佐藤正午のレビュー一覧
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佐藤正午の『ジャンプ』という小説は、コンビニにリンゴを買いにゆくといって消えたガールフレンドと取り残された僕の5年間の物語である。
ミステリーとして絶賛されたそうだが、これはミステリではなく、紛れもなく優柔不断でやさしくって冷たくって少しシニカルな佐藤正午のいつもの話なのだ、と思った。
主人公に対して、ああ俺ってこんな優柔不断できたねえ野郎だなと、フムフムとうなづくことはできても共感はできない。だから書評とか読むと、怒ってる女の人たちもいたりするのだろう。でもそれが佐藤正午のいいところなのだ。
その頃、1991年に書かれた『放蕩記』を、自宅の本棚の奥から引っ張り出してきて読むことにした。自伝風 -
Posted by ブクログ
★SFの設定を生かした男の切なさ★佐藤正午の小説のテーマは「去りゆく女と後悔する男」なのではないか。そして僕は、こういう離れていく女の話が好きなのだろう。解説でも触れているように、同じ時間を何度も繰り返して生きるアイデアそのものはオリジナルではなくても、別の人生では前の人生での知り合いを失ってしまう切なさの描き方が著者ならでは。それも語り手である主人公を別の人間とすることで、より距離の遠さが浮かび上がる。別の人生でも同じ人々が身近にいるというのがご都合主義だなと読みながら思っていたが、「縁」という表現で最後にまとめられるとなんだか納得してしまった。
★2019/8再読
うっすらと以前に読んだ -
Posted by ブクログ
熟柿。熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に次機が来るのを待つこと。そのタイトルのとおり、主人公のかおりが27歳の時に重大な交通事故を起こしてからの17年間のことがじっくりと描かれています。
事故を起こしてからの彼女の人生は辛いもので、服役中に自分の子どもを産みますが、犯罪者が母親なのと死んでいなくなった母親どちらがいいと思うかと夫に問われて離婚し親権を渡す道を選びます。
それから泣く泣く別れた息子のことを思いながら、1人で生活を立て直し、失敗し、裏切られ、また立て直し…の繰り返しの人生を歩んでいきます。
その時その時に出会った人たちとの縁で仕事がつながったり、突然前触れもなく仕事を -
Posted by ブクログ
晴子伯母さんが夜な夜な仏壇の前で啜っていた「熟柿」の話がどこに効いてくるのかと思っていたら、最後に『気長に時機が来るのを待つこと』と土居さんが教えてくれて、なるほどここに繋がるのかと腑に落ちた。
主人公の人生がどうなって行くのか気になって、するする読み進められた。
息子に会わせてあげたいと思ったり、元旦那の狡さや鶴子の悲劇のヒロインさにイラッとしたり、同室の斉藤に腹が立ったり、同僚の百崎さんや久住呂咲ちゃんに明るさをもらったり、各エピソードの登場人物も実在しているみたいにリアルに感じた。
何と言っても最後の『熟柿』に限る。
がむしゃらに働いて、時機がきてやっと希望の光が見えてきた。
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