佐々木敦のレビュー一覧
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高松市の本屋さんルヌガンガで購入。
別に難しいわけではないのだけれど、文章がどうにもくどく感じてしまい、肌に合わず、読みすすめるのがかなり苦しかった。
レトリックについての佐藤信夫という人の文章の引用部は、文体に対して感じていたことを細大漏らさず言い当てていて、膝を打つ思いだった。
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p104-105
いずれも、数学の教科書や交通法規のような一色で均等に塗られた無地の文章ではなく、地の上に、部分的に目立つ柄や模様がある。文章がのっぺりした平面ではなく、その表面を指でなでてみると、ところどころ、凹凸や起伏の感触があるようだ。
ことさらに指摘してみれば他愛もないような柄であり凹凸であるが、私たちは実際に、しばしばそういう仕組みによって作用を受ける。ふだん文章に接するとき、人は決してことばの模様を観察する>のではなく、たいていは無心に<読む)。けれども、知らず識らず、私たちはそのことばづかいによって、快感をおぼえたり、退屈したり、ときには反感をいだいたりする。そこにレトリックがある。
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後半にチャンドラーの作品の翻訳を三つ掲載して比較できるところがあったが、村上春樹の翻訳は、情景が無駄なくニュートラルに伝わり、目前に浮かんでくるようで、やっぱりすごいなあと感嘆した。
本文で紹介されていたバベルという本は言語間を行き来する仕事をしている自分としては、是非読みたいとおもう。
この2点が私にとって収穫だった。
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誰かの本紹介から(誰だっけ)、興味がわいて読んだ。
周辺知識が読書をより一層面白くする、というのは実体験があったため、昔では絶対に手を取らないであろう類の本だったが、難なく読めた。
タイトルにある、文学という言葉。
深掘りしたことはなかったが、文学とは何かと言われると全然わからない。
小説とは?文学とは?ミステリーとは?本屋で何度も見るけど、どう違うんだっけ?という感じ。
本書では70年代から2010年までの小説やら文学やらの変遷を紐解く。
火花の話は出てくるだろうなと思っていたら、クライマックスで出てきてテンション上がった。(未読だけど)
直木賞とか、読書家の常識みたいなことが分かって良かった。 -
Posted by ブクログ
はっぴいえんど、YMO、渋谷系・小室系、中田ヤスタカ....と連なる40年以上の物語。
最初のはっぴいえんどの章では、
これまで何度もかすってきたことのある有名な
「日本語ロック論争」のところでまたいろいろと考えることになりました。
ロックという西洋音楽ベースの音楽形式には、
当然のように歌詞に英語が乗っている。
単語や文章そのもののリズム感や音、
文章の末尾にくる音が日本語と違って一定ではないところが英語の特徴といえる。
つまり、英語は日本語よりも不規則な音を発するもので、
それが音楽的(西洋音楽的)だといってもいいかもしれないし、
実際にそう言うひとはいます。
僕は20歳過ぎくらいのときに(DTMで作曲していた頃です)、
自分が日本語をネイティブとして育っていなかったら、
はじめて日本語をきいたときの響きはどう聴こえるのだろう?
ということをすごく知りたかった時期があります。
それで、ある夜中ですが、独り暮らしの部屋の小さなテレビをつけっぱなしにしたまま、
疲れて床にごろ寝した時、テレビから聴こえてくる日本語がその意味から切り離されて、
音としてだけ耳に入ってきたように知覚できたことがありました。
それは願望によって無理やりそう感じたような、
ある種の妄想的な出来事だったのかもしれませんが、
そのときの感想は、日本語の音って思っていたよりずっとやさしく、繊細で美しい、
というものでした。
ただ、それが音楽的なのかどうか。
日本語が西洋的なポップスやロックのメロディや曲調に乗っかっておかしくはない。
だけど、緻密で繊細なタッチで音程が上がり下がりする美点があるなかでのひとつの欠点は
パンチが効いていないというところだと思います。
と、まあ、ここは音としての部分であって、
歌詞として聴いて意味に沁み入ったり、
音符とあいまって単語が印象的に響いたり、
そういうネイティブならではの効果って歌にはあるので、
だからこそ、ずっと廃れずに日本語の歌が生まれ続けているんだろう、と
結果からもわかるといってよいのではないでしょうか。
(日本語ロック論争についていまさら意見を書くと、蛇足感がとてもあります……)
本書では、日本語の「ロック」として、
はっぴいえんどが嚆矢であったことから始まっていきます。
(当時のミュージックマガジンでははっぴいえんどは断トツの評価を得ていたそうですが、
メジャーな世界ではどれほどのものだったのかはよくわかりません)
キーワードは「内」と「外」です。
邦楽と洋楽といってもいいです。
本書でメインに取り上げられた、
はっぴいえんどやYMOのメンバー、
そして小室哲哉、渋谷系の面々、中田ヤスタカ。
彼らに一様なのは、とくに外のものに通じた弩級の音楽マニアであったということです。
著者はこれを、リスナー型ミュージシャンと名付けていて、
いわゆる歌手のように歌がうまくないけれど味わいはある、
などの特徴を書いている。
そういったマニアやフリークたちに切り拓かれてきたのが
日本の軽音楽世界なのでした。
経済の発展やテクノロジーの進歩によって、
「内」と「外」の格差や時空間差がなくなった現在、
この先はどうなるのか。
そこもやはり、リスナー型ミュージシャンが
世界を作っていくのかなあという気が僕にはしました。 -
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ネタバレここまで考察できる熱量に脱帽。思惑や狙いって本人でさえ分かってない場合もあるけど他者の深読みは面白い。ベクトル変えて違う文脈から語られる音楽批評も読みたくなった。
あくまで本著は大枠で簡潔なJPOP以前/以後の歴史、はっぴいえんど〜YMO〜渋谷系(フリッパーズギター・ピチカートファイヴ)〜小室哲哉〜中田ヤスタカの話。
例えば、小室哲哉の項ではプロデュース全盛の同時期に幅を利かせていた小林武史や奥田民生、つんく♂に関してはほぼ触れられていない。そういう意味では、時代を変えたと言える人が登場しているのかも。サザンの日本語ロックへのドロップキック他80年代アイドルや歌謡曲等には焦点が当てられていないのはそこまでの余白がなかったのだろう。全ての主要邦楽シーンをカバーして論じている猛者がいたら教えてほしい。
印象に残ったのは、中田ヤスタカと坂本龍一の対談の一部が引用された箇所。歌詞の意味は重要視せず音の響きで詞を作る、歌詞が耳に入ってこないタイプだ、と。自分も歌詞よりメロディやリズムに入り込むから、そして歌詞の話に共感できないことに後ろめたさや疎外感を感じていたから、少し安堵した。そういう聴き方してもいいよね。 -
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『ニッポンの思想』および『ニッポンの音楽』(ともに講談社現代新書)とならぶ三部作の第三弾です。いわゆる日本文学史とは異なり、ミステリやSF、ライトノベルなど「文学」に接するジャンルにも立ち入ることで、日本の「文学」という制度を問いなおし、その境界が溶解しつつある現状を明らかにする試みともいうべき内容になっています。
本書では、各年代ごとの代表的な人物をとりあげて時代的な変遷を大胆にえがきだす試みがおこなわれていた前著とは異なり、ミステリやSFといったジャンルごとにそれぞれの代表的な作家を紹介しています。ただそのぶん、著者自身の独自の観点が示されているわけではなく、比較的簡潔な概要を紹介するにとどまっているのではないかという不満もおぼえました。
同様の問題意識を独特の観点からくり返し論じている批評家に大塚英志がおり、本書でも彼の『サブカルチャー文学論』(朝日文庫)での議論や、笙野頼子とのあいだでなされた論争にも言及されています。ただし大塚のばあい、サブカルチャーが相対するメイン・カルチャーがいまや一つのジャンルにしかすぎなくなってしまった現状に対する彼自身の屈折した批判意識を梃子にして、メイン・カルチャーがいまや放棄してしまった責任のありかを逆説的に浮きあがらせるという、ある意味で悲劇的な試みがなされています。これに対して本書では、「文学」が一つのジャンルにすぎなくなった現状をそのまま受け入れることで、本書のような文学についてのガイド・マップが成立していることに対する反省が欠如しているように感じられます。
そうした批評意識がもはや時代遅れのものになってしまったことを承知しつつも、すくなくとも一度くらいはそのことを顧みておく必要があるのではないでしょうか。 -
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佐々木敦の本をまとめて読んでみることにした第一弾。
彼は音楽批評・文芸批評・演劇批評をする人、というイメージがあったため、「ニッポンの思想」というタイトルに思わずみじろぎしてしまった。
しかし、ふと考えれば東浩紀の批評学校にも講師として参加しているわけだし、そもそも批評は文芸誌がルーツであるらしいし、親しいのも当たり前なのですね。
ニューアカ世代の親を持つ自分としては、読んだことは無いけど本棚にある浅田彰から、宮台真司、東浩紀まで一体日本の批評がどのような流れ、対立構造等で成立してきたのか、読みやすい文章で書かれているので面白く読んだ。勿論、思想の解説本ではないので、いちいちデてくる用語の説明は無いし、す、スキゾキッズ‥?となることも多々あった。
しかし、東浩紀よりも更に下の世代からすれば、大御所の積み上げた思想の上にまた東浩紀の思想が、その若手の思想がと積み上げられており、インターネットのおかげで纏めて読むのが逆に難しくなった今、ざっと基礎を知るには適した本であると思う。