汐見夏衛のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ語り部が1作目主人公の百合ではなく、タイムスリップ直後の、彰大好き百合を好きになった男の子、なのが良かった
彼が百合を好きになりつつある描写や、些細なことにドキドキする過程が、中学生らしくて素敵でした
そして絶望するところも
個人的に、涼を彰の生まれ変わりにする必要は、やっぱり無かったかなぁ
あんな風に、ちゃんと百合を好きになった涼は『涼』で良かった気がします
そして百合も、生まれ変わりという安易な設定より、彰と涼の2人を個々として見られる成長を見せて欲しかったな
とはいえ、『タイムスリップ』があったのだから、『生まれ変わり』もあって当然、というのが最初からこの作品のコンセプトだったのかも? -
Posted by ブクログ
ネタバレ今回は汐見夏衛さんの作品の中でもとても読みやすい本であり、多くの層に需要のある一冊であると感じた。
また、「戦争」という現代人にとって計り知れない出来事への理解も深まった本であった。
個人的にはキミちゃん(陽和の曾祖母)が中学1年生のままな時に、陽和と再会できたらどのように描かれるのだろう、と想像を膨らませていた。が、80年越しの再会が描かれていることでキミちゃんとすごせる夏が最後であるという制限がかかっており、より陽和の心境や行動の変化が分かりやすく描かれていて、それもまた好印象であった。
「戦争」についての導入としてこの本を是非手に取っていただきたいと思う。さらに知識を深めたいと感じた時に『あの花が咲く丘で〜』を読むことを強く薦めたいとも思った。
とてもナイーブな題材をここまでも美しく描ける汐見夏衛さんに毎度ながら脱帽する。
短い作品ではあったが、汐見夏衛さんの味をたらふく味わうことのできる作品だと思った。 -
Posted by ブクログ
映画化された「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら」を読んでこの作家さんを知り、他の作品も読みたいと思い「明日の世界が君に優しくありますように」を読み、そしてこの作品に出てくる主人公の真波と漣をどこまでも優しく見守るユウさん(優海)とナギサさん(凪砂)の事を描いた作品との事で読んでみました。
なんとも悲しい少しSFのお話で、ユウさんが何故こんなに優しい青年に育ったのかが分かる感動作でした。
更に最後の方で、凪砂のお祖母さんのタエさんが、「あの花が咲く丘で、…」の主人公の百合(福原遥)のお世話していた食堂のタエさん(松坂慶子)だった事に気付かされ、何とも言えない気持ちになりました。
この3作品の密かな繋がりに感銘を受け、更に他の作品も読みたいと思わされました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ全く違う境遇に置かれている陽羽里と恵美羽。そんな2人の共通点は「私」の境遇が億劫で憎いこと。そんな2人の中身が入れ替わりお互いが知る由もないはずだった地獄を知り___。
汐見夏衛さんの作品の中ではあまり扱われた覚えがない題材を扱っていることに新鮮味を感じながら、本書を読ませて頂きました。汐見夏衛さんのあとがきにも記されていたように、人間には、他者がしる由もない、知ることの出来ない公にしていない自分の内に留めている自分、というものが存在し、それがよく描かれた作品で、こんな作品をかけるのは教員と作家をなさっている汐見夏衛さんならではの経験や視点ありきのものなのかな、と思いました。
とてもデリケートな題材で、読者層が絞られそうと感じましたが、「ないものねだり」という点ではより広い年齢層の方が親しみを感じやすい本なのだろうなと感じました。
「あたし」「わたし」という一人称の呼び方や、語尾や言葉遣いが違うだけでその人の人柄がより具体的に連想しやすくなる点もとても興味深い点でした。
また、なにか辛いことがお互いにあるごとに、お互いが「こんな思いを十四年間してきたのか」と相手の気持ちを思いやる描写は心にくるものがありました。自分だったらそんな状況下に置かれたらそんな余裕は無いだろうと、少し2人を尊敬してしまいました。
「きっとこれからだね。これから、どんどん変わっていくんだね」
個人的にこのフレーズがとても大好きです。
辛い境遇にいながらも希望を捨てずに前を向き前進しようとしている姿に感銘を受けました。
例え私がこのような辛い境遇に遭遇しなかったとしても、この心は大事にするべきものであると感じ、これを読んだ皆さんにも心にしまって置いて欲しい心持ちだとも思いました。 -
Posted by ブクログ
あらすじ:病院の屋上テラスで出会った境遇が真逆の陽羽里と恵美羽は、一目見るなりお互いに嫉妬と羨望を抱き「入れ替わりたい」と願う。
願いが叶い体が入れ替わった二人はそれぞれの望みが叶ったと喜んだのも束の間、自身の真の望みに気づき、また自身の抱える問題を互いに相手になすりつけている罪悪感に苛まれる。
そんな中、陽羽里の体で活動する恵美羽に危機が迫り、物語はクライマックスへ――。
※陽羽里と恵美羽の置かれた環境の対比が描写されるが、毒親描写の解像度が高く、平易な文体で重くなりすぎないテイストにはなっているものの人によっては胸を抉られるため要注意。
感想:入れ替わりモノというよくある題材だが、舞台が現代かつ作者の描写力が高いこともありリアリティをもって読み進められる作品になっている。
恋愛要素がほぼない作品であるためラブコメや青春系が苦手な人も読みやすいと感じた。
陽羽里と恵美羽、それぞれの視点でストーリーが進んでいくが、徐々に相手の気持ちに寄り添い最終的には実感をもって相手の大変さを理解し、思い通りにならない現実に折り合いをつける精神的な成長が見られて読後感はスッキリ。まさに「澄み渡る青空」といった感じ。
ただ背後にあるテーマが重たいうえ陽羽里は自殺願望あり。途中の展開はやや暗め。
二人の心情の変化が似通っている(入れ替われて満足、望みが果たされたように錯覚する→相手の置かれた状況を自分事として把握する→自分の真の望みを理解する)のに、置かれた環境の対比が切なかった。
二人の視点では対照的な表現が散りばめられており、容姿、環境、おとぎ話、名前の由来(鳥言葉)、二人の感情(死にたい陽羽里と生きたい恵美羽)などなど、出てくる度に二人のすれ違いが読者の心を刺してくる。
それぞれの視点で語られる内容を総合すると「自己評価と他己評価が乖離している描写」とも読めるため、終盤で二人に希望の道筋が見えて本当によかった。 -
Posted by ブクログ
この小説を読み終わった時の感想は、「綺麗な小説だけれども、軽い、そして内容の薄い小説だな」というものだった。
この小説を「綺麗な」といったのは、情景描写ではなく登場人物の心情描写のこと。つまり美しい純愛の言葉、家族に対する感謝の心
や同僚へのいたわりの行動などに泣けるような心情描写が多い。が、やはりその心情は軽い、薄いと感じた。登場人物たちの感情と言葉が、戦争による「別れとそれに伴う死」ばかりが強調せれ、しかも強調された感情表現や言葉、それに伴う行動が上滑りのように感じた。逆に、当事者たちの戦争による「苦しさ、悲惨さ」があまり感じられなかった。
「特攻隊員」と「その隊員に関わった人たち」の心情が描かれている話は、どうしても悲劇的で泣ける話になるようだ。昔から「戦争による悲しい話」と「動物とのふれ合いの話」、「難病、余命何年とかの話」は、泣けるストーリーになると聞いたことがある。泣けるストーリーが、良いストーリーと限らない。また近年こういった泣けるストーリーの小説や漫画、映画、ドラマなどが多いようだ。それらの多くが安易なストーリーになってないだろうか。
この作品は、「戦争」、「特攻隊員」と言う重いテーマを扱っている。ならば、もう少し真摯に「戦争」や「特攻隊」と言う歴史的事実に向き合って欲しいと思う。「特攻隊員」の心情は、「見送る人達」の心情は、こんなものだったのだろうか。もっと深く、もっと重く、もっと辛いものだったのではないだろうか。
ただ小中学生、大人でも歴史に興味の無い若い人たちに「戦争や特攻隊」の一端を伝えられる小説かも知れないなとは思う。
-
Posted by ブクログ
恋愛と友情に揺れる女子高生の物語。
一目惚れした男の子は親友の片思いの相手だった。大切な親友の気持ちを知って、彼への想いを絶とうと決意するが・・・
次女おすすめの一冊。自分からは手を出さないであろう作品。他薦書は読書の幅を広げてくれます。
ありそうでなさそう、なさそうでありそうな定番の設定ですが、同じ男の子を好きだと言い出せない主人公の戸惑い、悩みが女子高生目線で描かれていて、思春期の初々しさ、幼さを感じながらもどこか新鮮な気持ちで読めました。
こういう悩みにすぐに答えを出して、悩まなく(悩めなく)なった現在の自分に気づき、大人になってしまったなとつくづく思います。