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小説家はどんなふうに読み、また書くのか。近代日本文学を代表する小説家たちの作品を書き写すように読み解きながら、「小説の書き方」ではない「小説家の書き方」を、小説家の視点から考えるユニークな文章読本。読むことは書くことに近づき、読者の数だけ小説は書かれる。こんなふうに読めば、まだまだ小説だっておもしろい。
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Posted by ブクログ
新書に抵抗がある人は少なくはないと思う。 堅苦しい、書いてあることが難しいというイメージが私にもある。そんな私にも「小説の読み書き」は、するすると滑らかに読むことができた。読書好きなら、(好きでなくても国語の教科書を読んできた人なら)必ず聞いたことがある作家から、初耳の作家まで作者独自の視点で作品の...続きを読む粗筋や文体を語ってくれる。押し付けがましさもなく、思わずその作品を読んでみたくなるような語りで、楽しく読むことができた。「雪国」「痴人の愛」「夜の終わる時」など、改めて読んでみたい作品がたくさん出てきてワクワクしている。
様々な小説を佐藤正午さんという小説家が読み解く。視点もユニークであり、言葉を生業としている小説家だからこそ、丁寧にこだわるところを深掘りしている。国語、読み方、書き方について、学びを得られるし、何より読んでいて楽しいと感じた。
小説家佐藤正午が、芥川龍之介や太宰治ら大作家たちの小説について、分析したり、突っ込んだり、要は(敬意を込めながら)言いたいことを言っている本。 例えば、当時中学生の太宰治が、井伏鱒二の「山椒魚」を読んで、坐っていられないくらい興奮したという話に対し、中学生の自分はどちらかといえば「すわっていられない...続きを読むくらいに退屈した」といじけてみせつつ、太宰がなぜそんなに興奮したのかを推理していく。 そんな深読みをするのか、そんな所に目をつけるのかと、最初から最後まで新鮮だった。
文章を書く方には激しくおすすめします!! 文章の書き方について書いてある本じゃなくて、 佐藤正午さんの読書感想文なのですが、 本当に勉強になりました。 書くことが楽しくなりました。
タイトルを一瞥するや、てっきり現役作家による名作の解説本と思い、読むもストーリーにはさほど触れない。さてさて、どういうこと? 本の扉の紹介文を読む。完全な思い違い。本書は漱石〜開高健まで近・現代作家 総勢24名の作品を丹念に読み解きながら、『小説の描かれ方』ではなく『小説「家」の書き方〈技巧・癖・...続きを読むこだわり等〉』を考察した一冊。 そう、本書は新手の文章読本。文章読本といえば、谷崎・川端・三島・丸谷ら名だたる作家が著しているが、本書はこれまでのものと一線を画す。大上段に振りかぶった『文章指南』ではなく『随筆』という体を取っていること。 一貫して、初読時に抱いた印象や作品と出会った際の個人的体験や思い出からアプローチ。その着眼点は実に細かい。よくぞ見つけましたな的文章上の癖・性向に着目し、本丸である『作家の本質』を射抜く粘着性のある考察を提示。この帰納法的考察が実にユニークで、随筆の愉しさを堪能できる。警視庁特命係 杉下右京の口ぐせ『細かいところまで気になってしまうのが僕の悪い癖でして〜』というアレを想起し、苦笑い。 例えば… 太宰治『『人間失格』 「無頼派の作家はみんな結婚している」という書き出しで、まずは無頼派 代表作家をいたぶり、結婚しているからこそ、家庭を蔑ろにできたり家庭の幸福を踏みにじれる…と、学歴無用論を唱える人は決まって高学歴みたいな『あるある論』を述べる。 三島由紀夫『豊饒の海』 4部作からなる豊饒の海の特徴として、おびただしい量の直喩が登場する事に触れ、その最後の直喩が「数珠を繰るような蝉の声」であると。その比喩から三島の文体をめぐる考察を開陳。 芥川龍之介『鼻』 芥川作品は何回読んでも読み上げた気がしないのなぜか?読み返すたびに初めて読むような印象を持つ。芥川龍之介に対する印象を直言。その理由が実に明晰で目からウロコ状態。 森鴎外『雁』 どんな小説だったか記憶にないと坦懐しつつ、ただ小説に出てきた『サバの味噌煮 』のことだけは鮮明に記憶していると。いまだにサバの味噌煮を食べる度に『雁』を想起と語る。 ひとつの文章の成り立ちや使われている語句の選択にこれだけプロの作家はこだわっているのかを知れると同時に、〈鳥の目 虫の目 魚の目〉をもって射ぬかんとする作家のサガも知れる、一粒で二度美味しい一冊。
著名な小説家の小説を一編選び、小説家の文体から解説を加える評論書。深く分析するわけではなく、書き出し等の一文を取り上げて軽めの分析や感想を書いているため、堅い雰囲気はなく気軽に読める。その気軽に読めるという点が良い。信奉者の盲信的な解説ではないから、読みながら読者が様々な想いを馳せる余白がある。
25人の小説家の代表作を著者が読んでコメントする面白い企画の本だ."図書”で読んだ記憶も一部あったが,改めて通読すると,著者がかなり素直な気持ちを書き記していることに感心した.勘違いも数点あるが,それを素直に改訂している姿勢は,政治家に見せたいものだ.取り上げていた中で大作は三島の「豊饒の...続きを読む海」だと思うが,これはしっかり読んだ.かなり昔なので,佐藤の評価とは相いれない部分があったが,小説家が小説を考える事例は少ないので,面白かった.文章の癖をそれぞれの作家から引き出しているのは,職業的なものだろう.
情けない話、ここで取り上げられている小説の過半数は未読なんだけど、ちょっと読んでみたくさせるような、そんな書評的ニュアンスもある作品。でもそれ以上に、物書きの観点に触れられるのが醍醐味で、なるほどそういう見方も楽しそうだな、って思わされることもしばしばだった。どうせ読むなら味わい深く楽しみたいし、そ...続きを読むの道標になりそうな内容でした。
「小説の読み書き」というタイトルからだと「ああ、小説の書き方みたいな本かなぁ」と思うのだけれども、その実は至極まっとうな文藝評論集でした。 文藝評論、いや、評論というジャンルは、評論のとっかかりが身近であればあるほどいいもんだと思います。そうじゃないとどうなるかと云うと、テレビに出ておいしいも...続きを読むの食べて、なんやかコメントを言う、悪しき「評論家」像に近づいていってしまう。「うまーい!」だの「まったりとしていてそれでいて生臭い」だの言うだけでお金がもらえる職業が評論家だと思われると困っちゃう。 そうじゃなくて、評論家だってなんらかの視点やものの考え方を読者に与える存在であっていいはづで、そのためには出来るだけ己が身にひきつけねばならない。真のオリジナルは各人の中にしかないわけだからして。 井伏鱒二の『山椒魚』にたいするとっかかかりかたが好きだ。太宰治が山椒魚を呼んで「興奮した!」とはいうものの、自分としてはあんまり別に特にそうでもない。じゃあ、「山椒魚」を読んだ太宰少年が、どこが面白くて「興奮」したのか? ほれほれ、これが「評論」ですよ。これだったらちょっと原稿料とってもいいと思うでしょう。 小説家としての佐藤正午作品は寡聞にして読んだことがないのだけれども、この本を見るにつけ、ものの書き手として非常に真摯だなぁと思って読みました。 やや「俺ってこういう人間だから!」という押し付けがましい部分が面倒くさいなぁと思う部分もありますが、文藝評論としてはかなり面白い部類に入ると思います。
小説や文章の解説、というよりは現役作家による感想文、という印象を受けた。 堅苦しさもなく、話題にされているのは有名な小説ばかりなので楽しんで読めた。 筆者のユーモア溢れる感想文の数々を面白がりながら読むのがこの本の正しい読み方だと思う。
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