佐藤正午のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
佐藤正午の『ジャンプ』という小説は、コンビニにリンゴを買いにゆくといって消えたガールフレンドと取り残された僕の5年間の物語である。
ミステリーとして絶賛されたそうだが、これはミステリではなく、紛れもなく優柔不断でやさしくって冷たくって少しシニカルな佐藤正午のいつもの話なのだ、と思った。
主人公に対して、ああ俺ってこんな優柔不断できたねえ野郎だなと、フムフムとうなづくことはできても共感はできない。だから書評とか読むと、怒ってる女の人たちもいたりするのだろう。でもそれが佐藤正午のいいところなのだ。
その頃、1991年に書かれた『放蕩記』を、自宅の本棚の奥から引っ張り出してきて読むことにした。自伝風 -
Posted by ブクログ
★SFの設定を生かした男の切なさ★佐藤正午の小説のテーマは「去りゆく女と後悔する男」なのではないか。そして僕は、こういう離れていく女の話が好きなのだろう。解説でも触れているように、同じ時間を何度も繰り返して生きるアイデアそのものはオリジナルではなくても、別の人生では前の人生での知り合いを失ってしまう切なさの描き方が著者ならでは。それも語り手である主人公を別の人間とすることで、より距離の遠さが浮かび上がる。別の人生でも同じ人々が身近にいるというのがご都合主義だなと読みながら思っていたが、「縁」という表現で最後にまとめられるとなんだか納得してしまった。
★2019/8再読
うっすらと以前に読んだ -
Posted by ブクログ
角田光代さんがこの小説を薦めていたので読みました。今年一の小説だそうです。(角田さんのトークイベントより) この小説、一年に一章ずつ書かれて行った小説だそうです。一年に一章ずつ原稿を渡されて、編集者はさぞやきもきしただろう、と話されていました。まさにタイトルのような執筆の仕方、小説『熟柿』(厳密には一年に一章は途中までのようですが)
そして読後。他の方も書かれていましたが、共感とか強い感情移入は無かったんだけれど、読み終わったら何故かとても沁みてくる読後感で。とても不思議です。
角田さんもそんな感想を話されていました。なるほど、確かに、と今なら分かる気がします。 -
Posted by ブクログ
みなさんが読まれているのを見て予約していたんですが、残り2人から全然進まなーい!!
も、もしや借りパ、、、いやいや!!
誰よ!早く返してー!!
と念を送っていたら
やっっっと返してくれたようで
やっと借りられました(o^^o)
佐藤さんの作品は初めて読みます
『熟柿』(じゅくし)と読みます
ちょうど向かいのおばあちゃんが柿をくれました(^^)枝についたままの柿に子どもたちは大喜び(´∀`)
でも食べるのは5歳の息子だけ、、、笑
この時期いろんな方に柿をもらって5歳の息子だけデザートが豪華になってホクホク顔をしてます笑
『柿が好きだし、ドングリも好きだか -
Posted by ブクログ
熟柿という言葉を初めて知りました
読んでいくと確かに熟柿という言葉ぴったりな作品でした
ある日起きてしまった一つの出来事
罪を償わないといけないし、この罪は償っても消えることはありません
そんな罪を背負ったかおりは一人で生きていきます
正直読んでて辛い気持ちになってけど、かおりのなかにある息子という希望が唯一の光で、読んでてとにかく幸せになってくれと願ってました
熟柿というタイトルの通り、息子との再会っていう夢は叶ったけど涙ありの感動の再会というよりは、これから先の希望に繋がっていくって感じのラストでした
罪を犯した一人の人間の一生にフォーカスした読み応えのある作品でした -
Posted by ブクログ
静かに悲しく、でも強く生きていくお話だった。
妊娠中に事故をおこし、服役中に出産。離婚し、子供には1度も会わせてもらえず、会いたいあまり幼稚園、小学校におしかけ警察ザタ。
終始暗いけど、なぜか読み進めてしまう。これも筆者の腕なのか…
目的ができてからの母は強かった。
熟柿とは熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時期が来るのを待つことの意味もあるらしい。
そこからの熟柿なわけだと納得。
最後に土居さんが柿の実が季節になれば熟すように、物事の成熟には適した時期があると言ってあげた時に土居さん、ステキだなぁと思った。
熟柿の意味を知れただけでもこの本を読んで良かったと思う。 -
Posted by ブクログ
かつて親友だったと名乗る男からの電話。主人公には心当たりがない。なぜなら語られる物語は「Y」の字のように分岐した世界線の話だったから。いったい何があった?知りたくて、ページを捲る手が止まらないが、捲るたびに苦しくなった。読後は「もしもの世界」に思いを馳せずにはいられない。
あったかもしれない世界のことを考えても、自分にとっての現実は今生きている世界でしかなくて、向き合うしかない。弓子の言う「運」も分かるが、加藤由梨の言う「縁」もあると思う。自分の運命って、自分で選んでるようで、自分だけでは決して決められない。ままならないことはいっぱいあるもんね。
北川がその後どうなったのかが気になる。何周