佐藤正午のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
すべてメールでやり取りされるインタビュー集。
相手は現役バリバリの作家、性格は偏屈な気性。
表情が読み取れないから、
聞き手は正しく理解される以前に
誤解を生まない文章に仕立てなければならない。
そう、普通はそう考える。
一巻目に登場する聞き手の伊藤ことこ嬢は、豈図らんや、
大胆というか、分をわきまえないというか、
無知の知を逆手に取ったかのように
のっけからトンチンカンな質問を繰り出し
早々にして作家を激怒させてしまう。
佐藤正午は3回目の返信にあたり、
「件名:喧嘩うってるのか」と回答。
激怒を通り越し呆れたのか、
「ここからは編集部にむけて書きます」
「……こんなことをへいきでやる人間を、
インタビューの質問者として起用した編集部
に強い不信感を持ちます。
(……)こんなひとといっしょに仕事はできません。
はやいうちにどうにかしてください」と書く。
で、途中退場。
妙ちきりんな聞き手1号退場後も
終始小さな軋轢が生じるも急遽登板した、
聞き手2号の東根ユミ嬢は、
時に不遜な言動、時に小いじわるな舌鋒ならぬ筆誅が
加えられるも、彼女のことをお気に召した様子で
本来のインタビューの趣旨である、
「小説のつくり方」に即した内容が仔細に語られる。
気難しい佐藤正午を饒舌に語らせたのは
何よりも彼女の著作の深い読み込み、
提示された事に対する執拗なまで即確認する姿勢、
それは時にストーカー並みであるが、
聞き手に徹するプロ根性がすばらしい。
本書の白眉は『鳩の撃退法』に取り掛かる直前から
上梓に至る話まで、ドキュメントタッチで書かれてあり、
佐藤正午ファンには堪らない内容となっている。
追記
ふと頭をよぎり、聞き手であった
ふたりのライター名を検索してみた。
存在していない…。
まじかー。
だとしたら、
本作は自作自演のインタビュー集?
怖い作家である、佐藤正午。
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Posted by ブクログ
単行本が1998年刊なので約20年前の作品ですが、本作の中核を成す超常現象および、SF・ミステリを前面に出しつつ実は恋愛小説だったという体裁から考えると、直近の直木賞受賞作『月の満ち欠け』と相似形をなす作品となっているように感じました。
本作の読みどころは構成の上手さです。北川健に起きる事象自体は、先行作品もありさほど目新しいものではありませんが、それに付随する伏線、登場人物各々の背景およびそれらが明らかになる過程が非常に凝っていて面白かったです。バックギャモンを人生になぞらせるくだりのように、本筋とは関係ないところで時折出てくる小ネタも味がありました。
星を一つ減らしたのは、第九章で顕著にみられるように、ご都合主義的な展開が散見されたからです。例えば私だったら事前に詳細を調べて、事故自体をなかったことにするよう行動すると思います。主人公が北川のことをずっと思い出せないのも不自然。もっとも、このあたりは人知の及ばない大きな流れの中に我々がいることによる、と解釈すれば大した疵ではないのかもしれません。
本作に登場するキャラクターは、既読の作品のそれとほとんど変わらないように感じました。男性の主人公には時々びしっと決めてほしいなあ、とじれったい気持ちを覚えることがあるのですが、何作か読むうちにそういう作風の方だししょうがないか、と思えるようになってきました。これを安定した作風ととるか、芸が無いととるかによって、佐藤正午作品についていけるかどうかが決まるような気がします。 -
Posted by ブクログ
皆さんが第1,2章が読み難いと書かれていたので、多少構えて読み始め、そのお蔭で分かり難くはあったが面食らわずには読めた。
そして確かに読み終えると、と言うか私の場合は読んでる途中でもだったけど、そこに戻ってくる。
しかし、そうした変わった構成だけで読ませた訳ではないですね。
読んでる途中から、何だかミスリードされているのではないかという疑心暗鬼と言うか違和感のようなものがずっと引っ掛かっていて、読み終って最初の章に戻っても、「ブルー」という別に書かれて今回一緒に収められた、一種の完結編のようなものを読んでも、その印象は残る。
変哲の無い、読みようによっては陳腐なお話しを、含みを持たせて一筋縄ではないものに仕立てたところが、この作者たるところ。 -
Posted by ブクログ
佐藤正午に二人のライターがメールによるインタビューを試みるという企画。
数年にもわたるこの企画が書籍化されたのがこの本。
ものすごく面白かった。なんど顔がにやけてしまったか。
でも基本的には人にはお勧めしない。
正直、佐藤正午ファンではないければ全く面白くない。
彼の本を読んだことがなければちんぷんかんぷんだろうし。
逆を返せば、佐藤正午ファンは間違いなく楽しめる。
「ほえ」って使うんだ、リアルで。
津田伸一ってやはりまんま佐藤正午!?
もうこの「ほえ」だけでツボ。
でもね、多分みんな疑ってると思うんだけど、この二人のライターは本当に存在しているのか?
佐藤正午がでっちあげたライターに、まんまと読者は翻弄されているんじゃなかろうか。
だってねぇ、途中でインタビュアーが交代ってあるかな(笑)
それとも担当編集がライターになり済ましているのか。
どちらにしても怪しい・・・。
それはぶっちゃけどっちでもいいんですけどね、面白いから。
屁理屈満載、そう鬱で気分屋の佐藤正午の人となりが垣間見れただけで大満足。
もちろん大先生の手のひらの上で転がされているのは百も承知で。
このインタビュー続きも出てるみたい。絶対読もう! -
Posted by ブクログ
佐藤正午の人参倶楽部を読みました。
地方都市のスナックを舞台に透明な筆致で描かれた恋愛の物語でした。
真夜中のスナックで妻子がいるのに、ときどき女の子と付き合っているスナックのマスターが主人公です。
不倫に疲れた女、冗談だけの小説家、来るはずのない女を待つ男といった人物たちがマスターとたわいもない会話をしていくなかで、それぞれの人物像が浮かび上がってきます。
それぞれの登場人物の視点で、思い通りにいかない恋愛の物語が語られていきます。
マスターの人間的な魅力にひかれて彼らはスナックに集まってくるのでした。
最後に登場する主人公の妻の描写が特に秀逸だと思いました。