植松三十里のレビュー一覧
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英雄視されているような歴史の主役達をなぞるような小説とは違い、まさにその時代に翻弄されながら生きた、名を留めない人達を描くことで、その時代の肉感を持って感じることができた。
咸臨丸の話など、いろんな本、小説などでもよく語られていて何となく、歴史的にも近いところだし、資料とかは普通にたくさん残っているんだろうなんて思っていたが、たった一人の執念ともいうべき思いが無ければ今も分からないまま歴史の中に埋もれていたかもしれないという話に驚いた。
歴史に名を残すような人物達の陰には多くの無くてはならない仕事を成し遂げた人達がいるんだということをあらためて実感させられる。 -
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大正時代、世界的建築家 フランク・ロイド・ライト を招き、「東洋の宝石」と称えられた 帝国ホテル ライト館が完成するまでの物語。
美を極限まで追い求めるライトの姿は、時に傲慢とすら感じられる。しかし、その理想を実現しよう支え続けた支配人 林愛作。そして現場で汗を流した職人たちの執念。それらが目の前に繰り広げられているように感じることもありました。
本館火災による役員全員の辞任、交代、膨らみ続ける予算と工期──理想と現実は激しく衝突し、ついにライトは完成を見届けることなく帰国する。
しかし落成式当日、関東大震災が東京を襲う。周囲の建物が崩壊する中、ライト館だけが耐え抜いた瞬間、それはライトの正しさが証明された瞬間。それまでのもやもやが晴れる瞬間。
理想と現実、天才と組織、日本の職人魂。それらがぶつかり合い、結晶となった奇跡の物語・・・一軒のホテル建設が、これほど濃密な人間ドラマになるとは思いませんでした。
もう一つ心に残ったのは林愛作の人との「出会い」。彼は色んな人に支えられ、導かれ、帝国ホテルの支配人にまで上り詰めた。なぜ人は彼を助けたのか──その理由は、彼の内にある「覚悟」にあった、そんなくだりがありました。
覚悟とは、特別な言葉ではなく、一所懸命さがにじみ出る姿そのものなのかもしれない。
そう考えると、「自分は何かに覚悟を持って生きているのだろうか」、そんな問いが心に残りました。 -
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子どもを助けたいという願いや行動力
それらすべてが素晴らしいって思うのに、あまり感情移入できなかったのはなぜだろう……?
美喜の突っ走り方かな?
言動や行動かな?
物語としてはとても良い話です
でも主人公の美喜に共感できるところがあまり多くはなかったというところが私にはあります
どの時代にも差別や偏見があって
それは大抵、見た目から入る
自分たちだってそちら側が多数派になれば立場が逆転するというのに
終戦直後から比べると、今はかなり差別や偏見というものは減ったんじゃないかと思いますが無くなることはきっとない
こんな世界のなかで
それでも逞しく育ち、生きていかなくてはならない
世界は厳しい、でも時々優しさに満ちている
それを感じることができた本でした -
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徹底抗戦から逃げる徳川慶喜に、翻弄される会津藩主の松平容保。時代の流れに対し、忠義や正義のため戦うことを決める。
流れのまま京都守護職に任命されるなど、柔順で控えめな印象であったが、本小説では、自分の意志を持ち、紀州派と一橋派を取り持ち、安政の大獄でも水戸藩と朝廷の間を調整するなど、政治手腕も描かれている。
さらに、指揮官として頼りなく、保守的な西郷頼母を嫌悪する人間臭さも描かれていて、新しい容保の一面が見られた。
さらに、明治維新後、失意の中、斗南藩を訪れる場面や東京で過ごす姿、日光東照宮の保守・復興に力を注ぐ姿も描かれていた。維新後も容保個人としての生活は続いていたんだなと思った。 -
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日本赤十字社の設立に尽力し、自ら資金集め、被災者の看護などに当たった鍋島榮子の物語。元々は高級華族の娘で最初の嫁ぎ先は岩倉具視の長男。早くに夫を亡くし、二度目に嫁したのが鍋島の当主。開明的な夫ではあったが、明治の藩閥政治に翻弄される面もあり、外交官の妻として、鹿鳴館での外国人のダンス相手をさせられる。条約改正に向けた努力ではあったが、今考えると全く陳腐な取り組み。その後、夫の知り合いの医師の勧めで看護団を組織し、後にこれが赤十字社となる。控えめだが一本筋の通った生き方で、教科書に出てくるような有名人ではないが、こんな人がいたのかと、知ることができてよかった。
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ネタバレ帝国ホテルというと、自分の結婚式を挙げるときに、「こんな機会はなかなかないから」とウェディング系のイベントに夫と二人で行ったこと(披露宴で出るフルコースが、比較的良心的な価格で食べれる。おいしかった)と、その最後のデザートとして、スタッフの方がずらっと並んで、一皿ずつのデザートにリキュールに火をつけて仕上げをする炎の演出があって、高そうなオプションだなと思ったこと、数年後、友人が帝国ホテルで披露宴をするのに参列したら、その演出があって驚いたこと……なんかを思い出すのだけれど、建物への印象があんまり残っていない。
私が行ったことのある帝国ホテルはもちろん当時のライト館ではなく、印象も違うものなのだろうし、ビルが立ち並ぶのが当たり前になった東京で生きてきたなかでは、また担う役割も変わっているはずだ。
豪華で重厚、きらびやかで、少し敷居が高い。
個人的な感覚を言葉にするならば、そういったあたりだろうか。
最近気づいたことなのだけれど、小説にしてもドラマ・映画にしても、「お仕事もの」が好きだ。お仕事ものというとライトに聞こえるが、仕事をてきぱきと進めていくプロたちの様子を見るのが好きだ。
自覚したきっかけは「シン・ゴジラ」と、あとは「TOKYO MER」だと思う。余計な足を引っ張る人がいなくて、それぞれの役割をきっちりこなして、スムーズに物事が進んでいくところに、ある種の快感がある。
なにせ、現実ではそうはいかない。
で、この作品はお仕事ものではあるけれど、決してプロたちがテキパキとこなしてスムーズに進んでいくような話ではない。
それはどうなのよ、みたいなことが山ほど出てくる。それはおそらく、時代もあるのだろうけれども、今よりももっと曖昧なところも多くて、計算だけでは動かない物事を熱意と想いで動かしていくような物語だった。
いや、この仕事大変すぎない?というのは正直な感想。
こだわりの強すぎる建築家。
そのニュアンスが伝わらない大工や石工。
脆弱な地盤。
相次ぐ火事。
あとから文句をつけてくる重鎮。
足りなくなる資金。
しんっっどい!!!
でもそれらを乗り越えてでも作り上げるんだという気迫があり、建築の知識がなくても分かるほどの建物のすごさが伝わってくる。
技術は大きく進化しただろうけれども、今はもうそういう熱のこもった建物は建たないんだろう。
そしてきっと、現代にまったく同じものを再現しても、同じだけの感動は得られないんだろう。
当時、その時代に、その場で、それを目の当たりにしたからこそ得られる感動は、少し羨ましい。 -
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悪妻という言葉はあっても悪夫という言葉はありません。良妻賢母はいても良夫賢父はいないように、すべて男目線だからなのでしょう。
ちなみに悪妻の特徴はというと、
権力欲が強い
嫉妬深い
自己主張が強い
夫に従順でない
だそうです。(ノ-""-)ノ~┻━┻”
一方…夏目漱石の妻、鏡子が悪妻と呼ばれる理由をみると、
朝寝坊で起きられない
夫に口答えする
漱石の死後、家や物を売り散財したこと
などがあげられるようです。
確かに散財のイメージは大きいですが、
そんなことを言うなら
妻や子どもに暴力を振るった漱石の方が、よっぽど悪夫(あえていう)でしょう。
それに、鏡子なくして漱石の活躍はなかったことを考えると、果たしてそれは悪妻と言えるのかどうか?
時代とともに価値観は変わります。
作者はタイトルにあえて〈悪妻〉と入れることでこの違和感を提出したのかもしれません。
悪妻バンザイ!