植松三十里のレビュー一覧
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二宮金次郎(二宮尊徳)の幼少期からの一生を描いた小説。
貧乏時代から勤勉と努力が、苦労苦労の背景から、実を結ぶ物語が、読みやすい小説として紹介されている。
冒頭より、まるで映画を見るような感覚で、読み進めることができた。
「節約」について、二宮金次郎のそれは、個人の為にあるのではなく万民のためにあるものだという点において、現代の個人主義的な「節約」とは大きく違うものだ。
また、「節約」の方法論は、単なるケチなのではなくて、喜びや快感を伴うものとなっていて、読んでいて非常に爽快だった。
物語は、タイトルの通り、幼年期〜青年期・壮年期に重点が置かれていて、晩年についてはやや端折っ手いるように -
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公家の娘が岩倉具視の息子に嫁いで、彼の死後、さらに岩倉の勧めで、佐賀藩士出身で外交官の鍋島直大の後添えとして嫁ぎ、彼の外交生活を支え、のちの日本の赤十字の立ち上げの中心人物となる鍋島榮子(ながこ)。
彼女の周りにいる人たちが、皇族、公家をはじめ、歴史上の重要人物ばかりで驚きました。
そういう生活の中で、あの時代、女性が声を上げるというのは、相当な覚悟を持って行わなければならなかっただろうな、と感じます。
鍋島榮子という人物は知らなかったので、こういう人があの時代、どれだけの功績を残したか、どんな苦労があっただろうか、と知れることは、よかったと思います。
こうした奉仕の精神、なかなか持てる人はい -
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白虎隊の悲劇から1人生き残った主人公の飯沼貞吉少年が、生き残ったのは恥だと同郷人から謗られ、居場所が無くなり、縁があり敵であった長州へと向かい、過去の出来事に、押し潰されそうになりながら周囲の人から手助け、ときには突き放され二転三転しながら、居場所を求めて成長していく史実を元にした物語
過ごしていた時代や環境が変化していき、今までの自分の考えが通用しなくなっていく中で、故郷や居場所だと思っていた所をなくし、これからのことを自活していくなかで、最初こそ周囲からの甘やかしは必要だけれど、どん底に陥った過去の状況を恥じずに受け入れていく気概が大事になってくると思いました
また戻るところや居場所が -
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タイトルには鹿鳴館と有りますが、鹿鳴館は前半だけで、むしろ後半の、最後には「日本のナイチンゲール」と呼ばれるようになった鍋島榮子(ひろこと読む)の物語です。
公家の廣橋家に生まれ、岩倉具視の長男・具義の元に16歳で嫁ぐも7年後に夫は病死。その後、義父・具視の周旋で同じ妻に先立たれていた元佐賀鍋島藩藩主・鍋島尚大侯爵と再婚します。
その後は外交官だった尚大の妻として鹿鳴館外交の花の一人と呼ばれたが、目的とした不平等条約の改正は挫折。その後、赤十字活動の存在を知り、侯爵夫人ながら自ら磐梯山噴火の被災者救護に当たり、その経験をもとに看護学校や病院の設立・運営に乗り出して行きました。
章ごとに時代を行 -
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帝国ホテル・ライト館建設に挑む苦難の歴史。林愛作が再建を引き受ける経緯からライト招聘、ホテルのサービス改革、ライトの難しい要求と真摯な対応、度重なる
天災と、十分な見応えとテンポの物語構成と人物の熱が良かった。愛作や新は勿論、愛作・ライトと常に対立しながらも要所で漢気を見せる大倉喜八郎や石工の棟梁・亀田易平らの熱の描き方が上手かった。
愛作やライト視点では最後まで見届けることができない不完全燃焼のプロジェクトであり、物語としての帰結は難しかったと思う。愛作が団結を促してから、数十頁
経たずに地震の引責で辞める展開は非常にショックだった。最後は新が責任者として誇りをもって締めたが、支配人とし