佐藤正午のレビュー一覧

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    『僕の話を聞くとき、決して君は余計な口をはさまなかった。気休めや、慰めの言葉も吐かなかった。いい加減に忘れてしまえと短期に決めつけることもなかったし、ありきたりの、「どんな過ちも時が解決してくれる」式の忠告でお茶を濁すこともなかった。
    「話してみろよ」
    と、会えば必ずきみは言って、僕の話の聞き役を飽...続きを読む
  • 5

    「時間は無駄には過ぎていかないと思うよ。人が時間を無為に過ごすことはあっても」

    『僕には性欲と恋愛との区別がつけられない。性欲と恋愛と魔法の区別もうまくつけられない。』

    『「嘘だけは聞きたくない」とそれから彼女はくり返した。「あたしたちのあいだで」
    あたしたちのあいだで。初めて会ってから十日間に...続きを読む
  • Y

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    タイムスリップをめぐる出会いと別離。その物語はいつも読む者に切ない感情を呼び起こす。
    それは、現代――交通手段と通信手段が著しく発達し、空間を隔てるということがもはや絶対的な障壁ではなくなった――において、今なお容易に(絶対に!?)越えることのできない隔たりこそが「時間」であるからだろうか。

    佐藤...続きを読む
  • 永遠の1/2
    時代は1980年。自分に瓜二つの男が存在することにより引き起こされるたくさんの事件。解決することなどできないが、それでもどうにかしなければ、という中でのスリリングな展開が楽しめる。ドストエフスキー的長いセリフもあり。
  • 放蕩記
    佐藤正午の『ジャンプ』という小説は、コンビニにリンゴを買いにゆくといって消えたガールフレンドと取り残された僕の5年間の物語である。
    ミステリーとして絶賛されたそうだが、これはミステリではなく、紛れもなく優柔不断でやさしくって冷たくって少しシニカルな佐藤正午のいつもの話なのだ、と思った。
    主人公に対し...続きを読む
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    ★SFの設定を生かした男の切なさ★佐藤正午の小説のテーマは「去りゆく女と後悔する男」なのではないか。そして僕は、こういう離れていく女の話が好きなのだろう。解説でも触れているように、同じ時間を何度も繰り返して生きるアイデアそのものはオリジナルではなくても、別の人生では前の人生での知り合いを失ってしまう...続きを読む
  • 小説の読み書き
    文章を書く方には激しくおすすめします!!
    文章の書き方について書いてある本じゃなくて、
    佐藤正午さんの読書感想文なのですが、
    本当に勉強になりました。
    書くことが楽しくなりました。
  • リボルバー
    あたいが今まで読んだ小説の中で一番好きな小説。これを超える話は生涯出てこないだろうと思っている。勿論、この佐藤正午を超える佐藤正午もないだろうと思ってる。ほんとは一番最初に出たハードカバーの装丁が好きなんだけど、イメージがなかった(しょぼん)焦燥の意味を初めて知った思い出深い1冊。
  • 冬に子供が生まれる
    不思議な小説だった。

    「僕は大事なことを忘れているかもしれない。〜そしてそのせいできっと誰かに歯がゆい思いをさせている。」p16
    丸田君が自分の過去をうまく思い出せないように、登場人物の誰もが茫漠とした靄の中にいるようで掴みどころがない。

    いっそすべて超常現象と言ってほしい。
    大切な人に届かない...続きを読む
  • 5

    なんだろう。めちゃくちゃ面白かったんだけどこの気持ちをうまく言葉にできないな。結局愛の話なんだけど津田伸一が冗談と皮肉を言いまくってめちゃくちゃにするから訳がわからない。プロットがテクニカル過ぎて感情がついていかないような、なかなか面白い小説体験… 全く独立した物語でもあるけど、「鳩の撃退法」の主人...続きを読む
  • 冬に子供が生まれる
    これは読みにくい小説ですねえ。

    最初は、何とも曖昧で、一人称の当人も入れ替わり立ち替わりで事態が呑み込めません。勿論、これは意図的な書き方であり、上手いのですが、その分鬱憤が溜まります(^_^;)

    読んでいくうちに分かってくる?いえいえ、ますます混乱が増すばかり。えっ、丸田君が入れ・・・

    終盤...続きを読む
  • 冬に子供が生まれる
    小学生時代の親友といつの間にか疎遠になって、同窓会で無責任に噂話をして…というのはよくある話だけど、UFO見た仲となるとなかなか無い。ミステリーのような、SFのような不思議な物語。
  • 鳩の撃退法 上
    うん面白い。物語的にどうかはまだ半分読んだだけで評価はできぬが、小説としての技法・手法が面白くて素晴らしく、いやこれルール違反じゃない?って感じでとても楽しめる。と言うか、では何が真実で何が創作なのか?などとそもそもこれは小説なんだがな、と言った気持ちで読んでいる。とてもメタな小説で面白い。映画を観...続きを読む
  • 身の上話 新装版
    読み応えのある一冊

    淡々と語られていく形式で、どういう話か見えにくいが引き込まれる
    宝くじは人を幸せにするのか、優しさの裏には何があるのか、夫婦に子供が出来ないことはどれほどの苦しみなのか、等考えさせられた
    普通を生きるのも難しい

    最後に母親が子供の為に祈るシーンに戻ってくるのがよい
  • 冬に子供が生まれる
    途中はどうゆう事、どうゆう事、考え続けるけど到達出来ないループに陥る気持ち。
    鬱々としてるようで表現出来ないけど、先に進んで良かったと言うべきなのか、、、
  • 月の満ち欠け
    人を想い続けると、こんなことが起こるのかも
    しれない。
    最後のシーンが映画のシーンのように
    情景がありありと浮かんだ。
    想いが通じあってよかったと思えた。

  • 冬に子供が生まれる
    二人の登場人物を巡る数奇な物語。

    周囲が同じ「丸田」という名前のしかも小学生まで似ていたという二人を混同しながら話すため、中盤くらいまで(わざとそのような書き方をしているのだが)どっちの話をしているのか混乱するような構成になっている。

    いくら似ているからと言って間違えるのは流石にないでしょう、と...続きを読む
  • 鳩の撃退法 下
    上巻をやっとこさ読み終わったところで、少し見えてきたこの作品の魅力。下巻はまた四苦八苦(苦しいわけではないのだが!笑)で読み終えたが、うまくまとめる言葉を見つけることができないまま、しばらく心の中で温存・反芻しているうちに、まったく感想を書くことができなくなってしまった稀有な作品。
  • 書くインタビュー 1
    作家である佐藤正午氏と、メールを使ったインタビューです。インタビューというと対面で行われるものですが、これはメールを使ってのやり取りをしています。
    最初の方は、どうなってしまうのか心配になる程、やさぐれたやり取りが続きました。途中から、健全なキャッチボールがとなってきて、良い形に収まってきますので、...続きを読む
  • 冬に子供が生まれる
    独特の雰囲気の中で淡々と進んでいく物語。
    マルセイとマルユウの違いで混乱したり、難しめではあったけれど、謎が謎を読んで面白かった。
    考察しだすときりがなくなりそうな奥深い話。