【感想・ネタバレ】書くインタビュー 1のレビュー

あらすじ

小説巧者に訊く前代未聞のインタビュー読本。

「これは、直接会って言葉をやりとりするのではなくて、メールを用いたインタビューです。いっぱんの対面式のインタビューを『喋るインタビュー』だとすると、今回やろうとしているのは『書くインタビュー』です。いままでどおりに質問しようとしても、なかなかそうはいかない。こちらもいままでどおりに答えようとしても、そうはいかない。質問も回答も手間をかけて文章にしなければならないからです」(本文より抜粋)
小説巧者として知られる作家・佐藤正午さんはいかにして作品を“つくって”いるのか――そんな疑問を直接ぶつけるインタビューが、前代未聞の形式で実現。面とむかって話す機会はおろか事前の打ち合わせもいっさい無し、メールのやりとりのみの「書くインタビュー」はスタートしましたが……。
「はっきりさせておきます。なにがなんでも答えたい質問などこちらにはありません。僕はべつに誰かの質問に答えたくてうずうずしているわけではないのです」
まさかの聞き手交代劇にはじまり作家秘書の口述筆記も! のちにNHKでドラマ化される『身の上話』上梓直前の2009年6月から、『鳩の撃退法』の執筆準備に入る2010年12月までの質疑応答(?)を収録した第1巻。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

作家である佐藤正午氏と、メールを使ったインタビューです。インタビューというと対面で行われるものですが、これはメールを使ってのやり取りをしています。
最初の方は、どうなってしまうのか心配になる程、やさぐれたやり取りが続きました。途中から、健全なキャッチボールがとなってきて、良い形に収まってきますので、これから本書を読む人は安心して読み続けてください。
作家が作品を生み出すアプローチに関する様々な手法はとても興味深いものがあります。さらに、続きを読みたいと思っています。

0
2024年03月10日

Posted by ブクログ

すべてメールでやり取りされるインタビュー集。
相手は現役バリバリの作家、性格は偏屈な気性。
表情が読み取れないから、
聞き手は正しく理解される以前に
誤解を生まない文章に仕立てなければならない。

そう、普通はそう考える。
一巻目に登場する聞き手の伊藤ことこ嬢は、豈図らんや、
大胆というか、分をわきまえないというか、
無知の知を逆手に取ったかのように
のっけからトンチンカンな質問を繰り出し
早々にして作家を激怒させてしまう。

佐藤正午は3回目の返信にあたり、
「件名:喧嘩うってるのか」と回答。
激怒を通り越し呆れたのか、
「ここからは編集部にむけて書きます」
「……こんなことをへいきでやる人間を、
インタビューの質問者として起用した編集部
に強い不信感を持ちます。
(……)こんなひとといっしょに仕事はできません。
はやいうちにどうにかしてください」と書く。
で、途中退場。

妙ちきりんな聞き手1号退場後も
終始小さな軋轢が生じるも急遽登板した、
聞き手2号の東根ユミ嬢は、
時に不遜な言動、時に小いじわるな舌鋒ならぬ筆誅が
加えられるも、彼女のことをお気に召した様子で
本来のインタビューの趣旨である、
「小説のつくり方」に即した内容が仔細に語られる。
気難しい佐藤正午を饒舌に語らせたのは
何よりも彼女の著作の深い読み込み、
提示された事に対する執拗なまで即確認する姿勢、
それは時にストーカー並みであるが、
聞き手に徹するプロ根性がすばらしい。

本書の白眉は『鳩の撃退法』に取り掛かる直前から
上梓に至る話まで、ドキュメントタッチで書かれてあり、
佐藤正午ファンには堪らない内容となっている。

追記
ふと頭をよぎり、聞き手であった
ふたりのライター名を検索してみた。
存在していない…。
まじかー。

だとしたら、
本作は自作自演のインタビュー集?
怖い作家である、佐藤正午。

0
2018年04月06日

Posted by ブクログ

作家佐藤正午にメールでインタビューをするという連載もの。メール返信ということとにどんなことを考えるものかが垣間見えて面白い。最初にインタビュアーとして登場したライターはハチャメチャで作家を怒らせてしまうが、それがかなり面白かった。突然の交代は予定通り?そのままいったらどうだったんだろう。次のライターはかなり気を使いながら質問でこれもまたまったく違う雰囲気で面白かった。

0
2016年04月10日

Posted by ブクログ

佐藤正午に二人のライターがメールによるインタビューを試みるという企画。
数年にもわたるこの企画が書籍化されたのがこの本。

ものすごく面白かった。なんど顔がにやけてしまったか。
でも基本的には人にはお勧めしない。
正直、佐藤正午ファンではないければ全く面白くない。
彼の本を読んだことがなければちんぷんかんぷんだろうし。
逆を返せば、佐藤正午ファンは間違いなく楽しめる。
「ほえ」って使うんだ、リアルで。
津田伸一ってやはりまんま佐藤正午!?
もうこの「ほえ」だけでツボ。

でもね、多分みんな疑ってると思うんだけど、この二人のライターは本当に存在しているのか?
佐藤正午がでっちあげたライターに、まんまと読者は翻弄されているんじゃなかろうか。
だってねぇ、途中でインタビュアーが交代ってあるかな(笑)
それとも担当編集がライターになり済ましているのか。
どちらにしても怪しい・・・。

それはぶっちゃけどっちでもいいんですけどね、面白いから。
屁理屈満載、そう鬱で気分屋の佐藤正午の人となりが垣間見れただけで大満足。
もちろん大先生の手のひらの上で転がされているのは百も承知で。
このインタビュー続きも出てるみたい。絶対読もう!

0
2015年10月07日

Posted by ブクログ

インタビュアーの、雑で無礼な質問が続き、回答する小説家のインタビュアーに対する揚げ足取りや皮肉が続き、しまいには怒らせ罵倒されている文章を読むのは、精神的に辛かった。
佐藤正午は、神経質なほど言葉に厳しい。だからこそ、読者である私は本を楽しめるのだけれども。

小説の書き方が書かれているところはとても興味深く、「小説」とは推敲を重ね、言葉に敏感でなければなぁと思った。
職業としての小説家は、やっぱり凄い。

0
2019年11月26日

Posted by ブクログ

「た」止めについてのやりとりを読んでいるうちに、数年間抱いていたある作家Xの文章に対する疑問が解消しました。他の作家の本を読んでいて「Xの文章に似ている」と感じることがたびたびあり、そういえばそういう場合は全て「た」止めでした。文章があまりに似ているので、Xは文章アプリのようなものを使って書いていて、他の作家が忙しいときなどに秘密ルートでそのアプリを借り書いているのかもしれない…などと考えていました。「た」止めだったのですね。さすが佐藤さんです。佐藤さんが書かれた「た」止め縛りの文章が、Xの文章には全然似ていないのもさすがです。

0
2015年07月28日

「エッセイ・紀行」ランキング