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二十歳の繭村甲斐子(まゆむらかいこ)は、大きな瞳と高い鼻、豊かな乳房とくびれたウエストを持つ女性だった。だが、彼女は名医・大曾根(おおそね)に懇願し、全身整形をする。一方、同郷の望月阿倍子(もちづきあべこ)も、社会人となった新生活を機に整形。その姿は甲斐子そっくりになった。正反対の考えのもと、整形をした二人の、整形後の運命はいかに――。美しさとは? 幸福とは? 根源を問う衝撃作。
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Posted by ブクログ
ギリシャ彫刻のような美人の甲斐子が「美人ではないけれど可愛い」と言われる容姿へ、綿密な計画の元に美容整形手術を受けます。 「美人ではないけれど可愛い」と言われる阿倍子が完璧な美人へ、美容整形外科院にカモられるように美容整形手術を受けます。 着実に計画を実行し、モテ女へと変貌していく甲斐子。 成り行き...続きを読むで美人になり、モテなくなる阿倍子。 容姿を入れ替えたような二人の、手術を受ける学生時代から、その後の歩みが 時より交叉しながら、語られます。 執拗に「美人」と「モテ」とが異なる事が説かれる点を含め、大筋は記憶の通りでした。 坂口安吾の作品が「エッセイが小説的で、小説がエッセイ的」と言われたのと同じ意味で、エッセイ的な小説です。 読み終えてみると、最初に読んだときと、今の自分の変化に気が付きました。 すなわち、(術後の)甲斐子のようなタイプの人間を相手にしない。と心得たことです。 男にも、女にもいるタイプですが、 客観性の欠如と、認識力の低さが突出しているんだけれど、 自分の事は主観的に客観性が欠如していない。認識力は高いと根拠の無い自信に満ちあふれているタイプ。 特技は、他罰性と印象操作。 問題解決が必要なシーンでは、先ず自分のせいではない。と言うことを確認しないと話ができない人。 問題解決が必要なのに、誰のせい、と犯人捜しを始めてしまう後ろ向きな人。 つまり、仕事や家庭で一緒に何かを築くことができない人。 ただし、それでは、能力の低い人として周囲に認識されているか、と言えば、案外そうでもない。 偉い人や、友人関係の中で、彼の客観性の低さに気づくようなタイプの人間の悪評を振りまくのが上手く、ライバルをあらかじめ蹴散らしているので、相対的に評価は高いです。 重役と廊下ですれ違った際に、「あ、×○さん、このあいだ、会議室にノート忘れたでしょ。出てきました?」と些細な失敗を取り上げて、重役の脳裏に焼き付ける。 と言うような細かい印象操作を繰り返し発動し、ライバルを蹴散らします。 本来は、そんな印象操作に乗る重役の方が問題ですが、(だから、僕は韓非子を世の「エラいオヤジ」に勧める者ですが)引っかかりますよ。案外簡単に。 世の中の業績の上がらない会社は、ほとんど、このサラリーマン版甲斐子に操られているのではないか、と疑うほど。 と言うわけで、まともに付き合う人間では無い、と甲斐子タイプを認識し、今ではなるべく接点を持たないようにしました。
可愛いとは?ブスとは?ってめちゃくちゃ考えさせられた。 タイトルからは想像できない話だった。 顔面にコンプレックスを持つものとしてはそのまま生きててもいいのかなと考える事が出来たので読んでよかった。
完璧な美を備えている、と(大曾根医師には)思われた甲斐子が「全身整形したい」と手術を望む。絶世の美女ではなく、大衆受けする程度の女(大曾根医師によると「ブス」)に。一方、整形なんか興味なかったのに「なんとなく」やってみた二重瞼手術に始まり(甲斐子のような「美人」に)全身整形した阿部子。結果、甲斐子は...続きを読む男受けし、阿部子は男から敬遠される。……「美人」って何ですか?という姫野先生の深い考察が物語となっているが、正直「豆つぶのような目」は美人…?と疑問を感じながらも面白く読んだ。与瀬くんが良い味出してた。
整形をしたくなる心理を知りたくて読んでみましたが、美女なのに、自分が「美女で得している」と思えず整形する人と、その逆の人がいて、「なぜ、整形は後ろめたいのか?」と考えながら読みました。姫野カオルコさんの作品は初めて読みましたが、言葉が面白いですね!趣深くもあり、笑える感じもあり。ハマりそうです。
目鼻立ちくっきりでスタイル抜群の美人・甲斐子は、自分が美人だという自覚がなく、ある計画を元に20歳で全身整形をして地味な女に生まれ変わる。 一方甲斐子の同級生で地味な見た目だった阿部子も、同時期に整形手術を受けて元の甲斐子そっくりな美しい容姿に生まれ変わる。 整形してから十数年、全く正反対の容姿に変...続きを読むわった二人はどういう人生を歩み、どんな人間になっていくのか。 美容整形を扱った作品ってたまにあるけれど、これは単純に美容整形をして美人に生まれ変わった人間の物語ではなくて、そもそも美人とは?を問う物語。 見た目が整っていれば美人なのか? でもよくよく考えてみると、見た目が整っていても美人とは思えない人もいるし、見た目は地味でも振舞いや内面を合わせて美人だと呼ばれる人もいる。 甲斐子と阿部子。これは聖書のカインとアベルになぞらえたもので、この二人の主人公に付随するような名前の登場人物も出てくる。 神から不当な扱いを受けてアベルに嫉妬し、最後にはアベルを殺したカイン。 この物語では元々甲斐子はとても恵まれた容姿をしているのに、なぜか異性から不当な扱いを受けるところから物語がスタートしている。 だけど甲斐子はとても慎ましやかで真面目な性格の持ち主でもあった。それが地味な見た目に整形した後、どんな風に変わっていくのか…。 美容整形がいまだに負というか“出来れば隠しておきたいこと”であるのは、嘘をついているような後ろめたさを覚えるからなのだと思う。 芸能人でも、素人でもはっきり分かるくらい顔が変わる人っているけれど、本人が堂々と公表するケースはほとんどない。逆に開き直られたほうが清々しいと思うけれど、そういう人はまだ少ない。 人にはそれぞれコンプレックスがあり、例えば胸が小さい人ならパッド、髪の毛が薄い人ならカツラ、背が低い人ならシークレットブーツなど、そのコンプレックスをカバーするものを用いたりする。 でもそれもやっぱり嘘をついているような後ろめたさから逃れられないから、必要以上にそのことに関して敏感になったりする。 他人はさほど気にしてはいない、という客観性も、強いコンプレックスの前では通用しない。 整形によって一度美人を経験した阿部子の変化の仕方が素敵だった。コンプレックスをはね除け、自分の生き方を手に入れるということ。 美しさとは、そして本当の幸福とは。 余談だけど、年齢を重ねるにつれて内面って顔に出てくるから本当に気を付けなきゃいけないと思う。 つくりは綺麗なのに意地悪さが隠しきれてない人って、けっこういるよね。
二人の女性がそれぞれ整形したお話でした 著者の言葉がなければアベルやカインのことは 気づかなかったと思う 二人の女性はそれぞれに違う方向の整形を 行ったようでそれからのそれぞれの生き方について 語られていました 整形は今なら当たり前のことだと思っていますが ネガティブなことも書かれていてちょっと怖か...続きを読むったです まぁリスクもあるということで
完璧な美女、「繭村甲斐子」はいわゆるブスに整形手術し、一方、高校の同級生可愛いけど美人ではない「望月阿部子」は甲斐子をモデルに美女に整形手術してもらう。 そして、手術後の二人の運命はどうなったか。 まず、 なんで美女なのにブスに変身するの、もったいない!とは下世話な話。 もっと高尚な理由が。 『...続きを読む自分が醜いと信じている、どすぐろい強欲な未練を断ち切れないから、整形手術という手段を使えばこの状態から抜け出せるのではないか。ブスになったら健康であることを神に感謝できる。』 これでも訳、解らないよね。 甲斐子は精神も完璧に強かったのだ。個性も美人ということ。 他人は個性的な人に『変わっているね』というが、『個性的だとほめられたなどゆめゆめ思わぬがよい。自分の経験からはみ出した状況や物や人に対して嫌悪していて』仲間に入れぬ。という経験をして痛いほど嘆いていた甲斐子なのだ。 うーんわかる。しかしその後の運命は...。 はたまた、対称的な「望月阿部子」はどう...。 これから読む方に悪いのでやめる。 でも、美女ってほんとうに男性にもてないの?? 整形外科医、大曽根三ヶ衛(おおそねみかえ)のキャラクターがいい。 姫野カオルコさん初めて読んだが、お、面白い。シニカルなんだけれど、真実をついているね。示唆に富んでいるし。私が言うのもなんですが、沢山書物を読んでいらっしゃる方ですねぇ。 私は曽野綾子さんの「ギリシャの神々」を愛読しているが、その解説に 『一見役に立ちそうもないもの、どうでもいいように思えるものをどれだけ許容し、包含しているかが、その社会の体力、奥行きの深さを測る目安といえるのである』(田名部昭) とあり私もいろいろと興味をもっているので、こういう作風が好もしいのである。 姫野カオルコさんは一作ごとに文体が違うらしいから、他作品も読もうと思う。
視点が面白い。 読後はもやもやが残る。答えがでる話じゃないから。。。 色々考えさせられる内容で、読んだ後に誰かと話したくなる1冊。
二十歳の繭村甲斐子は、誰から見てもいわゆる美人。だが、彼女は名医・大曾根に懇願し、彼女の思う美人に(一般的には可愛くない)全身整形をする。一方、同郷の望月阿倍子も、上京を機に整形。甲斐子の卒業アルバムをみせて、そっくりにしてもらう。 甲斐子のだんだん狂気じみてくる心の中が恐ろしく、本当の美しさとは?...続きを読むと考えることになる。 このような小説は読んだことがなかった。 読後感よくはないが衝撃の作品。
題名から想像したストーリーとは乖離があったが、読者が勝手に求めるお約束ストーリーではなく、美人とは何?ブスとは何なの!?と考えさせられる一冊。 登場人物は聖書の登場人物の名前から考えられているらしく、所々聖書の一節が引用されたりしている。 個性的ななかなか面白い表現をされていたが、私には少し苦手...続きを読むだと感じてしまった。 文章の相性が少し合わなかったのかもしれない。 しかし話は終盤にかけて、なかなかに惹き付けられるものがあった。
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