あらすじ
男と女の噂の真相を、小説に仕立てた作品集
その街ではいくつもの噂話がささやかれている。
結婚から五年が経ち、すっかり冷えきった仲になった夫婦の噂(「好色」)。
酒と博打と女が原因で街から夜逃げした若い男の噂(「カップル」)。
不幸な事件で命をおとした夫と、未亡人となった女の噂(「アーガイルのセーターはお持ちですか?」)。
街のデパートに勤務する男と、街から上京して活躍している女優との噂(「輝く夜」)。
ある交通事故をきっかけに男が悔やむことになる冬場だけあらわれる娼婦の噂(「あなたの手袋を拾いました」)。
アーケード街で似顔絵を描いて街に住み着いた男の噂(「いまいくら持ってる?」)。
かつて街じゅうの男が群がったホステスとある男の噂(「グレープバイン」)。
そしてその街にはひとりの「小説家」が暮らしていた――。
噂はいつも事実よりひと回り大きい。ただ「小説家」にとってこれほど興味をひかれるものもない。噂の収集に余念のない語り手の「私」はその真相を探りつつ、実際に耳にした噂の数々を可笑しみと皮肉にみちた小説へと仕立てあげてゆく。
文壇屈指の小説巧者・佐藤正午が、その街に暮らす「小説家」の視点を借りて描いた、著者真骨頂とも言える作品集。全七篇を所収。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
祝山田風太郎賞受賞!ってんで性懲りもなく正午さんを読んでみた。
新刊のようでいて実はリニューアル本、まだまだ自分もと村上某らと張り合ってた頃の短編集。
それ故かスカし具合は半端ないのだが不思議と嫌味になってないのはファンの贔屓目だろうか… 先ずは初手から街、小説家、ドーナツショップ…と後の作品の津田を嫌でも彷彿とさせる設定にニヤリとさせられる。
そして今回の連作のキーは身の上話ならぬ噂話、どれもこれもしっくりとは収まらないのはいつものことながら本を読む楽しみはこういうことだとさりげなく主張するまさに正午さんらしい一冊であるな、うん
Posted by ブクログ
【本の内容】
結婚5年目の冷めきった夫婦の「噂」、赤い手袋をはめて街に現れる娼婦の「噂」、不幸な事件で夫を亡くした美女の「噂」、奇妙な癖を持つデパート店員の「噂」…。
小さな街に暮らす人々の平凡な人生に隠された過去と事件。
男がいて、女がいて、そこからはじまる愛すべき人間ドラマ。
地味な日常にあざやかな彩りを添える、自分ではない誰かのうわさ話7編。
[ 目次 ]
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で、何がいいたいの?…だめだめ、佐藤正午を読んだ後そんな野暮なこと言っちゃあ。
ストーリーだけを話すと平凡で、怒涛のような盛り上がりはないんだけれど、例えば太宰治を読んだ時の感じに少しだけ似ている。
ちょっとしたフレーズがいつまでも心に残るところなんか。
本作は全編通じての主人公である小説家が7つの噂話の真相を、好奇心のおもむくままに探っていく。
もちろん真相は現実と同じで何ら劇的なことはなく、意外と大したことなかったりする。
多少の謎を残したまま話が終わるので、読み手は本を閉じた後あれこれと想像することができる。
そんなささやかな楽しみのある短編集だ。
著者の作品は、常に何かに対して深追いすることなく一定の距離間を保って他人と接する乾いた感じと、人間ってどうしようもないなあという愛しさみたいなものがミックスしている所が魅力だ。
7つの作品の中でも特に『好色』が好き。主人公・有尾杜夫の徹底した好色ぶりに呆れ、彼の妻の徹底したポストイット貼りにじわじわっと恐怖感を抱いた。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]