木内一裕のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
仕事なし、彼女なし、運もなし。律儀以外に取り柄もなし。
あるのは借金だけ。
そんな主人公が、1千万の報酬金が出る完全誘拐計画に手を貸すことに。
人生を立て直すため、たった一度だけと、請け負ったものの、
知らない間に、見に覚えの無い殺人犯に仕立て上げられていた。
主人公は無実を晴らし、人生を立て直すことができるのか?
そして、事件の真相は?
1つの事件について、登場人物たちの色んな視点から語られます。
視点が変わっても混乱することなく、テンポ良く物語りが進み、
あまりにも面白く、続きが気になってしまったので一気読みしてしまいました。
スッキリと軽い読後感です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『水の中の犬』の続篇、主人公は元やくざの探偵矢能。前作では陰の探偵に対し、陽の探偵矢能。元やくざだけあり、度胸としたたかさを兼ね備え、はったりの押し出しも強い頼もしい奴です。
前作の縁で小学2年生の女の子栞と同居してます、彼女は年の割りにしっかりした大人の考えを持ち、矢能の痛いところを突いてくる厳しさ優しさを合わせ持ってます。中年の元やくざと少女、ベタな関係ではあるけれどはハラハラさせられるし最後はホントよかったな!って思わされる。
本筋のほうはスピード感あり、矢能の問題処理能力、追撃能力が頼もしい限り。そして敵役の若者ですが身体能力にすぐれ、冷静な判断力を持ちながらも純粋過ぎる故、善悪の判断を誤ります。矢能と彼の邂逅は、探偵とのそれと違いながらも眼を熱くさせるに充分でした。最期はしたたかな矢能らしい着地で、前作のやりきれなさを払拭してくれます。
ですが、エピローグではまたホロリと…2作続けてですが、エピローグのわずか2ページほどの描き方が素晴らしい、木内氏の力量に拍手です。
異なる主人公を据えて続篇を描くという構成、そして陰と陽に例えられる主人公の対比、さらに二人を取り巻く脇役達(情報屋、やくざ、殺し屋等々)どれもが濃密に交差し合って物語を完成させており、ハードボイルドのジャンルで確固たるポジションを築いてる秀作だと思います。やはり探偵が好きだな、権力の後ろ盾がない徒手空拳、でも魅力的な脇役がいて、正義だけでは割り切れない決着があって、そこにドラマがある。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ著者木内氏は、『ビーバップハイスクール』が有名な漫画家でもあります、今作の存在は漫画家木内氏の手による、ということでちょっと気にしてました。そのような中、マイミクさんが高い評価をつけてらしたので手にしました。
3つの短編からなっています。主人公は元警官の探偵、彼の名前はとうとう最後まで語られることがなかった。よせばいいのに面倒なことに自ら進んで首を突っ込んでしまう、おせっかいなのか?親切すぎるのか?はたまた危険に己を追い込む被虐性嗜好があるのか?腕っ節がそれほど強いわけじゃないのに、とにかく食って掛かる。のっけからコテンパンにやられます、これほど読者の痛覚に訴える主人公もいないだろうと思う。彼が被る傷を含め、暴力の描写は読者の胸に強く突き刺さる。そしてやりきれない結末が、名前のない探偵の虚無感をさらに煽る。
というように序盤は陰にこもる探偵の痛々しさにやりきれなくなるのですが、中盤に入り、探偵の命も、殺し屋に狙われあとわずか!という時彼に絡んでくるやくざ、矢能の存在が物語りの色彩をガラッと変えます。彼のセリフはこの作品の全てであると自分は確信しました。
「お前がくたばったら…後は俺に任せろ」
たったこれだけのくさいセリフが、眩いばかりの光でゾンビのごとく意味もなくただ傷を負う探偵に血を通わせた気がしました。最近では一番痺れたセリフでした。しかしながらさらにやりきれない結末が…
終盤ではハードボイルドの正統である、主人公探偵の一人称で物語が語られます。ここは構成として非常に巧い、前の二つは神の目視点で語られていたので血の通った主人公を感じる効果が生まれています。探偵の過去、心の傷も明らかとなるのですが、さらに大きなトラブルと危険な相手に破滅的な予感がします。予感通りの終末となり、名前のない探偵の物語は終わり、その凄絶な最期は己の眼を熱くさせたのでした。
エピローグでは探偵事務所をやくざ矢能が引き継ぐこととなっており、続篇『アウト&アウト』へと流れていきます。