あらすじ
安政7年、条約批准のため遣米使節団が江戸湾を出航した。勝海舟が艦長を務める「咸臨丸」には、瀬戸内の塩飽衆・吉松たち日本人水夫が乗り組むが、悪天候に悩まされ、病気も蔓延する。アメリカ人水夫との対立、士官・中浜万次郎への反発など不穏な空気の中、果敢に太平洋横断に挑んだ彼らを思わぬ運命が待ち受けていた。第27回歴史文学賞受賞作品を大幅改稿、書き下ろし後日譚「咸臨丸のかたりべ」を併載。
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Posted by ブクログ
表題作
咸臨丸といえば、勝海舟、中浜万次郎、福沢諭吉などの人物を乗せてアメリカへ渡った幕末の艦。
上記の有名人だけで船は動かない。この物語の主役たちは実質的に咸臨丸を動かした水夫たちである。
著者は咸臨丸に乗り組んだ水夫たちの名前を全て調べ上げたそうだ。すごい取材力!
表題作で歴史文学賞を受賞したのもうなずける力作だった。
咸臨丸のかたりべ
文庫のための書き下ろし。
主役は、咸臨丸に乗り組んだわけでもなく、身内に関係者がいたわけでもない一人の日本人の男。咸臨丸の渡米から数十年後に、サンフランシスコで故あって咸臨丸を調査し始めた。
本人のとてつもない努力とそれに伴い繋がれたご縁によって、咸臨丸記録の決定版といえる本を上梓することとなった。
ふとしたきっかけから、努力、苦労、障壁などを繰り返し、出版にこぎつけたときのカタルシスが素晴らしかった。
Posted by ブクログ
恥ずかしいことに今まで知らなかったことばかりだった。遅ればせながら今後もっと咸臨丸や開陽丸について勉強していきたいと思う。そして改めてサンフランシスコに行こう。まずは今秋の塩飽訪問が楽しみだ。
Posted by ブクログ
英雄視されているような歴史の主役達をなぞるような小説とは違い、まさにその時代に翻弄されながら生きた、名を留めない人達を描くことで、その時代の肉感を持って感じることができた。
咸臨丸の話など、いろんな本、小説などでもよく語られていて何となく、歴史的にも近いところだし、資料とかは普通にたくさん残っているんだろうなんて思っていたが、たった一人の執念ともいうべき思いが無ければ今も分からないまま歴史の中に埋もれていたかもしれないという話に驚いた。
歴史に名を残すような人物達の陰には多くの無くてはならない仕事を成し遂げた人達がいるんだということをあらためて実感させられる。
Posted by ブクログ
本は2部構成で、第一部は実際に咸臨丸に乗ってサンフランシスコにわたり、帰ってきた吉松などの水夫のものがたりで、第二部はそんな水夫たちの航海やサンフランシスコでの生活を出版しようと奔走した文倉平次郎のものがたり
どちらも情熱をもった日本人のものがたりであり、維新後から第一次世界大戦のはじめに至るまでの日本の航海技術などの状況を物語っている。