佐藤正午のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ第157回(2017年下半期)直木賞受賞作。
素敵な小説でした。
落ち着きある、駆け足にならない速度の文章で書かれていて、
読んでいる期間中、いい時間を過ごせました。
「輪廻転生」「生まれ変わり」が大きな仕掛けになっています。
だからといって、オカルト色が前面にでている
けばけばしい作品ではありません。
ロマンティック。
見ようによっては、ヒロインのその深い情愛に怖さを感じるかもしれない。
それでも、読後感といい、相手役のキャラクターといい、
素敵なロマンスを独特の角度から語った小説と言えそうです。
中盤の正木瑠璃と三角哲彦の章は、
これだけで短編としてでも、まばゆく、優しく、燦然と輝く出 -
Posted by ブクログ
直木賞を受賞された作家の文庫を何気なく手にとってみた。
初めて読む佐藤さんの本。新たな作家の発見に少しわくわく。
題名からどろどろした女と男の話を期待していたのだが、いい意味で裏切られた。
男の目線から見たときの恋愛の話は新鮮で、女ほどのねちねちとした感覚のない、さわやかな、いやあっさりとした男女関係が独特の口調で語られる。
短編で構成されており、読みやすく、どの話も切り口が違って楽しめた。
終わり方もあっさりとしていて逆に切ない。
あっさりとした考えだからこそ、それって好きってことなんじゃ…と思う場面もいくつかあったが、それは私が女だから思うことなのかもしれない。
とりあえず、他の佐藤さん -
Posted by ブクログ
「時間は無駄には過ぎていかないと思うよ。人が時間を無為に過ごすことはあっても」
『僕には性欲と恋愛との区別がつけられない。性欲と恋愛と魔法の区別もうまくつけられない。』
『「嘘だけは聞きたくない」とそれから彼女はくり返した。「あたしたちのあいだで」
あたしたちのあいだで。初めて会ってから十日間に五回もホテルへ行き、その倍の数のSEXをしたふたりのあいだで、夫のいる三十代の女と二回離婚歴のある四十男とのあいだで。』
「憶えてるか? これも初めて会ったときのことだ。長谷まりは映画の話をしたな。確かバットマンのなかにあこがれのシーンがある。キム・ベイシンガーが壁ぎわに男を押しつけて、男のネクタ -
Posted by ブクログ
佐藤正午の『ジャンプ』という小説は、コンビニにリンゴを買いにゆくといって消えたガールフレンドと取り残された僕の5年間の物語である。
ミステリーとして絶賛されたそうだが、これはミステリではなく、紛れもなく優柔不断でやさしくって冷たくって少しシニカルな佐藤正午のいつもの話なのだ、と思った。
主人公に対して、ああ俺ってこんな優柔不断できたねえ野郎だなと、フムフムとうなづくことはできても共感はできない。だから書評とか読むと、怒ってる女の人たちもいたりするのだろう。でもそれが佐藤正午のいいところなのだ。
その頃、1991年に書かれた『放蕩記』を、自宅の本棚の奥から引っ張り出してきて読むことにした。自伝風 -
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★SFの設定を生かした男の切なさ★佐藤正午の小説のテーマは「去りゆく女と後悔する男」なのではないか。そして僕は、こういう離れていく女の話が好きなのだろう。解説でも触れているように、同じ時間を何度も繰り返して生きるアイデアそのものはオリジナルではなくても、別の人生では前の人生での知り合いを失ってしまう切なさの描き方が著者ならでは。それも語り手である主人公を別の人間とすることで、より距離の遠さが浮かび上がる。別の人生でも同じ人々が身近にいるというのがご都合主義だなと読みながら思っていたが、「縁」という表現で最後にまとめられるとなんだか納得してしまった。
★2019/8再読
うっすらと以前に読んだ -
Posted by ブクログ
面白かった。1人の女性の人生を通じることによって、辛いばかりではなく、小さな希望が見つけられる人生の素晴らしさを味わうことができる。
タイトルの熟柿のもつイメージと意味合いが最初と最後でスッキリと変わっていくことで、辛いばかりの人生が少しだけ開けていくところが素晴らしかった。
妊娠中だった主人公の女性は、伯母さんの葬儀の帰り道に人を跳ねてしまい、怖くなって轢き逃げをする。そこから人生がどん底に落ちてしまう。刑務所の中で産んだ子供は夫が引き取り、夫からは離婚される。まるで希望のない人生を延々と生きていく絶望感に、終始、主人公の可哀想な境遇が読んでいて辛い。罪を償って出所してきても、一生ついてま -
Posted by ブクログ
全体としてはきわめてネガティヴな情調。
しかし不思議なことに、読後の満足感は強い。
主人公は、単なる哀れな存在としては描かれない。むしろ、その生の輪郭はあまりに生々しく、リアリティがある。誰にも共有されない時間の堆積。彼女の孤独は劇的ではない。だからこそ、読む者に突き刺さる。
陰鬱で、救いは薄い。それでも読み終えたとき、奇妙な充足が残るのはおそらく、この作品が「孤独」を消費せず、正面から熟させきったからだ。
わりかし感情移入せず「世俗的だなー」とか「そんな執着するもんかなー」とか思いながら読んでいた私ですら、終盤の二人の出会い、会話で普通に涙してしまったのだから、感情移入しすぎた人は嗚咽し -
Posted by ブクログ
audible⭐︎
聴き終わった率直な感想。
周囲の目から逃げ回るように色々な場所で働いたかおり。
息子、拓と再会した時"罪をつぐなったのに、なぜお父さんと僕と一緒に過ごさなかったのか⁇"と聞かれる。
世間からは元犯罪とゆう目でみられ、息子は母を許しているような感じ…元旦那は卑怯者。
それぞれの見方が違う。
終始モヤモヤしていた。感想もまとまらない…
フォローさせて頂いた方の感想に、"熟柿"の意味が書いてありこの物語の進み方に合点がいった⭐︎
これからゆっくり柿が熟すように拓の心もほぐされていく。
土居さんがかおりの心をほぐし♡熟していくのを寄り添って