ユヴァル・ノア・ハラリのレビュー一覧
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現代分析から、近い将来の予測まで。
「人間至上主義」によって、一人ひとりの内面の重要性や平等性が成り立っていること。
知能と意識が切り離され、知能についてはAIが人間を上回ることにより、社会にとって人間が本質的に不要になっていくという流れ。
人間至上主義から「データ至上主義」が台頭してきている。
世界のありとあらゆる情報をインターネットに繋ぐことで、人間には処理しきれない情報をAIが深く解析して何かしらの出力に繋げる。それに誤りが含まれていたとしても、人間より確からしさが上回るのであれば重用される。
自然の各種情報、各人の健康情報や心象をデータとしてAIに渡すことにより、自分自身について、自分より良い出力や意思決定に繋げることができる。これは実際に現在進行形で行われていること。
一昔前はどこでも写真を撮る日本人が馬鹿にされていたが、今や世界標準になっている。
ただ、これまではデータ処理系としての人体(経験や感情、行動)があったから人類が力を持っていたが、それがAIに取って変わられつつある今、人類が尊重される必要はなくなりつつある。
まず富裕層が独占して無用者階級が生まれるだろうが、早晩富裕層すら不要になってしまうのではないか。そこの先に何があるのだろうか。
独裁や民主主義、社会主義を超えて(現在の諸問題に対応しきれていないのはそれはそう)、AIが社会統治する方が合理的になってくるはず。
(以下感想)
内容としては「それはそう」と頷ける部分が多く、だからこそ近い将来の予想の妥当性も深かった。
これが書かれたのが2015年ということに驚いた(もっと最近かと思っていた)。少なくともこの10年において、より妥当性は増してきている。
自分自身もその大きな流れに与して助長するような考え方になってきていることを改めて自覚した。 -
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上巻での歴史的考察を終え、今後の情報ネットワークの高度化や生成AIと人類がかかわる中で、どのようなことが起きうるか、といった未来予測が中心となっています。
読み進めて、預言書を読んでいるような錯覚を覚えました。情報ネットワークと生成AIの発展が進むにつれ、デストピア的な将来になる可能性もぬぐえず、それを防ぐためには、強力な情報ネットワークを導入するにつれ、強力な自己修正メカニズムも必要となる、との話で締めくくられています。
緻密な考察や論拠をもとに書かれており、強いリアリティがあります。考え方や情報との向き合い方についても、良い刺激を受けました。 -
Posted by ブクログ
翻訳本なのでどうしても特有の読みにくさや引っ掛かりがあることに加え、西洋の宗教、特にユダヤ教やキリスト教が話の中で自然に出てくるのですんなりとは進まないのですが、内容については刺激されるところも多く、時間をかけて読んでいます。
上巻は、AIなどこれからのテクノロジーに目を向けた話というよりも、過去の歴史から洞察を得ることを目的としています。
中身について少しお話しますと、情報というものを有機的な物語と無機質な文書に分け、両方が必要だと説かれていますね。加えて、情報の伝達手段として、昔は活版印刷、今はインターネットのようなテクノロジーが発達し、それが人類に対してどういった影響を与えたのかというところも、魔女狩りやスターリンの政治の例を通じ、非常に丁寧に考察されています。
また、情報そのものにも誤りがあることはあり得るため、それを基にした決定や知恵、様々な行動にも誤りが発生します。それを正すためには、自分で誤りを認め修正する機能、すなわち自己修正メカニズムが必要であるという考えは確かにその通りかと思いました。 -
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1. 認知革命と「虚構」が作った世界
本書の根幹にあるのは、「人類がなぜこれほどまでに世界を支配できたのか」という問いへの答えだ。著者のハラリ氏は、その要因を「認知革命」による「虚構(フィクション)を信じる力」だと断じている。
サピエンスは、国家、法律、人権、そして貨幣といった、物理的には存在しない「概念」を共有することで、見知らぬ人同士が何万人、何億人と協力することを可能にした。
特に貨幣についての「最も効率的な相互信頼の制度」という定義は面白い。誰もがその紙切れに価値があると信じ込むことで、大規模な経済活動が成立している。裏を返せば、私たちが日々一喜一憂している社会の仕組みの多くは、共通の「思い込み」の上に成り立っているということだ。
2. 農業革命は「史上最大の詐欺」か
1万2000年前に起きた農業革命を、著者は「史上最大の詐欺」と呼ぶ。
狩猟採集時代、人間は多様な食物を摂取し、自由な時間を謳歌していた。しかし農業を始めたことで、特定の作物(小麦や米など)の奴隷となり、不作のリスクや重労働、そして階級格差に縛られるようになったという。
生物学的な「種の繁栄(人口増)」には成功したが、個人の「幸福」という観点で見れば、むしろ生活の質は低下したのではないか、という指摘は鋭い。現代の私たちが感じているストレスや生きづらさの根源が、急激すぎる生活様式の変化に遺伝子が追いついていない「タイムラグ」にあると考えると、妙に腑に落ちるものがある。
3. 歴史の非情な側面
サピエンスが勢力を広げる過程で、多くの大型動物や、ネアンデルタール人のような「兄弟種」が絶滅に追い込まれた事実についても、淡々と、しかしドラスティックに描かれている。
著者は倫理的な批判をするのではなく、生物学や歴史の視点から、サピエンスがいかに「危険な存在」であったかを警鐘として鳴らしている。環境破壊や核の脅威を抱える現代において、この性質は変わっていないのだと思い知らされる。
4. 冗長な具体例がもたらす説得力
本書は決して薄い本ではないが、その厚さは「具体例の豊富さ」に由来している。この具体例が非常にユーモラスで、かつ思考を揺さぶってくる。
例えば、イタリア料理に欠かせないトマトがメキシコ原産で、ヨーロッパに伝わったのはわずか400年前だという話。カエサルはトマトスパゲティを食べたことがなかったし、ブッダは唐辛子を知らなかった。
私たちが「伝統」や「当たり前」だと思っている文化も、実はごく最近のグローバル化によって作られた「共同主観」に過ぎない。こうしたエピソードの積み重ねが、難解な概念を血肉化させてくれる。
5. 総評:歴史を「美化しない」視点
読み終えて感じるのは、ある種の解放感だ。 社会にある格差やルール、絶対的だと思っていた正義も、歴史の文脈で見れば移ろいゆく「虚構」の一つ。そう認識することで、今のシステムに過剰に適応しようとする肩の力が少し抜ける気がする。「人権」も「平等」も、生物学的な事実ではなく、協力のために発明された強力な「虚構」なのだ。
ドラスティックに歴史を切り取る筆致は、塩野七生さんの著作を読んだ時の感覚に近い。人間の物語を美化せず、本質をありのままに提示する姿勢には、強い説得力がある。
⇓好きな一節(第2章 虚構が協力を可能にした P40)⇓
虚構のおかげで、私たちは単に物事を想像するだけでなく、「集団」でそうできるようになった。聖書の天地創造の物語やオーストラリア先住民の夢の物語、近代国家の国民主義の神話のような共通の神話を私たちは紡ぎ出すことができる。そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。アリやミツバチも大勢で一緒に働けるか、彼らのやり方は融通が効かず近親者としかうまくいかない。オオカミやチンパンジーはアリよりもはるかに柔軟な形で力を合わせるが、少数のごく親密な個体とでなければダメだ。ところがサピエンスは、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力ができる。だからこそ、サスペンスが世界を支配し、アリは私たちの残り物を食べ、チンパンジーは動物園や研究室に閉じ込められているのだ。
⇓好きな一節(第9部 統一へ向かう世界 P210)⇓
私たちは相変わらず「純正」の文化ということをしきりに口にするが、独自に発展し、外部の影響を免れた古代の地元の伝統から成るものを指して、「純正」というのなら、地上には純粋な文化は1つとして残っていない。過去数世紀の間に、すべての文化は、グローバルな影響の洪水で、ほとんど原型を留めていないほどまで変化してしまったからだ。
このグローバル化のうちでも、特に興味深いのが「エスニック」料理だ。私たちにはこんな思い込みがある。イタリアのレストランではトマトソーススパゲティーが食べられて当然だ。ポーランド料理とアイルランド料理の店ではジャガイモがたっぷり出てくる。アルゼンチン料理の店では何種類もビフテキ、インド料理店では、ほとんどの料理に辛い唐辛子が入ってる。スイス風のカフェのハイライトは、ホイップクリームの載った濃厚なココアだろう。
だが、これらの飲食物は皆、もともとこれらの国のものではない。トマトと唐辛子とココアはどれもメキシコ原産で、ヨーロッパとアジアに伝わったのは、スペイン人がメキシコを征服した後に過ぎない。ユリウス・カエサルとダンテ・アレギエーリは、トマトにまみれたスパゲティーをフォークに絡めたことが1度もなかった。(実のところフォークさえ、まだ発明されていなかった)ウィリアム・テルはチョコレートを味わったことがなく、ブッダは唐辛子で食べ物に辛みを加えたりしなかった。じゃがいもがポーランドとアイランドに伝わったのはわずか400年前だ。1492年にアルゼンチンに入ったのはラバのステーキだけだった。 -
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AIを「便利な道具」として使っているつもりが、気づけば自分の判断まで委ねてしまっている——そんな感覚に心当たりはないでしょうか。本書は、その違和感の正体を一段深く言語化してくれる一冊です。
『NEXUS 情報の人類史 下』でハラリが描くAIは、単なる技術ではありません。自ら判断し、新しい発想を生み出す「存在」としてのAIです。人間の延長ではなく、まったく異なる論理で動く「異質な知能(エイリアン・インテリジェンス)」という視点は、これまでのAI観を大きく揺さぶります。
本書を読んで強く感じたのは、このテーマが単なる未来予測ではないということです。むしろ、私たちの想像力をかき立てるSFであり、正体が見えないまま進行する不気味さを持つホラーであり、そして人類の命運を賭けたサスペンスそのものだと感じました。
特に印象的なのは、AIの判断がブラックボックス化している点です。結果は提示されるのに、その理由は説明できない。この構造が広がれば、私たちは「なぜそう判断したのか」を自分自身でも理解できなくなるかもしれません。さらに、AIは人間の感情に寄り添うように振る舞いながら、知らないうちに意思決定を誘導する可能性もあると指摘されます。その影響は個人レベルにとどまらず、社会の分断や新たな統制へとつながる危険性を孕んでいます。
一方で、本書は悲観だけで終わりません。鍵となるのは、人間側が「自己修正できる仕組み」を持ち続けられるかどうかだと語られます。間違いを認め、修正し続ける力こそが、この状況に対抗する唯一の手段だという視点には、静かな希望も感じました。
読み終えたとき、「AIを使うかどうか」ではなく、「自分の判断をどう守るか」という問いが残ります。すでに始まっているこの変化の中で、どう生きるのかを考えさせてくれる一冊です。 -
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息子へ
父さんが、これまで読んだ本の中で一番衝撃を受けた本、「サピエンス全史」の筆者の3作目。
さすがに「サピエンス全史」で学んだことが多く書かれているので、あのときほどの衝撃はなかったが、それでも、学ぶべきことは多く書かれていた。
科学技術の進歩、資本主義の崩壊で、これまでの常識が通用しなくなる時代が来るということ。
虚構を生み出す物語を作ることができたからサピエンスは地球の頂点に立っているが、その物語が多くの悲劇を生み続けているということ。
そして、今の世界は虚構であり、虚構の外も虚構であること。
自分が欲っすることを行おうとする自由意志はもてるが、
自分が何を欲しいのか?ということに人類は自由意志をもてないということ。
脳と心は別。
脳は解明されつつあるが、まだ心は見つかっていないこと。
最後に、瞑想が特別な行為であることを教えてくれた。
やはり、この筆者はすごい。
次の作品も、さらに次も楽しみだ。
読め、もしくは、読むな)必ず読め
君が・・・歳のころに)大学生になったら。 -
Posted by ブクログ
情報と真実
例 NILI 学問の厳密さについて(地図) 占星術
情報とは物事を表示することでなく結びつけること
物語 共同主観的現実
例 スターリン シェールアミ イエス 過越の食事 合衆国憲法 ナチス
文書 官僚制 生物学ドラマ
例 虐殺の町にて ウル楔形文字 アッシリア貸付契約殺された 下水 コレラと井戸 ラーマーヤナ カフカ審判
誤り 自己修正メカニズム 不可謬の聖典
例 ラビのキュレーション 死海文書 ミシュナー タルムード 新約聖書 司教と神学者のキューレーション 教会 印刷と魔女狩り 魔女への鉄槌 科学革命 キュレーションの機関科学アカデミー=自己修正メカニズム ルイセンコ再教育理論
決定
民主社会 独裁社会 ポピュリズム 全体主義 チェーカー セクリターテ コルホーズ クラーク
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●知能と偽の親密さ
知能と意識は別物である。人間や哺乳動物は両者が密接に結びついているケースが多いが、知能に意識は必須ではない。
2010年代はSNSが人間の注意力を支配する戦場だった。2020年代は戦いが注意から親密さに移る。感情がなくても、人間に情緒的な絆を感じさせる方法は学習できる。
●課税の問題
従来、ネクサス(特定の管轄区域と企業の結びつき)は、企業がその国にオフィスや店舗などの物理的なかたちで存在しているかどうかだった。情報のみの取引はネクサスにカウントされないため、課税されない。デジタルな存在も定義に含むよう調整がなされなければならない。
●民主主義の基本原則
善意、分散化、相互性、監視システムに「変化と休止」の余地を残すこと。
●説明を受ける権利
コンピュータ(のアルゴリズム)はブラックボックスで、なぜその判断を下したのか、人間にはわからない。社会の多くの部分でコンピュータに決定を委ねれば、民主的な自己修正プログラムの信頼性は失われ、民主的な透明性も失われ、説明責任の所在があやふやになる。
●デジタルアナーキー(無政府状態)
民主主義を適切に機能させるために必要な2つのことは、公の場で自由に話し合えることと、最低限の社会的秩序。話し合いにおいてルールがなくなれば、アナーキーとなる。
AIには特に注意。2017年の米国選挙中の投稿の20%がbotだった。2020年には43.2%。さらにSNSのルールもアルゴリズムが統制するようになってきている。
●最も賢い者の絶滅
人間の本性ではなく、人間の情報ネットワークが真実よりも秩序を優先することに起因する。従って、ネットワークが力を持てば持つほど、自己修正メカニズムが重要になる。