【感想・ネタバレ】ほどなく、お別れです それぞれの灯火のレビュー

あらすじ

喪失の苦しみを優しくほどく、お葬式小説。

人よりも“気”に敏感な体質を持つ清水美空が、スカイツリー近くの葬儀場・坂東会館で働き始めて一年が経とうとしていた。若者や不慮の死を遂げた方など、誰もが避けたがる「訳あり」葬儀を好んで引き受ける葬祭ディレクター・漆原のもと、厳しい指導を受けながら、故人と遺族が最良の形でお別れできるよう、奮闘する日々を過ごしている。
葬儀場が繁忙期を迎える真冬のある日、美空は、高校の友人・夏海と偶然再会する。はしゃぎながら近況報告をし合う二人だったが、美空が葬儀場で働いていることを聞いた夏海は一転、強張った表情で美空に問う……「遺体がなくても、お葬式ってできるの?」。夏海の兄は、海に出たまま五年以上も行方不明だった。家族の時間も止まってしまっているという。
交通事故に遭った高校生、自殺した高齢女性、妻と幼い息子二人を遺し病死した男性、電車に飛び込んだ社会人一年目の女性……それぞれの「お別れ」に涙が止まらない、あたたかなお葬式小説。

※この作品は単行本版『ほどなく、お別れです それぞれの灯火』として配信されていた作品の文庫本版です。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

一気読み

死を扱う物語、それも不慮の事故や自殺で亡くなった方の話であるため、事故の場面や遺体の状況の描写もある。
その壮絶さや悲惨さをある程度伝えながらも、過度な恐怖感が与えられないギリギリの表現であるところに、作者の優しさを感じる。
その優しさは、故人や遺族の想いを受け止める漆原や美空、里見らのキャラクターにも繋がっていると感じた。

今回、私が一番涙したのは、美空が自宅で司会の練習をする場面。
仏壇の前で、祖母や姉に見守ってもらいながらの練習。
おばあちゃんもお姉ちゃんも、さぞかし誇らしいだろうと想像できて、目元がじんわりとした。

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2025年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

坂東会館シリーズ二作目。

薄口ソースことウスターソースが
この世に存在する意味が分からない程度の濃い味好きとしては、
このシリーズはやはり薄口過ぎる。

高校生の一人息子の事故死、
同居していた九十歳の祖母の自殺、
自殺か事故かわからない若い女性の電車事故、
さらに、美空の高校時代の友人の兄の遺体が戻らない死。

そのどれよりも、美空が初めてお葬式で司会をすることの方が、
重大なことに思えてくるのが不思議だ。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

坂東会館に就職してからの清水美空が一人前の葬祭ディレクターへ成長していく記録です。
若者や不慮の死を遂げた「わけあり」の葬儀を専門に担当する漆原につき、今回は突然のもらい事故で命を失った少年、家族の中で孤独を気に病み自死をした93歳の老女、年端もいかない二人の子どもと妻を残して亡くなった夫、憧れの職場に勤めるも電車に飛び込んでしまった女性…。と特別な事情をもった葬儀の話が展開される。

漆原、美空、そして里見のチームは、死者の気を感じとり、残されたもの気持ちに寄り添い「区切り」としての葬式を心を執り行って行く。美空は漆原の仕事を見ながら、通夜の司会を恙無くこなして行く迄に成長していく…。

今回は横軸に、駒形橋病院の看護師坂口有紀の恋人であり、美空の高校時代の親友の夏海の兄である海路の話がある。
海の事故で行方不明になり6年間経つ海路はの事を、家族も恋人も諦めきれない。
ズルズルとひきづる気持ちに「区切り」をつけるために、夏海と有紀は、漆原班を伴いあの房総の海にお別れに行く。

死者は心を残すことなく天国に行けるよう、残された遺族は死者への想い「断ち切り,前を向いて生きて行ける「葬儀」という儀式に携わる様々人達の生きざまは静謐で厳かで優しい…。

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2025年07月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「ゆっくり考えるのは、くぎりをつけてからでいいのさ。まずは、葬式で亡くなったことをはっきりと認知する。それが重要だと俺は思う」
葬儀は区切りの儀式だと、漆原からは何度も聞かされてきた。葬儀を終えることで、木持の整理をつけ、ご遺族は次の一歩を踏み出そうとする。

「どうして、自分のことしか考えなくなってしまうんでしょうね、、、」
「人はひとりでは生きていけないのに、自分さえよければと思ってる人が多すぎて、なんだか寂しい気がします。もっと、思い合っていければよかったのに。ましてや、家族なのだから、、、」

「終末期の病棟ってね、学校とか、会社とか、元気なのが当たり前の人しかいない日常とは違った、特殊な世界なの。常に目の前の死を意識して、不安を抱えて、それでも懸命に生きている。私はね、元気な人が当たり前のように未来のことを信じていられる世界が、ちょっとしんどくなっちゃったんだ。だからね、今の場所で、今できることを精いっぱいして、ささやかなことで喜びあえる患者さんたちを支える仕事がしっくりくるの」

「 何事も初めてを繰り返し成長していくものだよ 僕だって最初は緊張したし 失敗もした」

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2025年07月08日

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