小川一水、初の短編集。
四篇ともどれも趣きが異なっていて飽きが来ない。
ギャルナフカの迷宮
反社会的な政治犯として一枚の地図とともに地下迷宮に落とされた元教師テーオ。地下には人数分の水場ときのこみたいなものが生える餌場しかない。生き残るために水場と餌場の記されている地図の奪い合いが起こり、人々は疑心暗鬼になっていた。一部の人間は、食べ物を求める欲望を抑えきれずに、野蛮な生肉食いと化していた。テーオはこの無秩序な迷宮に、文明的な社会を作ることを決意した。
閉鎖された厳しい環境下での生への渇望がナマナマしくてエグい。嫌いじゃないけど。
老ヴォールの惑星
巨大な海の惑星。その表面に生きる知的生物。体から光を発することにより、情報を種全体で共有することができる。多くの知識を溜め込んだ長老ヴォールは若者に、空の星のひとつに彼らの惑星サラーハに似た世界がある事を教えてその生を終える。サラーハに危機が迫ったとき、残された彼らは老ヴォールが発見した星を探し出そうとする。
この本のなかではやっぱり表題作であるこの短編が好き。地球起源の生命とは根本から異なる知的生命体の不思議な生活様式の描写に惹かれる。
幸せになる箱舟
火星まで生活圏を広げた人類は、木星で地球外知性体によって作られた自動機械を発見した。ビーズと呼ばれるようになったそれは、木星の大気を採取し彼らの母星に向かって超高速で射出していた。このままでは木星の重量が変化し、近い未来太陽系の惑星の軌道がずれていってしまう。人類はビーズを作り出した知性体クインビーと交渉するため、専門家達を特使として送り込んだ。危険と困難を極めると思われたそのミッションは、予想に反してとんとん拍子にことが運び、うまく行き過ぎることに疑問を抱いた時・・・。
人類を危機に追い込む地球外生命体による太陽系への干渉+人間の望んだ夢を見せてくれる未知の星。辛めに言うと、既出のアイディアを二つくっつけただけかも。
漂った男
未開の惑星の偵察任務中、タテルマの乗った機は墜落。海しかない巨大な惑星パラーザで漂流してしまった。救助を要請したが、広大な面積のため惑星のどこを漂っているのか特定できず、発見は絶望的だった。栄養価の高い海の水と空間距離に影響されないU(アルティメイト)フォンを命綱に、タテルマは漂流し続ける。
ほとんど何も起こらないことがポイントのストーリー。x年も独りぼっちで海を漂うなんて気の遠くなるような話だ。