【感想・ネタバレ】愛加那と西郷のレビュー

あらすじ

西郷隆盛を生涯愛した“島妻”の物語。

薩摩藩から奄美大島へ送られてきた西郷隆盛。不遇な身の上の西郷を世話することになった愛加那。お互いの文化の違いから当初は反発し合うが、やがて愛し合うようになり、愛加那は西郷の“島妻”となる。二人の子供にも恵まれるが、愛加那は国のために活躍する人物だと信じて、再び藩から呼び出しを受けた西郷を見送った。そして、島にいるだけの人生を送って欲しくないという思いから、子供たちも鹿児島の西郷の元へと送り出した。
しかし、時代の激動が西郷と子供を襲う。西南戦争で、西郷は首謀者として先頭に立ち、最後は自決。参戦した息子の菊次郎は右足を切断して、愛加那のところへ帰ってきた。そして、鹿児島へ陳情に行った奄美の男たちの多くが戦争に参加して亡くなっていた。一転して、奄美の人から後ろ指をさされることになった愛加那だったが……。
生涯奄美大島を離れず西郷を信じた、愛加那を描いた恋愛歴史小説。
待望の文庫版を電子化。

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Posted by ブクログ

江戸時代、役人や身分のある流人が島妻を娶り、刑期を終えて本土に戻ることを許されても島妻は一緒について行くことができない。現代の感覚からすると理不尽なことだと憤りたくなるけれども、当時の奄美は薩摩藩に従属する立場であり、島の人々の地位が低かったことを初めて知る。

島妻の愛加那が西郷と暮らしていたのは3年にも満たない。二人は愛しあいながらもそれぞれが別々の思いを抱えているのが何ともせつない。西郷は国政を、愛加那は家族のことを。やがて帰還命令が下り別れの時が訪れる。

西郷が去った後の人生は愛加那にとって苦悩に満ちたものだったのだろうか。ユタという奄美の巫女が、本当の幸せとは自分がだれかの役に立つことだと彼女に語りかける。だとしたら、愛加那は数々の選択に納得した上で自分の人生を全うしたのではないか。同情的な目で見るのは彼女に対して失礼であろう。

敵に囲まれながらも歴史的偉業を成し遂げた西郷の精神的な拠り所だったのは、愛加那と流人時代を支えてくれた島の人々の存在であったと思いたい。

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2024年06月29日

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