【感想・ネタバレ】小説の読み書きのレビュー

あらすじ

小説家はどんなふうに読み、また書くのか。近代日本文学を代表する小説家たちの作品を書き写すように読み解きながら、「小説の書き方」ではない「小説家の書き方」を、小説家の視点から考えるユニークな文章読本。読むことは書くことに近づき、読者の数だけ小説は書かれる。こんなふうに読めば、まだまだ小説だっておもしろい。

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Posted by ブクログ

新書に抵抗がある人は少なくはないと思う。
堅苦しい、書いてあることが難しいというイメージが私にもある。そんな私にも「小説の読み書き」は、するすると滑らかに読むことができた。読書好きなら、(好きでなくても国語の教科書を読んできた人なら)必ず聞いたことがある作家から、初耳の作家まで作者独自の視点で作品の粗筋や文体を語ってくれる。押し付けがましさもなく、思わずその作品を読んでみたくなるような語りで、楽しく読むことができた。「雪国」「痴人の愛」「夜の終わる時」など、改めて読んでみたい作品がたくさん出てきてワクワクしている。

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2023年11月28日

Posted by ブクログ

様々な小説を佐藤正午さんという小説家が読み解く。視点もユニークであり、言葉を生業としている小説家だからこそ、丁寧にこだわるところを深掘りしている。国語、読み方、書き方について、学びを得られるし、何より読んでいて楽しいと感じた。

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2023年05月18日

Posted by ブクログ

小説家佐藤正午が、芥川龍之介や太宰治ら大作家たちの小説について、分析したり、突っ込んだり、要は(敬意を込めながら)言いたいことを言っている本。
例えば、当時中学生の太宰治が、井伏鱒二の「山椒魚」を読んで、坐っていられないくらい興奮したという話に対し、中学生の自分はどちらかといえば「すわっていられないくらいに退屈した」といじけてみせつつ、太宰がなぜそんなに興奮したのかを推理していく。
そんな深読みをするのか、そんな所に目をつけるのかと、最初から最後まで新鮮だった。

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2018年01月08日

Posted by ブクログ

文章を書く方には激しくおすすめします!!
文章の書き方について書いてある本じゃなくて、
佐藤正午さんの読書感想文なのですが、
本当に勉強になりました。
書くことが楽しくなりました。

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2009年10月21日

Posted by ブクログ

タイトルを一瞥するや、てっきり現役作家による名作の解説本と思い、読むもストーリーにはさほど触れない。さてさて、どういうこと?

本の扉の紹介文を読む。完全な思い違い。本書は漱石〜開高健まで近・現代作家 総勢24名の作品を丹念に読み解きながら、『小説の描かれ方』ではなく『小説「家」の書き方〈技巧・癖・こだわり等〉』を考察した一冊。

そう、本書は新手の文章読本。文章読本といえば、谷崎・川端・三島・丸谷ら名だたる作家が著しているが、本書はこれまでのものと一線を画す。大上段に振りかぶった『文章指南』ではなく『随筆』という体を取っていること。

一貫して、初読時に抱いた印象や作品と出会った際の個人的体験や思い出からアプローチ。その着眼点は実に細かい。よくぞ見つけましたな的文章上の癖・性向に着目し、本丸である『作家の本質』を射抜く粘着性のある考察を提示。この帰納法的考察が実にユニークで、随筆の愉しさを堪能できる。警視庁特命係 杉下右京の口ぐせ『細かいところまで気になってしまうのが僕の悪い癖でして〜』というアレを想起し、苦笑い。

例えば…
太宰治『『人間失格』
「無頼派の作家はみんな結婚している」という書き出しで、まずは無頼派 代表作家をいたぶり、結婚しているからこそ、家庭を蔑ろにできたり家庭の幸福を踏みにじれる…と、学歴無用論を唱える人は決まって高学歴みたいな『あるある論』を述べる。

三島由紀夫『豊饒の海』
4部作からなる豊饒の海の特徴として、おびただしい量の直喩が登場する事に触れ、その最後の直喩が「数珠を繰るような蝉の声」であると。その比喩から三島の文体をめぐる考察を開陳。

芥川龍之介『鼻』
芥川作品は何回読んでも読み上げた気がしないのなぜか?読み返すたびに初めて読むような印象を持つ。芥川龍之介に対する印象を直言。その理由が実に明晰で目からウロコ状態。

森鴎外『雁』
どんな小説だったか記憶にないと坦懐しつつ、ただ小説に出てきた『サバの味噌煮 』のことだけは鮮明に記憶していると。いまだにサバの味噌煮を食べる度に『雁』を想起と語る。

ひとつの文章の成り立ちや使われている語句の選択にこれだけプロの作家はこだわっているのかを知れると同時に、〈鳥の目 虫の目 魚の目〉をもって射ぬかんとする作家のサガも知れる、一粒で二度美味しい一冊。

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2020年06月09日

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著名な小説家の小説を一編選び、小説家の文体から解説を加える評論書。深く分析するわけではなく、書き出し等の一文を取り上げて軽めの分析や感想を書いているため、堅い雰囲気はなく気軽に読める。その気軽に読めるという点が良い。信奉者の盲信的な解説ではないから、読みながら読者が様々な想いを馳せる余白がある。

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2019年04月29日

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25人の小説家の代表作を著者が読んでコメントする面白い企画の本だ."図書”で読んだ記憶も一部あったが,改めて通読すると,著者がかなり素直な気持ちを書き記していることに感心した.勘違いも数点あるが,それを素直に改訂している姿勢は,政治家に見せたいものだ.取り上げていた中で大作は三島の「豊饒の海」だと思うが,これはしっかり読んだ.かなり昔なので,佐藤の評価とは相いれない部分があったが,小説家が小説を考える事例は少ないので,面白かった.文章の癖をそれぞれの作家から引き出しているのは,職業的なものだろう.

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2017年10月16日

Posted by ブクログ

情けない話、ここで取り上げられている小説の過半数は未読なんだけど、ちょっと読んでみたくさせるような、そんな書評的ニュアンスもある作品。でもそれ以上に、物書きの観点に触れられるのが醍醐味で、なるほどそういう見方も楽しそうだな、って思わされることもしばしばだった。どうせ読むなら味わい深く楽しみたいし、その道標になりそうな内容でした。

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2014年02月05日

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「小説の読み書き」というタイトルからだと「ああ、小説の書き方みたいな本かなぁ」と思うのだけれども、その実は至極まっとうな文藝評論集でした。

 文藝評論、いや、評論というジャンルは、評論のとっかかりが身近であればあるほどいいもんだと思います。そうじゃないとどうなるかと云うと、テレビに出ておいしいもの食べて、なんやかコメントを言う、悪しき「評論家」像に近づいていってしまう。「うまーい!」だの「まったりとしていてそれでいて生臭い」だの言うだけでお金がもらえる職業が評論家だと思われると困っちゃう。
 そうじゃなくて、評論家だってなんらかの視点やものの考え方を読者に与える存在であっていいはづで、そのためには出来るだけ己が身にひきつけねばならない。真のオリジナルは各人の中にしかないわけだからして。

 井伏鱒二の『山椒魚』にたいするとっかかかりかたが好きだ。太宰治が山椒魚を呼んで「興奮した!」とはいうものの、自分としてはあんまり別に特にそうでもない。じゃあ、「山椒魚」を読んだ太宰少年が、どこが面白くて「興奮」したのか? ほれほれ、これが「評論」ですよ。これだったらちょっと原稿料とってもいいと思うでしょう。

 小説家としての佐藤正午作品は寡聞にして読んだことがないのだけれども、この本を見るにつけ、ものの書き手として非常に真摯だなぁと思って読みました。
 やや「俺ってこういう人間だから!」という押し付けがましい部分が面倒くさいなぁと思う部分もありますが、文藝評論としてはかなり面白い部類に入ると思います。

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2013年07月03日

Posted by ブクログ

小説や文章の解説、というよりは現役作家による感想文、という印象を受けた。

堅苦しさもなく、話題にされているのは有名な小説ばかりなので楽しんで読めた。

筆者のユーモア溢れる感想文の数々を面白がりながら読むのがこの本の正しい読み方だと思う。

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2012年10月28日

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佐藤正午という小説家が読んだ本について小説家的に語るというものだが、評論家ではなく小説家だというところに面白さがある。取り上げられている小説は歴史的な著名作家の小説ばかりだが、佐藤正午はある意味自分勝手に好き勝手にこれを題材として書いている。本の解説でもないので、これを読んだからといってその小説がわかるわけでもなく、私自身はこれらの小説をほとんど読んでいないか忘れてしまっているが、佐藤正午という作家の面白さがよく出た本になっていると思う。

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2012年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
小説家はどんなふうに読み、また書くのか。
近代日本文学を代表する小説家たちの作品を書き写すように読み解きながら、「小説の書き方」ではない「小説家の書き方」を、小説家の視点から考えるユニークな文章読本。
読むことは書くことに近づき、読者の数だけ小説は書かれる。
こんなふうに読めば、まだまだ小説だっておもしろい。

[ 目次 ]
川端康成『雪国』
志賀直哉『暗夜行路』
森鴎外『雁』
永井荷風『つゆのあとさき』
夏目漱石『こころ』
中勘助『銀の匙』
樋口一葉『たけくらべ』
三島由紀夫『豊饒の海』
山本周五郎『青ベか物語』
林芙美子『放浪記』
井伏鱒二『山椒魚』
太宰治『人間失格』
横光利一『機械』
織田作之助『夫婦善哉』
芥川龍之介『鼻』
菊池寛『形』
谷崎潤一郎『痴人の愛』
松本清張『潜在光景』
武者小路実篤『友情』
田山花袋『蒲団』
幸田文『流れる』
結城昌治『夜の終る時』
開高健『夏の闇』
吉行淳之介『技巧的生活』
佐藤正午『取り扱い注意』

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月24日

Posted by ブクログ

日本近代文学の基本を押さえておかなくても小説が書けるということがよくよくわかる一冊。誤読もあったりして、それを追記でフォローしたりしていておもしろい。感想文エッセイ集といった雰囲気で読みやすい。ちょこちょこクスクス笑いもできるし、いい本だと思います。まあ、選ばれている作品や作家にを多少なじみがあれば、きっと楽しめるはず。

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2011年09月03日

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夏目、芥川、太宰、三島など近代日本文学の層々たる大家の名作を読みほぐし、文体を細かく分析。何気ない一文に徹底的に拘り、なぜ作者がそう書く必然性があったのか、どこに推敲の後が見受けられるかをユーモアたっぷりに解き明かす小説読本。

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2009年10月04日

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「無頼という言葉の対義語は何かといえば、それは独身である。」

小説家っていうのはこういうふうに他の作家の小説を読むのかぁ…!選ばれた言葉、文体、表記について、言われてみればなるほど確かに!な指摘ばかり。ときどき吹き出しつつ、著者を含む「文芸」する人たちへの敬意を新たにした。ぜひこの評論は続刊を出してほしい。佐藤正午の小説ももっと読みたくなった。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

山本昌代か誰かが書評で褒めてたのを見て購入。実際面白かった。扱われている作品はどれも有名で、読んだことのある(そして既に忘れてる)ものが多かったのだが、なるほどなるほどと思いながら読んだ。小説の内容よりも形式に注目しての読みというものをここまで分かりやすく、面白く書くことはなかなか容易ではないと思う

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

志賀直哉『暗夜行路』や、夏目漱石『こころ』などの文豪たちの作品を、文章の書き方に着目して読み解いている。

川端康成『雪国』の章では、小説の書き出し(国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった)に触れ、川端康成が「地面」や「あたり一面」など様々な言葉から取捨選択した結果あの文章が出来上がったこと、またそれが書くことの実態だと述べられていた。流し読みしがちな文について、改めて目を向けさせてくれる一冊だと思う。

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2022年01月03日

Posted by ブクログ

絵画が、その背景を知った上で見ることで感動が何倍にもなるのと同じように、小説の場合も、著者が何を意図しているのか、どんな背景があるのかを知った上で読む方が面白い。或いは後から。

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2017年10月24日

Posted by ブクログ

さらさらーっと読んでいる小説をこのように読むひとがいるのか!と感動しました。
書く方に生かしたかったけれど、どちらかと言えば読み方や感想という感じ。わかりやすく名作文学が紹介されているので今後の読書の指針にもなります。

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2014年11月01日

Posted by ブクログ

小説家の読書コラム。本人の小説は未読。
重箱の隅をつつくような話が多いけど、書いてる方もそれに意識的だし、個人的にも読み方として共感するところがあるから楽しめた。
あとがきで、現在活躍中の作家についても書く構想があったけど、ヤバイからやめたという様なことを語っていた。とすると、評論家ってのは絶対小説書けない仕事なんだな。

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2010年07月26日

Posted by ブクログ

 もとは岩波の「図書」に連載されていたもの。
小説家と云う人間が,小説をどう読むか,ということで、近現代の小説家の作品を俎上にあげ、最後に自作を解説して見せた。

 ということで、これは作品評ではない。あくまで小説家と云う職業柄、作品の気になる一節を、何故気になるのか,それはどうしてか等という切り口で語ったものだ。一種の文章(文体)読本。

 勿論,小説を書いている人間には随分ヒントになるものだろうし、また並みの書評じゃないとみても、なるほどこういうこだわりもアリか、と興味深いことだろう。
 しかしまた、酒間の歓談としてもこういうことをやる場合が多いことだろう。どうにでも読め,どうにでも考えられる面白さがある。

 取り上げた小説は次のとおり。
川端康成「雪国」志賀直哉「暗夜行路」森鴎外「雁」永井荷風「つゆのあととさき」夏目漱石「こころ」中勘助「銀の匙」樋口一葉「たけくらべ」三島由紀夫「豊穣の海」山本周五郎「青べか物語」林芙美子「放浪記」井伏鱒二「山椒魚」太宰治「人間失格」横光利一「機械」織田作之助「夫婦善哉」芥川龍之介「鼻」菊池寛「形」谷崎潤一郎「痴人の愛」松本清張「潜在光景」武者小路実篤「友情」田山花袋「蒲団」幸田文「流れる」結城昌治「夜の終わる時」開高健「夏の闇」吉行淳之介「技巧的生活」佐藤正午「取り扱い注意」

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2010年06月15日

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