姫野カオルコのレビュー一覧
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短編集かと最初は思ったが、柏木イクという女性の幼少期から初老までの物語。各章傍らにはいつも犬。
イクは昭和33年生まれの設定だから第一章はかなり古臭い。馬車やらカラーテレビやら登場。捕虜から戻った父、父を疎ましく思う母との三人暮らしで、心をギュッと縮こませていた日々が彼女の土台になっていていつも傍らにいたのは犬。なかなかに鬱屈した世界が延々と続くのだが最後までイクは実に真っ当に生きていて、それはいつも側に犬が居たからなのか。その時々でイクのまわりにいる人々が実に温かいからなのか。
著者の本は初めてである。直木賞受賞作。
私はこの世界嫌いじゃない。他の作品も読んでみたい。
直木賞、私設図書にあ -
Posted by ブクログ
滋賀県は京都の影に隠れて印象が薄い、佐賀とか千葉とかよく間違われると嘆かれる作者は滋賀のご出身。
昨年、連続テレビ小説の舞台にもなりましたが、あの舞台が滋賀だと認識している人がいかほどおられるか・・・などなど。
いくら説明してもわからない人には京都と言っておくなんてそんなことはないでしょうが。
そう嘆くわりにそんなに郷土愛が感じられないのはどうしてでしょう?
やんわり毒舌で、適度に厳しく、なんだかすがすがしい。
そして全編を通して出てくる話題がお酒。
鮒ずしにはどんなお酒が合うとか琵琶湖の魚にはこんなお酒とか、小さい頃からの思い出や現在までほとんどお酒が出てきます。行ける口なんですな、姫野さん -
Posted by ブクログ
こちらの作品に限っては、著者のあとがきを読んでからの方が、物語に入り込みやすいかもしれません。というのもかしこまった書簡形式(著者は相談小説と表現)という独特の文体故に、とても読みづらく感じたため、そのような構成に至った著者の意図とプロセスを理解した方が物語を理解しやすいだろうと思ったからです。さらにこの物語は不可解な出来事の羅列なのですが、なんと全て著者の実体験だそうです。本書では凄惨な暴力などの痛ましい事件などはほとんど書かれず本当に小さな不可解で理不尽な出来事しか起きないのですが、何も知らずに読んでいると正直「しょーもな」という気持ちが先行して内容がいまいち入ってきません。ですが、それ
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直木賞受賞作ということで読んでみた。
終戦後の昭和から物語が始まっているせいか、昔っぽいタッチで描かれており個人的には最初入り込み難かったが、徐々に読み進めていくうちに面白く感じられた。
犬がタイトルにも使われておりそういった作品の多くが感動系であるから、そういう心持ちで読んでいたが、これにはいい意味で裏切られた。この小説は昭和から平成にまでの1人の女の人生を、その都度関わりのある犬と共に書き綴っている物語で、特にこれといって何か大きなイベントが起きたりするようなことや犬の死に寄り添う涙ちょうだい系の話は無く、その時代背景というか匂い?みたいなものに徐々に誘っていくといった不思議な雰囲気の小 -
Posted by ブクログ
滋賀出身の連れ合いと出会うまでは、この本に出てくる県外の人と同程度の認識だったので
「そうそう、夏は琵琶湖で湖水浴するなんて知らなかった!」
「確かに鮒ずしは押し寿司の仲間だと思ってた!!」
などなど「滋賀県人じゃないあるある」をひとつひとつ堪能して笑いました。
後半、滋賀菜ちゃんの合コンやみうらじゅんさんの話のあたりからは「?」と感じたり読んでいてムズムズする箇所が多くなり、前半の面白さとは違うテイストに(勝手に)少しがっかり。
本筋とは関係ないけど、自分もかつて参加した旺文社ラジオ講座のスクーリングの話が出てきてビックリ&懐かしかった! -
Posted by ブクログ
結婚についてタイトルどおり、しないほうの立場から持論をぶっている。1990年代に書かれたものを集めて一冊にしたんだろうけど、21世紀になって20年ほどたつ今読むと、わりと書かれている世間の人々の言動が古めかしい。90年代なんてついこないだの感じがするけど、けっこう人々の意識って変わっているんだろうな。90年代は高度経済成長期のような時代との様変わりが感じられながらもまだ男女の仲とか結婚が当たり前にあるべきものって感じで書いてあるけど、いまや男女の間は意識や考え方の違いではなく、距離がすごーく開いた感じ。同性婚の是非がうんだかんだ言われたり、あとアニメの美少女キャラのステッカーを堂々と貼った男子