冲方丁のレビュー一覧
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ネタバレ「たとえ君主が人品愚劣であっても、武力でこれを誅し、自ら君主に成り代わろうとしてはいけない。」これは朱子学の考え方の一つである。
そもそも、授時暦が間違っているという発想をすること自体、とても難しいことだと思う。多くの天才たちが集まり、長い年月をかけて作り上げたものに対して、「本当にこれが正しいのか」と疑うことができるのも、一つの才能なのだと思う。そして、間違いに気づくだけではなく、それを超えるものを自ら作り上げることもまた凄いことだ。
歴史を動かし、後世に名を残す人たちは、当たり前とされているものを疑い、それを実現するために最後までやり遂げる力を持っているのだと思う。しかし、それは決して一人だけで成し遂げられるものではなく、周囲の人たちの協力があってこそ実現できる。そして、その協力を得るためには、人柄も非常に重要なのだと感じた。それは、渋川春海が誰に対しても低姿勢で接する姿からもよく分かる。
若い頃の春海は、決して精神的に安定しているとは言い難く、予想外のことが起こるたびに狼狽えていた。しかし、大和暦を上奏する頃には、大名の器を見極めたり、入念な根回しをしたりすることで、落ち着いて物事に対処できるようになっている。その姿からは、春海が暦を作ることだけでなく、人としても成長していったことが感じられた。
最後に、春海と関孝和が一緒に江戸城の城内を見る場面がある。もしこれが、宣明暦に挑み始めたもっと早い段階であったなら、二人はさらに多くの人に、革命的ともいえる新しい世の中を見せることができたのではないかと思ってしまう。
しかし、それも含めて人生なのだと思う。何かを成し遂げるには、それぞれの人にそれぞれの時期があり、すべてが思い通りに進むわけではない。それでも、周囲の人々との出会いや協力を得ながら、自分の信じるものを追い続けた春海の姿が、この作品を通して強く印象に残った。 -
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ネタバレ下巻もとても良かった。
長い年月をかけて観測と計算を積み重ね、ようやく進んだと思ったところで何度も壁にぶつかる。それでも諦めず、間違っていたならまた考え直して前へ進む春海の姿が印象に残った。
特に、ここまで順調に進んでいた授時暦が予報を外したところはかなり苦しかった。周囲の人を失いながら、それでも積み上げてきたものまで崩れる。そこからまた立ち上がっていくところには、学ぶものも多かった。
そして最後の関との出会いは強烈だった。
ずっと直接会わず、算術の問題と解答だけでつながってきた二人だからこそ、最後に実際に会う場面がより印象に残った。
一方で、最後の「天地明察」の章は、それまでの積み上げに比べると少し展開が早く感じた。春海が自分の暦に辿り着き、改暦を成し遂げるまでをもう少しじっくり読みたかった気もする。
春海自身も、歳を重ねたからなのか、急にかなり落ち着いた人物になっていて、根回しや先読み、幕府の動きまで把握しているような振る舞いをする。その成長に少しついていけない感覚もあった。ただ、そこはこの作品の本質ではないので、大きく気になるほどではなかった。
それでも、諦めないこと、学び続けること、間違っていたらまた考え直すこと。物語として面白かっただけでなく、学ぶところも多い作品だった。
10段階評価: 8.5点 -
購入済み
人と人との係わりに胸を打たれた
評判になった時には読まず、最近になって初めて読みました。作品のテーマは数学と天文学ですが、人と人との係わりを描いた小説だと感じました。
もちろん、数学や天文学に造詣があれば更に楽しめることと思います。
周囲にいる人物がみな主人公の成功を願い、祈り、力を尽くすところに胸を打たれました。主人公と相容れない立場の陣営については深く掘り下げないので、黒々とした悪意に触れることなく、気持ちよく投了することができました。
著者の作品は他に読んでいないのですが、他の傾向の作品も読んでみたいと思います。 -
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本屋大賞受賞作ということで手を出したが、主人公・春海がおっとりした性格で嫌なところがなく、とても好感が持てた。
導入にて、わざわざ絵馬を見に行くことに何の意味があるのかと思いきや、絵馬の中で算術の問答が行われており、いわば算術掲示板。その存在も面白いし、それら算術自体に夢中になっている算術オタクである春海も面白い。
磯村塾の壁にも同じように問答がたくさん貼られており、そこにはどの問題にも一瞥即答する故に解答さん、解くだけで問題は出さないから解盗さん、などと呼ばれる関孝和という謎の男が存在する。
読んでいて一番好きだったのがやはり、北極出地の観測隊の中での2名の老人、62歳書道家の建部昌明と、57歳医師の伊藤重孝。
純粋に興奮する姿がとても可愛いのと、年齢を感じさせない考え方がとても良い。また、それぞれに具体的に口にできる夢があるのも羨ましい。
「星だ!」「星だ!」
いきなり二人揃って大声を出し、春海をぎょっとさせた。
確かにうっすら星がまたたいている。そして中天に北極星が見えた。
「天の開始である!象限儀を整えて読め!」建部が、びっくりするような大声で告げた。p206
「そのような人物が江河にいるとは」建部など力いっぱい拳を握りしめ、
「ぜひ弟子入りしたい」
はっきりとそう言った。なんと伊藤まで首肯している。この二人の老人にとって研鏡のためなら三十余も年下の若者に頭を垂れることなど苦でも何でもないらしい。それどころか、
「だいたいにして若い師というのは実によろしい」
「ええ、ええ。教えの途中で、ぽっくり逝かれてしまうということがありませんから」
などと喜び合うのだった。とはいえ右筆であり御典医である二人は交友関係が幕府により厳しく制限されている。二人の身分では、そうそう悲殿の土に教えを請いに行けるものではない。それでも、弟子入りしたいと思えるほどの人物が江戸にいるということ自体が喜びなのだろう。p242 -
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『春はあけぼの』って、実は1000年前の“推し活”だった。これを知っていたら、学生時代の古文の授業はもっと楽しかった気がします。
冲方丁さんの『はなとゆめ』は、『枕草子』をまったく新しい視点で見せてくれる歴史小説です。
主人公は清少納言。彼女が仕えた中宮・定子は、一条天皇に深く愛されながらも、藤原道長による熾烈な権力争いの中で次第に追い詰められていきます。宮中では血縁や権力を巡る争いが続き、誰もが生き残るために戦っていました。
そんな中で、清少納言が選んだ武器は剣でも政治でもありませんでした。
「好きなもの」を書くこと。
『枕草子』は、定子という一人の女性の美しさや知性、宮中で過ごした輝く時間を未来へ残すための文学だった――そう考えると、この作品の見え方は一変します。
私は読みながら、「これは定子様への同人誌であり、1000年前の推し活なんだ」と思いました。
もちろん現代の「推し活」とは違います。でも、大切な人の魅力を誰かに伝えたい、この人の存在を未来まで残したいという気持ちが、1000年経った今にも残った凄みを感じました。
特に心を動かされたのは、血なまぐさい権力争いが続く世界で、それでも清少納言は憎しみを書かなかったことです。政治を批判するのではなく、「美しいもの」「心が動いたもの」を書き続けた。その静かな筆が、結果として千年後まで定子という存在を生かし続けています。
この本を読んで改めて感じたのは、愛とは「守る」ことなのかもしれないということでした。
歴史小説でありながら、文学とは何か、愛とは何かを考えさせられる一冊です。そして何より、「春はあけぼの」がこんなにも熱い物語だったことを、もっと早く知りたかったと思いました。 -
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大政奉還
江戸城の無血開城
教科書でただ事実として伝えられたその言葉が、何を意味するのか、どんな歴史を包み込むのか、深く、立体的で、さまざまさ方面からの思惑が重なり合う、その様が、心も抉りながらでも考えさせられるとても良い作品だと思います。久々にゆっくりと小説を読みながら、そうそう、こういう世界観が描けるから冲方さんのことが好きだった、私は最近腐ってばかりだけど、こういう無鉄砲で、正義のために戦う人たちが好きだったと改めて思い出させてくれました。主君のためというよりも、困った民心のため。そのために粉骨砕身働く勝さんが、やはり私は好きです。
純粋に政治的な駆け引きも参考になりますけどね! -
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なんかわかんなくなっちゃってんだよね前巻読んだのだいぶ前だから。そんで7割くらいのボリュームでずーっとどっかで戦ってるんだよね。こっちの勢力とあっちの勢力が。なんでこいつとあいつがこっちの勢力になってんのか、もうよくわかんねえんだよ。そんなだけど破天荒に面白いんだわ。もうこれ天才でしょ。マルドゥックスクランブルのときからもちろん好きだったけどさ。これだけの数の異能力者を描き切って文章で表現するのは著者が異能だよ。
アレよね、シザースが当面の敵なのよね?だから均一であり完璧であるべきとする勢力と、個々の弱みを補い合う多様性の勢力の紛争、と捉えていいのよね?1巻から読まないともうわけがわからなくなってしまっている。
ワイはこの世界に生きるんだったら、風を操るエンハンサーになりたいな。指先でワイヤーワームを生成して、そのワイヤーワームを高速回転させて風を作るの。ワイヤーワーム自体は非力なんだけど、連結させてすごい風を作ったりできるの。風に砂を混ぜ込んでサンドブラスト攻撃なんかもしちゃうの。風の障壁を作って仲間を守ったりもしちゃう。