瀧羽麻子のレビュー一覧
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主体性はあるが周囲を振り回してしまう魚住と、几帳面な故に後ろ向きになってしまう徳井。
二人が始めた椅子工房は少しずつ軌道に乗り始めるのだが…。
いわゆるひらめきの天才タイプの魚住。だがそれを実際に作り上げるスキルが足りない。
逆に徳井は魚住のような個性的なデザインは浮かばないが、魚住のデザインをきっちり作り上げる職人のような技はある。
二人のコンビはとても良いバランスのように見える。
しかし二人ともそれまで勤めていた会社、あるいは工房から逃げてきた(追い出された)人間で、今どきの言葉で言えば生きづらさを感じている。
祖父と共に小さな町に住み、修理屋を細々とやっている徳井にとっては幼馴染の菜摘と祖父こそがそれぞれ態度は違っているが自分を温かく受け入れてくれる存在。
そこに魚住という波乱がやってくる。さらには魚住を追って胡桃というぬいぐるみ作家もやって来る。
読み始めた時は、三浦しをんさんの「多田便利軒」シリーズの多田と行天のようなコンビを思い浮かべたが、そこまでリアルに追求するものではなく、椅子工房を舞台にしているものの椅子作りに描写を割くお仕事ものでもなく。二人の関係の変遷を描く作品だった。
徳井が必死に胸の奥深くにしまい込もうとしている自身のコンプレックスを魚住は最終的に容赦なく暴いてしまう。残酷に見えるこのシーンも最終的には必要だった。
徳井に似て不器用なおじいちゃん、黙って見守る菜摘、割り込んでくるようで気遣っている胡桃、脇役たちもそれぞれ葛藤を持っている。
二人の工房がこのまま上手く行くのかどうかは分からない。やはり一度それぞれ修行した方が良いという方向に行くこともあるかも知れない。
だが現時点ではこれで良いのだろう。暗く後ろ向きになるよりも二人で楽しく椅子を作って欲しい。 -
Posted by ブクログ
設定が良い。バス、電車共に一時間に一本。北関東の健康食品メーカーの下請け。扱う商品は納豆が八割。
東京の外資系証券会社でバリキャリの主人公、弥生。戦場のような職場で仕事と恋に疲れた彼女。転職先に選んだ地がここ、北関東。
ゆるい生活が送られる。
良い意味で抑揚がない穏やかな作品。
実にてともありふれた人生。大半の市井の人々が送るであろう生活。
読み終えた後に、すぐに内容を忘れてしまいそうな程、ありふれた風景。だが、きっと誰しもが他人から見るとこんな感じなのかもしれない。
ドラマチックで波乱万丈な人生よりも、こういう穏やかな人生が良いな。
初めて読む作者だが、中々に良い。
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Posted by ブクログ
物語の最終版まで進んでようやくタイトルの意味がつかめます。大学時代の先輩・後輩である徳井と魚住のふたりが小さいながらも、自分たちの工房で椅子を創ることでみずからの人生を歩んでいこうというストーリーです。
登場人物が少なく、話しの展開もシンプルですし、文体もスッキリしており非常に読みやすい一冊でした。
主人公である徳井と魚住のふたりはまったく対照的な性格、自分と似ているのは徳井のほうかな、魚住の楽観的な態度はみていて不安になってしまうだろうな、などと思いながら読んでいました。一方で、楽観的ながらも飄々と進めてゆく魚住の歩みによってさまざまな転機がおとずれることになり、慎重にいくばかりがよいわけでもないよな~、とも思わずにはいられません。ふたりともアラサーなのですが、物語の印象を考えるともう少し若い設定のほうがしっくりくるような気もしますが、それぞれの葛藤も作品に欠かせない要素なのかもしれません。 -
Posted by ブクログ
「元気の出ないときには瀬尾まいこ」が私の基本ですが、そういえば瀧羽麻子に頼っていたこともありました。
サンティアゴ、津軽、上海、瀬戸内海、アントワープ、渋谷での一日が描かれる、連作ではない短編集。
瀧羽さんに頼っていた頃、『うさぎパン』と『株式会社ネバーラ』に救われたのを思い出します。高校生や新入社員が主人公だったそれらと比べると、本作に出てくるのはもう少し上の女性が多い。著者も歳を取ったんだなぁと結構しんみり。
私同様に瀬尾まいこや宮下奈都をお好きな方ならそこそこ気に入るはず。ただ、私は長編のほうが好みかも。
余談です。タイトルに「渋谷の西」とありますが、大阪から渋谷へ遊びに行ったとき、交番で「北ってどっちですか」と尋ねたら、「北ぁ!?」と驚かれた経験が。東京の人は東西南北で考えないと聞いたことがあるのを思い出し、うおっ、ホンマなんやとひとりで笑ってしまいました。ホンマやという認識でいいですかね!?