村井理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
さくら荘
村井理子さんとご両親、そしてお兄さんが住んでいたアパート。
朝、すぐ前の市場が動き始める音が聞こえる。
活気もあり賑やかだったと思われる昭和40年代。
そういう時代に、少し騒々しく多動な子供のことを理解する先生や
大人たちがどれほどいただろうか。
お父さんが息子に対して冷淡な態度を取り続けた理由もP160で書かれているが
全てが捻れてしまい、家族だからこそ簡単には解れない。
P183
〈生涯を通して、一度たりとも私を嫌うことなく妹として思い続けてくれた兄に対して、語り尽くせないほどの感謝の気持ちを抱いている〉
少し居心地が悪くとも、やはり家族。
特別サイトから
〈いずれにせよ、私自 -
Posted by ブクログ
認知症の義母、鬱病の義父を翻訳家・エッセイストである著者が別居サポートするようすを、義母目線で綴った異色の作品。
認知症という個人差の大きな病気を持つ人を主体的に描写することなどできるのだろうか、本人の尊厳を踏みにじることと紙一重なのではないか、などの心配は全くの杞憂であった!
「私」(=義母)の日常に現れる数々の「悪人たち」とそれに翻弄される「私」の怒り、戸惑い、不安、、、
老いることの自認と事実の狭間でさまよう認知症老人の苦悩を、持ち前の雑さと極上のユーモアで痛快にさばく「あの子」(=息子の嫁、著者)のふるまいや視座からは、義両親への深い愛情と尊敬の念が感じられる。
認知症患者に日々敬意 -
Posted by ブクログ
認知症になった本人の目線で、今思っていること、見ているそのままのことを正直に語っている。
とてもリアルに表現していて、でも悲壮感がなくて思わずクスッと笑えしまう場面もある。
「あれっ、ちょっと変⁇」と気づいてくれる家族が近くにいるということは、大事だなと思う。
高齢になってくると突然出来なくなることが増えてきて、とても不安になり、恐れや苦しみに変わっていく。
そして悲しくもなり、プライドを踏みにじられたと思い、怒る。
老いていくということは、想像していたよりもずっと複雑で、やるせなく、絶望的な状況だと…。
わかっていても無理難題を言い、攻撃的になる相手に普通に対応はできかねる。
家 -
Posted by ブクログ
村井理子さんが恐怖に慄きながら翻訳していた、その「怖さ」が身に迫る。犯人の目的は「他人を支配し思い通りにすること」…村井さんが思わず戸締りを確認した気持ちが痛いほどわかる。冬のアラスカを舞台に始まる豊かで広大な自然、ショッピングセンターの駐車場は実にアメリカ的風景!けれどそこに機動力と見つからなきゃいいの精神と悪運を持つ犯人が待ち伏せしてるとは…それに加えて複雑な司法システム。市民はなにも知らされないままいったいどうやって自衛すればいいのか。車社会と情報化社会の行きつく先に軽く絶望しつつ、犯人が悪運尽きて捕まったことでせめてこれまでの犠牲者の無念がはらされることを祈るのみ。