町田そのこのレビュー一覧
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町田さんのお話しにはかならずキラっとした忘れたくない一節がある。
“タイミングってのが、ある”
“無二の親友になれるタイミング、過去の友人になるタイミング。大事な思い出を共有しあえる存在になるタイミングに、もちろん、きっぱり決別するしかないタイミングもある”
“心を分かち合える人生の伴侶になるタイミングも、あるだろうな。ひとってのは、どれだけ相手を求め合っていても、考え合っていても、タイミングひとつでズレてしまう生き物なんだよ”
テレビドラマを見ているようなボタンのかけ違いと重なり合い、そんなことあるー?って思いながらもグッときてしまう町田節全開な一冊でした。それにしてもすれ違いが口惜しい。 -
Posted by ブクログ
初めての町田そのこさん作品。
どの話にも誰かの死がすぐそばにあり、物理的にも精神的にも「人生の片づけ」について考えさせられた。
個性的なおばあちゃんがほとんどの話に登場するのが印象的で、その他の脇役にも魅力的なキャラクターがたくさんいた。
私は何かと捨てられない性分なので、人間関係リセット症候群の主人公の妹・芽衣子にとても共感してしまった。
作品としては、「くろい穴」と「先を生くひと」が特に好きだった。
「くろい穴」は、主人公の心の動きやどす黒い感情が、栗の渋皮煮を作るという行為を通して表現されていて、小説だからこその面白さを感じた。人には言えないような感情や、意図せず取り返しのつかないことになってしまったときの罪悪感など、人間の心の嫌な部分まで生々しく描かれていて、とても印象に残った。
一方、「先を生くひと」は、まるで映画を観ているようで、その光景が目の前に浮かんでくるようだった。「もし会いたい人に会えるなら、今からサハラ砂漠にだって行くし、オーロラを探しにだって行く」というような台詞がとても切なく、心に残った。
町田そのこさんの他の作品も読みたくなった。 -
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町田その子さん著「星を掬う」
2022年本屋大賞ノミネート作品。
最初に書いてしまうのだが著者の作品として考えれば「52ヘルツ」や「蛍たちの祈り」が本当に素晴らしかった。
比べてしまえば今作品は少しだけ満足感には欠けてしまう印象をもった。
本作品は幼くして離れ離れになってしまった母娘の物語。
母は祖母からモラハラに似た心理的虐待、娘は旦那からのDV。
その被害模様が訥々と描かれていく。
思うことは多々あったが、感想としてはどれも何か確信が持てたり肯定否定ができないものばかりで自分の中では宙ぶらりんといった感覚だけが残った。
著者が女性だから被害をうけている女性達を飾らずに描けているのだろう。結構な描きようだった。
共に身近な人に虐待を受けた親子。縛られていたものからの逃避という意味では二人は似ていたのかもしれないと感じる。
自分自身と向き合えば向き合うほど内に入ってきてしまう。聖子がさざめきハウスで血の繋がらない彩子、恵真と暮らしていたのも互いの距離感が絶妙だったからなのだろう。
さざめきハウス、聖子にとっては義娘達、千鶴にとって義姉と義妹のような存在になる二人の女性がとても大きな存在感を放っており、この二人がいてこそこの親子は新たに一緒に暮らしていけたのは間違いない。千鶴が増え、彩子の娘も転がり込み、微妙な関係性での共同生活も距離感という面では絶妙で、家族以上と感じられるものも多々あった。
仮に他の三人がいなくて聖子と千鶴の二人だけだったらこうはならない。
かなりのキーパーソン達。
文中に度々出てくる「自分の人生」という言葉。
これってある意味では「美学」なのだがある意味では「影」にもなりうるなと感じさせられる。
何かを隠した「美学」の裏には本音の曖昧さが見え隠れしているように感じる。
本当は聖子も同居している娘達と暮らしていきたい、でも足手まといになり彼女たちの人生の重荷になってはいけないし、なりたくない…
それを「自分の人生」という言葉に集約させているのであろう。
「自分の人生」…
単純な言葉だが意味合いは複雑。
自分では今後使わない言葉になりそうだ。
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ネタバレこの作品では、「ぎょらん」が必ずしも残された人を救ってくれるわけではないところも良かった。亡くなった人の最期の思いを知りたいと願っても、それによって余計に苦しみ続ける人もいる。逆に、ぎょらんをきっかけに、それまで向き合えなかった死を受け入れたり、亡くなった人との思い出やその人が自分に残してくれたものを捉え直したりする人もいる。
大切な人が亡くなったとき、「最後に何を思っていたのか」「自分のことをどう思っていたのか」を知りたくなる気持ちはすごく自然だと思う。でも『ぎょらん』を読んでいると、本当に大切なのは最期の一瞬の言葉だけではなく、その人が生きている間に自分にくれた言葉や、一緒に過ごした時間そのものなのかもしれないと思った。
人は亡くなってしまっても、その人からもらった言葉や考え方は残された人の中に残り、その人のその後の人生を支えることがある。そして今度は、その人が別の誰かに何かを残していく。『ぎょらん』は死を扱った物語だけれど、読み終わってみると、「人が誰かの中に残り続けること」や「残された人がもう一度生きていくこと」を描いた話だったように思う。