姫野カオルコのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
先に書いた「王女アンナ」「王妃グレース」に書き下ろしの2篇を加えて昭和〜令和そして近未来にかけての家族の物語に仕立てた連作集。
なんだけど、まあ読みにくいったらありゃしない。以前に読んだこの作家の作品の感想にも文体が合わないと書いていたから、嫌なら読まなきゃよかったんだけど、間違って手に取ってしまった。
それでもルッキズムについての女の子(この表現もポリコレ違反?)の心理を、なんとなくモヤっと感じているところまでしっかりと言葉で言い表しているところはすごい。
一番頷けたのは自己肯定感の部分。
ルックスそのものじゃなくて“籠の中にいるあいだにもらった自信の強度”がその後の人生を左右するということ。これには激しく同意。
余談ですが、冒頭の作中作『王女アンナ』の物語は某宮家の姉妹を、「女優さぎり」の中のニーカイ一家の話は某アイドル夫妻の娘を思い起こさせ笑ってしまいました。
もちろん巻末には“この作品はフィクションであり云々‥‥”の一文がしっかり入っていますが。 -
Posted by ブクログ
高校時代を共に過ごした4人の男女。卒業してから20年もの間途切れずに続く彼らの絆を、交わされた手紙、FAX、メモなどだけで綴る物語。
高校時代の同級生4人とその関係者たちが交わした文章のやり取りだけで20数年の軌跡を追う一風変わった形式の小説です。「手紙」だけで展開するわけではないですが、一種の書簡体小説と言えるのでしょうか。
特定の対象しか読まない事を前提とした、秘密のやり取りを盗み見ているようでちょっとドキドキします。
今は誰もが携帯を持つようになり、こまめな手紙のやり取りや授業中に友人にメモをまわしたり、交換日記などもそうそうやったりはしないのかもしれませんが、私とは年代がずれているとはいえ、こういった密やかな交信、文章ならではの口語とは違うすこしふざけた、あるいは格好をつけた独特の空気感は学生の頃を思い出して何だか懐かしかったです。
読者に提示されているのは、誰かが文章におこした部分でしかないので、具体的な出来事などは明確にはわかりません。推察による部分がとても広い小説だとは思いますが、だからこそ色々考えられて心に残るのかな。
個人的には、優子が好きでした。頑張り屋で自立し、芯があるようでいて、どこか自分を押し殺し屈折している所のある女性。幸せになってほしいですね……。 -
Posted by ブクログ
この作品で直木賞を受賞した時、ジャージで走ってきた事が話題になりました。
主人公・イクは、昭和33年滋賀県生まれ。姫野さんは、同世代同郷の女性を、昭和から平成を振り返りながら語るという構成で、その時代を描きました。
全八章からなります。イクの幼児期から年代順に、時代の背景、イクの生活、そして、流行していたと思われる種類の犬が書かれていきます。タイトルには、その時代印象的だったアメリカのテレビドラマの番組名が使われます。タイトルと内容は、関係するところはありません。
シベリア抑留経験を持つ気質の荒い父親。そんな夫を嫌悪する為か、娘への慈しみを見せない母親。イクは居心地の悪い家庭で、高校生まで、寡黙に生活します。昭和の戦後から復興、そしてバブルから平成へと、翳りある部分はあったとしても、華やかな変貌を遂げた時代を慎ましく献身的に生き抜きます。
半分ほど読んでも不確かだった物語が、最終章に向かって意味合いが深まっていきます。
50歳を目前としたイクは、両親の介護をやり遂げ、自身も幾つかの病気を経験します。決して贅沢でないむしろ抑制的とも思われる生き方の中、真の幸福感に満たされる瞬間がやってきます。「今までの私の人生は恵まれていました。」彼女は大きな声で言います。たぶん、この1行を読むために書かれてきたそんな小説です。
いつも、あともう少しと何かを求めてきたことに恥ずかしさを感じてしまいます。
昭和を全く知らない方には、読み難いと思います。あくまで一人の普通の女性の人生なので、淡々とした物語です。平成から令和への生き方への問いかけをしているようでもありました。 -
Posted by ブクログ
女は強い。女はシビア。
改めて、そう感じた一冊。
主人公の理気子は、男性経験のない34才ポルノ作家。
その肩書き(?)を聞くと、容姿が著しく悪いのかとイメージしてしまうけど、そうではないように思わせる描写も。
長身で、怪力であることは間違いないようですが。
彼女は、自身には女としての魅力が著しく欠けているのではないかと考えており、けれど、とにかく経験はしておきたい、という願望を強く抱いています。
そんな彼女が惹かれ、そんな彼女に惹かれた男性は、妻帯者でー。
とにかく面白おかしい一冊。けれど単なる、薄っぺらなラブコメではありません。
恋愛中の盲目・陶酔・自己保身…そういったものが、恋愛中であるはずの理気子の視点できちんと分析されていて、そして、こんな分析ができてしまう自身がやはり、女としての魅力に欠けているという思考に落ち着く…
そんな書き方が、この作品にはとてもちょうど良く、ふむふむ、参考になるなと思ってしまいます。
恋愛をすると「分からなくなる」人とそうはならない人がいる。何となく、頭では分かっていたけれど、この作品を読んで、すっきり理解できました。
好きだから分からなくなるという言い訳で、自己保身をし、言い訳をし、意志力のなさ・覚悟のなさをひた隠し、そんな自分を見ない事にして、恋愛という現象でちょっと美化して語る。
それができれば、きっと楽。
無意識にしてるのが男性で、自分でも気付かずに、そう演じられるのが女性。
※もちろん、そうではない人もいるけれど。
やっぱり女は強くてシビア。 -
Posted by ブクログ
最近、新書や対談ばかり読んでるから、小説サイドにズレたい感覚から、女性作家の短編という、読みやすそうな着地点へ。しかし、40のオッサンが、恋と名の付く、カオルコと名乗る人の本を電車で読む勇気をわかって欲しい。
姫野カオルコの本は、「リアル・シンデレラ」以来。短編は初。
なんて言うんだろう、気持ちの良い読後感。
アッパーでもダウナーでもない、ニュートラルって気持ち良いよねー、って感じ。恋だからって別に燃え上がらなくても良いし性行為の描写が無くても良いやん、バックバク心臓打たんでも燃え上がるほどヒート!しなくても良いやーん、って感じ。
女性作家が書いた、村上春樹短編的な?違うかな。
恋とか性に対しての距離感が春樹っぽい気がします。いわゆるデタッチメントってのは違うけど、それは恋とか性に対する基本的なスタンスとかベクトルの男性/女性の差なのかな。距離は同じでも距離感は違うというか。
こういう作品に対して、男女で読後の感想を語り合ってみたいです。 -
Posted by ブクログ
完璧な美女、「繭村甲斐子」はいわゆるブスに整形手術し、一方、高校の同級生可愛いけど美人ではない「望月阿部子」は甲斐子をモデルに美女に整形手術してもらう。
そして、手術後の二人の運命はどうなったか。
まず、
なんで美女なのにブスに変身するの、もったいない!とは下世話な話。
もっと高尚な理由が。
『自分が醜いと信じている、どすぐろい強欲な未練を断ち切れないから、整形手術という手段を使えばこの状態から抜け出せるのではないか。ブスになったら健康であることを神に感謝できる。』
これでも訳、解らないよね。
甲斐子は精神も完璧に強かったのだ。個性も美人ということ。
他人は個性的な人に『変わっているね』というが、『個性的だとほめられたなどゆめゆめ思わぬがよい。自分の経験からはみ出した状況や物や人に対して嫌悪していて』仲間に入れぬ。という経験をして痛いほど嘆いていた甲斐子なのだ。
うーんわかる。しかしその後の運命は...。
はたまた、対称的な「望月阿部子」はどう...。
これから読む方に悪いのでやめる。
でも、美女ってほんとうに男性にもてないの??
整形外科医、大曽根三ヶ衛(おおそねみかえ)のキャラクターがいい。
姫野カオルコさん初めて読んだが、お、面白い。シニカルなんだけれど、真実をついているね。示唆に富んでいるし。私が言うのもなんですが、沢山書物を読んでいらっしゃる方ですねぇ。
私は曽野綾子さんの「ギリシャの神々」を愛読しているが、その解説に
『一見役に立ちそうもないもの、どうでもいいように思えるものをどれだけ許容し、包含しているかが、その社会の体力、奥行きの深さを測る目安といえるのである』(田名部昭)
とあり私もいろいろと興味をもっているので、こういう作風が好もしいのである。
姫野カオルコさんは一作ごとに文体が違うらしいから、他作品も読もうと思う。 -
Posted by ブクログ
短編集かと最初は思ったが、柏木イクという女性の幼少期から初老までの物語。各章傍らにはいつも犬。
イクは昭和33年生まれの設定だから第一章はかなり古臭い。馬車やらカラーテレビやら登場。捕虜から戻った父、父を疎ましく思う母との三人暮らしで、心をギュッと縮こませていた日々が彼女の土台になっていていつも傍らにいたのは犬。なかなかに鬱屈した世界が延々と続くのだが最後までイクは実に真っ当に生きていて、それはいつも側に犬が居たからなのか。その時々でイクのまわりにいる人々が実に温かいからなのか。
著者の本は初めてである。直木賞受賞作。
私はこの世界嫌いじゃない。他の作品も読んでみたい。
直木賞、私設図書にありオススメされた -
Posted by ブクログ
滋賀県は京都の影に隠れて印象が薄い、佐賀とか千葉とかよく間違われると嘆かれる作者は滋賀のご出身。
昨年、連続テレビ小説の舞台にもなりましたが、あの舞台が滋賀だと認識している人がいかほどおられるか・・・などなど。
いくら説明してもわからない人には京都と言っておくなんてそんなことはないでしょうが。
そう嘆くわりにそんなに郷土愛が感じられないのはどうしてでしょう?
やんわり毒舌で、適度に厳しく、なんだかすがすがしい。
そして全編を通して出てくる話題がお酒。
鮒ずしにはどんなお酒が合うとか琵琶湖の魚にはこんなお酒とか、小さい頃からの思い出や現在までほとんどお酒が出てきます。行ける口なんですな、姫野さん。
まあ私としましてはそこらへんには大いに共感するところです。
しかし、「私の口に合う日本酒は滋賀には無い、三重の何とかいうお酒です」って、最後にずっこけました。 -
Posted by ブクログ
こちらの作品に限っては、著者のあとがきを読んでからの方が、物語に入り込みやすいかもしれません。というのもかしこまった書簡形式(著者は相談小説と表現)という独特の文体故に、とても読みづらく感じたため、そのような構成に至った著者の意図とプロセスを理解した方が物語を理解しやすいだろうと思ったからです。さらにこの物語は不可解な出来事の羅列なのですが、なんと全て著者の実体験だそうです。本書では凄惨な暴力などの痛ましい事件などはほとんど書かれず本当に小さな不可解で理不尽な出来事しか起きないのですが、何も知らずに読んでいると正直「しょーもな」という気持ちが先行して内容がいまいち入ってきません。ですが、それらが実際に起こった実体験だと知った上で本書を読めば、確実に物語を理解しやすく、リアルに起こったことなのだという面白さを感じながら読み進められることと思います。
私はあとがきは最後に読む派なので、なかなかストーリーが入ってこずいつになったら面白くなるんだろうと思ったまま本の1/3に到達。なかなかストーリーが進まない。最初の「名札張り替え事件」も意味不明だしどうでも良すぎて投げ出しそうになりました。(しかも真相は謎のまま)もう読むのやめようかな、私がそう思ってる矢先、主人公が自分の親をひとことで言うならなんだろう?と問い、それに対して回答者・長谷川達哉氏が「毒親」と回答します。この「毒親」という言葉が初めて出てきた時点で物語がついに動き出したと感じました。
中でも一番理不尽だったと思われる「タクシー事件」もシーズン2(同じことがまた起きる)の時に思わず読んでるこちらが吹き出してしまいました。もーやだーこの親頭おかしい。そのあたりでようやく面白がりながら読んでましたが、現実でも毒親というものは常識や条理からかけ離れた発想をするものなのかもしれないとも思いました。
最近、毒親関連の本をよく読みますが、毒親には色々なジャンルがあり、これが毒親と一言で言えません。ですが私が毒親を定義するとしたら「親が子を支配する」この一言かなと思います。これが私が感じる毒親の定義です。
実は私はこれから二人目を出産するのですが、良い親になれるか不安を感じるばかりでした。絶対に毒親になりたくないから、毒親関連の本を読み漁っていました。そんな中で本書を読んで、毒親の仕打ちに対する回答者の言葉を読んで私も主人公同様、勇気づけられたり納得できたりしました。私は子供を支配するのではなく、子供と共に歩んで成長していけたらなと思いました。
毒親は鬼をうちに入れて、福に豆をぶつける人生。鬼は内、福は外という人生を送ってきたのだと、本書に登場する回答者・児玉幸子が言った言葉が印象に残っています。私は、「鬼は外、福は内」と心がけて楽しい人生を送ります。