小川一水のレビュー一覧
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大事業の多様な諸相を書きたいってことなんだろうなと思いつつ読んでいたら、最後の「「第六大陸」沿革」に、次の著者の言葉が。
「でも、この絵本のような、天と地のすべてを手のひらの上で展開するような話を書きたいとは思っていました。
『第六大陸』、そんな噺になっていたでしょうか?」(p.341)
そのぶん各要素が薄まって総花的になり、読み応えは薄れたと思う。
壮大なホラ話を生き生きさせるリアルな書き込みも足りないし、登場人物も主要な数人のキャラ以外はモブ状態…
まあ私にとって一番乗り切れなかったのは、そんな中で作品のかなりの部分を占めるヒロインの父との葛藤が陳腐すぎる、ということによるが(刑事ドラマとかでよくある仕事第一の父親のせいで母親が早死にしたと大人になっても父親を恨み続ける子どもというパタン。「美味しんぼ」もこれだな。もう原型がなんだかわからないほど手垢に塗れた要素。) -
Posted by ブクログ
“国際社会の流れは、協調と融和に向かっている。世紀初頭に中東で巻き起こった、アメリカとイスラム諸国の戦争も、時の合衆国大統領が世論に押されて無様な退陣劇を演じたことで、沈静化した。以来、むやみと軍事力を行使する国は、世界中から白い目で見られるようになった。いかに南沙の原油がほしいといっても、そのために戦争を起こすのは割に合わない。
これまでの遺恨はそれぞれ我慢して、なんとか平和協力の道を探ろうという合意がなされた。五ヵ国合弁の南沙開発公社が発足し、暗中模索の末に考え出されたのが、まず資源利用とは関係のない施設を南沙に建設し、戦争を抑止するシンボルにしようという案だった。”(p.26-27)
冒頭で説明されるこの世界の超近未来が、現実と余りにかけ離れていて悲しくなった。2003年の時点では、こういう夢を描くことがまだ可能だったのに、世界は真逆の方向に進んでいる。 -
Posted by ブクログ
2050年、宇宙直結のエレベーターのある赤道直下のリンガ島を舞台にそれぞれの仕事にひたむきに打ち込む女性たちを描いた連作短編集。
ジャンルとしてはSFですが、SFが苦手な人にもとてもとっつきやすい内容の短編集であると思います。というのも、どの短編も技術の発展が進んだ未来ならではの話なのですが、アンドロイドとかクローンだとか、技術に焦点を当てた話ではなく、宇宙服のデザイン、宇宙エレベーターの添乗員、不動産的な仕事などあくまで技術の進んだ世界の中で、人が自分の信念に従い働く姿を描いているからです。
読んでいて面白いのは、本当にこんな仕事をしている人がそう遠くない未来にはいるのではないか、と想像させてくれること。一足先に未来の世界の日常を覗かせてくれた一種のタイムマシンのような小説でもあったように思います。
一番印象的だったのは第7話の『The Lifestyles Of Human-beings At Space 』
人類が宇宙進出を果たしてから50年近くたったもののいまだ宇宙での生活はまだ遠い未来という印象があります。この短編でもその話が出ていて
宇宙での生活の問題点を挙げつつ、それを乗り越えようとする人々の想いを感じることができ、未来への希望、夢を感じさせてくれる短編でした。
『楽園の島売ります』も話としては非常にリアル。
リンガは産業都市として発展したものの、そのほとんどが人工で作られた鋼鉄製の島なので、数少ない緑地に別荘を建てるのは一つのステータスとなっているのです。そこに目を付けた女性社長とそのパートナーの女性研究者が主人公なのですが、彼女たちの友情とともに、設定を見事に生かした未来のお仕事小説としてもよかったと思います。