御厨貴のレビュー一覧
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野中広務という人物について何を連想するだろうか。最近でこそリベラル系の議員からの再評価(ただし現政権への当てつけに過ぎず、あまり褒められたものではない)が進むが、当時は巨悪自民党の首魁として野党のみならず与党の非主流・特に小泉純一郎から目の敵にされていたのを覚えている。
しかしその人生を振り返ってみるとここまでと叩き上げ議員もいない。本人が言うように国鉄の一駅長で終わっていた可能性もあるし、一歩間違えていれば社会党や共産党の政治家として活躍していたかもしれない。官僚や世襲のエリートを決して否定するものではないが、このような真の叩き上げが政界に限らず減ってしまったのはそれこそ日本の失われた多様性ではないだろうか。権力の過程を登り詰める中で清濁呑み併せることでできた重厚な人間性には敬意を表したい。
ここまで書くと硬い話ばかりのようにも思えるが、村山首班指名の鈴木宗男とのやりとりや、官房長官を任された時の小渕竹下との茶番くさいやり取りには思わず笑ってしまう。そのユーモアも野中広務の魅力なのかもしれない。 -
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【すべての政治課題は等価におかれる。そして解決へむけて一斉に進んでいく。メディアはその断片を捉えながら安倍政治の実態に迫ろうとする。しかしなかなかその実態を把握しえない。なぜか。今やそのメディアも含めて、政治を論じるのではなく、政治を消費するからなのだ】(文中より引用)
実務の分野でも活躍する政治学者の御厨貴が、現在の政治から名編集者との邂逅に至るまでの幅広い分野について記した新聞記事や論考をまとめた作品。平成期に書かれた作品を取り集めることにより、俯瞰して読み進めると平成の政治史に関する輪郭が得られるような作りとなっています。
かちっとした政治評論はもちろん魅力的なのですが、個人的に読んでいて心地良かったのは、絶妙な塩梅に肩の力が抜けた「小品」とも呼べるような作品の数々。何気ないことを書いているようでありながら、その事象の深いところを見透かすような視線の持って行き方に魅力を感じました。
それにしても御厨氏は凄いペースで文章を書いているもんだと驚嘆☆5つ -
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掛けた歳月24年5カ月、総ページ数12,000ページ。87年に渡った昭和
天皇 の生涯を綴った『昭和天皇実録』の編纂が終了し、今上陛下に
奉呈された のが2014年9月。
そして、今年3月から一般刊行が始まった。早々に予約をしたのは
いいが、 全19巻を5年かけて刊行することを予約語に知って愕然とした。
それまで 何があっても生きていなくちゃ。
既に刊行された2巻は手元にあるのだが、未だ手を付けていない。
読もうと思った矢先に、本書が出版されたからだ。昭和天皇の
崩御後、関連の書籍が多く世に出たので時間のある限り読んだ
のだが、それでも知らないことが多い。
なので、『昭和天皇実録』に取り掛かる前段階の予習として本書は
最適なのではないだろうか。昭和史に詳しい4人それぞれが、持論を
展開しながらも『昭和天皇実録』の主要と思われる部分を読み解いて
いる。
本書のメインとなっているのが戦前から終戦までだったので、『重臣たち
の昭和史 上・下』を読んでおいてよかった。これが予備知識として
役に立った。
幼少時の話も興味深かったのだが、今まで昭和天皇の関する作品を
読んでいて何故、軍部の暴走をみすみすお許しになったのか疑問に
感じてたんだよな。
だが、半藤氏の以下の発言ですとんと自分の中で何かが繋がった。
「実は私は、昭和天皇には三つの顔がある、と考えているんです。
ひとつは「立憲君主」としての天皇、もうひとつは陸海軍を統帥する
「大元帥」。そして両者の上位にさらに、皇祖皇宗に連なる大祭司で
あり神の裔である「大天皇」がおわす、というのが私の仮説です。」
ふたつの異なる立場の間で、板挟みになっている昭和天皇像が
克明に浮かび上がるではないか。
もうひとつの発見は、これまで内容が明らかにされていなかった
「拝聴録」である。折々に昭和天皇が侍従を相手にご自分の胸の
うちを語られた聞き書きである。
やっぱりあったんだな。だた、どこにあるのかがはっきりされていない。
今上陛下のお手元にあるのではないか…とも言われるが。
この「拝聴録」がいつか一般に公開されたら、昭和史が今以上に
興味深くなるかもしれない。
本書の4人の語り手の解読を参考に、そろそろ『昭和天皇実録』に
取り掛かろうかな。でも、その前に昭和史を今一度復習しておいた
方がいいかも。
『昭和天皇実録』本体を読み通すのは無理…と言う人でも、昭和史に
興味がある人にはダイジェストとしていいかもしれない。 -
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生い立ち、従軍、共産党東大細胞の思い出、政治記者として立ち会った権力闘争の修羅場、鳩山一郎、大野伴睦、池田勇人、佐藤栄作、田中角栄、中曽根康弘、橋本龍太郎、村山富市、小沢一郎、小渕恵三ら為政者たちの横顔。読売新聞主筆による生々しい証言。(親本は2000年刊、2007年文庫化)
・まえがき
・第一章 恋と哲学と共産党
・第二章 新聞記者への道
・第三章 保守合同と岸政権の裏側
・第四章 六〇年安保と池田政権の核心
・第五章 ワシントン支局長時代と角福戦争の内幕
・第六章 田中角栄とその時代
・第七章 盟友・中曽根康弘
・第八章 平成の九宰相
・終 章 我が実践的ジャーナリズム論
渡邉恒雄は毀誉褒貶激しい人物であろう。個人的には政治的な生々しさを感じる人物である。近年では、失敗に終わったが、自民党と民主党の大連立の橋渡しを行ったことでも知られる。このニュースを聞いたときに、ジャーナリストとしていかがなものかと思ったものだが、本書を読むと、渡邉の行動原理の一端を窺うことが出来る。
渡邉が現役の政治記者出会った頃、政治家と番記者の付き合いは癒着の関係にあった。記者が仕掛け特ダネをつくった時代であったことがわかる。
政治部次長となったとき、社内のゴタゴタに巻き込まれ、ワシントン支局に飛ばされることとなる。(渡邉が必ずしも順風万番でなかったことも興味深い)
その後、上司に目をかけられ、復権し、社長に就任することとなる。
渡邉は「我々の最大の武器は、1000万部行き渡っている紙面なんだ」p516という。「これを善用しなければ」という使命感も興味深いところである。政治記者である、渡邉の目から語られる政治家の素顔も面白く一読の価値があり、オススメである。 -
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日本政治史におけるオーラルヒストリーの第一人者、御厨氏が大学の最終講義を6回に分けて行った様子を新書にまとめたもの。
それぞれのテーマに対しての御厨氏の講義→ゲストのコメント→御厨氏がコメントに対しての釈明と乱取りという流れの6回である。テーマは、オーラル・ヒストリー、公共政策、政治史、(首相官邸や最高裁判所などの)建築と政治、書評と時評、メディアと政治である。
いろいろな裏話、または考えを知ることができたが、特に官房長官だった後藤田氏の「菅直人は統治がわかっていない」という一文は削除してくれというところだった。表には出てこない、いろいろな人間が作り出した歴史を感じることができたような気がした。
御厨先生には、時事放談などではまだまだ活躍してほしいと思う。 -
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オーラル・ヒストリーとして語られることの多い、政治の世界。その際、出来事が起こった現場の場所に関する詳細は、話し手の当事者には空気の如く思われていることが多く、口の端に上らないことも多いと言う。しかし、大きな決断や運命を左右する大きな出来事は、建物が持つ”場”によって規定されることが多いのも事実である。建物の構造がほんの少し違っただけで、その後の未来は大きく変わっていた可能性もあるのだ。本書は、そんな「建築と政治」の関係性に着目した希有な一冊である。
◆本書の目次
序 権力の館 事始め
マッカーサー GHQ跡第一生命感
1:権力の館
吉田茂 大磯御殿
吉田茂 目黒公邸
鳩山一郎 音羽御殿
岸信介 御殿場邸
池田勇人 信濃町邸 箱根仙石原別邸
佐藤栄作 鎌倉別邸
田中角栄 目黒御殿
三木武夫 南平台邸
福田赳夫 野沢邸
大平正芳 世田谷区瀬田邸
中曽根康弘 日の出山荘
竹下登 世田谷区代沢邸
宮沢喜一 軽井沢別邸
軽井沢別荘地(戦中編)
軽井沢別荘地(戦後編)
2:権力機構の館
首相官邸
貴族院、参議院
衆議院
最高裁判所
検察庁
警視庁
財務省・大蔵省
日本銀行本店
宮内庁庁舎
枢密院
都庁舎
北海道赤れんが庁舎
沖縄県庁・高等弁務官事務所
3:政党権力の館
自由民主党本部
砂防会館
宏池会事務所
日本社会党(社会民主党)本部
日本共産党本部
公明党本部
民主党本部
結 権力の館 事納め
小沢一郎 深沢邸
やはり、抜群に面白いのは「権力の館」の章である。当然のことではあるが、主が我儘である方が、個性が存分に反映されるのだ。個人の要件定義を受けた建築物は、ときに主より雄弁にその主体を物語る。特に、着目すると面白いポイントは、”機能要件をどのように定義したのか”と”庭との向き合い方”という二点である。
◆「権力の館」の特徴
・吉田 茂
お手のものであった政治工作と同様に、始終手入れを好む普請道楽であった。非制度的な主体を好み、私邸で閣議を行う”館政治”の元祖。庭での散歩を好み、よくそこで考えごとをした。
・岸 信介
御殿場という立地に、首相復帰をもくろむ権力動機が現れている。合理的思考が反映され、いつ何がおこっても困らないつくり。り。首相復帰への願望は、主体的に関わる庭を求めたところにもあらわれている。
・池田 勇人
私的スペースをほとんど無視し、商売繁盛の料亭のようなつくり。庭にも自らのアイデンティティを求め、「石にも木にも顔がある」と述べたほど。
・佐藤 栄作
由比ヶ浜の海を一望できるパノラマ風景がすべて。また鎌倉という立地は、鎌倉文士たちとの交流も可能にした。一度だけパーティを開いた広大な庭は、他の政治家へ格の違いを見せつけたという。
・田中 角栄
フラットでフローという政治哲学をそのまま反映させた館のつくり。庭には、新潟に生まれ育った田中の皮膚感覚にあうものだけが取り入れられた。
・福田 赳夫
自身の身の丈にあわせるべく、距離感の近さを重視したつくり。倹約の精神を貫き、庭もケチに徹したゆえの狭さを誇る。
・大平 正芳
執筆活動が有名であるように、知的活動を保証するためのつくりとなっている。千客万来の”よすが”とするために、庭のボリューム感を重視した。
・小沢 一郎
神秘性におおわれた要塞のイメージ。多くの政治家にみられるような”建物と一体化して広がるイメージの庭”はなく、閉鎖感が目立つ。
また、政治家から依頼を受けた建築家という立場への興味も尽きない。吉田茂、佐藤栄作などから依頼を受けた吉田五十八によれば、「私宅でありながら、いつ公的要素が入り込むかはわからない。そのため、動と静をあわせもち、急変化を遂げるためのダイナミクスが求められた。」との弁を残した。そのため、「私的の居住部門」、「公式につかわれやすい接客部門」、「サービス部門」という3つの機能分配を行うことが、多くの「権力の館」に見られるベーシックな造りとなっている。
おそらくは建築家自身、依頼主である政治家の目利きを存分に行い、本人にも気付かれぬよう、隠れたデザインを施していたことであろう。また、多くのケースにおいて、建築物は政治家自身より寿命が長い。没後、どのような評価が下されるかも考慮し、主亡き後の館の姿も見すえて、デザインしていた可能性も否定はできない。
ちなみに、本書の構造も、「権力者の館」、「権力構造の館」、「政治権力の館」という3つの章で構成されている。権力者の館の代表的な機能分配である「居住」、「接客」、「サービス」に、なぞらえたということなのだろうか。もしそうだとしたら、本書自身も、まことに見事な「建築物」である。 -
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ユーモアと度胸、傲岸不遜なのに愛嬌がある。
彼を老害と指弾することは簡単だが、その破格の人柄は誰もが認めるだろう。
エピソード一つ一つが抜群に面白く、その面白さは彼の生きたべらんめえ口調も影響しているだろう。
そして、かれの歩みそのものが戦後史になっている。こういう人物はなかなかいない。
印象的なエピソードと所感を。
・頭は良かったが、喧嘩ばかりしていた学生時代。それもドスを使ったり、校長を闇討ちしたりと愚連隊さながら。
・美男子であったが24まで童貞だった。
・イデオロギーではなくリアリズムの人である。だから戦争なんて馬鹿らしいと冷淡に思うし、一方で共産党の活動にも愛想をつかす。
・徴兵時は、脱走・降伏したのち、収容所で数年読むに耐えうる本を想定してもっていった。
・特に村山富市の分析は秀逸だ。 -
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単行本化にあたり、「回顧録」ともっともらしいタイトルにはなっているが、インタビューの内容としては連載時の「政治記者一代記」のタイトルの方がしっくり来るし、何なら「大放談~ナベツネ大いに吠える~」でもいい位だ。ただ読み物としては面白い。
これで終わると中央公論を寝転みながら読んで終わり、となるが、流石に終章の「我が実践的ジャーナリズム論」と御厨教授の解説で話がまとまる。ロングインタビューが苦痛ならこの120ページ余りで十分だと思う。
本書はオーラルヒストリーという歴史研究の手段の一つだが、このインタビューの時点ではまだ試行錯誤の段階だからか、著者の押しの強さからか、「話し手と聞き手」の枠に収まっている感じがあった。後年の堤清二を対象としたオーラルヒストリー(「わが記憶、わが記録」)はより「対話型」になっていたと思う。
著者は妄想に陥った日本の軍国主義を憎み、理想に突き進む共産主義に失望した。そこから現実主義を徹底し、朝日新聞を対局軸に置きながら現実的政策提言にこだわった。保守の本流たりうるジャーナリストだったと思う。
ジュンク堂書店難波店にて購入。 -
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大久保利通日記、原敬日記、倉富勇三郎日記、『西園寺港と政局』、「木戸幸一日記」、「宇垣一成日記」、「富田メモ」など、政治家、軍人、官僚等の日記を中心に日本近現代史の史料四十数点をオムニバス的に紹介・解説。単なる史料ガイドではなく、執筆者陣の歴史研究者各自の〝泳法”とその〝読み”を披露している点が本書の特色だという。
紹介されているどの史料も直に読んだことはないが、名前くらいは知っている史料から存在を知らなかった史料まで、いろんな近現代日本政治史の一級史料を垣間見ることができ、とても興味深い一冊だった。日記の書きぶりから、その筆者たる政治家などの個性が浮かび上がってくるのが面白く感じた。 -
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1)コロナ渦が安倍政権を倒した。手をこまねき、全面的にコロナ対策をしなかった。マックス1年半しか見えない内閣だった。
2)菅の頭にあるのは延命だけ。コロナを使って政権をどう延命させようか考えているのが見えてしまっている。危機を乗り越えるために政治生命をかけるのではなく、危機を使って延命しようとしているので危機を乗り越えられない。思想、イデオロギーよりもウルトラリアリズム。現場最重視の中小企業経営者。国家は中小企業ではない。ものすごく良い虫の目を持っているが鳥の目がない。
3)吸い上げのリーダーシップ(マイクロマネージメント)、下放のマネージメント。危機管理の時は多少汚職があろうが、現場に任せる下放がうまく行く。
4)コロナ対策は権威主義国家、統制型(戦時体制)の方がうまく行く。
5)成長モデル、災後型縮小モデル。
6)内閣人事局、600人の官僚幹部人事を官邸が差配できるようになった。
7)小選挙区制とともに政党助成金、共産党はもらわない。
8)福沢一派(慶應閥)を追い出すための高等文官試験。
9)今ほど露骨に恐怖政治をやって、それをやっていないという政権はない。
10)安倍政権の支持層は若者、男性、保守で最低38%。シニアはダメ、女性もダメ。
11)安倍は株価連動内閣、菅はコロナ連動内閣。
12)21年2月に海警法、海警局に武力行使が認められるようになった。
13)出口戦略。
14)大久保利通、本則を忘れず変則をやる。
15)コロナ対応の問題点
①厚労省問題、大臣のガバナンスが効かない
②医系技官問題、官邸の言うことを聞かない、PCR問題も医療崩壊を防ぐため
③デジタル後進国、トータルで見ている人がいない、現場に裁量権ない
④国と地方の問題、市区町村との3層構造、県が邪魔だ
16)新聞は5ー60代、テレビは40代以上、2ー30代はSNS。見てない聞いてない、情緒的な判断。
17)コロナ敗戦、この国は全てが緩い。