古沢嘉通のレビュー一覧
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中国系アメリカ人の作家が描く15のSF短編集
表題作と日本人の精神性に触れた物語が一番心に残った
「紙の動物園」
親の心子知らず
孝行したい時に親はなし
日本の諺が頭に浮かんだ
親子の関係性 今の自分に直球で返ってきた
「もののあはれ」
地球から脱出した人類 移住先に向かう途中
アクシデントに見舞われる
日本人ヒロトは父から教えられた
もののあはれを思い出し勇気ある決断をする
万物は流転し命あるものは全て儚い
古代から受け継ぐ自然や死への眼差し
私の心の中にもあるのか
どこかにいってしまったのかわからない
他に
不老不死が幸せに繋がるのか問われる
「円弧」 「波」
子を亡くした喪失感を埋めるためアンドロイドを生み出すことに没頭する
「愛のアルゴリズム」
中国と台湾の複雑でシビアな関係
理解し信頼し合うことができない人間同士の悲劇をアメリカの諜報員の娘の視点で描いた
「文字占い師」
など
中国の文化の香りを感じながら
大切な人への想いが込められた物語全てに
深い余韻が残った -
Posted by ブクログ
ネタバレまさかのバッドエンド!
そう来たか。主人公が生き残るわけじゃないんだな。予想できる結末じゃない点には満足。人種差別が何をどうしてもなくならないことも伝わった。
ダークアカデミアな雰囲気、大人よりの魔法、勉強、語学、オックスフォードが好きなので、設定は間違いなかった。
ただ、読むに従ってここまで人種差別が描かれているとは思わず、後半で「もういいよ」と満腹になってしまった。また、私はレイシストなので、主人公が中国人という時点で、実は本屋でTBRリストには入れなかった本でもある。
イギリス人が読んでいるのを見たけど、どのように捉えるのだろう。私は損得感情が大きいので、自分が少しの得をするなら、他の知らない人たちが苦しんでいようと知らないふりをする。そしてそれはこの小説が示している通り、ほとんどの支配する側に共通することだ。私自身は支配する側である認識はなく、人種差別を受ける側にいるけど、支配側が近くにいないだけだと思う。
人種差別撤廃運動ではなく、もっと学生生活を楽しみたかったな。ああいう環境で勉強に浸りたい。語学が好きになってしまった人にはわかる、「翻訳をするとそれはもう原語を伴っていない」ということはとても共感できた。
ただ、注釈が多すぎることで物語に集中しにくかった。メタ発言ではなく、物語の裏話的なことも多い。普通はそれらを本文で書くので珍しかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ書評を見てからずっと読みたかった本。いっきに読んだ。
翻訳がテーマなので、翻訳について何度も議論が交わされている。翻訳は原作そのものにはなりえない。原作のニュアンスを真に伝えることはできない、といった主張や言葉が通じることで広がる世界など否定や肯定が重なり合っている。
話自体は時々読み進めるのが苦痛になるような虐待や差別が書かれている。
主人公の行動や仲間、周囲の人の様子などありきたりな部分もあり、話の流れもどこかでみたような話だったりもする。こうなるんだろうな、という方向に最後まで話が流れていく。
悪者側の人物たちがカリカチュアライズされすぎているように思える。でも、こういう小説に出てくるような人って本当にいるんだよな、とも思う。びっくりするような差別意識の人、それをはばからない人、尊大な人、自分を高級だと思っている人が実在することをわたしも知っている。著者は実際にオックスフォードにいたようだし、小説だと思うなかれというところなのかもしれない。
部分部分は退屈で、2冊の本を最後まで読むのは時間がもったいなくなる時もある。
しかし、できれば、途中を飛ばしてもよいから、最後に主人公が友人と話をするシーンは読んでほしい。
翻訳とはなにかを長く議論してきたこの小説の、希望に満ちた一つの結論が書かれているからだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレボッシュ&バラードの第六弾。
バラードが率いる未解決事件捜査班、
ボッシュが去ったと思ったら娘のマディが参加した。
まずは、
最近の暴力事件の犯人のDNAと近しいDNAを持つ、
過去のまくらカバー強姦犯を追う話。
暴力事件の犯人の父親は上級裁判所の判事だが、
血縁上の父親でなく、父親探しが始まる。
マディが持ち込んできたのは、
貸しガレージから発見された六十年代の連続殺人事件の写真。
被害者の身元を特定し、ガレージの借主の自宅を探し当てる。
さらに、バラードが海岸で盗まれた警察のバッジは
テロリストの手に渡ってしまい、
市警には内緒で取り戻すためにボッシュとFBIを巻き込むことになる。
おとりとなったボッシュが無事にバッジを取り戻してくれたシーンには、
しびれた。
(下巻に続く) -
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タイトルからノンフィクションかと思っていたらパラレルワールド的ファンタジーだった。
大学、マント、世界中から集められたエリート学生たちの寮生活…とちょっとダークなハリポタっぽいところも。
一応魔法っぽいのが出るけどこの作品では派手な回復や攻撃が出来るわけではなく、産業革命時の技術に代わるものであって商業商品みたいな意味合いを持っており、それを生み出せたり扱えるのがオクスフォードのエリート、という設定。
魔法よりもメインになっているのは、扱っているテーマが帝国主義とマイノリティであり、搾取する側とされる側であり、虐げる側と虐げられる側と言う構図であり、幼くして有無を言わさずイギリスに連れてこられたマイノリティ側の主人公が父親との確執を乗り越えようとし、同じく帝国主義に抵抗しようとする…といういわゆる正統派ビルドゥングスロマンの部分。そこはとても説得力がある。
私は言語学と中国語にも興味があるので、この世界の魔法に関する言葉の語源や変化のお話なども楽しく、割と一気読み出来た。
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19世紀、大英帝国がその巨大な力を以て世界に君臨していた時代。
大英国の力の源は銀と翻訳にあった。同じことを表す複数の異なる言語の単語を銀に刻むと、その言葉の意味の微妙な相違による歪みが力を生み、馬車の速度を早め、船の運行を円滑に行い、大砲の狙いの精度と威力を増していた。
オックスフォードには世界各地から少年少女たちが集められ、大学構内の王立翻訳研究所バベルの塔で働く翻訳家となるために育成されていた。
中国の広東省から連れてこられた少年ロビン・スウィフトは中国語の翻訳者としてオックスフォードに入学する。
しかし、そこにはバベルから銀や蔵書を盗む秘密結社ヘルメス社があることや、英国は中国から銀と交換に英国に阿片を売りつけようとし、それに逆らえば戦争をも辞さない一方的な貿易をしいろうとしていることを知り、バベルの存在に疑問を抱き破始める。 -
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ネタバレ2026年の2、3冊目は、マイクル・コナリーの「迷宮」です。レネイ・バラードのシリーズ6作目となります。今回は、ハリー・ボッシュの登場は少なめですが、ハリーの娘マディが、レネイの未解決事件班に加わります。寂しくも有りますが、ハリーからマディへの継承が進んで行きます。原題の「THE WAITING」は、作中でも触れられているように、トム・ペティの有名な楽曲名から取られています。トム・ペティ好きの私からすると堪りません。
今回も複数、3つの事件が同時進行して行きます。
冒頭、レネイが、サーフィン中にバッジを盗まれ、窮地に陥ります。その事件が1つ目。まくらカバー強姦犯という連続婦女暴行事件が2つ目。その事件では、哀しい出来事も発生してしまいます。3つ目は、ロサンゼルスの歴史的有名未解決事件、ブラック・ダリア事件です。
こちらは、マディが大活躍する事になります。
かなり面白いです。一気読み間違いないと思います。
☆4.7 -
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ずいぶん間が開いてしまった。やっと読み終わった。やはり予想した通り希望に溢れるエンディングとはならなかったけれども。
銀と言語(翻訳)を使った魔法、物語の中に入り込むとクラクラしてしまう。
ある言葉が持つ「力」をいかに損なわずに他の言語に「翻訳」できるか。現実に「翻訳された」作品を読んでいるわけで、本当に表現されていることを、どれだけ正しく受け止められているのか……
「翻訳とはまさにそういうことなんだ、と思う。話すということはそういうことなんだ。他人の話に耳を傾け、自分の偏見を越えて、相手が言おうとすることをわかろうとすることだ。自分自身を世界に示しほかのだれかが理解してくれることを期待するんだ」(p307) -
Posted by ブクログ
久しぶりに時間が過ぎるのを忘れるほど夢中になって読んだ。
基本はハリー・ポッターを思わせる魔法学園ものなのだけれど、帝国主義や階級社会の闇が色濃く描写されていて、現代性が強い。
主人公を含む同期4人組が男2女2で、1人だけが白人という設定も効果的。かけがえのない友情を育みつつも、互いのマイノリティ間ギャップに苦しみ、栄光と信念の間で悩む姿がリアル。
なにしろ、銀の棒に適合対となる言語を刻んで魔法を発現させる、というアイデアが発明すぎる!言語の盛衰が魔法に影響したり、英語から遠い言語を扱える者が重宝されたり、魔法によって産業や生活が豊かになっている、という設定がおもしろすぎるし、メタファーとしても優れている。