姫野カオルコのレビュー一覧
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ネタバレ「ないものねだり」の変身願望を行動に移した2人の主人公。傷を負ったけれど「自分」に戻ろうとした阿部子は救われ、変身が定着して「自分」を見失った甲斐子は救われなかった。
「あなた」が幸せになりたいなら、「あなた」のまま幸せになろうとしなきゃ。
幸せな「他人」になろうとすると、「あなた」は不幸のまま放ったらかしになるよ。
ってことかな。
さて、ここからは余談。
「女性の美しさとは」をテーマにした作品ということで、「リアルシンデレラ」を思い出させます。どちらもとても面白いけれど、「リアル~」は「女性の美しさを審査する者」=他者の視点で美を考えているのに対し、この作品は「美しさを審査される者」= -
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面白かった。
姫野さんは鉄道も歴史も食べ物もお酒も、本当によく知ってて、その上表現が上手いから、乗せられて一気に読んでしまった。味覚がとても鋭い人だから食べ物とお酒の話は特に上手い。
最後の方の禁煙の店がないとか、車がないと生活できないとか(だから東京に来ると電車の乗り換えでヒーヒー言う)、老人の住むところをどうするかというのは滋賀だけでなく、ほとんどの地方が同じ問題を抱えている。高齢者は免許返上しろって言うけど、返上しても生活出来るのは都会だけ。車がなけりゃ生活できない、それが地方。
滋賀の哀しさ(いつも京都の陰に隠れる)、美味しさ、味わい深さがよくわかり、姫野さんの組んだ旅行のコースは、 -
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おもろい!笑笑
処女にして、官能小説作家の力石リキ子。しかもオーバー30。すでに設定からしてそう。甘くくど〜い恋愛小説なんてもってのほか。力石にかかればちゃっちゃとヤりたい。
もしくは微妙に話の噛み合わない男に心の中で爆笑しつつ、10セットでゲームセットなんだから早く次いきましょー。と、なんともサバサバとした力石リキ子の姿についつい魅了されてしまう。
そんな力石さんは処女にして官能小説作家っていうね。
うまぃなぁ。うまい。
噛み合わない男とのやりとりもうまいし、ちゃっちゃとヤりたい力石を口説いてどーにかしようという男の回りくどい意味のない言葉の羅列の描き方もうまい!
それをリキ子は2 -
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1990年代初頭くらいのエッセイ。以前にもこの作家のエッセイを読んでおり、途中既視感が有ったが、初読であった。
50音順に言葉をあげていき、それにまつわる大体は過去のあれこれを綴る。序盤は、世の中の人は好きだと言うが、私は違うけんね、というひねくれた話で、それも序盤で終わる。中盤以降は大抵は愚痴とツッコミなのだが、半分辺りからかなり逸脱し、それらが本書の醍醐味。
前の本のときにも書いたと思うのだが、インターネット時代にこの文章がリアルタイムで流れたら、かなり読者を掴むのではないかと思う。迷いや衒いのないザクザクした切り口で、次々と過去の知り合いを料理していく。普通の作家だと、知り合いのこと -
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ネタバレ2018/03/02
手紙とファックスのやりとりだけで、登場人物たちの20年近くを追う。
20年。
スタートは高校生、表現に時代を感じるものの、なんか自分もこんなノリの手紙のやり取りしてたなあと思い出す。
その後大人に近づいて文体は落ち着き内容も年相応に紆余曲折していく感じ、なんかリアルでした。
都築がしょーもない。
上辺では平静を装っていても、どうしようもなく弱くていい加減で、それを直視しないように文学にハマってみたり(ハマったフリをしてかっこつけたり)、自分の失敗や弱さにしょーもない言い訳をつけて正当化したり、もうほんとしょーもない。
でもこういうしょーもない人はいるし、自分にもそうい -
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愛情を示さない両親に従順に従って生きる主人公「イク」の、幼児時代から初老に近づくまでの日々を、8つの章に分けて描く。普通には幸福な家庭と言えないが、そばにはいつも犬や猫がいて、イクを支えてくれた。いや、犬や猫ばかりではでなく、多くの人たちが人生の道々でイクを応援してくれた。怒りっぽい父は、ソ連での捕虜の辛酸な経験が彼の人生を変えたようだし、変わり者の母にも母の事情と人生があった。でも両親も、物語を構成する多くの人物や犬猫も、イクの人生を肯定しているようだ。『すべてのものごとは、各人の胸に据えられた鏡にどう映るかなのである』という著者の多様性を容認する姿勢が気持ちよい。イクは作者姫野氏自身を描い