佐藤正午のレビュー一覧

  • 冬に子供が生まれる

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    佐藤正午「冬に子供が生まれる」
    提示される世界は最初から揺らいでるし語り手も誰なのか信用できるのかもわからないし、ミステリなのかファンタジーなのかなんなのか、どういうふうに読んだらいいか判らないまま進んでいって、中盤あたりでふと、これは人の一生についての話なのかと気づいた。佐藤正午だもん。不確かな記憶、埋もれた真実、憶測と誤解で作られた事実、人の一生なんてそんなものかもしれないし。
    中心の4人を除くあらゆる人物が下衆で多くの人物が精神を病んでいる。取り巻く死。終盤に向かうにつれ、その不快で下世話な世界が急に瑞々しく透明になっていく。桜の木の下のラストシーンは圧巻。余韻よ。。

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    2024年06月09日
  • 身の上話 新装版

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    不倫の果ての衝動的な逃避行の最中に宝くじ一等に当選してしまった女性。その大波乱の人生について、本人ではなく、彼女が後に知り合った夫の身の上話として語られているのがとても面白かったです。
    夫の丁寧で淡々とした語り口は、江戸川乱歩の「赤い部屋」を彷彿とさせる不気味さも相まって、じわじわと追い詰められているような気分になり、次々出てくる予想出来ない展開に最後まで一気に読み切ってしまいました。

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    2024年05月25日
  • 鳩の撃退法 下

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    ひえー面白かった。このメタな物語世界に完全に飲み込まれてなにが事実(小説の中の)でなにが小説(小説の中の)なのかが渾然一体となるのを最高に楽しんだ。言ってみればずるいんだけど、とても技巧的でもある。類を見ない構造でめちゃくちゃ面白かった。時系列も視点も作中の事実も創作もさまざまな伏線と共にかなり激しく移り変わるので、答え合わせに今すぐ再読したいほど。なにひとつスッキリしないんだけど読後感は悪くないし、強い余韻を残した。作中で誰かに用いさせた表現をその後主人公がしつこく使うあたりがなんか好きだった。あと、登場人物が誰かの喋り方をそれつまんないですよ、とか評するのがなんだかが印象的だった。ところで

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    2024年04月08日
  • ジャンプ 新装版

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    非常にすっきりとした文章でした。
    カバーイラストの背景は白で書名は薄いグレー、陰影は最小限に手とリンゴを描いているのも納得です。

    リンゴを買いに行ったきり戻らなかったガールフレンドを追う主人公の独白です。

    書き出しがかっこいい。
    カクテルと靴の話から物語が始まるのですがこれは終わりまで、物語に浸った読者をジーンと響かせてくれます。
    火薬を使うような派手な演出はないですが、物語の構成はサスペンスに富んでいて楽しいです。読者の疑問は主人公の緻密な推理と自然に重なっており心地良く読めます。
    ガールフレンドとの馴れ初めのシーンがお洒落で好きです。

    どんな人にこの本を勧めるのかといえば運命に打ちの

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    2024年04月05日
  • 冬に子供が生まれる

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    ネタバレ

    『鳩の撃退法』では、どこまでが現実の話で、どこまでか小説の話なのか理解するのに苦労した。
    『月の満ち欠け』では、誰が誰の生まれ変わりなのか理解するのに苦労した。
    そして本書『冬に子供が生まれる』では、どれがマルユウでどれがマルセイなのか理解するのに苦労した。
    でも仕方ない。作者がそういう風に書いているのだから仕方がない。小説は、一度で理解できるように書かなければいけないという決まりはない。あえてミスリードするように書いているとすれば、それは登場人物たちの混乱を、そのまま伝える意味もあると思う。
    しかし、それでもやっぱり謎は残る。この小説の書き手である湊先生も真相は知らないし、マルセイとマルユウ

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    2024年03月01日
  • 小説の読み書き

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    新書に抵抗がある人は少なくはないと思う。
    堅苦しい、書いてあることが難しいというイメージが私にもある。そんな私にも「小説の読み書き」は、するすると滑らかに読むことができた。読書好きなら、(好きでなくても国語の教科書を読んできた人なら)必ず聞いたことがある作家から、初耳の作家まで作者独自の視点で作品の粗筋や文体を語ってくれる。押し付けがましさもなく、思わずその作品を読んでみたくなるような語りで、楽しく読むことができた。「雪国」「痴人の愛」「夜の終わる時」など、改めて読んでみたい作品がたくさん出てきてワクワクしている。

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    2023年11月28日
  • 鳩の撃退法 上

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    冒頭から最後までセンスのある文章で、津田伸一ワールドに没頭してしまいました!
    どこまでが“小説”で、どこまでが“事実”なのか、本人たちにしか本当のことはわからないけど、そういうところも含めて津田伸一の小説は面白いです。

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    2023年10月13日
  • 鳩の撃退法 上

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    この作品は映画を先に見た。というか、先に知った。エンドロールで原作があることを知り、佐藤正午……見覚えのある名前だ! たしか『月の満ち欠け』という小説を読んだことがある──それがきっかけだった。
    本書の主人公は、津田という小説家である。津田は行きつけのドーナツショップで、ある男と相席になる。その男が読んでいる本の帯に、こう書いてあった。「別の場所でふたりが出会っていれば、幸せになれたはずだった」。津田はそれについてこう言う。「だったら、小説家は別の場所でふたりを出会わせるべきだろうな」。じつは、これが小説全体の大きな説明になっている。
    津田が相席した男は幸地秀吉といった。この幸地秀吉が、その夜

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    2023年07月14日
  • 鳩の撃退法 下

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    ネタバレ

    題材
    ・旬を過ぎた小説家

    テーマ
    ・お金に振り回される人間たち

    最も伝えたかったこと(新しい点)
    ・小説家の日常と、その小説家が書いている小説世界が混在する点

    新しい点
    ・新しい「ミステリ」の提示

    キャッチコピーは何か
    ・この男が書いた小説(ウソ)は、現実(ホント)になる

    その他(心に残ったことなど)
    ・ユーモアなんだけど、味わい深い文章、ずっと読んでいたい
    ・エンタメを超越したエンタメ

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    2023年06月22日
  • 小説の読み書き

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    様々な小説を佐藤正午さんという小説家が読み解く。視点もユニークであり、言葉を生業としている小説家だからこそ、丁寧にこだわるところを深掘りしている。国語、読み方、書き方について、学びを得られるし、何より読んでいて楽しいと感じた。

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    2023年05月18日
  • 小説家の四季 2007-2015

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    佐藤正午のことだからどこまでが事実でどこからが創作かわからない日常雑記だが、何度読んでも面白い。特に近松秋江の「黒髪」を巡る話は爆笑だ。以前、このエッセイを読んだ後どうしても「黒髪」シリーズが読みたくなり、いくつか読んだものの、何作目かで主人公のあまりのストーカーぶりが笑えなくなり、読むのをやめたのを思い出した。

    語り口は悪いが、その裏での各社の編集者との信頼関係、特に今や岩波社長の坂本さんとの互いの敬意に胸がいっぱいになる。「著者 佐藤正午」の下の「発行者 坂本政謙」に泣きそうになった。

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    2023年01月27日
  • アンダーリポート/ブルー

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    主人公とは、性別も年も職業だって何から何まで共通点はないはずなのに。
    とことん感情移入してしまい、、、
    わたし自身もモヤモヤした日々を送りました。
    後半にさしかかり、
    あれ?これって一番最初に書かれてなかったっけ?と読むと同時に過去の記憶をたどる私。
    ああ、もう主人公じゃんわたし。
    記憶と記録と、そして体感に残るもの、香り。
    記されるもの、記されないもの。
    存在するもの、しないもの、でもたしかにあるもの。
    丁寧に、細やかに辿っていった先に待っていた結末に鳥肌ゾクゾク、ぞわぞわ。
    自分がまさに殺されると思いながら、
    どこか切なさを感じながら読み終えました。

    佐藤正午さんにハマりそう!
    次は何を

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    2022年09月25日
  • 鳩の撃退法 上

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    小説家の飄々としたキャラがいい。
    コンパニオンの源氏名が昭和女優の名前っていうのも覚えやすくてよい。
    だんだん点と点が繋がってきて、今すごく面白いとこ。

    面白いけどちょっと気になるのが、不倫相手に会うのに毎週他所のお宅のシッターに子どもを預けたりするかな?っていうのとヒモ男が他人の車に乗りまくってること。大雪の日や飲酒運転までも。

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    2022年07月25日
  • 夏の情婦

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    良すぎるというか好みの人だった。

    遠野さんと似ているなと思ったら「恋人」に出てくる、面倒さ、鬱陶しさを覚える女も同じように書かれていると思った。そしてやはり主人公は身体を鍛えている。客観的で理論的で、ある人から見れば冷酷な、そういう考え方が好きだと再認識した。そうして感情的な女の部分に迷う。

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    2021年09月25日
  • 事の次第

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    佐藤正午の事の次第を読みました。
    ごくふつうに生きている中年の男性や女性がひそかに抱えている秘密を描いた短編集でした。

    「姉の悲しみ」では姉からみた妹の姿が描かれ、「言い残したこと」では妹からみた姉の姿が描かれています。
    その対照が鮮やかで面白く読みました。

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    2021年09月18日
  • 書くインタビュー 4

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    あー面白かった! 盛田隆二さんとのやりとりもあって奇跡のよう。盛田さんのパートには、これは作り話だなと感じる部分はゼロで(うまく騙されている?)、伝えたいことがまず第一にある盛田さんと、いかに語るかが第一の佐藤正午の違いがここにも出ていて面白かったが(これも双方に騙されている?)、文章への真摯な向き合い方はどちらも同じでお互いの敬意と信頼が見ていてグッときてしまった。
    かねがね東根さん=大木さんじゃないかと疑っていたが、東根さんの癖パクリとわざわざ言われているところが、裏の裏をかく作戦じゃないかと思えてきた。

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    2021年09月15日
  • アンダーリポート/ブルー

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    アンダーリポートのみを収録した方を先に読み、

     もうひと展開ほしいと思ったので星3つ。

    と書いたが、続きがあると知り早速読んだ。


    な、なるほど、、、
    なぜこんな構成にしたのか、最初から決めていたような気がするけど、なぜなのか、、、

    物語としてはスッキリしたけどスッキリしない。
    怖い。色々と怖い。

    でも、この構成のおかげで、後日譚を読むまでの数日間、ずっとモヤモヤしてた。
    きっと主人公も、あのカフェを訪ねてからずっとこんな気持ちだったのかな。
    もしこれが狙いだとしたら、怖すぎ。
    最高。

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    2021年06月07日
  • きみは誤解している

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    ハードボイルド。ハードボイルドっていうのはこういうダメでどうしようもなく、そしてそれを変えようもない男たちの物語なんだ。 ギャンブラーは女を泣かすことも自分を騙すこともお手の物だ。彼らはこう言う。「俺に言わせればギャンブルの手など借りなくても人生なんてもともと狂ってる。俺はそう思う」 屑が嫌いな人は近寄らないほうがいい。愛すべき屑たち。人生なんてそんなもんだろう。
    ただ表題の主人公の車券はそのまま大外れしてほしい。

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    2020年02月25日
  • 月の満ち欠け

    購入済み

    身の回りやこの世のどこかでもこの様な事が
    当たり前に起きているのだろうなと思わされました。
    愛は命をも超え受け継がれる。
    自分もそう思える素敵な人を大切にしていかなくてはと再確認させられました。

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    2020年02月09日
  • 夏の情婦

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    どれも面白かったけど、特に「傘を探す」が秀逸。姉への近親相姦を思わせる秘めた思慕と、そんな姉を奪い取った義兄への憎しみ。そんな複雑な思いを相変わらずのシニカルなタッチで描いていく。それから巻末に収録された著者自身による「30年後のあとがき」もよかった。作家はいつも「今、この瞬間」を書くのだ、という強い決意。彼の文体に惹かれるのはその緊迫感が滲み出ているからだ。世に溢れる凡百の流行作家とは隔絶している。この点では作風は全く異なるが、村上春樹と通じるものがある。

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    2018年10月16日