染井為人のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
★4.1
復讐の連鎖が暴くのは、正義か、狂気か。
静かな町に忍び寄る影が、人間の本性を炙り出す。
半グレ集団「凶徒聯合」のメンバーが次々と命を落としていく。警察は暴力団や半グレ同士の抗争と見て捜査を進めるが、それを嘲笑うかのように続く殺害。疑心暗鬼に陥るメンバーたち、そして犯人を英雄視するSNSの住民たち。物語は、加害者、被害者、警察の三者の視点から進行し、それぞれの立場や感情が交錯する。
単なる復讐劇ではない。復讐というテーマの中に潜む、赦しや償いの難しさが巧妙に描かれており、暴力と破壊を超えた心の葛藤に引き込まれる。
登場人物たちの行動はどこから来るのか、何を求めているのか。その源泉を丁寧に描き出している。
ふと、昔誰かに冗談めかして言ったことを思い出した。
「俺が誰かに殺されても、ちゃんと法律に頼るんだよ。でもたとえば誰かに君が殺されたら、刺し違えてでも自分の手で終わらせる」と。
復讐の先に待つのは、赦しか、破滅か。 -
Posted by ブクログ
521ページ。読み応えあり。一気読み必至なのは染井為人さんだから、当たり前。
震災の被災地の状況が、
かなり細かく描写されており、
想像をこえた現状を知ることができた。
それは、震災の現実が過酷すぎて
染井さん自身も
「途中で筆を折ってしまった」ほど。
時間軸と
語り手が
あっちこっちと
変わっていくので、
悲惨さに自分が取り込まれすぎず
最後まで社会派ミステリーとして
読むことができた。
海で発見された金塊。
小さな島の復興支援と言う名の
横領事件。
遠田にマインドコントロールされてしまった島民たち。
必死に真実を暴こうとする記者。
純粋ゆえに
翻弄されるヒメ。
島民それぞれの
関係性。
ふりかかった震災の爪痕。
ラストに向かい
グイグイと引き込まれてしまった。
染井さんの震災への
想いが伝わるミステリーだった。 -
Posted by ブクログ
3.11の震災後、『こういう人たちは一定数いたんだろうな』
と思える設定の人物がこの島に凝縮されて話しは進む。
何もかも失い復興中も失い続けた小さな島で、
失っていた人間性を取り戻した青年がいる事が、
本人の罪や謝罪の意識も含めてひと筋の光なのか。
当時も今も東京に住んでいる自分は
震災で失った知人もなく、
当日の交通機関の麻痺くらいしか実害がなかったので、
その分軽々しく震災の何ごとも口にしてはいけないと思っていたしそうしてきた。
なので正直この小説は読んでてキツかった。
でも作者が最後に言っているように、
震災の何もかもを忘れない事が鎮魂であり慰霊なんだなと。
現在の能登が、被災した1年前と
ほぼ変わらない状況であることに
絶望と怒りを感じてます。
311より確実に遅い。 -
Posted by ブクログ
染井為人さん著「海神」
著者の作品はこれで4作品目になる。
購入するまでタイトルの読みは「かいじん」だと思っていたが、購入時に表紙に小さく「わだつみ」と書いてあるのを見て、また読み間違えていた事に気付いた。
物語は「3.11 東日本大震災」の復興が主軸になっている作品。実際に岩手県山田町でおきた復興支援金を私用化して横領していた「NPO法人大雪りばぁねっと」の事件が思い起こされる。きっと作者はこの事件を元に本作品を描かれたに違いない。
どんなに人が死のうが苦しもうが平然と私欲を募らせる輩はこの作品の様に悲しい話だがどこにでもいる。
私欲を募らせるのは大いに結構だが、他所でそういう輩同士で取った取られたとやっとけと思う。その土俵内で相撲をとれ、その土俵に一般人を、特に被災者を巻き込むな。
ましてや復興支援金とはどういうお金なのか?知っていながら手をつけている。
人々の悲しみを乗り越えて復興に向けてと思いの詰まったお金を軽々しく私利私欲の為に懐に納めるその輩達の神経を本当に疑う。
「人道的」な側面からしてみれば同じ人間、同じ日本人として自分は認めない。
獣の類いの生き物なのだろう。ならば折に入れて見せ物にして丁度よい。一生折の中で見せ物として暮らしていけばいいだろうと思う。
そこらの石でも投げつけられながら一生を終えてほしい。
過激な発言になってしまったが凄く胸糞悪い作品だった。この作品を読んでいて「大雪りばぁねっと」の事も思い出し、余計に腹がたってきている。
そういう意味では感情移入させられる良い作品だったに違いない。
-
Posted by ブクログ
染井さん4作目。
作中の人たち以外、誰の助けも借りず、たった19か20の子供がお金を自力で稼ぎつつ、生存者がどこにいるのかを調べつつ、逃走されて面目丸潰れ、でホンキ出してる警察の目をかいくぐり、488日間も逃げられるものだろうか?
─という疑問は置いといて。
なぜ彼が脱獄したか?
行く先々で関わる人々が最後にどう繋がっていくのか?
最後の、比較的希望が見える終わり方はよかったが、良い結末ではない。
こういう、光と暗さがないまぜになっているような感覚はいつも染井さんの作品で感じることで、なんだろう、捨てたもんじゃないっていうか。世の中真っ暗ってわけでもないぞ、というか。
薬丸さんの作品にもあったが、秘密があるとどうしても人間関係は浅くなり、深入りするとそこからほころびて、バレてしまう。相手は「犯罪者」と「目の前の彼」との間で思い悩むことになる。だけど彼の「ほんとう」に触れた人たちは、自然と彼を信じる動きに出るのが良い。それこそ、世の中まだ捨てたもんじゃない。見ててくれてる人は、いる。
途中までは、彼の目的がどこにあるのかわからないせいで手に汗握ってた。実は何かの理由で殺し損ねたお母さん(生存者)を殺そうとしてるんだったら?
読者視点でさえいい人に見えて、その実、途中で誰か都合悪い人を殺してたり?しないだろうな?匿ってくれた人の生活を破壊しやしないかと、ヒヤヒヤしてた。
冒頭で出て来た子は東京で挫折して、戻って来て介護施設で働くのだけれど、その子の家族がすごくまともで、逃げ回る彼とは正反対に未来があって、泣けてきてしまった。
逃げてる彼は、自分も困ってるのに、目の前の困っている人を放っておけない。正直で、綺麗で真っ直ぐで・・真っ直ぐすぎて、ちょっと現実味があまりない、っちゃなかったな。
なんでか知らないけど途中から高橋文哉くんで再生してた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ彼のことを、守ってくれる人がそんなに居ないもの?
児童養護施設での彼も、きっといい子だったはず
そんなことする訳ないって声を上げてくれてた?それでも警察が揉み消した?
逃亡中の短い期間に出会った人たちが、あんなにも彼の無実を信じることができたのに、どうして?
普段から素行が悪い子、でもなかったのに?
こんな理不尽なことがある?
冤罪ってこんな事が重なるの?
もう、本当に許せない
人の人生が潰されていく、善良な人の
冤罪の酷さを、伝えたかったから、敢えての展開なんだろうけど…つらすぎる
最初は面白くて続きが気になってスラスラ読んでたけれど、最後に近づくに連れて、恐ろしい結末になりそうで怖かった。
きっとハッピーエンドにはならないんだろうと、ビクビクしながら読んだ。
昔の彼を知ってた訳じゃないのに、整形した彼と同じ人だってわかる?←まだ言ってる
そんな、気づくもの?
もう、本当にかなしい -
Posted by ブクログ
後書きにて著者本人による各作品の解説付き。全編、12年間の経験が元になっているそうです。
芸能界、何かに秀でた人たちの世界なのは当然として、そこにさらに強靭な精神がないとやっていけない世界。。一度光を浴びてしまうと、それがなければ生きられない身体になってしまうのかな。
いいねなどは読んでいて辛すぎた。
一番好きなのはクランクアップ。まぁ、展開としてはベタ(よくある)だったけど、だんだんおかしな空気になってる気がする?からの→不安増大 にまんまとはまってしまった怖かった。
終幕も怖かった。すぐにあーこれヤバいなとわかって、でももちろん止まらず予想しているオチまでまっしぐら。
ほんの気の迷い も同様に「…ん?」と思った時にはもう遅かった。
娘は女優 を一番最後に収録してくれたことに感謝。あんな人やこんな人、うわぁ…って人たち見せられて…それでも、どこか温かみがある、これこそが染井さんなんです。