ところどころに刺さる言葉が。そしてそこはかとないユーモアが。二人のお人柄なのでしょうか。
p93プレイデイさんの「幽霊って元気ですよね」に吹き出しました。しかしその理由(?)言われてみると確かに。
生きてる人間は日々起きてくるアレヤコレヤに対処するだけでだんだん一杯になって行き、余程のことでなけれ
...続きを読むばそんなにねちねちじっとりと恨んだり妬んだりを持続できなくなってくるように思います。特に年取ってきたら(笑)
何事にも体力がいるというのは本当に実感しかない今日この頃で。それどころじゃない、からそんなことどうでもいいになってくるというか。
p132谷川さん「生きる上で意味のない笑いがもしかすると訳ありの涙より強力である証」という言葉もこの一遍の中では流れるように読めてしまう一節ですが、なかなか大事な真理のような気がしてならない箇所です。
奥村門土さんという絵描きさんを知りませんでしたが本書で知ることができたのも良かった。上手い下手より感性で描いていると感じます。お若い人なのですね。
谷川さんの最後の詩に絶対的な個というようなものを感じます。孤独ともちょっと違う。孤独には感情が入る余地を感じますがこの詩には乾いたものを感じます。(ビールとか妻とかウェットを感じさせる言葉は出てきますが)
他人ではないのは自分だけ、というのは言葉にすれば当たり前なのだけど誰とも取替えのきかない、どんなに親しくても愛していても信頼していても成り代わることは不可能な絶対の一つと考えたらなかなか壮絶なものがあります。(かけがえのないという言葉はありますが、その言葉はここではウェットに感じられます)
アタマで意識することはあっても、実感としてそう感じることは日常ではなかなか稀なのではないでしょうか。日々そんなふうに感じていたら生きるのがしんどくなってしまいます。
この詩を読んで、谷川さんはまさに本書でいう「その世」へ向かいつつあるのかもと感じました。
トランスヒューマンなどという考え方が若い人の中に生まれているんですね。
驚きました。肉体が存在することの苦しみ、身に沁みるというよりは体に沈むと表すほうが馴染むと感じること、幽霊は足がないけどおばけは足があることなどの本書の考察(?)を通じて体がなくなって心と思考だけの存在になるというトランスヒューマンについて考えてみたけれども、自分にはとりとめなさすぎて想像できませんでした。
逆に死なないことの苦しみもあるのではと思いましたがどうしたっていつか死ぬ生身の私では想像できなかった。
自分の生きてる間には多分実現しないだろうなと安心して思考停止しようと思いました。