姫野カオルコのレビュー一覧
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双子の姉弟が主人公の恋愛小説。
同じ人物が少しずつ変わりながら別々の時代・背景で愛し合う
オムニバス形式の作品です。
最初の現代の場面では「??」という感じだったのですが
二章目から一気にのめりこみました。
全体を通して“耽美さ”が強く打ち出されていてとても官能的。
甘ったるいのではなく耽美なのです。
登場人物だけでなく小道具も共通して使われていて、その使い方も巧みです。
読み終わったあと不思議な「ほわーっ」というため息が漏れます。
普通のラブストーリーとは何かが違う「ほわーっ」なのですが
うまく言葉にできませんゴメンナサイ。
著者自ら女性向けと言い切っている作品です -
Posted by ブクログ
処女三部作の第三作目です。
(私はたまたま最初にこれを手にしましたが
読む上ではまったく問題ありませんでした)
三作とも読みましたがこれが一番好き。
処女で三十路のポルノ作家理気子が
キザでおフランスでスキンヘッドの男と不倫をする話。
とにかく面白いです。
似非インテリでおフランスな彼の描写が痛快。
ストーリー展開も痛快。
文体も軽快で明快。
何度も読み返してしまいます。
理気子とおフランス霞の風変わりな関係だけでなく、
星野夫妻の「ごくフツーにどろどろした」不倫が
対照的に描かれているのがまたいいなーと思います。
著者はいつもそういう「ごくフツー」だとか
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Posted by ブクログ
1970年前後のサイケな時代を描く姫野氏の短編集(?短編で紡いだ小説というべきか)。私が、1970年〜80年という時代(とその間の変化)に、興味を持つきっかけとなった小説である。どの作品も、「ジェンダー」という言葉すら一般的に知られていなかった時代(アメリカのウーマンリブ運動が盛んになったのは、たしか1970年代初頭だったと思う…この辺りの歴史に弱いので勉強する予定)における、姫野氏の冷静で鋭敏なジェンダー感覚を感じさせるすばらしい作品である。
個人的には「オー、モーレツ!」、「お元気ですか、先生」の2作品が特に好きである。映画化するまでもなく映像が心に浮かび、心が締め付けられるような懐か -
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ひとりで遊ぶ子供が、犬(ときに猫)の傍らで、時の流れを、静かに語る(過去を振り返って語る)話。
著者の自伝的要素が強いとのこと。
「昭和の犬」という題名には「昭和」という時代を指す年号が入っているが、昭和全時代の流れを語るわけではなく、話は昭和30年代から始まり平成20年まで続く。
章タイトルは、章のエピソードの頃に流行っていた海外のテレビドラマのタイトルらしい。
ちなみに、著者は滋賀県出身だが、香良市と紫口市は架空の市名だとのこと。
『獲得したものを数えるのではなく、彼らの厚情により、被らなくてすんだ不幸を数えれば、それは獲得したものとちがい目に見えないが、いっぱいいっぱいあるのでは -
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つばさと美咲が出会ってから事件が起こるまで、そして収束までの物語である。つばさは東大生でありそれにものすごく自信を持っている。なんなら他の学生は自分より下だと決めつけ見下している。一方みさきはごく平凡な家庭にうまれ、幸せに育った普通の女の子だった。つばさは彼女だったみさきでさえ見下し、飲み会に呼び出して半ば無理やり飲ませ、エノキの部屋で胸を触ったりなど性的なちょっかいをだした。みさきは通報し、エノキや譲治は逮捕される。示談の条件は東大を辞めること。つばさは東大をやめなかったが、逮捕されたため結局はやめた。ニュースを見て、一般人は女がヒステリーを起こしただけだ、東大なんだからこんなことやらないだ
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加害者が被害者の女子大生にしたことは本当にぞっとするような内容。被害を受けている時の描写は、直視できず、思わず斜め読みしてしまった。
加害者達に感じる「胸糞」が何なのかを考えてみた。
・学歴や偏差値というたった一つの物差しで、自分を「優」、女子大生のことを「劣」と判断する、浅はかさや驕り
・「劣」と判断した女子大生の尊厳を踏み躙ることを意に介さない、まるで「モノ」のように扱う傲慢さ
・子が子なら親も親。加害者だけでなくその親も同様の思想で、驕りや傲慢さが脈々と継承されていくことの救いようのなさ
・「東大の男性の家に行ったその女子が悪い」と被害女性を断罪する社会道理
どれも間違いなく社会に蔓