植松三十里のレビュー一覧
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【つないだ手】 植松 三千里 著
7月7日のNHK「知恵泉」で紹介された澤田美喜。あまり知らなかったので、出演していた著者の本を読んでみました。
祖父は岩崎弥太郎、夫は外交官の澤田廉三という「上流階級」にいながら、戦後の米軍兵士と日本人女性の間にできた孤児たちを、私財を投げうって設立した「エリザベス・サンダース・ホーム」という施設に収容・育成。これだけを聞くと美談ながら、孤児たちが成長するにつれて受ける差別や澤田美喜自身やホームに対する嫉妬・偏見などで、ほぼ苦闘の連続。最後には、これが報われるような形とはなるもの、よくぞここまで不屈の精神でやり終えたものと感心しました。
不勉強ながら、澤田美喜は、日経「私の履歴書」でも連載し、これをもとにした『黒い肌と白い心』という書籍もあるそうです。因みに、「知恵泉」に出演したサヘル・ローズもイラン・イラク戦争での戦争孤児。この経験から、女優業の傍ら、人権活動家として世界を渡った記録、『生きることから、すべては始まる』という書籍も上梓。(一投稿で二つ紹介してはいけないのかも知れませんが…)併せて読んでみましたが、古今東西の思想家の言葉が引用され、知性派女優という印象を持ちました。 -
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日本のウィスキーの原点がここにある。
自分はウィスキーをこよなく愛していますが、ジャパニーズウィスキーの起源を知ることが出来る、2人の夫婦の話です。
若くしてスコットランドにウィスキーの修行に出たマッサンも凄いが、そこで出会い日本に嫁ごうと思ったリタもすごい。
この二人の愛がなければニッカは存在しなかったと思うし(ニッカどころかサントリーのウィスキーも存在しなかったであろう)、余市、宮城峡などのシングルモルトは特に感謝して飲むようになりましたし、サントリー山崎も同じように感謝して飲むようになりました。
そして著書を読んだ後は、ジャパニーズウィスキーへの愛情がガツンと上がりました。
これ以上値段は上がってほしくないですが…。
ウィスキー好きにはたまらない一冊です。 -
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ネタバレイザベラ・バードは明治初期に日本を旅し旅行記を書いた人物として有名だ。本書は、彼女随行し通訳兼ガイドを務めた日本人の若者を主人公に据え、旅の苦難と通訳としての苦労を乗り越えた先にあるものを描いた。
イザベラバードの名は知っていたが著作をきちんと読んだことはなく、通訳兼ガイドという存在にも本書を読んだ初めて思い至った。
インフラの整った現代ですら旅行ガイドというのは本当に大変な仕事だが、ましてや当時、イトーの苦労がいかばかりだったか、想像を絶するものだったに違いない。
結末近く、言葉により差別感情を取り除くだとか、相互理解だとかは当時の意識としてはちょっとそぐわないというか、現代の我々の意識に寄せてしまったかな?という気はしたが、言いたいことはよくわかる。
当時の実によくできた旅の仕組み(駅逓システム)についても知ることができ、興味深かった。
賊に遭う、お金を盗まれるといったトラブルがいつ起きるかとヒヤヒヤしていたが、それはなかったようで一安心。そのころから日本の治安は良かったのだろうか。
お話はお話として、史実ももっと調べてみたいと思った。 -
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表題作
咸臨丸といえば、勝海舟、中浜万次郎、福沢諭吉などの人物を乗せてアメリカへ渡った幕末の艦。
上記の有名人だけで船は動かない。この物語の主役たちは実質的に咸臨丸を動かした水夫たちである。
著者は咸臨丸に乗り組んだ水夫たちの名前を全て調べ上げたそうだ。すごい取材力!
表題作で歴史文学賞を受賞したのもうなずける力作だった。
咸臨丸のかたりべ
文庫のための書き下ろし。
主役は、咸臨丸に乗り組んだわけでもなく、身内に関係者がいたわけでもない一人の日本人の男。咸臨丸の渡米から数十年後に、サンフランシスコで故あって咸臨丸を調査し始めた。
本人のとてつもない努力とそれに伴い繋がれたご縁によって、咸臨丸記録の決定版といえる本を上梓することとなった。
ふとしたきっかけから、努力、苦労、障壁などを繰り返し、出版にこぎつけたときのカタルシスが素晴らしかった。
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安積開拓の歴史を疏水の父南一郎平の視点で書いた歴史小説。旧幕府軍側の地で、士族授産の夢を抱いた大久保利通、郡山の発展を願った中條政恒、阿部茂兵衛、私財をなげうち故郷の利水を願った小林久敬、会津市民の説得にあたったファンドールン、天才土木工学技士の山田寅吉、数々の利権や個性的人物たちの調整に尽力した南一郎平。日本の国家予算の1/3という明治維新後の大規模公共事業。3年と言う月日で猪苗代から郡山まで水路を作り、4千人から33万人都市への成長の礎となった安積疏水事業。人々の夢が結実した結果、今の暮らしがあることを再認識し、ありがたいことだと思う。面白かった。
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帝国ホテルに以前宿泊したことがあり、日本三大ホテルなだけあってサービスや建物がとても素晴らしい迎賓館だと感動した。そんなときに本書を知り、興味を持ったため読んでみたが、読みやすく想像以上に面白くて夢中になった。
帝国ホテルの歴史について、初代は渋沢栄一が設立したということぐらいしか知らなかった。
帝国ホテルライト館は、渋沢栄一と初代帝国ホテルを設立したときの片腕であった大実業家の大倉喜八郎により林愛作が支配人に抜擢され、設計を世界建築三大巨匠のフランク・ロイド・ライトに依頼した新館である。ライトの助手を遠藤新が務め、その後は息子である楽がライトの日本人最後の弟子となった。
ライト館はフランク・ロイド・ライトの物凄い拘りが詰まった名建築なのだと知った。大谷石やテラコッタに施された多彩な幾何学模様や数々の彫刻と装飾、黄色いレンガ(スダレ煉瓦)など拘り抜かれており、建築に関わった多くの人々のとてつもない熱い闘いが痛いほど伝わってきた。そして、幾度も火事や地震に見舞われ、途方もない苦労があったことも。ライト館の副支配人であった犬丸徹三が林愛作の後継となり、その後安全面を考慮し閉館し解体が決まった。その時に明治村に玄関とロビーだけでも移築するという話が出て、様式保存という形で後世まで受け継がれることになった。そこまでするほど後世に残したい素晴らしい建築なのだ。
この物語を知った今、もうライト館に宿泊することはできないが、ぜひ一度明治村に足を運び、実際にライト館の拘り抜かれた唯一無二の建築の魅力をこの目で感じたいと思った。また、今まではあまり宿泊施設の建築について見ていなかったなとふと思った。今後、旅行の際は、有名な建築家が設計した拘りの詰まった一流のホテルに宿泊し、質の高い建築やサービスを楽しむのも良いなと思った。 -
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北海道民には聞き馴染みのあるカール・レイモンのソーセージ(贈答品としてが多いようですが)。
そのレイモンさんとその妻コウの物語。
実際の地名や大体の場所なども出ているので、地図で位置関係なども確認しながら楽しみました。
以前、函館に旅行した際、カール・レイモンのお店で買い物しましたが、あの場所は昔からの店舗だったのだと読んで知りました。
なぜ外国人が函館でソーセージを作ることになったのか、そしてそこでの苦労、レイモンさんの人柄や信念、コウの異国の人と結婚したことによる試練や夫婦の危機。
十分小説になりうる題材だと思いました。
そして日本ハムがカール・レイモンの味を引き継いだことも知り驚きました。シャウエッセンはカール・レイモンのソーセージとは違うけれど、ノウハウをヒントに出来たのですね。
あ~、また異国情緒のある函館、行きたくなってきました。 -
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久しぶりに丸善 丸の内本店に寄る機会があったので、「ジャケ買い」ならぬ「タイトル買い」で本書を購入。ページを繰れば今をときめく渋沢栄一が出てきて、更に彼の盟友、大倉喜八郎が出てくるではないか。大倉喜八郎はあらゆるジャンルの人にその名を知らしめる人物であるが、山登りをする人であれば赤石岳に至る「大倉尾根」(赤石岳東尾根)あるいは赤石岳への大名登山として知られている人物であり、自分もその一人であった。
本書の中心人物はフランク・ロイド・ライトと林愛作なのだが、物語の前半で上記有名人2人の登場となり自分はあっという間に釣られてしまった。更には舞台となる帝国ホテル東京は以前勤めていた会社のすぐ近くで、親近感も大いに刺激された。
帝国ホテルの通称「ライト館」の建設には多くの試練があり、それを乗り越えて竣工に至るのであるが、そこに絡んでくる大倉喜八郎がどうしても気になってしまって、帝国ホテル=大倉喜八郎のホテルという図式が頭の中に形成されてしまった。その延長で帝国ホテル「ライト館」が移設された明治村にも興味が湧いた。いつか訪れてみたいと思う。