高山真由美のレビュー一覧
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街の骨格が徐々にわかってくると、事件の背景も見えてきて、白人至上主義、ヘイトクライムが犯罪に絡み出す。簡単な物語ではない。
黒人のテキサスレンジャーを通して、「家族」という関係を浮き彫りにしていく。
家族関係、人間関係。掘り下げていくことで犯人に、そして胸を抉るような動機へと導かれる。
街や店の匂いが文章から漂う。お腹が減るような、また反吐が出るようなこともあったり。
アメリカ南部の田舎町で起きた正義の傑作ミステリでした。
犯人をとんでもなく間違えてて吹いたのは許してほしい…
私の範疇よりもっと複雑に、また素晴らしい余韻を残してくれますので…
こんな面白いものが書評七福神でみんな選ばないって2018年12月何事?(皆さんあげてますけどね。 -
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"中東、アフリカにある独裁国家に住む肌感覚やイスラエルとパレスチナの日常を知ることができる。
1998年から2003年にかけてオランダからの特派員としてエジプト、シリア、イスラエルでジャーナリストとして過ごして記事を送り続けていた著者が、伝えきれなかった部分を補ってくれているのが本書だ。
イスラエルとパレスチナの関係も見方ががらりと変わる。見る視点が変わることで、いろんな気づきを得ることができる。
本書を読んで、メディアからの情報を鵜呑みにすることの怖さにも気がつく。
情報を自由に閲覧できて、個人が発信できる日本にいると、独裁国家の日常は想像すらできない。
様々な視点を与えてくれた良書。" -
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母の名前はサラ。父の名前はデイビッド。二人の間に生まれたのが
一人息子のジェイソン。だが、ある日、父デイビッドは母と息子の前
から姿を消し、次には訃報が届いた。ジェイソンがまだほんの子供
の頃だ。
母はひとりでジェイソンを育てた。穏やかで深い愛情を注いで。そう
して成長したジェイソンは大学進学ではなく、兵士なることを選び、
兵学校に入学し、アメリカ海軍特殊部隊を志願し、優秀な兵士と
なった。
類まれな兵士としての能力。だが、ジェイソンンの心のうちでは他の
選択肢もあるのではないかとの思いも育っていた。そうだ、次の任務
を最後に軍を退こう。
最後になるはずだった任務の最中、ジェイソンが行方不明になった。
サラの元へその知らせが届いた時から、ジェイソンと再会するまでの
11日間を描いた小説である。
ある時はサラの視点で、ある時はジェイソンの視点で、過去と現在が
行き来する。お互いがお互いに抱ている感情、父デイビッドへの思い。
そして、似たような母と息子の間の温度差。
極めて抑制された筆致が、戦争に係わるとはどういうことなのかを
母子の心を通して考えさせてくれる。
本書はフィクションではあるけれど、戦場に我が子を送り出した世界
中の母親はサラと同じような不安を抱えて過ごしたのではないだろう
かと思う。
我が子はどこでどのように過ごしているのか。無事に家族の元へ帰って
来てくれるのだろうか…と。
先日、駆けつけ警護の任務を付与された自衛隊の部隊が南スーダン
へ出発した。日本も既に他人事ではないのではなかろうか。今回の
駆けつけ警護にはいろいろと制約があるようだが、自衛隊員が戦闘
に巻き込まれる可能性は以前に比べたら遥かに高くなっている。
太平洋戦争以降、戦場へ我が子を送り出す母はいなかったのにね。
我が子が戻ってくるまで大きな心配を抱えて過ごす家族が出来てし
まったね。
サラの思い、ジェイソンの思い。それぞれが胸に痛い作品だった。
戦闘場面が克明に描かれているのではない。残酷なシーンがある
のでもない。それだからこそ、感情に走らずに書かれた分だけ余韻
が大きい。新たなスタイルの戦争文学なのではないかな。 -
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オランダ人である著者が、新聞社時代に特派員として赴いたエジプトやイスラエル、イラクの取材を通じて感じた報道の実態を明らかにしている。
報道する側やされる側、受けとる側の三者が抱える不条理が、著者の徹底した中立的な視点で語られているところが興味深い。
イスラエルやイラクでも、ボスニアのようなPR会社が暗躍していたのだろう。財政難のパレスチナは欧米諸国のメディア戦に翻弄される、儚い存在なのだろうか。
イスラエルやパレスチナでも「我々は和平を望んでいる」としながらも、「相手は我々を憎んでいる」と民衆は口を揃えて言うのだとか。僅かな解決の糸口はここにあるような気がする。しかし、独裁政権は身の安定こそが重要で、メディアは都合の良いプロパガンダのためのツールであった。
メディアの中立性が存在しない世界に生きる人は、溢れる情報を無意識的に真実であると錯覚し、誤解どころか物事の本質に全く気付かぬまま一生を終わるということだろう。 -
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「真実ってなんだ?」――本書を読み終わってまず思ったことだ。「真実」を報道するのがメディアの仕事だと思ってたから、その実態を知って驚いたし悲しくもなった。ある人が「真実を伝えなければ」と思っても、自分一人の力ではどうにもできないことがある。そうゆう人がいるかもしれないのに、できない。そうゆう人たちのことを思うと、やるせなさを感じる。
本書で初めて知ったわけではないけれども、一つの物事に対して様々な角度からの見方があることは忘れてはならないことだろう。そうでないと、偏った見方しかできなくなるし、それでは物事の全体を理解することができない。ある意味「現実」を見ていないことになるからだ。
とまあ、内容については全然触れませんけど、メディアリテラシーに興味のある方(もちろんそうでない方も)はぜひご一読を。「リアル」を知ることができると思います。 -
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キングの中編集。二編が収録。
『ハリガンさんの電話』は、ちょっとヘンクツな金持ちのおじいさんと9歳の少年クレイグの交流の物語。
前半はおじいさんとの交流。後半からちょっと不穏な雰囲気に。
ハリガンさんは引退した大金持ち。ふとしたことで気に入られたクレイグは、ハリガンさんに本を読み聞かせるバイトを提示され、交流がはじまります。
ヘンクツながら律儀なハリガンさんは祝日にはメッセージと福引のようなくじをくれるんですね。金持ちなんだから、現金をプレゼントしてくれてもいいのに、なんて父親は言ったものですが、あるときその福引でけっこうな金額があたり、そのお金でクレイグはハリガンさんに出たばかりのiPhoneをプレゼントします。
テレビやインターネット、デジタル機器は人を奴隷にする、と忌避していたハリガンさんですが、それが自身の株取引に大きな力となると知り、クレイグに感謝して使うようになりました。
その後、ハリガンさんは亡くなり、クレイグはこっそりハリガンさんの棺にそのiPhoneを忍び込ませます。
寂しさと、自分に起こったちょっとしたトラブルの憂さ晴らしにハリガンさんに電話します。
電話がつながるわけがない、とは知りながら・・・
でも、電話はかかり、ハリガンさんの留守電メッセージが聴こえてくる。想いがこみ上げ、電話に向かって自分のトラブルについて語るクレイグ。
そしてそれからしばらくして、クレイグは自分のトラブルのもとが「排除」されたのを知りました。
前半のあったかい交流に対して、後半のやや不穏な雰囲気。
なんとも引き込まれました。
物語の結末も、このままイッたらまずいよね、というところでとめられていて、余韻もよかったです。
もうちょっとイっちゃってたら、ハートウォーミングなキングではなく、怖い方のキングになっていたでしょうね。
もう一篇が、表題作となっている『チャックの数奇な人生』
『サンキュー チャック』という映画になった『チャックの数奇な人生』というお話は、読後、これをどういう映画にしたんだろう、と、ちょっと頭がぐるぐるしました。
小説がつまらなかったわけでは、ありません。
これが映画として、一本筋のとおった物語になるのか、というあたりの見当がつかなかったからです。
これがどういうお話だったのか。
それはもちろん、ご興味のある方は、読んでみてくださいね♡としか、言いようがありません。
ただ、まぁ私なりの読んだ印象を言えば、
人が一人、死を迎えるというのは、ひとつの世界が終局を迎えるくらいに大きなことなんだよね。
その人には、その人の、平凡かもしれないけど、その人なりの充実した時間があったんだよね。
さらには、実はその中に少し不思議なスパイスもあったかも。
なんて、展開に思えました。
まったく説明にはなってませんが。
ただ、スティーブン・キングという作家さんは、とにかく怒涛のように言葉を重ね、物語を紡ぐ人だというイメージはあります。
その中で、ひょっとしたら、誰か親しい人の死に出会ったんだろうか。
キングも、そこそこのお歳ですから、それはあるでしょう。
そのとき、ふと脳裏をよぎった感覚から、ここまでのお話に膨らませた。
そんなふうに思いました。
本書は、『イフ イット ブリーズ』という4編からなる中編集のうち2作を収録したものです。
のこり二篇も、翻訳されているので、そちらも近いうちに読みたいと思います。 -
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ネタバレ先に「もし血が流れれば」を購入しており、購入後に「イフ・イット・ブリーズ」が全4タイトルからなる中編小説集だと知って慌てて前編となる本書を購入した。
スティーヴン・キング作品を読むのは初めてだったのだが、とてもおもしろく読めた。
「ハリガンさんの電話」も「チャックの数奇な運命」も、世界を救ったり不思議な冒険をしたりするような物語ではなく、あくまで普通の、探せばどこかにあるような誰かの人生の欠片を覗き見ている、そんな雰囲気の作品で読後感がすごく良かった(「ハリガン〜」は少しホラーテイストで非日常感があったけれど)。
「ハリガンさんの電話」で、主人公が嫌いな人が死ぬようにハリガンに電話をかけるシーンがあるのだが、最終的に「ハリガンさんはああいう奴が嫌いだからこの行為に喜んで協力してくれるはず。」といったマインドになっていたのが少し怖かった。主人公とハリガンは友人でプライベートな部分を良く知っていたかもしれないが、亡くなって何年も経っていて声すらあまり思い出せなくなっている相手の思想を自分の都合で捻じ曲げて自身を納得させているよう見えた。
「チャックの数奇な運命」を読んだ時、死の間際で五感のうちに1番最後まで機能しているは聴力だというのを思い出した。
死の直前、チャックが最後に取り込んだ外界からの情報がチャックの中の世界で大々的に取り上げられたのかな?と思った。だとしたら最後に聞いた言葉が「ありがとう」なのは素敵な事だなと感じた。
2026年10月1日:追記
映画「ハリガン氏の電話」を観てきた。小説を読んだ時にすくい上げられていなかったシーンや、自分とは違う解釈をしたシーンなど、とてもおもしろい映画だった。映画を見て「ハリガンさんの電話」が更に好きになってしまった。 -
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自分が親からされて嫌だったことや言葉がけを自分の子どもにはしないためにどうすれば良いのか、というのが本書のテーマ。
ざっっっくりとしたまとめは、子どもにネガティブな感情を抱いた時、叱る前に一呼吸置いて、その感情と向き合おう、そしてそれをそのまま端折らず言葉で素直に伝えようというもの。
例示も多く、主張は一貫性があるが、もう少し科学的な根拠も見れれば尚良かった。
また、全体的に少し同じ話が多く、くどく感じた。
特に良かったのは、子どもの理解力を侮らずに接しようというアドバイス。また時間を置いて読み直したい。
疑問に感じた点としては、繊細な子に親の感情を伝えすぎると却って負担になるのではないかと思った。自分自身が繊細で他人からの見られ方を過剰に気にしてしまう性格なので。できれば我が子は少し鈍感気味に育って、自分のやりたいことを実現していってほしく、そのような育児書があれば読みたい。 -
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仕事と愛情の両立に向けた研究本です。
仕事・家庭のために何かを妥協する、犠牲にする、そんなゼロサムゲームにしないために、人生で起きうる課題とそれにうまく対処したカップルのサンプルをまとめた本です。
個人的には文章が冗長かつ登場人物が多くてこんがらがってしまったため、先に章末のまとめを読んでからそれらを肉付けする形で本文を読むのをオススメします。正直気になるところだけのつまみ読みでもよいと思います。
明確な答えをくれるわけではありませんし、ベストの答えはそのカップル次第という感じではありますが、カップル人生に訪れる大きな3つの課題を俯瞰してみれるのは、いい本だなと感じました。
日本も夫婦共働きが当たり前の時代です。こういった内容の本を、情報・技術本として、夫婦で読んでみるのもいいかもしれませんね。 -
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ネタバレ2026年の34冊目は、アン・クリーヴスの「悔恨」です。「哀惜」「沈黙」に続くマシュー・ヴェン警部シリーズの3作目です。前作「沈黙」を読んだのは、丁度1年前です。間にヴェラ・スタンホープを主人公とする「水面の弔花」も有りました。
舞台は、いつものようにノース・デヴォンです。閉鎖的な海辺の村で、世界的に有名な冒険家が殺害されているのが見つかります。その冒険家は、地元の出身では有りますが、何故、このタイミングで何のために地元に戻って来たのか?
いくつになっても自分が中心ではないと気が済まない人間がいますが、マシュー含めて、多くの人間がその人物に振り回される事になります。
☆4.4