佐藤正午のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「何してるのだれからだれ出かけるのどこへ。いいかげんにしてくれよ朝っぱらから。クエスチョンマークで頭のなかを引っ掻かれてるみたいだ」
『そのころ自分の脚を使って歩くのは子供とまだ生き足りない老人だけのように思えた。ぼくたちの眼は車の中から、若い女の顔しか捜さなかったし、ぼくたちの頭には、彼女たちのからだのふくらみやくぼみのことしかなかった。たぶん当時のぼくたちの世界には、子供とまだ生き足りない老人と、そして若い女と男だけしか存在しなかったのである。世界は狭く、ルールは単純だった。寝るか寝ないか、当りかはずれか、生きているか死んでいるか。』
『どんな恋愛も男次第だよ、と叔母は言った。覚えとき -
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どこまでホント?!
作家が巻き込まれた事件を小説にしていく過程を描いた斬新な構成。
どうでもいいようなことがつらつら描写してある箇所が多いのだけど、それがまたリアリティがあって、本当に起こったことのように思えて読み進んでしまう。
登場人物も案外多くて途中くじけそうになりましたが、最後にはちゃんと伏線も回収されるので、登山した気分になれた一冊(上下あって結構長いので二冊?)でした。
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Posted by ブクログ
すべてメールでやり取りされるインタビュー集。
相手は現役バリバリの作家、性格は偏屈な気性。
表情が読み取れないから、
聞き手は正しく理解される以前に
誤解を生まない文章に仕立てなければならない。
そう、普通はそう考える。
一巻目に登場する聞き手の伊藤ことこ嬢は、豈図らんや、
大胆というか、分をわきまえないというか、
無知の知を逆手に取ったかのように
のっけからトンチンカンな質問を繰り出し
早々にして作家を激怒させてしまう。
佐藤正午は3回目の返信にあたり、
「件名:喧嘩うってるのか」と回答。
激怒を通り越し呆れたのか、
「ここからは編集部にむけて書きます」
「……こんなことをへいきでやる人 -
Posted by ブクログ
単行本が1998年刊なので約20年前の作品ですが、本作の中核を成す超常現象および、SF・ミステリを前面に出しつつ実は恋愛小説だったという体裁から考えると、直近の直木賞受賞作『月の満ち欠け』と相似形をなす作品となっているように感じました。
本作の読みどころは構成の上手さです。北川健に起きる事象自体は、先行作品もありさほど目新しいものではありませんが、それに付随する伏線、登場人物各々の背景およびそれらが明らかになる過程が非常に凝っていて面白かったです。バックギャモンを人生になぞらせるくだりのように、本筋とは関係ないところで時折出てくる小ネタも味がありました。
星を一つ減らしたのは、第九章で顕著にみ