染井為人のレビュー一覧
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真面目な公務員が転落の一途をたどる、一夏の記録です。
登場人物は揃いも揃って一癖も二癖もあり、程度の差こそあれ見事なまでの悪人ばかりです。
(強いて言えば、脇役の嶺本だけまともです)
主要人物に誰一人として共感できず、応援したいと思える者もいません。
にもかかわらず、彼らがどこまで破滅へ突き進むのか目が離せなくなるのです──どこか悪趣味なまでの高揚感とともに。
だが、彼らは最初から怪物だったわけではありません。
皆、広義の落伍者ではありますが、破滅の引き金はほんの些細な躓きや、不運なアクシデントに過ぎないのです。
あるいは、一度転がり始めた途端に踏み留まれなくなったことこそが、真の悲劇なのかもしれません。
そう、持ち直す機会はあったのに、分かっていても楽な方へ流れてしまうことに抗えなかったのです。
だからこそ、恐ろしい。
どれほど平穏な日常を生きていようと、これは明日自分に起きてもおかしくない出来事なのだから。
登場人物全員に(共感出来ないと書きましたが)同情出来る部分はありますし、リアルな自分への戒めにもなります。
そういった意味では、本書は単なるフィクションにとどまらず、静かな警鐘として胸に突き刺さる人も多いことでしょう。
そして、ラスト!
強烈な皮肉に満ちた結末に、思わず唸らされました。 -
Posted by ブクログ
社会派サスペンス小説。☆3.5です。
親元を飛び出した15歳の少女がたどり着いたのは新宿歌舞伎町。そこは人生をあきらめた彼女にとって気楽な居場所でもあり、食い物にしようとする大人が寄り付く危ない街でもあった。とある事件に巻き込まれた少女は、その復讐に身を委ねることに・・・
主人公のキャラ作りがすべてですね。欲望と犯罪の街で逞しく生きながらも、なぜか一切の気負いが無い少女。重い話を軽快なエンタメにしてくれている気がします。暗いはずの復讐劇に痛快感すら感じられます。
ストーリーは大胆なくらいシンプルで多少強引なところもありますが、この主人公なので許容ですね。 -
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○本のタイトル『みずいらず』
○著者名 染井 為人
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○魅力
今までの染井為人さんの作品からは想像もつかない、新しい魅力に溢れた一冊だった。
作中で描かれる夫婦の日常ややり取りは身近なものばかりで、とても共感しやすく、気づけば物語の中にどんどん引き込まれていく。
連作短篇で構成されていて、各話の終盤になると、前半に抱いていた感情が爽快にひっくり返される「まさか!」の展開が待っている。
そこには胸がジーンと熱くなるような温かい愛が詰まっていて、「一瞬、誰の作品を読んでいるんだっけ?」と戸惑ってしまうほど。
ですが、圧倒的な面白さと「もっと続きを読みたい!」と思わせる抜群の牽引力は、間違いなく染井さんの手腕そのものだ。
どのお話も甲乙つけがたいほど魅力的。 -
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ネタバレ佐々木がただただ可哀想だった。薬とヤクザには近づいてはいけない。でも母子家庭のお母さんの旦那さんのところに行きたい気持ちはすごく理解出来た。お母さんと息子はあの世でお父さんに会えてたらいいな。生保の不正受給もだけど話はそれるが外国人にお金をかけすぎす日本国民にお金をかけて欲しいなと思いながら読んだ。
・「自殺?」「ええ。遺書にしては簡単なものでしたが、紙切れに『勇一郎さんのところへ行きます』と一言書かれていたものですから。勇一郎さんというのは古川佳澄さんの死別した夫です」
・ 誰もしてくれないのだから、自分が己の人生を肯定してやらなきゃかわいそうだ。 -
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さまざまな登場人物が、「因縁の相手」や「災難」という黒い糸でぐちゃぐちゃに絡み合っていく様子を、テンポよく、わかりやすい文章で描いた作品。
染井為人さんは『ひきこもり家族』でも魅力的で個性的な登場人物を描いていたが、本作でも一筋縄ではいかない人物ばかりが登場する。
・DVの元夫を持つシングルマザーで、結婚相談所に勤める主人公。
・実家が大きな寺で、爽やかなイケメンながら一回り年上の主人公に想いを寄せる後輩男性。
・有名宗教の幹部を親に持つ、小学生の同級生。
・若い継母に連れられて転校してきた少女。
・突如、心を病んで交代することになった担任教師。
・結婚相談所に登録している、ひと癖もふた癖もある女性会員。
彼らが思いもよらない形でつながり、物語は予想外の方向へ転がっていく。
現実離れした展開もあるが、小説ならではの大胆さとして楽しめた。爆発や傷害事件などが次々と起こり、「次は何が起こるのか」とページをめくる手が止まらない。
さすが横溝賞出身というべきか、意外性のある真相も含め、ミステリー作家らしい構成力が光る、エンタメ性の高いホラーサスペンスだった!おもしろかった! -
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社会派ミステリー。
殺人の罪で死刑判決となった少年が脱獄した。工事作業者、フリーライター、旅館住み込み、パン工場作業員、グループホーム職員、仕事を転々とする逃避行の先にあるものとは・・・
作者自身がエンタメ小説であると述べていますが、確かに良くも悪くもエンタメでした。
本作のテーマである〇〇罪という大きな社会問題を意識しつつ、脱獄犯の逃亡生活の緊張感とそこでの束の間の人間ドラマが上手く描かれています。染井さんの心情描写は秀逸で、人物の想いが何の引っ掛かりもなく胸に染み入ります。
一方で、次々と展開する怒涛のイベントは如何にもエンタメ的で、個人的にはちょっとわざとらしく感じました。これくらいが好きという読者も多いでしょうが。
終盤のドン底に落としてからちょっと上げるという締め方には色々な意見があるようですが、私は嫌いではないです。〇〇罪に対する作者の思いが反映されていると感じました。 -
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久しぶりに普通の読書が出来た嬉しさ。
1ヶ月に1冊ペースはまだまだ程遠い…もっと読みたい気持ちはある。
本題ですが、めちゃくちゃ没入して読んでしまった!
久々に読書の楽しさを味わったな〜
ここまでの厚さの本を読むことはなかなかないけど、本当にすらすら読めた。本当に面白い本ってむりやり時間を捻出してまで読もうとするんだなと実感。果たして私はそんな風に本を読んでいるのだろうか笑
ページをめくることが止まらないのはただただ続きが気になるから!なんでなんで?と最後までその一心で読み続けた!こんな本初めてかもしれない…
つい最近、袴田さんの無罪が確定したこともあるし
タイムリーに今の世の中を描いていると思うと同時に、本当にこんなことがあるのかと思うとそれこそ神様なんで?と思う。そんなことすらもどこかに意味があって欲しいと願ってしまう。
だけど私はこの本を読んで、日本の法制度について考えるきっかけになった!だから、悲しいニュースも、胸が苦しくなる事件も、周りの人や残された人たちがこれから生きていく上で必要な出来事だったんだと思いたい。
本当に色々なことがある世の中だけど、だからこそ、美しいもの、感動すること、楽しいことに心を躍らせていたい。 -
Posted by ブクログ
映画化されている作品ということくらいしか知らずに読み始めたけれど、とにかく読んでいてつらかった。
生活保護の不正受給を通して、制度のほころびや、人が少しずつ追い詰められていく怖さが描かれているように感じた。
終盤はもはや地獄絵図。
それでも最後に小さな救いを感じたのは、主人公のもとへ届き続ける一枚一枚の絵。きっとあの女の子は、今も彼のことを思いながら描いているのだろう。あの絵だけが、この物語の湿った空気の中で差し込む、ほんのわずかな光だった。
読後感は決して爽やかではない。でも、この嫌な空気をここまでリアルに味わわせる小説はそう多くないと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ引きこもりの長期化と、「引き出し屋」と呼ばれる自立支援センターの闇を描いた社会派エンターテインメント小説。
自立支援という美名のもとに当事者を力ずくで連れ去る「引き出し屋」の実態。ニュースの文字面だけでは決して伝わらないその生々しい恐怖に、息を呑む。
本作は、当事者の若者と中年ひきこもりの母親という二つの視点から、同じ施設での物語が語られる構成だ。双方に深く感情移入させられる一方で、物語は「施設長殺害の隠蔽」を巡る息詰まるクライムサスペンスへと変貌。善意が悪意へと反転し、事態が泥沼化していく展開には暗澹たる気持ちにさせられる。
しかし、その泥沼の中で描かれるのは、悪に手を染めて初めて「自分の意志」を持ち、人間性を取り戻していくという皮肉で切ない逆説のドラマでもある。
ひきこもりという根深い問題への安易な解決策は提示されない。それでも、二転三転する伏線回収の果てに訪れるエピローグは、張り詰めた心にほっとする救いをもたらし、思わず涙が滲む。