瀧羽麻子のレビュー一覧
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ネタバレゆったりと進んでいく物語。
正反対の気質なコンビなので、椅子への情熱や思い入れも全く異なる2人だけど、不思議とかみ合うコンビ。
途中の家具作りの手法説明にあったような、へこみと出っ張りをぴったり合わせる「組み手」を体現したような2人だなと思いました。“つなぎめをぴったり合わせるのは難しいけれど、うまくできれば美しくて強度も高い。”
2人の作る椅子は、きっと同じように美しくて強度も高いんだろうな。
どこでどう生きていくのか、自分の意思で決めるというのも、隠し持つプライドや自分への言い訳、周りの視線、いろんなものが邪魔をして、なかなか難しい。それでも自分で選んでいかなきゃいけないんですよね。
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いつもの瀧羽麻子と違うテイスト。
こういうのを読みたいかと言われれば、違う。
ミステリにもエンタメにもなりきれていない中途半端な作品。
著者はやはり盛り上げるのが苦手なようだ。
カンニングにはもっと衝撃を受けて対立があっていいし、自分たちがしでかしたことの大きさに愕然とする描写があっていい。
持ち前の文章が淡々としているせいで、主人公が無感動に見えることがある。
専門知識のない分野で小説を書くのは大変なのだろうけど、パソコンにかかわる描写は抽象的過ぎて、底の浅い作品になっている。
「左京区」の理系男子たちは著者の身の回りにいたというだけあって割とリアルだった。
若者向けを狙ったのだろが -
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左京区シリーズ第2弾。
国立大学とは思えない建築計画とか、ちょっと箱入りすぎる美月さんのキャラクターとか、どうして美月さんはデートに来たのかとか、気になるところがいくつかあった。
でも、とにかく初恋らしさがよかった。
初恋は、経験値が少ないせいで、思いの強さに比べてできることができることが少ない。
だから実際に相手といる時間は少なくとも、それ以外の時間に相手のことを考えて、勝手に愛情が育って行ってしまう。
山根は一人で悶々としていてまさにそんな感じだった。
やっとデートにこぎつけたと思ったら、お茶に誘ったのにお金がないとか、スケジュールを分刻みで立ててしまうとか、スケジュールを書いたメモ -
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ネバーラの人たちも、居酒屋「なにわ」の桃子さんも、みんな温かい。
それに加えて田舎の風景と滝羽麻子の文章が合わさって、やさしさ純度100%の物語になっている。
キャリアを積んでいた証券会社を辞めるとき、友人に「今辞めたら、みじめになるだけだよ?」と言われた弥生は、こう考えを巡らせる。
「ここでがんばり続けるほうが、そしてとりかえしがつかないくらいすり減ってしまうほうが、よっぽどみじめに思えた。」
今疲れている人の支えにきっとなってくれると思う。
ただ、170ページ程度とボリュームが少ないせいで、ちょっと書き込みが足りないと感じた。
弥生の再生までの道のりはもっと詳しく書いてほしかった。 -
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『うさぎパン』が良かったので、さっそく別の作品を手に取ってみた。
女性作家が書く女子大生の恋愛ということで、少女マンガみたいな甘すぎる展開になってないかと危惧していたが、そんなことはなく爽やかな小説だった。
同じ京都大学を舞台にしていても、森見登美彦の作品とはこんなに違う雰囲気になるんだなあと新鮮な気持ちになった。
主人公の花は、男性が書く女の子像とははっきりと違う。
ファッションにこだわりがあって、バイトは古着屋、お酒も飲むし、クラブに踊りに出かけることもある。
いろんなことに興味を持っていて、過去の恋愛は飽きっぽいせいか長続きしなかった。
私みたいな地味な男からすれば、彼女はいわば -
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真面目で人に合わせて生きることを厭わない、無口な職人肌の先輩。
ふわふわしているようで椅子の事になると曲がらない、天才肌の後輩。
ずっと夢を見ていられるほど若くもないが、夢を捨てて現実に生きる程達観出来る年でもない。祖父と暮らす為に都会を離れた先輩の家に転がり込んだ、椅子作りの夢を見続けている後輩が次第に現実的な先輩を巻き込んでいきます。
ライトな読み口でさらりと読めます。言い換えれば引っかかりも少ないので、この本を読んで何かを始めようと思わせるパワーは持ち合わせていないです。
色々な物を犠牲にしているように見えながら、とても多くの物を持っている二人としか見えませんでした。 -
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主体性はあるが周囲を振り回してしまう魚住と、几帳面な故に後ろ向きになってしまう徳井。
二人が始めた椅子工房は少しずつ軌道に乗り始めるのだが…。
いわゆるひらめきの天才タイプの魚住。だがそれを実際に作り上げるスキルが足りない。
逆に徳井は魚住のような個性的なデザインは浮かばないが、魚住のデザインをきっちり作り上げる職人のような技はある。
二人のコンビはとても良いバランスのように見える。
しかし二人ともそれまで勤めていた会社、あるいは工房から逃げてきた(追い出された)人間で、今どきの言葉で言えば生きづらさを感じている。
祖父と共に小さな町に住み、修理屋を細々とやっている徳井にとっては幼馴染の菜 -
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設定が良い。バス、電車共に一時間に一本。北関東の健康食品メーカーの下請け。扱う商品は納豆が八割。
東京の外資系証券会社でバリキャリの主人公、弥生。戦場のような職場で仕事と恋に疲れた彼女。転職先に選んだ地がここ、北関東。
ゆるい生活が送られる。
良い意味で抑揚がない穏やかな作品。
実にてともありふれた人生。大半の市井の人々が送るであろう生活。
読み終えた後に、すぐに内容を忘れてしまいそうな程、ありふれた風景。だが、きっと誰しもが他人から見るとこんな感じなのかもしれない。
ドラマチックで波乱万丈な人生よりも、こういう穏やかな人生が良いな。
初めて読む作者だが、中々に良い。
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Posted by ブクログ
物語の最終版まで進んでようやくタイトルの意味がつかめます。大学時代の先輩・後輩である徳井と魚住のふたりが小さいながらも、自分たちの工房で椅子を創ることでみずからの人生を歩んでいこうというストーリーです。
登場人物が少なく、話しの展開もシンプルですし、文体もスッキリしており非常に読みやすい一冊でした。
主人公である徳井と魚住のふたりはまったく対照的な性格、自分と似ているのは徳井のほうかな、魚住の楽観的な態度はみていて不安になってしまうだろうな、などと思いながら読んでいました。一方で、楽観的ながらも飄々と進めてゆく魚住の歩みによってさまざまな転機がおとずれることになり、慎重にいくばかりがよいわけで