姫野カオルコのレビュー一覧
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家族という呪縛から逃れていく過程を描いた作品は何度か読んだが、この「ドールハウス」は地味ながらもリアルな感じがする。主人公が自分の常識が世間とは違うということに気づくシーンとか、友達とのコミュニケーションに自身をなくすところとか。子供の頃、親にドリフの番組を見させてもらえなかった子がクラスで話題についていけなかったりする的な、小さなことだけど子供にとってはカルチャーショックだったりする。そんな各家庭という文化差がまるで異国の文化のように感じたりしたなあ。そういう意味で恋愛というものは、すごい破壊力のあるライフイベント。主人公に遅れた反抗期がくるきっかけとなったのだから。
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全文が手紙やFAXで成り立っている書簡形式の作品。初っ端、女子高生同士が授業中にまわす交換ノートの手紙で始まるのだけれど、そこには「ドキがムネムネ」、「なーんちて」など、何やらわざとらしい若者言葉。よくよく読み進めてみると最初の舞台は1975年の設定なのでした。
地の文が一行もないため、手紙文をひとつずつ解読し、時代背景も相関関係も読み解かなければならない。誰が主人公なのかさえ、かなりのページ数を繰らなければ判明しない。読み手の辛抱強さが必要です。
主要な登場人物は主人公の八木悦子、彼女が高校時代に想いを寄せる都築宏、悦子の親友の遠藤優子、都築の親友の島木紳助の男女4人。悦子は芯のない、流 -
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風変わりな両親の元で育ったイクの幼少期から50代までの話。
現代ではネグレクト、虐待ともとれる環境で育ったイク。悲惨な環境だが、周囲の人たちとの交流がありそれほど悲壮感は感じない。が、楽しいエピソードではない。
色々な犬がその都度登場するが、決して感動的な犬との心温まる話ではない。あくまでも日常に犬がいた、という感じ。
前半は退屈であったが、後半、イクが成長してからの話は引き込まれた。
両親や、家主、おじいさんとマロンの話は温かさを感じる。
前半が退屈で、少女時代のイクがみじめだったが、読んでいて最後の最後にこんなに気持ちが温かくなるとは思いもよらなかった。 -
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『ツ、イ、ラ、ク』の番外編。
短編で、『ツ、イ、ラ、ク』の出来事に少しでも関わった人物が主となって裏側を語るのだけど、立場も年齢も時代もバラバラ。
「青痣」なんかは誰が、誰について語っているのかなかなか分からなかったけど、とても引き込まれる。
私は準子と河村先生がやっぱり好きだから、この2人の物語は永遠に読める気がする。
共感とか、親近感とか、そんな感じでは全然ないんだけど、むしろ次はどんな想定外のことをしてくれるんだろうという、自分とは違う考えの人の行動に興味があって。
あ、この時の行動はこんな意味があったのか、、ということが多いからかもしれない。
本編でも短編でも、書き方のリズムが独 -
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角川文庫の読むべき100冊だか何だか、特集されてて、なんとなく目に留まったから買ってみた。
表紙にもひかれたのかもしれないな。
それで、開けてみてびっくり。
なんかおバカ風の手紙のやりとりが続く。
ぇ、これって今はやりの携帯小説みたいなやつ?
ぇ、なんか失敗した!!って思った。正直。
ちょっと読むの面倒くさくて、ぇぇ、、、って思ったけど電車の中だったしとりあえず読み続けた。
そしたら普通になったし、それなりに面白くなってきたから不思議なもんだね。
読み進めて、ほんっとに、全編手紙だけなんだ!!
ってわかった時は、ちょっとあんぐりしました。
やるなぁ。
まぁ確かに、自伝なんてそんなもんだし、 -
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ネタバレこれは、直木賞を受賞するほどなのだから、面白い小説。
でも、その面白さは、エンターテイメント性は持っていない。タイトルのとおりに、昭和の犬(猫)と、主人公との関わりが、各年代、その時代を象徴するような、米産TV作品をともなって語られるストーリー。
何か事件が起るわけではなく、主人公は、淡々と年を重ねていく。そういったお話。そこには犬がいる(猫がいる)ということと、海外ドラマ。それぞれ、楽しいと思う。知っていても、知らなくても。
あえて、ネタばれ、推論するよう伏せた婉曲表現が多様されるのだが、カートゥーンの『トムとジェリー』についての、主人公(作者)の解釈は、面白かった。 -
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姫野さんの「整形美女」がそこそこ面白かったので二冊目。
普段はタイトルと表紙絵、裏表紙にある作品内容で決めるけれど、今回はタイトルと表紙絵で決定。
いいね、この果実が熟れて、朽ちかけている感じ。
美味しそうに艶やかで甘い香りを誘うように放ちながら、中では休むことなく腐敗をつづけるという、見えないところは悪臭に満ち腐り切っているというところ。
こういう上辺と中身が大違いなひと、大好き。人間はこうでなくちゃね。
四篇の短編の書き出しと書き終わりがバトンを渡すように繋がった作品。
全ての物語に「藤沢さん」が出てくるが、全て別の「藤沢さん」。
「藤沢さん」以外の人物は主人公に当たる「わたし」、それ