浦賀和宏のレビュー一覧
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いまだに信じられない
生前の浦賀和宏作品を知っている人ならこう思うだろう
「追悼 浦賀和宏」さえも浦賀和宏いつもの悪仕掛けだなと
それにしても本を開くと、これまでの作品以上に念の入った、リアリティのある導入。
浦賀和弘は本書上梓後死んだという母親による前書き。物語の内容は置いておくが、後書きもただの後書きではなく仕掛けがある。
そんな、なんと呼んだらいいのか見当もつかない仕掛けをのこして、浦賀和宏は作品の通りに上梓後死んだという。
まだ40代くらいのはずだ。
偶然死んだというのか。
自分が作中で死ぬ本を書いて、「皆様ご存知の通り浦賀和宏はこの本を上梓して間も無く他界しました」と母親が語る。それが偶然だというのか -
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公園の池で発見された少年の溺死体。悪童3人組によるイジメの結果と疑われるが影の薄い少年の事件は未解決のまま時が過ぎた。それから10年後、少年の幼なじみを名乗る男が3人の前に現れる。事件の真相を暴こうとする者と隠そうとする者の攻防、三角形の悲劇の始まり。
冒頭で度肝を抜かれる。この「デルタの悲劇」は作家・浦賀和宏の遺作であり、不慮の事故で命を落とした息子の代わりに母親が上梓したのだという。無論この作品の発表段階では現実の浦賀氏はご存命であるから、この作品は浦賀氏が生前に自身を故人として扱い遺作という形をとったフィクションの物語である。この作品から2年後に本当に亡くなってしまうのだから何とも不 -
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ネタバレキャンプから帰ってきた妹が、キャンプでイルカを見たと言う。行われたのは、群馬。
当然誰も信じないなか、兄の敦士は友人と妹とともに群馬へ向かう。
前半は、ややテンポ遅めのイルカ捜し。だが、少しずつ絡み合ってくる関係性が微笑ましかったり痛いたしかったりで、十分に楽しめる。妹に干渉しまくる主人公の拗らせまくり内面描写は、著者の本領発揮といったところ。(感情移入はしにくいが)
......だが、もちろんただのイルカ捜しでは終わらない。捜し終わった後から、物語は一気に加速する。
自分の想いを見定められず、自分を好いてくれた彼女を傷つけた先にあった未来。
それは、妹を庇い、狂人となった彼女の看護だっ -
Posted by ブクログ
ネタバレ一年前に別れた元恋人(健吾)が失踪した。
果たして、彼はどこへ行ったのか、あるいは...
行方を探す私(真美)に起こる不思議な現象。
頭の中に誰かの声が聞こえる、それは、幼い頃亡くなった双子の妹(麻紀)の声。
死者の声を聞く異能の力を持った真美。
彼女の異能の力(サイコメトリー)により、次々と明らかとなる過去の謎。
妹・麻紀の事故の真相、双子の出生の秘密、健吾の失踪、などなど。
そして、底知れぬ悪意が彼女を襲う。
彼女はその悪意を、切り抜ける事が出来るのか?
最後の最後の1行にある、どんでん返しとは?
なるほど、そう言う事ですか?
最後の『母さん。』のセリフに、震えました。 -
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ネタバレ
読んでいて感情や自分がバラバラになっていくような壮絶な心の動きがあった。
多分、書き出しの時は文章に拙さを感じたけど、どんどん自分が没入していくような、そんな感覚で、なだれ込むようにラストまで読んでしまった。
読んでいる間、今までの辛かったことやおぞましい思い出などがあれこれと胸に浮かんでは消えていき、そして最後ふっと小説の最後の行の左の余白の中に溶けていってしまった。
登場人物を効果的に描写してやろうという意図を薄々感じながら読む瞬間はなく、力技とでも言うのかそんなものに絡め取られて、空が反転して地面に寝ていた、そんな疾走感があった。
セックスについて、自分の存在責任を誰かに押し付ける欺瞞 -
Posted by ブクログ
圧巻。
前作までの恋愛、青春、SF要素を残しながらも、今作ではミステリとしての魅力が非常に増しており、エンタメ小説としても楽しめる。
しかも前2作から複雑に絡み合う謎もついに解かれるのだから、本書は単体としての面白さとシリーズとしての面白さが見事に融合した作品と言える。
連続首無し事件の、そして『記憶の果て』『時の鳥籠』と本書、3作品に連なる謎の解決編である「天使祝詞」は、本当に凄まじい。
狂った動機、謎同士の繋がり、そして萩原の語る地球の歴史のシミュレーション。
穂波が見る、最初で最後の安藤直樹の微笑み。
驚愕の真実の数々、そして絶大な破壊力のカタルシスに襲われ、息つく暇がない。
3作に -
Posted by ブクログ
これが生前最後の刊行作品だったのか……と思うとなんだか微妙な心地になります。殺されちゃってるんだ、浦賀さん!
殺されたミステリ作家が遺した、事実に基づく作品「デルタの悲劇」。小学生時代に悪童三人が関わったいじめと死亡事故。事故として処理されたことに安心し鳴りを潜めていた三人に、十年の時を経て迫る追及の手。自分の生活を壊される怯えと、過去の罪の意識に苦しむ三人。彼らの運命はどうなるのか、そして彼らに迫る八木の目的はいったい何なのか。さらに過去の事件の真実もまた明かされることになるのか、サスペンス感溢れる読み心地で手が止まりません。
読み終えて……見事にしてやられたなあ、としか。とある目論見につい -
Posted by ブクログ
神奈川県川崎市を舞台に繰り広げられるサスペンスホラー小説、浦賀和宏氏の遺作です。
川崎は仕事の関係で縁があり、凄まじい書名ですが手に取りました。
川崎市川崎区が他区と比べて極めて治安の悪い底辺の地域として描かれ、実際の川崎区民は読んでどう感じるのだろうかと少々不安になる内容です。
川崎市幸区の一家殺人事件の容疑者でありブギーマン伝説のような殺人鬼“奈良邦彦”が、川崎区に再び現れるところから物語が始まります。
激し過ぎる描写が多いために現実味が薄いのですが、それは読み進めると感じてくる違和感に通じるものでした。
著者による壮大なカラクリが用意されているのです。
地名が多く出てくるので住民か否かで