あらすじ
巨匠による端正で緻密な謎解きシリーズ第2作
ガラス職人のイヴが首を切り裂かれた父の遺体を発見した。凶器はイヴが作った花瓶でマシュー警部は慎重に聞き込みを進めるが……
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マシュー警部シリーズ2作目。
「地味だが滋味がある」と解説にあったが、その通り。
殺人事件そのものよりも、マシュー警部補と夫ジョナサンをはじめ、
刑事たちや被害者周辺の家庭の人間関係が主題なところは、
前作と同じ。
マシューは疎遠にしていた母親を家に招き誕生日を祝い、
ジョナサンとはお互いの価値観を気遣う。
部長刑事のジェンは、捜査で子供たちの世話ができないことを気に病むが、
娘も息子も成長しているのを感じる。
ロス刑事は料理が上手で世話をしてくれる妻の態度の変化に、
妻との関係、そして自分を見つめなおす。
事件の方はと言えば、ジェンがパーティーで会った男性が殺された。
ジェンに相談したことが何かあったらしい。
男性は元医者で、現在は保健サービス東京を監視する仕事をしていた。
凶器は男性の娘が作ったガラスの花瓶だったが、そのことに意味があるのか。
男性が調査していた、精神病棟から退院させられ自殺した男性に関係があるのか。
それとも、殺人現場のガラス工房の持ち主、
金融市場で成功した投資家の老人ホーム閉鎖の計画が関係しているのか。
そして、投資家の所有していたガラスの花瓶で、もう一人の男性が殺される。
投資家の自殺はストーリー展開に必要だった?という気はしたが面白かった。
今週の夕飯はテイクアウト続きだったが、
お母さんの手料理だったらテイクアウトが良い、
と娘に言われてたジェンはちょっと可哀想だったが。
Posted by ブクログ
前作同様、事件の舞台となった地域に根付く人々の生活や心情が丁寧に書き込まれ、濃密なコミュニュティ空間で起きた自殺や連続殺人について、地道に捜査していくスタンスは変わらない。前回は主役刑事とそのパートナーを中心に物語が進行したが、今回は、脇を固める刑事2名がそれぞれの家庭での葛藤も交え物語の中心となり進んでいく。ルーシーも健在。厚いけど手が止まらず一気に読んでいける面白さ。犯罪解明としての鮮やかさを問う小説でなくすっきり感は少ないものの、とても心に残る一冊。新刊が出る前に別シリーズに手を出す予定。
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シリーズ2作目。最後の最後になるまで、登場人物と同じく五里霧中。
主人公の後ろから、デヴォンシャーの地方を歩き回って雨に打たれているような気分。
謎解きミステリというよりは、警察の丹念な捜査を一緒に見て、一歩一歩犯人に近づいていくような感覚。
事件を追う刑事たちも、家族や同僚、めんどくさい上司との関係にモヤモヤしたりしながら何とかチームで仕事に当たっている様がリアル。
色々な人物の視点でストーリーが進むので、お互いこういうところ評価してるんだ、とか実はこう思っている、というのが自然に語られていく。バージニア・ウルフの灯台形式というか、同じ国の人か…。
当然捜査中の警察官にもプライヴェートがあって、家族との関係が緊張状態になったり気を遣ったり、本筋とは関係ないはずなのに非常に細やかに描写されていて、今回はロス、大丈夫なんか…?と地味にハラハラした。
3作目も翻訳待ってます!
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TVドラマ化されている『ヴェラ警視』シリーズは荒涼たるイギリスの大地で、人々の愛憎が描かれた。皆が秘密を隠そうとするクローズドサークルを、やや強引なヴェラが乗り込んできて、収拾にあたる。さて、本編はそれよりは明るいイメージ、というか、そもそもセンターに立つ捜査者のイメージが真逆である。
男性の恋人がいる、やり手のマシュー・ヴェン警部シリーズ第二弾。今度も彼の夫ジョナサンがかかわるコミュニティで事件が起こる。ジョナサンが複合施設を運営しており、様々な人が出入りする。こう言っては何だが、容疑者、被害者、そして事件の宝庫である。ジョナサンは当事者として関係者に関わり、マシューはあくまで捜査する者として関わる。一方は人間善性説を信じ、一方は職業柄、必ず誰かが何かを隠している=嘘をついている、と思わなければならない。衝突、摩擦も起こるが、お互いの愛情が最後は融和剤になる。饒舌な人ほど真っ先にボロを出すため、さしたる悪人ではない。今回確かに犯人は沈黙していた。巧みに、目立たぬように沈黙を貫く犯人を、あなたは見つけられるだろうか?
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マシュー・ヴェンシリーズ、第2弾。今回も良かった!とにかく彼女の小説はキャラクターにリアルが感じられて、味がある。主人公のマシューももちろんだけど、夫のジョナサン、部下のロスとジェン、それぞれのプライベートストーリーを挟みつつ事件を追う、警察小説の王道。一気に読めてしまった。今回は娘のガラス工房で、父親が色ガラスで殺されたところから事件が始まる。凄惨だけれど、どこかドラマチックな殺害現場。マシューはいつも通り粛々と捜査を始めるが・・・。という流れ。被害者、容疑者それぞれに、いろんな角度からスポットが当てられ、単純に良い人、悪い人じゃ片付けられない複雑な一面をのぞかせる。犯人は誰なんだろうと思いつつ、分かってしまうと腑に落ちる。いやもう次回が楽しみです。
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イギリスの作家アン・クリーヴスのマシュー・ヴェンシリーズ第二弾。
ヴェンの部下のジェンがパーティである男と出会う。どうやら刑事であるジェンに相談したいことがあった様だが、酔いもあり次の日に約束をしたところ、その男は死体となって発見される…
非常に染み渡る作品。警察の地道な捜査、関係者が直面する問題、主役たちのプライベートなど、複数からの視点で丁寧にこつこつと描かれる。この辺りはクリーヴスの得意とするところ(というか他の形式を見たことがない)。
ただこれが好き嫌いが分かれるポイントなのかなぁと。中弛みに感じる人もいると思う。
今作に限っては、実は過去一いいタイミングで転換点があった気がする。ここぞというタイミングで新しい事件が起きるので、いつもより間延びした感じは受けなかった。
原題は、おそらくサギの鳴き声的な意味だが、邦題は「沈黙」。妻に言わないこと、パートナーに言わないこと、色々あるよなぁっていう。漢字二文字のところも、燻銀な感じで作品の雰囲気に合っている。良作。
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心が折れてしまったから…
どのような大木も折れて倒れるときはあるだろう
それは耐えられないほどの暴風が吹き荒れたからかもしれない
あるいはしっかりして見えたのは外見だけであり、中身は腐り空洞だらけだっのかもしれない
そしてもし、それが森の中にある木だったとしたら、倒れるときには周りの木々を巻き込みながら倒れるのも、必然なのかもしれない
だが、それは巻き添えをくった木々たちに納得できる理由となるのだろうか
すべての罪を許される免罪符となるのだろうか
一方で、刑事マシュー・ヴェンは静かに立ち続けている
「罪悪感」という名の暴風雨の中で
自分がもっと優秀な刑事であったなら
すべてのことを見逃さない完璧な観察者であったなら
失われた命はもっと少なかったのではないか
折れないことを、自分に課しながら
彼は、今日も立ち続けている
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『哀惜』を23年に読んで以来、本作の刊行をずっと待ち望んでいた。そして、本作はそんな期待を裏切ることなく応えてくれた。ほんとうに、いい。
視点となる登場人物が章ごとに変わる。捜査担当者の3人の中でもマシューとジェンはお互いに評価していて、ロス・メイだけ未熟で不出来で保守的という位置付けかと思いきや、マシューとジェンも互いに相手を批判的な見方で見ている記載がある。そういう公正で客観的に思われる描き方によって、それぞれのキャラクターが鮮やかに生きる。
ミステリーの筋立てはしっかりなされながら、登場人物の心の機微が描かれている。そのほとんどが悩みとなる内容なので、それぞれの展開にも謎解き同様に関心を引かれる。
原題のThe Heron’s CryのHeronがアオサギなのか三角形の面積を求める公式で有名な古代ギリシャのヘロンなのかが気になっていたが、どうやらアオサギのことらしいということがわかった。
「アオサギの鳴き声は一度も聞いたことがないな」とマシューは言うのだが、えー、うそ!うちの近所の川では夕方から夜にかけて飛びながら鳴いているのを聞くことが結構ある。他の鳥より体が大きい分、鳴き声も大きく結構不気味なのだ。
ジェンとジョン、ジェンとジョシ、読み違えがち。
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ラストの取り調べシーンの説明口調が気にはなったものの、やはりこの作品の語り口と、マシューの人柄が共感できてとても好き。登場人物一人一人を丁寧に描写するあたり、日本の作品ににていて引き込まれます。事件が起きてから1週間とは思えない濃密さに取り憑かれ、一気読み。深い満足感に包まれています。前作に登場のルーシーが逞しくなっていて嬉しさひとしお。確執のあったマシューのお母さんとの関係に変化があったこともラストでわかり、温かな気持ちに包まれます。サイコパスか、と思えるような犯人にひんやりした気分になりつつ、こうした場面があることもこの作品の魅力かと。狭い地域でこんなことが、と思わされますが、真面目に懸命に生きる人々が幸せであってほしいとしみじみ感じました。次作がすぐに読みたいです。
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楽しみにしていたマシュー・ヴェン警部シリーズの第二弾。
あ〜、やっぱりアン・クリーヴスが好きだ!
ストーリーも人間模様の絡み方も
相変わらず聞こえてくる心の声も、十二分に楽しめた。
特に今回はラストの種明かしもすごく良かった。
取ってつけた感もなく、終わってみればこの人しかいない、と言う事実。(もちろんノーマーク)
前作ともリンクする部分も多く、また読み返したくなった。
今回、マシューとその部下であるジェン(シングルマザー、いつも疲れている)とロス(マシューとは微妙な関係、愛する妻と最近すれ違い)のエピソードも良かった。
それぞれにかかえているものがあり、それがストーリーに厚みを持たせている。
チームとしての3人の噛み合わない感じもおもしろく、
今後それがどう変わっていくのかにも注目したい。
巻末の解説でうれしいニュースも。
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吹きガラス職人のイヴが自宅で父ナイジェルの遺体を発見した。捜査を指揮するマシュー・ヴェンは患者救済組織の所長であるナイジェルが、青年マックが自殺した事件を調査していたことを知る。マックは精神科病棟から退院させられた後、自殺を教唆するサイトにアクセスしていた。マシューは病院とサイトの両方を追うが、イヴは父の死が自分のせいではないかと心を痛めていて…。人間心理の闇に分け入るシリーズ第2作。
時間があるときに、じっくりと味わいたい一冊。
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2025年の32冊目は、アン・クリーヴスの「沈黙」です。「哀惜」に続くマシュー・ヴェン警部シリーズの2作目となります。読書の舞台は、ウェスト・ドーセットからノース・デヴォンに移りました。
作者アン・クリーヴスの円熟した作品を堪能出来ます。
派手なアクションシーン等は有りません。派手な作品が好きな人には物足りないかもしれませんが、マシュー、ジェン、ロスのチームが、関係者から丹念に聞き取りを重ねて事件の犯人とその真相に一歩一歩辿り着いて行きます。最後は、一気読みでした。以外な人物が犯人です。
マシューとジョナサン、ロスとメラニーの2組の夫婦関係やジェンと子供達との関係等、捜査陣の私生活の描写が、良いアクセントにもなっており、素晴らしいシリーズ作品に仕上がっていると思います。
☆4.8年間ベスト10級です。
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シリーズ第2作。
やっぱり好きな主人公マシュー警部。罪悪感を抱えて堅苦しく生きている彼だけど、どんな相手の話でもよく聞いて理解しようとする姿が美しい。周囲の人達にも彼の良さが少しずつ浸透していく感じも良い。起きる事件は悲しいですが、夫ジョナサンをはじめ、明るいキャラクター達に救われます。次回作も楽しみ!
Posted by ブクログ
CL 2025.7.6-2025.7.9
連続殺人事件だというのにこの落ち着いた淡々とした捜査はなんなんだろう。
マシュー•ヴェン警部シリーズ第2作。
禁欲的で真面目で面白みのない主人公なんだけど、なんとも味のあるこのシリーズ。
今回は事件の捜査さえ部下たちの活躍が大きいのだけど、なぜかマシューには魅力がある。
やっぱりアン•クリーヴスはいいな。
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シリーズ2作目の読み応えの一作。この作家さんが凄いのは、捜査員の日常も含めて、全てがリアルにしっかり描かれている点。折り畳む様に関係者のアリバイとかが捜査で明らかになっていく。皆が知ってる筈の集落、そして暴かれる犯罪にページを捲る手が止まらなかった。
Posted by ブクログ
気の利いた会話も、派手な展開もないが
普通の生活なんてそんなもの
育った環境から影響を受けた自分の性格と向き合いながら
淡々と、そして実直に職務に携わる主人公がいい