【感想・ネタバレ】整形美女のレビュー

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Posted by ブクログ 2015年07月08日

ギリシャ彫刻のような美人の甲斐子が「美人ではないけれど可愛い」と言われる容姿へ、綿密な計画の元に美容整形手術を受けます。
「美人ではないけれど可愛い」と言われる阿倍子が完璧な美人へ、美容整形外科院にカモられるように美容整形手術を受けます。
着実に計画を実行し、モテ女へと変貌していく甲斐子。
成り行き...続きを読むで美人になり、モテなくなる阿倍子。
容姿を入れ替えたような二人の、手術を受ける学生時代から、その後の歩みが
時より交叉しながら、語られます。

執拗に「美人」と「モテ」とが異なる事が説かれる点を含め、大筋は記憶の通りでした。
坂口安吾の作品が「エッセイが小説的で、小説がエッセイ的」と言われたのと同じ意味で、エッセイ的な小説です。

読み終えてみると、最初に読んだときと、今の自分の変化に気が付きました。

すなわち、(術後の)甲斐子のようなタイプの人間を相手にしない。と心得たことです。
男にも、女にもいるタイプですが、
客観性の欠如と、認識力の低さが突出しているんだけれど、
自分の事は主観的に客観性が欠如していない。認識力は高いと根拠の無い自信に満ちあふれているタイプ。
特技は、他罰性と印象操作。
問題解決が必要なシーンでは、先ず自分のせいではない。と言うことを確認しないと話ができない人。
問題解決が必要なのに、誰のせい、と犯人捜しを始めてしまう後ろ向きな人。
つまり、仕事や家庭で一緒に何かを築くことができない人。
ただし、それでは、能力の低い人として周囲に認識されているか、と言えば、案外そうでもない。
偉い人や、友人関係の中で、彼の客観性の低さに気づくようなタイプの人間の悪評を振りまくのが上手く、ライバルをあらかじめ蹴散らしているので、相対的に評価は高いです。
重役と廊下ですれ違った際に、「あ、×○さん、このあいだ、会議室にノート忘れたでしょ。出てきました?」と些細な失敗を取り上げて、重役の脳裏に焼き付ける。
と言うような細かい印象操作を繰り返し発動し、ライバルを蹴散らします。
本来は、そんな印象操作に乗る重役の方が問題ですが、(だから、僕は韓非子を世の「エラいオヤジ」に勧める者ですが)引っかかりますよ。案外簡単に。
世の中の業績の上がらない会社は、ほとんど、このサラリーマン版甲斐子に操られているのではないか、と疑うほど。

と言うわけで、まともに付き合う人間では無い、と甲斐子タイプを認識し、今ではなるべく接点を持たないようにしました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年02月04日

「ないものねだり」の変身願望を行動に移した2人の主人公。傷を負ったけれど「自分」に戻ろうとした阿部子は救われ、変身が定着して「自分」を見失った甲斐子は救われなかった。

「あなた」が幸せになりたいなら、「あなた」のまま幸せになろうとしなきゃ。
幸せな「他人」になろうとすると、「あなた」は不幸のまま放...続きを読むったらかしになるよ。

ってことかな。
さて、ここからは余談。

「女性の美しさとは」をテーマにした作品ということで、「リアルシンデレラ」を思い出させます。どちらもとても面白いけれど、「リアル~」は「女性の美しさを審査する者」=他者の視点で美を考えているのに対し、この作品は「美しさを審査される者」=女性自身の視点で描いています。ベクトルが逆なんですね。

ベクトルという点で言うと、羨望と軽蔑、尊大と卑下といったような感情も、そのベクトルが交錯します。美しい甲斐子は美しくない顔に整形することによって望みの人生を手に入れ、美しくなかった阿部子は美しい顔に整形することによって人生を狂わせるという、これだけだと単純なベクトルのお話ですが、そうはならないところが、姫野カオルコの姫野カオルコたる所以ですね。
幸→不幸とか不美→美とか、そのベクトルが時間軸で入れ替わります。モノは全然違いますが、そういう意味では、有罪→無罪を描いた「12人の怒れる男」に対する、無罪→有罪→無罪を描いた三谷幸喜「12人の優しい日本人」を思い出しました。

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Posted by ブクログ 2018年08月27日

可愛いとは?ブスとは?ってめちゃくちゃ考えさせられた。
タイトルからは想像できない話だった。
顔面にコンプレックスを持つものとしてはそのまま生きててもいいのかなと考える事が出来たので読んでよかった。

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Posted by ブクログ 2017年05月17日

完璧な美を備えている、と(大曾根医師には)思われた甲斐子が「全身整形したい」と手術を望む。絶世の美女ではなく、大衆受けする程度の女(大曾根医師によると「ブス」)に。一方、整形なんか興味なかったのに「なんとなく」やってみた二重瞼手術に始まり(甲斐子のような「美人」に)全身整形した阿部子。結果、甲斐子は...続きを読む男受けし、阿部子は男から敬遠される。……「美人」って何ですか?という姫野先生の深い考察が物語となっているが、正直「豆つぶのような目」は美人…?と疑問を感じながらも面白く読んだ。与瀬くんが良い味出してた。

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Posted by ブクログ 2016年05月07日

整形をしたくなる心理を知りたくて読んでみましたが、美女なのに、自分が「美女で得している」と思えず整形する人と、その逆の人がいて、「なぜ、整形は後ろめたいのか?」と考えながら読みました。姫野カオルコさんの作品は初めて読みましたが、言葉が面白いですね!趣深くもあり、笑える感じもあり。ハマりそうです。

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Posted by ブクログ 2016年04月17日

目鼻立ちくっきりでスタイル抜群の美人・甲斐子は、自分が美人だという自覚がなく、ある計画を元に20歳で全身整形をして地味な女に生まれ変わる。
一方甲斐子の同級生で地味な見た目だった阿部子も、同時期に整形手術を受けて元の甲斐子そっくりな美しい容姿に生まれ変わる。
整形してから十数年、全く正反対の容姿に変...続きを読むわった二人はどういう人生を歩み、どんな人間になっていくのか。

美容整形を扱った作品ってたまにあるけれど、これは単純に美容整形をして美人に生まれ変わった人間の物語ではなくて、そもそも美人とは?を問う物語。
見た目が整っていれば美人なのか?
でもよくよく考えてみると、見た目が整っていても美人とは思えない人もいるし、見た目は地味でも振舞いや内面を合わせて美人だと呼ばれる人もいる。

甲斐子と阿部子。これは聖書のカインとアベルになぞらえたもので、この二人の主人公に付随するような名前の登場人物も出てくる。
神から不当な扱いを受けてアベルに嫉妬し、最後にはアベルを殺したカイン。
この物語では元々甲斐子はとても恵まれた容姿をしているのに、なぜか異性から不当な扱いを受けるところから物語がスタートしている。
だけど甲斐子はとても慎ましやかで真面目な性格の持ち主でもあった。それが地味な見た目に整形した後、どんな風に変わっていくのか…。

美容整形がいまだに負というか“出来れば隠しておきたいこと”であるのは、嘘をついているような後ろめたさを覚えるからなのだと思う。
芸能人でも、素人でもはっきり分かるくらい顔が変わる人っているけれど、本人が堂々と公表するケースはほとんどない。逆に開き直られたほうが清々しいと思うけれど、そういう人はまだ少ない。
人にはそれぞれコンプレックスがあり、例えば胸が小さい人ならパッド、髪の毛が薄い人ならカツラ、背が低い人ならシークレットブーツなど、そのコンプレックスをカバーするものを用いたりする。
でもそれもやっぱり嘘をついているような後ろめたさから逃れられないから、必要以上にそのことに関して敏感になったりする。 
他人はさほど気にしてはいない、という客観性も、強いコンプレックスの前では通用しない。

整形によって一度美人を経験した阿部子の変化の仕方が素敵だった。コンプレックスをはね除け、自分の生き方を手に入れるということ。
美しさとは、そして本当の幸福とは。

余談だけど、年齢を重ねるにつれて内面って顔に出てくるから本当に気を付けなきゃいけないと思う。
つくりは綺麗なのに意地悪さが隠しきれてない人って、けっこういるよね。

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Posted by ブクログ 2021年09月15日

完璧な美女、「繭村甲斐子」はいわゆるブスに整形手術し、一方、高校の同級生可愛いけど美人ではない「望月阿部子」は甲斐子をモデルに美女に整形手術してもらう。
そして、手術後の二人の運命はどうなったか。

まず、
なんで美女なのにブスに変身するの、もったいない!とは下世話な話。
もっと高尚な理由が。

...続きを読む自分が醜いと信じている、どすぐろい強欲な未練を断ち切れないから、整形手術という手段を使えばこの状態から抜け出せるのではないか。ブスになったら健康であることを神に感謝できる。』

これでも訳、解らないよね。
甲斐子は精神も完璧に強かったのだ。個性も美人ということ。

他人は個性的な人に『変わっているね』というが、『個性的だとほめられたなどゆめゆめ思わぬがよい。自分の経験からはみ出した状況や物や人に対して嫌悪していて』仲間に入れぬ。という経験をして痛いほど嘆いていた甲斐子なのだ。

うーんわかる。しかしその後の運命は...。
はたまた、対称的な「望月阿部子」はどう...。

これから読む方に悪いのでやめる。

でも、美女ってほんとうに男性にもてないの??
整形外科医、大曽根三ヶ衛(おおそねみかえ)のキャラクターがいい。

姫野カオルコさん初めて読んだが、お、面白い。シニカルなんだけれど、真実をついているね。示唆に富んでいるし。私が言うのもなんですが、沢山書物を読んでいらっしゃる方ですねぇ。

私は曽野綾子さんの「ギリシャの神々」を愛読しているが、その解説に

『一見役に立ちそうもないもの、どうでもいいように思えるものをどれだけ許容し、包含しているかが、その社会の体力、奥行きの深さを測る目安といえるのである』(田名部昭)

とあり私もいろいろと興味をもっているので、こういう作風が好もしいのである。

姫野カオルコさんは一作ごとに文体が違うらしいから、他作品も読もうと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年04月16日

整形の話だけど、「顔としての美しさ」と、「それがどう他者から見られるか」を切り分けて描こうとしているのが伝わった。
そもそも美人とは何なのかという話。

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Posted by ブクログ 2020年11月28日

視点が面白い。
読後はもやもやが残る。答えがでる話じゃないから。。。
色々考えさせられる内容で、読んだ後に誰かと話したくなる1冊。

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Posted by ブクログ 2020年11月13日

二十歳の繭村甲斐子は、誰から見てもいわゆる美人。だが、彼女は名医・大曾根に懇願し、彼女の思う美人に(一般的には可愛くない)全身整形をする。一方、同郷の望月阿倍子も、上京を機に整形。甲斐子の卒業アルバムをみせて、そっくりにしてもらう。
甲斐子のだんだん狂気じみてくる心の中が恐ろしく、本当の美しさとは?...続きを読むと考えることになる。

このような小説は読んだことがなかった。
読後感よくはないが衝撃の作品。

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Posted by ブクログ 2018年03月28日

題名から想像したストーリーとは乖離があったが、読者が勝手に求めるお約束ストーリーではなく、美人とは何?ブスとは何なの!?と考えさせられる一冊。

登場人物は聖書の登場人物の名前から考えられているらしく、所々聖書の一節が引用されたりしている。

個性的ななかなか面白い表現をされていたが、私には少し苦手...続きを読むだと感じてしまった。
文章の相性が少し合わなかったのかもしれない。

しかし話は終盤にかけて、なかなかに惹き付けられるものがあった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年07月13日

なぜ誰もが憧れる美女が整形をして、わざわざ一般に言われるブスにするのか最初は理解ができなかった。
読み進めるうちに、美女とモテる女性は違うということに気付き始めた。
確かに、見た目が綺麗な女性は近寄り難く、綺麗と褒められはするが、高嶺の花なのか、モテない気がする。それに比べ、一般的な見た目で仕草がか...続きを読むわいい、キレイな女性の方が声もかけられやすいし、男性も見た目のハードルが低くてアタックしやすいと思う。
脱線してしまったが、楽しく読めた。
また時間をおいて読んでみよう!

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