佐藤正午のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「小説の読み書き」というタイトルからだと「ああ、小説の書き方みたいな本かなぁ」と思うのだけれども、その実は至極まっとうな文藝評論集でした。
文藝評論、いや、評論というジャンルは、評論のとっかかりが身近であればあるほどいいもんだと思います。そうじゃないとどうなるかと云うと、テレビに出ておいしいもの食べて、なんやかコメントを言う、悪しき「評論家」像に近づいていってしまう。「うまーい!」だの「まったりとしていてそれでいて生臭い」だの言うだけでお金がもらえる職業が評論家だと思われると困っちゃう。
そうじゃなくて、評論家だってなんらかの視点やものの考え方を読者に与える存在であっていいはづで、そのためには出来るだけ己が身にひきつけねばならない。真のオリジナルは各人の中にしかないわけだからして。
井伏鱒二の『山椒魚』にたいするとっかかかりかたが好きだ。太宰治が山椒魚を呼んで「興奮した!」とはいうものの、自分としてはあんまり別に特にそうでもない。じゃあ、「山椒魚」を読んだ太宰少年が、どこが面白くて「興奮」したのか? ほれほれ、これが「評論」ですよ。これだったらちょっと原稿料とってもいいと思うでしょう。
小説家としての佐藤正午作品は寡聞にして読んだことがないのだけれども、この本を見るにつけ、ものの書き手として非常に真摯だなぁと思って読みました。
やや「俺ってこういう人間だから!」という押し付けがましい部分が面倒くさいなぁと思う部分もありますが、文藝評論としてはかなり面白い部類に入ると思います。 -
Posted by ブクログ
佐藤正午が競輪好きなことは「side B」から知ったのだけど、これは競輪を題材にした6つの短編集。
作者は佐世保だけど、私は長崎に住んでいた頃、もう50年程前になるけど、造船所勤めの伯父に連れられて競輪場へ行ったことがある。今は競馬ばかりで、競輪は観たい番組がない時に大きなレースをやっていれば観る程度だけど、別に競輪も嫌いな訳じゃなく、私のこういうもの好きはその頃にルーツがあるかもと思ったりする。
その割に博才無いこと甚だしく、わざわざ当たり馬券を外して買ってるような結果には、我ながらよくも続けているもんだとうんざりするが、来週になったら、今度こそ当たる様な気がするんだよねぇ、これが。最初の話には、そういったギャンブルが仕掛ける甘い罠へ陥る道筋が良く描けていて、そこからもうこの世界へ吸い込まれる。
ところで、昔は戦災復興の名のもとにあった長崎の競輪場もずっと昔に廃止になって、今はラグビー・サッカー場になっているのだけれど、それをやらない人から見た時の如何わしさやお金にだらしの無い人が嵌る陥穽っていうのはどうしようもなくて、世間のそういうイメージは拭い去れないねぇ。だから4つ目のお話で、鮨屋の社長が『ギャンブルは人生を狂わす』とか言うのも分からないではなく、全編を通してそういう日陰のイメージが漂うお話しは愁いに満ちて物悲しい。
それぞれのお話であまり賭ける金が大きいのと、それで当たっちゃうのが、私のように小銭で楽しんでると言うか、小銭しか賭けれない者にとっちゃぁ、ちょっと勝手が違ったりしながら読み進めるが、初刊時の書下ろしである最後の話で『競輪場の中では、度胸という言葉は常に自暴自棄と背中合わせであること、そして競輪場を一歩外とにでれば、その種の度胸は何の役にも立たない』とか『寝る間を惜しんで競輪場に通いつめても、どんなに熱心に予想を立ててみても、勝ったり負けたりを繰り返すだけだ』と漸く世間並みの言葉が並んだかと思いきや、最後に曰く、そういう考え方で車券を買うのは『競輪をやる人間としては、クズだ』と喝破するのだから、もはや筋金入りですな。これでやっていっては私のような真面目なサラリーマンが長く続けていられる訳もなくて、まあ、愉しみ方は人それぞれでいいんだけどね。
全国44ヵ所、結構街中にある競輪場の場所柄や遠征で旅する競輪選手の生活に、ラインや脚質といったレースの特性の上に成り立つ話でありながら、普遍的な男や女の話にもなっていて、なかなか読ますこの世界。寺山修司や山口瞳、虫明亜呂無の頃を思えば、競馬でこういう話を書いてくれる人がいないのかと、ちょっと羨ましく思ったりもする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
小説家はどんなふうに読み、また書くのか。
近代日本文学を代表する小説家たちの作品を書き写すように読み解きながら、「小説の書き方」ではない「小説家の書き方」を、小説家の視点から考えるユニークな文章読本。
読むことは書くことに近づき、読者の数だけ小説は書かれる。
こんなふうに読めば、まだまだ小説だっておもしろい。
[ 目次 ]
川端康成『雪国』
志賀直哉『暗夜行路』
森鴎外『雁』
永井荷風『つゆのあとさき』
夏目漱石『こころ』
中勘助『銀の匙』
樋口一葉『たけくらべ』
三島由紀夫『豊饒の海』
山本周五郎『青ベか物語』
林芙美子『放浪記』
井伏鱒二『山椒魚』
太宰治『人間失格』
横光利一『機械』
織田作之助『夫婦善哉』
芥川龍之介『鼻』
菊池寛『形』
谷崎潤一郎『痴人の愛』
松本清張『潜在光景』
武者小路実篤『友情』
田山花袋『蒲団』
幸田文『流れる』
結城昌治『夜の終る時』
開高健『夏の闇』
吉行淳之介『技巧的生活』
佐藤正午『取り扱い注意』
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
「三つ数えたら明りを落とす
それから百数えないうちにそこに迎えにいく」
ビルの下にいる私に誰か、そう声をかけて降りて来て下さい!
「女を蕩けさせ夢中にさせる」才能がある男・鮎川英雄
蕩けさせるって凄いですよね それもダイレクトに身体を蕩けさせる能力であり更に凄い!
本書には、スクラブルと言うゲームが登場します
あのクロスワードパズルみたいなゲーム それも英語です
英雄は会話のなかで日本語に訳した英語のことわざ、みたいなのを常に入れていて意味が所謂、教科書の言葉みたいなのが入ってトンチンカンにな空気を作りだす
そこが洒落ている
って言うか、実際にはそんな奴絶対いない!
万が一いてもただの嫌いなオヤジでしかない気がする...
佐藤正午の会話を最大限に楽しめる一冊
ああいえばこう言う登場人物が束になってあなたを待ってます
これよりは、ややちゃんとした感想はブログで