佐藤正午のレビュー一覧
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ネタバレ「月の満ち欠け」「鳩の撃退法」が合わなくて、もういいかなぁと思ってた佐藤正午。え、ムッサオモロい…いや凄いやん、とビックりした。
最後の最後まで上記偏見を持って読んでたのが良かったのか?、熟柿の意味が心にジーンって染み渡る。再会とその後の千葉駅での電話のシーンがもうグイグイと心に沁み込んでくる。
親の愛とは、贖罪とは…。主人公みたいな罪を犯すことは滅多にない(あってはいけない)事だけど、生きてきた中で小さな失敗や自分でつけてしまった汚点はあるもの。それを背負って生きていくことの覚悟、覆い隠す行為の辛さ醜さ、親としての矜持と覚悟、そして子供としての向き合い方…もう色々と身につまされることが多 -
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作中、土居さんがスマートフォンに入れて愛用している辞書は『大辞林 第四版』(三省堂)です。(巻末より引用)
そうか〜、やっぱり辞書と言えば三省堂だよな〜
わいが学生のときに使ってたのも三省堂やったわ
「国語」も「漢和」も「英和」も「和英」も三省堂やった
皮の(ビニールね)カバーが重厚感あって、なんか持ってるだけで頭よくなったような気がしたんよな
という訳で「ひき逃げ」です
うーん、なんか二つの正反対の思いがひしめいているんよな
そんなもん自業自得や!だいたい二年ちょっと刑務所に入って「罪は償ったんだから」って言う方も言う方や!そんなもん一生許されへんわ!ずっと辛い思いしてろ!という気持ち -
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序盤から救いようのない話が続き、どこに行っても、どう足掻いても、逃げられない現実とひたすら向き合う。正直、苦しくて苦しくて堪らない話だったのは確か。でも、自分の生に向き合って、精一杯生きていく姿に心を打たれ、気持ちが入り込んでしまう凄い作品。
『熟柿』という言葉は、序盤ではネガティヴで気持ち悪いイメージが強く刻まれる。腐敗や停滞、取り返しのつかなさを象徴していたはずの言葉から、終盤ではまるで違った意味を帯びてくる。落ちきったからこそ得られる甘さ、避けられない終わりを受け入れた先にだけ残る、わずかながらも確かな肯定。人生は巻き戻せないし、失ったものは戻らない。それでも、人はその地点からなお前を向 -
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序盤では、どこか不気味な印象を与えていた「熟柿」という言葉が、物語の終盤で「待っていれば、いつか機会は訪れる」という作品の核心を象徴する表現として再び現れえ締めくくる構成がとても美しかった。
物語を通して、かおりさんの境遇はあまりにも過酷で、読んでいて胸が苦しくなった。罪を犯したとはいえ、償いを終えた人が、ここまで社会の中で生きづらさを背負い続けなければならないのかと、やるせない気持ちになる。一方で、元夫の衝撃的な発言には強い怒りを覚えた。同じ罪を抱えながらも、子どもの成長をそばで見守れた人と、それが許されなかった人。その違いによって生まれる埋めがたい隔たりに、理不尽さを感じずにはいられなかっ -
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熟柿の読み方も熟した柿以外の意味も分からず読み始めました。
→熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時機が来ることを待つこと
轢き逃げの罪に問われ、裁判中に息子、拓を出産。出所後、息子の顔見たさに園児連れ去り事件を起こした彼女は、息子との接見を禁じられ、西へ西へと各地を流れていくお話です。
元夫には、言いたいことは山ほどあるが置いといて(笑)
不運が重なり、そこにあった幸せが夢だったかのように全てをなくしてしまったかおり。
わが子を手放すときの気持ちや一緒に暮らせない現実をどう受け止めたかを想像するだけで苦しい。
生命保険の受け取りを息子にして、毎日一生懸命働く。しかし、不可抗力だ -
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土砂降りの雨が降る夜道、泥酔して眠る夫を乗せて車を運転していたかおり。友人からの電話に気を取られ、老婆を撥ねてしまう。怖くなってそのまま走り去るが、轢き逃げの罪で服役。服役中に息子を出産する。息子は離婚した夫に引き取られ、「母親に死なれた子供」として育てる旨を告げられる。かおりは出所後、息子に会いたい気持ちを抑えられず、息子の通う幼稚園を訪れるが…
結婚して、子供を産み、家族を作り、子供を成長させ、夫とともに年をとり、次の世代の家族へバトンを渡す。そんな世間一般の人たちの歩く道から踏み外してしまったかおり。過ちと向き合い、ひたすら息子を想ってひたむきに生きる。裏切られたり前科を知られて後ろ指 -
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「熟柿」…「じゅくし」と読むことをこの本で知った
27歳のかおりは、酔って寝ている夫を助手席に乗せ運転中、人をはねる
轢き逃げの罪に問われ、服役中に出産
子どもはすぐに引き離され、離婚した夫に引き取られる
会いたい一心でいろいろ行動を起こすものの…
全ての歯車が合わない
とにかく読んでいてそう感じた
あの時ああしていれば、、、の繰り返し
出てくる登場人物が、危うい人が多い
なんで鶴子と縁切らないんだろう
かおりは凄いな
ただいつか息子に会うためだけに、ひたすらに働いて毎日を生きている
そうして気づいたら44歳
「柿の実が季節になれば熟すように、物事の成就には適した時期がある…」
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Posted by ブクログ
帯の書店員さんのコメント通り、「読み終わった後、しばらく他の本を読みたくなかった。」
それぐらい、引き込まれて圧倒された小説。
今年のNo.1かも!
一つの理由として、主人公が息子を産んだ年に近い時期に私も息子を出産したこと。幼稚園、入学式といった子どもの成長、東日本大震災やコロナの時期も息子と拓くんの成長が被る。自分が産んだ子どもに、出産後ずっとずっと会えない、写真すら見れず、近況もわからない。主人公の気持ちを想像すると…。
出産を控え、新車を買い、親戚に祝福された幸せな人生が、一夜にして激変した。自分や周囲の人間の人生をメチャクチャにした重すぎる罪の刑に服し、出所した後のかおりの記憶の