話を盛り込んだり幅が広がってていいのなぁ、亡くなった死者が憶いをもっと伝えるかと思いきや、実に現実的なコーディネーターお仕事物語だって、顔を隠した棺にたくさんの写真を置いた所があり泣いてしまう。あっ大垣さんの義理の息子の山本には腹が立ついい加減にしろよ自殺させたんだぞ悔い改めろよ何を4階の座敷でちんまり形式だけのダメ親子で 何してんだよ、故人が報われない
Posted by ブクログ
終末期病棟で働く看護師の心境というか
患者さんとの向き合い方が
仕事で忙しくて忘れかけてたことを
思い出させてくれた。
今回も苦しくなるお別れがあって
全てに完全な正解はないし
どれもが正解の形になるんだと思った。
“残された人の区切りになって
明日に進む為の儀式”
ってのが心に響いたし
立場は違うけど看護師として
終末期に寄り添えるようになりたい。
Posted by ブクログ
Audibleでシリーズものは連続再生される
…ので続けて聴いた第2巻
今回は霊感の部分は少なく、死者や遺族の心情をいっぱい想像して寄り添う姿がよかった
若い人の不慮の事故や病死も痛ましいが、身につまされたのは90歳の自死。
頼れる者がいなくなった最後、迷惑をかけられないという思いで自死を選ぶ気持ちは如何ばかりかと想像して自分の最後を考えてしまった
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泣いたー。身近な人が亡くなる時、自分は前を向けるのだろうかと思ってしまう。年老いた両親達ならまだ、覚悟はできても。夫、友人、妹など一緒に年老いるはずだった人が居なくなった時、私は前を向けるのかな。向けるようになりたい。そんな風に思えるお話でした。
Posted by ブクログ
一気読み
死を扱う物語、それも不慮の事故や自殺で亡くなった方の話であるため、事故の場面や遺体の状況の描写もある。
その壮絶さや悲惨さをある程度伝えながらも、過度な恐怖感が与えられないギリギリの表現であるところに、作者の優しさを感じる。
その優しさは、故人や遺族の想いを受け止める漆原や美空、里見らのキャラクターにも繋がっていると感じた。
今回、私が一番涙したのは、美空が自宅で司会の練習をする場面。
仏壇の前で、祖母や姉に見守ってもらいながらの練習。
おばあちゃんもお姉ちゃんも、さぞかし誇らしいだろうと想像できて、目元がじんわりとした。
Posted by ブクログ
シリーズ第2作。前作は葬祭ディレクターの業務内容や心情などがとてもよく伝わる良作だった。今回も読後にほんのりと爽やかな心地になる良い作品に仕上がっている。
どのエピソードも悲しく温かいエピソードばかりだったが、インパクトがあったのは交通事故で子供を亡くした母親の話だ。当初は愛する我が子を失った悲しみに暮れるばかりだった母親が、加害者の両親と会った瞬間に鬼の形相に変わる様は悲しみを軽減するための自己防衛本能かもしれないが、恨みの感情が発生するプロセスを目の当たりにしたようで怖かった。
どんな人間にも死は訪れる。その別れとどう向き合うのか、それを手助けする葬祭ディレクターの言動は心に響く。是非ともシリーズを続けてほしい作品だ。
Posted by ブクログ
映画化されていたので気になって読んでみた
人の死に近い職業をしている自分も、改めて、1人1人に真摯に向き合わなきゃ、向き合うべきだと思わされる内容だった
Posted by ブクログ
坂東会館シリーズ二作目。
薄口ソースことウスターソースが
この世に存在する意味が分からない程度の濃い味好きとしては、
このシリーズはやはり薄口過ぎる。
高校生の一人息子の事故死、
同居していた九十歳の祖母の自殺、
自殺か事故かわからない若い女性の電車事故、
さらに、美空の高校時代の友人の兄の遺体が戻らない死。
そのどれよりも、美空が初めてお葬式で司会をすることの方が、
重大なことに思えてくるのが不思議だ。
Posted by ブクログ
ほどなく、お別れです
第二弾
美空の成長とともに、人の死に向き合うことの大切さをひしひしと感じた。
愛する人の死は、そう簡単には受け入れられない。
それと同時にたくさんの後悔がうまれ、悲しみとなり、そして月日が経つと落ち着いてくる。
果たして、これは受け入れていると言えるのか?
死を受け入れる、というのは、どれだけその人のことを感じて、思い、悲しみ、感謝やその人の人柄を改めて知る、そしてなるべく悔いのないように送り出す。
そういうことなのかなーと思った。
坂東会館の人たちのように、家族のケアの中にしっかりと故人を心にすっと残せるような葬儀屋さんって素敵な仕事だと思う。
さぁ第三弾もよみます!
Posted by ブクログ
3冊のシリーズものうち2冊目。3冊のうち2冊をまとめ買いしてたので、1冊目の流れでそのまま読みました。1冊目の感想で書きましたが本作を買った動機はめちゃくちゃ軽い動機笑。でもほんといい本に出会えたー!短編集っぽい仕立てで、今回は4つのエピソード。毎エピソードで涙腺崩壊。しかもその涙腺崩壊ポイントが一つのエピソードで何度もやってくる。通勤電車の中で涙と鼻を堪えるのに必死でした。今回もやっぱりとり方によっては“むごい"“キツイ”シーンはあるのですが、そのむごさがあるから逆に涙腺崩壊になりやすいのか。。とにかく不思議なくらいそれほど怖さを感じない、怖さより先に感動がやってくる。しかもささやかで爽やかな感動が。
3冊目はちょっと置いてから買うことにしよ、涙腺がもたないし笑。3冊目は美空の社会人としての成長も楽しみです。この作品はなんか親、かみさん、娘たち、家族にも読んでもらいたいなぁ。
Posted by ブクログ
各話の話と友人の兄の話がとても巧みに語られているのが凄かったです。自然に伝わって来ました。不謹慎ですが、次にどんな葬儀があって、どんな弔い方を2人がするのかなと期待してしまいます。
Posted by ブクログ
今作もしっかり泣いた〜
前作よりもプライベートの場面も多くなっていて
また違った面白さがあった
葬儀をしてもしなくても
故人との別れはそれぞれの心の中で
区切りをつけることができる
漆原さんのふいに見せる優しさが素敵!
Posted by ブクログ
ほどなくお別れの続編
様々な人の最後と、残された人達の寂しさ、思いがあって、そこからどう前に進んでいくかを優しく温かく教えてくれる。
自宅で読む事をお勧めしたい。電車でポロポロ涙を流す怪しい人になってしまいました、、
葬儀をお願いすることになった際、坂東会館のような葬儀場にお願いしたいです。
「ほどなく、お別れです」(星5つ)を読み終わると共に、直ぐに「ほどなく、お別れです それぞれの灯火」「ほどなく、お別れです 思い出の箱」を購入しました。
葬祭場でアルバイトをする大学生がそのまま葬祭場の社員になり、先輩と関係する僧侶に支えられ、一つ一つの葬儀に関係することで、育ってゆくのが大きな流れです。
Posted by ブクログ
あなたは、『葬儀社』にどのようなイメージをもっているでしょうか?
2024年4月時点で、国内には10,764ヶ所の”葬祭会館”があるようです。この数を多いと捉えるか少ないと捉えるかは人によって異なるかもしれませんが、ビジネスという側面で見る限り、少子高齢化の傾向が続くこの国にあっては、この業界は緩やかな成長が見込まれると位置付けられているようです。
私たちの誰もがいつかはお世話になるであろう『葬儀社』ですが、昨今の家族葬の一般化によって、そんな場所へと赴く機会は大きく減少しました。その結果、そもそも『葬儀』の意味合いを改めて感じる機会などまずないと思います。では、そんな『葬儀社』で働く人たちは『葬儀』をどのように捉えているのでしょうか?
さてここに、『葬儀は区切り』だと語る人たちが働く『葬儀社』を舞台にした物語があります。『亡くなった人を見送り、残された人がまた前へ進んでいくための区切りの儀式』と『葬儀』を日々取り行う人たちを描くこの作品。そんな『葬儀』の中で故人の思いを感じるこの作品。そしてそれは、”喪失の苦しみを優しくほどく”という『葬儀社』の”お仕事”を見る物語です。
『おはようございます』、『積もっちゃいましたねぇ』と、『スコップを持った』『葬祭部の若手職員、椎名さん』に挨拶するのは主人公の清水美空(しみず みそら)。『車道に積もらなくて助かったよ』と返す椎名に『昨夜の宿直、漆原さんでしたよね。こういうことは本来、宿直の人がやっておくんじゃないんですか』と言う美空は、『私の直属の上司であり、教育係でもある』漆原のことを思います。『およそ一年前、就職活動に行き詰まっていた私が、葬祭ディレクターを目指すという目標を持てたのは漆原のおかげだ』と思う美空は、『誰もが避けたがる、若者や不慮の死を遂げた方の葬儀を好んで引き受ける』漆原『の行う葬儀を手伝ううちに、本格的に葬儀の仕事に携わりたいと思うようにな』りました。同じように『漆原の下で仕事を学んだため、今でも頭が上がら』ず、『雪かきを押し付けられたとみえる』と椎名のことを思う美空が『事務所に入ると、件の男は共有スペースを悠々と陣取って、新聞を広げながらコーヒーをすすってい』ます。『昨夜は一件の電話も入っていないと椎名』から聞いた美空が、『夜中に一件も電話が入らないなんて、珍しいですね。さすがに仏様も漆原さんを避けたんでしょうか』と問うと『夜中には入っていないが、早朝にお迎えに行ってきた。ついさっき打ち合わせを終えたところだ』と漆原は語ります。『今回の故人は、十七歳の少年だ。名前は片桐圭太君』と説明する漆原は、『交通事故だ。喪主は父親の太一さん、式場は坂東会館の二階に決まった』と続けます。『どうでした、ご遺族の様子は』と訊く美空に『悲しみよりも、衝撃のほうが大きいのだろう。故人は昨夜、塾の帰りに事故に遭ったそうだ。病院に運ばれたものの、深夜に息を引き取っている』と言う漆原は『喪主はどこか他人事のような感じで、呆然としていた』とも話します。『いつもと同じ夜になるはずが、圭太君が帰って来ることはなかった。朝、学校へ行くのを見送ったまま、息子の姿はそこで途切れてしまった』と遺された両親のことを思う美空は、『おい』と、『声を掛けられてはっと顔を上げ』ます。『私は”気”に敏感な体質を持っている。他人の感情が伝わってきたり、その場に残った思念を感じ取ったりする』という美空は、それが『死者に残された思念も例外ではない』、そして『一般的に霊感と呼ばれる感覚を与えてくれたのは、私が生まれる直前に亡くなった姉ではないかと思ってい』ます。『漆原さん、私も圭太君にお会いしてきても構いませんか』と願い出た美空に頷く漆原は『保管庫から鍵を取り出』すと一緒に霊安室へと向かってくれました。『手を合わせたのち、棺の窓を開け』ると、そこには『高校生というよりも幼く見え』る圭太君の『穏やかな表情』が見えます。『命とはなんて、もろく儚いものかと思う』美空は、『圭太君の棺から漂う気配を』とらえます。『ただただ母親を案じていた』と『気配』を感じる美空は、『自分の死を嘆く母親を気遣っている』圭太君のことを思い、心が『締め付けられる』思いに囚われます。漆原に『どうだった』と訊かれ『自分が死んでしまったことを嘆くよりも、母親のことでいっぱいなんです』、『お母さんが大好きだから、彼女を悲しませていることを、圭太君自身も悲しんでいるんです』と返す美空に『ゆっくり考えるのは、区切りをつけてからでいいのさ。まずは、葬儀で亡くなったことをはっきりと認知する。それが重要だと俺は思う』と語る漆原。そんな漆原は『朗報がある』と切り出します。『片桐家は光照寺の檀家さんだ。僧侶は里見を呼ぶ』と言う『漆原が”朗報”と強調したのにも理由があ』りました。『里見さんは、私よりもはるかに死者の”思い”を感じ取ることができる』と思う美空。そんな美空が、漆原の下で、『葬祭ディレクター』としての一つの試練、『司会者デビューを果たすことになる』までの日々が描かれていきます。
“人よりも’気’に敏感な体質を持つ清水美空が、スカイツリー近くの葬儀場・坂東会館で働き始めて一年が経とうとしていた。若者や不慮の死を遂げた方など、誰もが避けたがる「訳あり」葬儀を好んで引き受ける葬祭ディレクター・漆原のもと、厳しい指導を受けながら、故人と遺族が最良の形でお別れできるよう、奮闘する日々を過ごしている。交通事故に遭った高校生、自殺した高齢女性、妻と幼い息子二人を遺し病死した男性、電車に飛び込んだ社会人一年目の女性…それぞれの「お別れ」に涙が止まらない、あたたかなお葬式小説”と内容紹介にうたわれるこの作品。このレビュー執筆時点で3作目まで刊行されている長月天音さんの人気シリーズの第2作となります。
そんなこのシリーズは、作者の長月天音さんのこんなご経験から誕生しました。
“私が「ほどなく、お別れです」を書いたきっかけは、三年前(二〇一六年)に主人を看取ったことでした”。
“亡くなった主人に対して、生前にこんなことを言ってあげればよかった、彼からの問いかけにこう答えればよかったという思いが強く残っていました”
そんなこの作品は二つの側面から見ていくことができると思います。一つには、『葬儀社』の舞台裏で働かれている人たちの”お仕事小説”であるという点、もう一つは、『私は”気”に敏感な体質を持っている』という主人公の天音に光を当てる”ファンタジー”の側面です。順番に見ていきましょう。
まずは、美空が働く『葬儀社』、『坂東会館』の舞台裏を見る物語です。この作品は『およそ一年前、就職活動に行き詰ま』る中、当時『アルバイトに過ぎなかった』美空が、漆原の『葬儀を手伝ううちに、本格的に葬儀の仕事に携わりたいと思うようにな』り、『葬祭ディレクターを目指すという目標』を持って『坂東会館』の社員となった今を描いていきます。では、そんな物語の舞台、『坂東会館』について記された記述を追ってみましょう。
● 『坂東会館』ってどんな『葬儀社』?
・『スカイツリーにほど近い葬儀場』
・『地上四階、地下一階建ての葬儀場』、『二階、三階の式場のほか、四階の座敷を合わせれば、同時に三件の葬儀を行うことができる』
第1作ではもう少し丁寧な説明がありましたが、2作目ではこの程度の情報のみです。一方で、本を読み終えて気づくのが『スカイツリーにほど近い葬儀社』という設定からさまざまに描写される『スカイツリー』の様子です。
・『穏やかな表情で、ただじっと桜色に染められたスカイツリーの骨組みを眺めていた』。
・『スカイツリーのイルミネーションが、いつもと違うピンク色のグラデーションだったのだ。私はその輝きをしばらく見つめていた』。
・『暗い夜の空に、まっすぐに天を衝いて聳えるスカイツリーの青白い光が見えた』。
上記に抜粋した『スカイツリー』を描写したそれぞれの場面にはドラマのワンシーンが浮かび上がります。第1作ではここまで意識に上らなかったので、この第2作が意図して『スカイツリー』を物語に落とし込んでいることがわかります。これから読まれる方には是非『スカイツリー』の描写を意識して読んでいただければと思います。ちなみに、『スカイツリー』という言葉は、”42回”登場(第1作では11回)します!
少し脱線してしまいましたが、この作品では『坂東会館』という『葬儀社』が舞台となります。いつか自分もお世話になるであろうそんな場所ですが、家族葬が急速に一般化した現代社会では思った以上に赴く機会が少なくなったと思います。しかし、小説に『葬儀社』は相性が良い部分は間違いなくあります。私が読んできた小説にもそれなりに登場します。まとめておきましょう。
● 『葬儀社』が登場する作品
・町田そのこさん「ぎょらん」:”葬儀社は年中無休、二十四時間営業”という”天幸社”を舞台に人の死を見つめる物語
・宮木あや子さん「セレモニー黒真珠」:”葬式のあの何とも言えない荘厳さと悲しさが好き”という”セレモニー黒真珠”の裏側を見る物語
・村山由佳さん「花酔ひ」:”三日やったらやめられない”という葬儀屋”セレモニー桐谷”の舞台裏をW不倫の官能世界に見る物語
いずれもインパクトある作品が並びます。人の死を物語に描く以上、それだけで作品が帯びるものもあるように思います。そして、この長月さんの作品では『不慮の死など、苦しみが伴うものが多い』という”特別な事情のある葬儀を専門”とする『フリーの葬祭ディレクター』の下で働く主人公の”お仕事”をストレートに描いていく物語です。この作品は〈プロローグ〉と〈エピローグ〉に挟まれた4つの短編が連作短編を構成しています。そのそれぞれに主人公=この作品では自動的に故人と残された家族が登場します。視点をそんな家族にもっていく方法も考えられますが、長月さんはあくまで主人公・美空の目を通してそんな家族の姿、亡くなられた方の思いを見ていきます。そこには、まさしく『葬儀社』で働く人たちの”お仕事小説”が展開するのです。
『友引の日を定休日としている火葬場が大半である。そうでもしないと、この業界で働く人は休みを取るのも難しそうだ』。
人の死はいつ訪れるかわからず『葬儀社』はいつ何時連絡が入っても対応できる体制を整えておく必要があります。一方でそんな『葬儀社』で働く人にも生活があります。一般的な会社であれば年末年始のお休みが考えられますが、『友引の日を定休日』というのは『葬儀社』ならではだと思います。しかし、外からはなかなか伺いしれないこともあります。『ご自宅、つまりこのマンションで亡くなったとしたら、ご遺体のお迎えはどのようにする?』と疑問を抱く美空への答えがこんな風に記されます。マンションによってはエレベーターにストレッチャーが乗らない場合も当然あり得ます。そんな時どうするのでしょうか?
『抱き上げるしかないのさ』、『当然だろう。体格にもよるが、ひとりではさすがに厳しい。ご遺体には硬直もあるし、変に関節などを曲げようとして傷付けるわけにはいかない。おまけに、ご遺族の目もあるしな。椎名ともやったことがある。椎名がおぶって、俺が後ろから支えた。いかにご遺体を丁寧に扱うか、それが何よりも大切なことだ』。
一瞬、ギョッとする思いに囚われますが、ここにプロの”お仕事”があるのだと思います。物語では、このように2年目に入ったばかりの美空の目を通して『葬儀社』の”お仕事小説”が描かれていくのです。
次に、”ファンタジー”の側面を見てみましょう。上記した通りこの作品の主人公・美空は、『私は”気”に敏感な体質を持っている』、『死者に残された思念も例外ではない』と語ります。同じように死者の思いに寄り添うファンタジー作品としては辻村深月さん「ツナグ」と続編の「ツナグ 想い人の心得」があまりにも有名であり涙なくしては語れない傑作中の傑作です。私は第1作目のレビューで、そんな「ツナグ」を例に出してこんなことを書いています。
“残念ながら「ツナグ」にはこれ以上続編が刊行される雰囲気がないこともあり、あの世界観をもう一度!と思われる方がいらしたとしたら、この作品をおすすめしたいと思います” (長月天音さん「ほどなく、お別れです」さてさて氏レビューから抜粋)
しかし、この第2作を読み終えて私はこの記述は少なくともこの第2作ではちょっと違う、という印象を持ちました。「ツナグ」はもちろんのこと、このシリーズ第1作では、まさしく死者の魂に寄り添う主人公、そして『私よりもはるかに死者の”思い”を感じ取ることができる』という僧侶の里見を通じて、まさしく”ファンタジー”な物語が描かれていました。死者と対話していく世界観の物語は人によっては興味ないという方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも私は、ツボにどハマりしました。それが、第2作では『私は”気”に敏感な体質を持っている』とは言え、それは常識的な範囲内と捉えることができるものであり、”ファンタジー”とまでは言い切らないギリギリの世界が保たれています。逆に言えば第1作では、”ファンタジー”の力を存分に借りる必要があった物語展開を、この第2作では、ギリギリ”ファンタジー”の一歩手前で、展開させていく長月天音さんの筆の力で魅せる物語が書かれているという言い方もできると思います。この辺り、人によってどちらを魅力的に感じるかは、ハッリキリと分かれそう、そんな感想は抱きました。私は断然第1作ですが、それによってこの第2作の魅力が落ちているとは思いません。これから読まれる方には、是非その違いを堪能いただければと思います。
そんなこの作品は、いつかは『葬祭ディレクター』になることを夢見て『坂東会館』に入社した美空の日常が描かれていきます。第1作より一編増えた四つの短編から構成されるこの作品ですが、その短編タイトルをと故人(内容紹介から抜粋)をご紹介しましょう。一方で、”→”の後は私の感涙レベルです。
・〈プロローグ〉
・〈第一話 揺蕩う心〉: “交通事故に遭った高校生”
→ しんみり
・〈第二話 遠景〉: “自殺した高齢女性”
→ しんみり
・〈第三話 海島の棲家〉: “妻と幼い息子二人を遺し病死した男性”
→ しんみり
・〈第四話 それぞれの灯火〉: “電車に飛び込んだ社会人一年目の女性”
→ 大号泣
・〈エピローグ〉→ “遺体がなくても、お葬式ってできるの?”という全編通しての物語に対する答えを見る物語
→ しんみり
もちろん人によって受ける印象は異なると思いますが、私的には第1作ほどには心が揺さぶられなかった印象はあります。恐らくは上記した、”ファンタジー”の描写の違いが影響しているように感じました。
一方でそんな物語では、『葬祭ディレクター』を目指して漆原の下で学びの日々を送る美空の姿が描かれていきます。
『突然、命の終わりを迎えた彼に、思い残すことはなかったのだろうか。そもそも、自分の死を受け止めることができているのか』
そんな思いの先に、自分が担当することになる死者に向き合っていく美空は、『命とはなんて、もろく儚いものかと思う』という思いの中に、故人一人ひとりと向き合っていきます。そんな中で美空は自分の役割をこんな風に理解しています。
『何か思いが残っているのならば、それを受け止めてあげたい。それが”気”を感じられる体質を持った自分の役目でもある気がするのだ』。
これは、『私は”気”に敏感な体質を持っている』という自身を見据えるからこそ見えてくるものです。そんな美空が『司会者デビューを果たす』ために、学びを深めていく様を見る物語。そこには、『ほどなく、お別れです』という、『人々の悲しみを包み込むような優しい余韻をもって心に残る言葉』をもって亡くなられた人たちの最後の瞬間を大切に思う『葬儀社』の人たちの姿が描かれていました。
『単なる終わりの儀式ではない。故人を悔いなく旅立たせ、見送る人々にも区切りとなり、前へと歩ませるための儀式』。
『スカイツリーにほど近い葬儀場、坂東会館』で働きはじめて一年が経過したという主人公の美空。この作品にはそんな美空が『葬祭ディレクターを目指』して日々学びを深めていく姿が描かれていました。『葬儀社』の”お仕事小説”であるこの作品。そんな物語に、ちょっぴり”ファンタジー”色を漂わせるこの作品。
『スカイツリー』のある景色がとても印象深く物語を演出してもいく、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
ほどなく、お別れですシリーズ第二弾。
突然のもらい事故で命を失った少年、家庭の中で孤独を気に病み自死を選んだ老女、癌で幼い二人の子どもと妻を残して亡くなった夫、憧れの職場で働き始めた矢先に鉄道に飛び込んだ若い女性。
それぞれの死に向き合って悼み悲しみ受け入れていく。遺族の感情に寄り添いながら、故人を丁寧に見送る。
死を身近に感じること、悪いことではないと思う。尊いことに感じる。
Posted by ブクログ
グリーフケアをテーマにした連作短編集。
幼い頃から霊感のあった清水美空が、都内の葬儀場「坂東会館」で葬儀に関わりながら日々成長を遂げていくさまを描くオカルトファンタジー。シリーズ2作目。
◇
坂東会館就職1年目の美空。一人前の葬儀ディレクター目指して奮闘する毎日だ。
美空が所属するのは漆原のチーム。ということは担当するのはワケありの葬儀ばかり。それだけに遺族の気持ちにいかに寄り添うかが問われる難しさがある。
先輩の陽子や椎名たちは温かく見守ってくれるのだが、上司の漆原がなかなか厳しい。
それでも漆原が取り仕切る葬儀の美しさや遺族に対する行き届いた心遣いは、美空にとっての憧れであり目標だ。
美空は今日も、漆原の厳しい指導に耐えつつも、遺族のために心を砕くのだった。
4話とエピローグからなる。
* * * * *
今回は、美空の高校時代の友人・夏海の想いにどう寄り添うかが、全話通して語られます。
夏海の兄の海路は、6年前に海難事故で消息不明になったままで遺体も上がっていないため、夏海を始め両親も気持ちの整理がつけられずにいました。
さらに海路の婚約者だった坂口有紀もいつまでも前に進めないでいます。4人の時間は止まったままでした。
直接は葬儀に結びつかないものの、残された人たちの気持ちを美空がどう酌み取り、どう寄り添えるか。そしてそれを見守る漆原がどう評価するか。
作品の作りからして、美空にとっての成長につながる展開になるのはわかっているけれど、東日本大震災の津波被害でも同様の苦しみを抱えた方が少なからずいらっしゃるのはわかっているだけに、かなり真剣に読みました。
愛する人の死は受け入れがたい。
でも、「魂の帰る場所」を用意してあげるという行為そのものが遺族の心の再生につながっていく展開は、非常に説得力があり感動的でした。
なかなか進展を見せない美空と漆原の恋模様も、ほんの少〜しだけ前進したようにも感じたけれど、シリーズはまだまだ続くことを暗示するエンディングなので、3巻目もすぐに読もうと決心した次第です。
自殺や事故など不慮の死で大切な人を失った遺族の悲しみ。経験した長月さんだからこそ見事に描けていたと思いました。
Posted by ブクログ
漆原の静かな司会進行の声と里見の朗々とした読経を思いながら物語の中へ入り込んでいました。
今作は主人公美空の成長が軸かな。
今まで先輩漆原に付き従って動いていたのが、自分なりの故人や遺族との関わり方を考え動き、この先の目標を定めていく様が感じられて頑張れとエールを送りたくなった。
エピローグのスカイツリーと東京タワーを一望するシーンが心に残った。
Posted by ブクログ
シリーズ2作目。
このシリーズを読んでいると、人生が終わるその人と家族にはそれぞれの死とその受け止め方がある。
幼い子どもと一緒に遺された家族、交通事故で突然高校生の息子を失った親、海から帰らなかった家族や恋人…いくら時間があっても区切りをつけることは難しい。無理に区切りをつける必要はなくて、前に進むためのそこにある種を見落とさないことなのかな。それを坂東会館のみんなは助けてくれる。
漆原さんは美空のいいところ、苦手なところををよく見ていて、もちろん自分の知識や経験も惜しみなく伝えてくれるけれど、自分と同じ通りにやる必要はないと思っていると思う。こんな上司部下関係は素敵。
これから美空が自分のお式をしていく姿も楽しみです。
Posted by ブクログ
電車の中で読んでしまって思わず泣きそうに。今回はいっそう切なかった。
相変わらず漆原さんのところにやってくるのは一筋縄ではいかない葬儀ばかり。
特に今回は子供に先立たれることや自ら命を落とす辛いものばかり。
葬儀は1歩前に進む為の区切りといえど、乗り越えるのは辛いものだ。ましてや生死不明なら尚更に。夏海ちゃんと坂口さんのやりきれない思いが伝わってきた。
漆原さんの元で働いてもう1年か。美空が司会をやったりと成長が目まぐるしい。今後も応援したくなった。
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死を扱う話の割に、さらりとライトで爽やかさを感じた。心が締め付けられるような苦しさや悲しさはなかった。私たちは、やがて迎える死に向かって、もがきながらもよりよく生きようとして生きているのだから、もっと重く、苦しく、悩まされてもよかった。そこがないから、「お仕事小説」のつもりで読んでしまうのかな…。まず、3冊まとめて買ったので、3冊目も読んでみよう。
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坂東会館に就職してからの清水美空が一人前の葬祭ディレクターへ成長していく記録です。
若者や不慮の死を遂げた「わけあり」の葬儀を専門に担当する漆原につき、今回は突然のもらい事故で命を失った少年、家族の中で孤独を気に病み自死をした93歳の老女、年端もいかない二人の子どもと妻を残して亡くなった夫、憧れの職場に勤めるも電車に飛び込んでしまった女性…。と特別な事情をもった葬儀の話が展開される。
漆原、美空、そして里見のチームは、死者の気を感じとり、残されたもの気持ちに寄り添い「区切り」としての葬式を心を執り行って行く。美空は漆原の仕事を見ながら、通夜の司会を恙無くこなして行く迄に成長していく…。
今回は横軸に、駒形橋病院の看護師坂口有紀の恋人であり、美空の高校時代の親友の夏海の兄である海路の話がある。
海の事故で行方不明になり6年間経つ海路はの事を、家族も恋人も諦めきれない。
ズルズルとひきづる気持ちに「区切り」をつけるために、夏海と有紀は、漆原班を伴いあの房総の海にお別れに行く。
死者は心を残すことなく天国に行けるよう、残された遺族は死者への想い「断ち切り,前を向いて生きて行ける「葬儀」という儀式に携わる様々人達の生きざまは静謐で厳かで優しい…。
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「ゆっくり考えるのは、くぎりをつけてからでいいのさ。まずは、葬式で亡くなったことをはっきりと認知する。それが重要だと俺は思う」
葬儀は区切りの儀式だと、漆原からは何度も聞かされてきた。葬儀を終えることで、木持の整理をつけ、ご遺族は次の一歩を踏み出そうとする。
「どうして、自分のことしか考えなくなってしまうんでしょうね、、、」
「人はひとりでは生きていけないのに、自分さえよければと思ってる人が多すぎて、なんだか寂しい気がします。もっと、思い合っていければよかったのに。ましてや、家族なのだから、、、」
「終末期の病棟ってね、学校とか、会社とか、元気なのが当たり前の人しかいない日常とは違った、特殊な世界なの。常に目の前の死を意識して、不安を抱えて、それでも懸命に生きている。私はね、元気な人が当たり前のように未来のことを信じていられる世界が、ちょっとしんどくなっちゃったんだ。だからね、今の場所で、今できることを精いっぱいして、ささやかなことで喜びあえる患者さんたちを支える仕事がしっくりくるの」
「 何事も初めてを繰り返し成長していくものだよ 僕だって最初は緊張したし 失敗もした」