谷川俊太郎さんの詩集ですね。
2018年発行。
今月の13日に亡くなられました。慎んでご冥福をお祈り申し上げます。
『聴くと聞こえる』
on Listning 1950―2017
「物音」
明け方 どこかで
物音がする
まどろみながら耳が
聞いている
目覚めてしまいたくない
物音を運んでくる空気は生暖かく
一日の光はまだまぶたに隠れている
どこかで なにか
物音がする
いま在る何かがたてている音
かすかな音
ここに世界が在ると証ししている
匂いのように漂う
どんな音もおろそかにしない
世界の静けさを信じきって
「きいている」
あさ ことりがうたうとき
きいている もりが
ひる かわがうたうとき
きいている おひさまが
よる うみがうたうとき
きいている ほしが
いつか きみがうたうとき
きいている きみをすきになるひとが
きょう ちきゅうがささやくとき
きいている うちゅうが
あす みんながだまりこむとき
きいている かみさまが
ねこのひげの さきっちょで
きみのおへその おくで
「生きとし生けるものはみな」
雪にしるした足あとは
いのちのしるしけものみち
しるべもなしに踏み迷う
生きとし生けるものはみな
息をひそめて立ちつくす
闇へとつづくわかれみち
あしたを知らず夢を見る
生きとし生けるものはみな
夜のしじまに輝いて
はるかにめぐる星のみち
よりそいながらそむきあう
生きとし生けるものはみな
子どもたちを愛し、自然を愛し、命を愛した、ロマンあふれる詩情豊かな歌声が響きます。
音楽や音、静寂、沈黙を語られたエッセイも寄せられた贈り物です。
谷川俊太郎さんの、詩やエッセイ、絵本、翻訳本などの遺された事物は、永遠に輝き、人々に未来を指し示されると思います。