あらすじ
明治10年、内務卿大久保利通は、猪苗代湖の水を郡山へ流す安積疏水事業を提案。没落士族救済のため、荒地を肥沃な農地として拓くという。大久保は大分出身の南一郎平を抜擢して責任者にするが、奥羽山脈の硬い岩盤を貫く難工事の上に、癖のある男たちが次々と登場して紛糾。さらに大久保暗殺事件が起こる。南は御雇外国人で土木の専門家、オランダ人のファン・ドールンと協力し、工事を進めようとする。さらにフランスで学んだ若い日本人技術者の知恵を取り入れ、不可能と思われた安積疏水事業を成功に導く。巨額の国家予算を投入した日本初の大土木事業を描く歴史小説。
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Posted by ブクログ
安積開拓の歴史を疏水の父南一郎平の視点で書いた歴史小説。旧幕府軍側の地で、士族授産の夢を抱いた大久保利通、郡山の発展を願った中條政恒、阿部茂兵衛、私財をなげうち故郷の利水を願った小林久敬、会津市民の説得にあたったファンドールン、天才土木工学技士の山田寅吉、数々の利権や個性的人物たちの調整に尽力した南一郎平。日本の国家予算の1/3という明治維新後の大規模公共事業。3年と言う月日で猪苗代から郡山まで水路を作り、4千人から33万人都市への成長の礎となった安積疏水事業。人々の夢が結実した結果、今の暮らしがあることを再認識し、ありがたいことだと思う。面白かった。
Posted by ブクログ
大久保利通が士族授産の方策の一つとして描いた安積疎水事業。しかし事業が本格化する前に大久保は暗殺されてしまう。その遺志を受け継いだ南一郎平は、国や県の役人、地元の有力者ら、他の土地から移住した旧士族の働き手などと調整を行い、日本初の土木事業、安積疎水を完成させる。大きな事を成し遂げるには、多くの人の協力が必要。そして協力を得るためには、人々のエネルギーを1つにする中間管理職の役割が大きいという事を実感させられる感動の一冊。